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さて、開場は16時30分であるが、更にその30分前に会場入口に向かうと既に人が並んでいた。「あらら・・・」
それでも、なんとか前回のショパン公開講座に引き続き、演奏が間近で観られる席を確保してこれでひと安心だ。会場はちょっと広めな会議室で、椅子がズラリと並んだまさにサロンコンサートの雰囲気であるが、ふと気が付けば会場は満席状態となっている。「あぁ、早めに来ておいて良かった・・・」
そして開演17時をまわり、ピンク色のロングドレス姿の高橋多佳子さんが登場。軽いトークから始まった和やかな雰囲気のなか、「実はクリスマスコンサートなのに、今回のプログラムにクリスマス的な曲がないのには理由がありまして・・・」と、多分お客さんが気になっていたであろう種明かしをここで語る。
「昨年もこの立川でクリスマスコンサートをさせて頂いたのですけど、その時に私のクリスマスレパートリーを全て弾ききってしまって、今回はネタ切れになってしまいました」ここで会場が爆笑。というわけで、今回の演奏された曲目は以下のとおりである。
・ルーマニア民族舞曲(バルトーク)
・ワルツ 第2番 Op.34-1 (ショパン)
・マズルカ Op.30全曲 (ショパン)
・アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22 (ショパン)
~休憩~
・リゴレット・パラフレーズ(リスト)
・ピアノソナタ第2番 変ロ短調 Op.36 (ラフマニノフ)
~アンコール~
・ピアノ協奏曲第2番第2楽章 自己編曲バージョン(ショパン)
・パガニーニ狂詩曲から第18変奏曲 とあるお客様編曲バージョン (ラフマニノフ)
休憩をはさんで前半は全て舞踏曲、そして後半、特にラフマニノフのソナタは、高橋さんの「挑戦」的な意気込みが感じられる選曲である。
実は1曲目の「ルーマニア民族舞曲」を聴くのはこれが初めて。実に格好良い曲であり、高橋さんの奏でるキリリとした音色にとてもマッチしている。そして2曲目からはショパンの舞曲が3曲続くのだが、特に前半最後の「アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ」は、そのタイトルどおりに実に華麗で且つダイナミックな演奏であった。この秋、ショパンコンクールの第2次予選をネット上で何度となく聴いていた私であるが、やはり目の前で繰り広げられる華やかな音のダンスに、思わず鳥肌がたってしまった。
後半は大曲が2曲ということで、まずは「リゴレット・パラフレーズ」。これはヴェルディのオペラ「リゴレット」をリストがピアノ用に編曲したものである。これまで高橋さんというと「ショパン」というイメージが非常に強かったのだが、リストの華やかで凛々しい進行もしっかりと自分のものにして、たっぷりと表現している。こういう演奏を聴いてしまうと、あぁ、リストの曲ももっと弾いて欲しいと思ってしまう。
そして最後はラフマニノフのピアノソナタ第2番。私自身、ラフマニノフといえばこれまで練習曲や前奏曲、ピアノコンチェルトあたりはよく聴いていたのだが、ソナタはほとんど聴いたことがなかったため、今日のプログラムは私にとってもまさしく新境地を切り開くような状態だったりする。高橋さんの解説によれば、この曲はもともととてつもなく長くそして難関な曲であったらしい。ところが、周囲から山のような批判に遭い、打たれ弱いラフマニノフはこの曲をもう少し短く作り直したとか。それが、いわゆる「改訂版」である。
今日は改訂版のほうのピアノソナタ2番であったが、それでも曲のボリュームは満点、しかも会議室全体には強烈なパッセージと火の玉が落ちてくるような激しい音が轟き、そこに別の高橋多佳子さんをみたような気がする。
そういえば、コンサート中のトークのなかでフィギュアスケートの話がとびだし、本番前の緊張感、そして芸術を生み出すという点でスケートと音楽はよく似ている、と語られていた。そして、勿論ピアノの技術を磨くことも大切、でも、それだけでなく、些細なことにも感動したり、その思いを音にしてみたい、そういう感覚を磨くことも大切だと。
そう、技術だけでなく感性磨きもしていかねば。
それにはただピアノの前に向かっているだけでなく、もっと様々な分野に興味をもつことも必要。
プロの演奏家のお話を聞くと、この言葉を口にされる方がとても多いと感じる。技巧寄り志向に傾き過ぎて表現力が欠如してしまわないように、その警鐘の意味もあるのかもしれない。
アンコールは、ショパンのピアノ協奏曲第2番の第2楽章を高橋多佳子さん流にソロバージョンに編曲して演奏、あぁ、オーケストラとの共演とはまた違った魅力がある。むむ、この楽譜を出版してくれないしから、なんて思っちゃったりも(笑)
更にはラフマニノフのパガニーニ狂詩曲の第18変奏曲、これはとあるお客様がアレンジしたものだとか。非常にドラマチックで、それでいてスッと筋の入った一本の旋律とそれに絡み合うハーモニーが心に染み通る、本当に素晴らしいアンコールだった。(最近、高橋さんのコンサートではこのアンコールが定番になっているようだ)
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2時間ちょっとのひとときはあっと言う間であった。コンサート後、お待ちかねのサイン会があり、いそいそと楽譜とCDを持って並んだのはいうまでもない。そしていざ高橋さんと目があうと「あら、夏の所沢(のショパン講座)にもいらっしゃいましたよね」と高橋さん。うわっ、平々凡々な私を覚えていてくださるとは、このうえなき感激である(実は、この後、家族から「おまえ、会場で何かやらかしたのか」と指摘されたりもしたのだが・・・)。私の後ろに並んでいた女性も、高橋さんのお知り合いだったようにお見受けする。
高橋さんの演奏はもとより、人柄に惹かれて、またコンサートに足を運んでしまう、きっとそんな人は多いはず。
本当に、本当に素敵なクリスマスコンサートのひとときであった。
帰りの車のなかでも、サインして頂いた「アンダンテスピアナートと華麗と華麗なる大ポロネーズ」の楽譜を握りしめながら「幸せ!!(ここにハートマーク)」を連発する私がそこにいた。普段クラシックを聴かない家族も「クラシックのコンサートってもっと堅苦しいものなのかな、と思っていたら、結構楽しいんだね」とまんざらでもない様子。
こうしてパワーも頂いたことだし、また明日からはりきってピアノに向かおう、そう決意した。
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