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2024年12月02日

蒼い華十五

テーマ：二次創作小説(1054)

カテゴリ： PEACEMAKER鐵韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華

「PEACEMAKER鐵」二次創作です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。

「久しいな、歳三。もっと近くで顔を見せてくれ。」
「は、はぁ・・」
目の前で玉座に座っているこの男と、自分が顔を合わせるのは数える程度だったな―歳三がそんな事を思いながら王を見ていると、彼は徐に玉座から立ち上がり、歳三の元へとやって来た。
「お前をこうして王宮へ呼んだのは、お前に頼みがあるからだ。どうだ、世子の代わりにお前が世子にならぬか？」
「断る。用件が終わったのならもう帰っても良いか？」
「お前をここから出す訳にはいかぬ。お前はここで、わたしと暮らすのだ。」
王はそう言って、冷たい目で歳三を見た。
（歳三様、遅いなぁ・・）

「何ですか、あなた達は！？」
「ここに総司という娘が居るだろう、早くその娘を差し出せ！」
「総司は、わたしですが、何の用でしょうか？」
「王様がお前をお呼びだ、我等と共に来て貰おうか。」
「え？」
訳がわからぬまま、総司は王宮へと連れて行かれた。
―なんだ、あの輿は？
―もしかして、世子様の新しい側室かな？
―まさか！
―噂だと、世子様は原因不明の病に倒れられたらしいが、仮病だとか・・
―仮病、ねぇ・・

総司を乗せた輿を見た人々は、そんな事を言いながら仕事をしていた。
やがて、その輿は王宮の中へと入った。
「さぁ、降りて。」
「は、はい・・」
長時間輿に揺られ、総司が覚束ない足取りで輿から降りると、目の前には美しい装飾を施された宮殿があった。

「そうか、入れ。」
扉の向こうで美しく澄んだ声がした後、宮殿の扉が開かれ、総司は東宮殿の女官と共に宮殿の中へと入った。
そこには、一人の青年の姿があった。
「お前が、例の娘か？」
「はい・・あの、貴方は誰なんですか？」
「まぁ、世子様に対して何と無礼な！」
「はは、そのような事を言われるのは当然だな。この国の民は、日々の生活を送るのに精一杯で、王や余の顔などわからぬなど、当然の事だ。：
そう言った青年は、切れ長の金の瞳で総司を見た。
この青年こそが、この国の次期国王・ユン王子だった。
「そなたと、一度は会いたいと思っていた。」
「え？」
「そなたは、都一、いやこの国一の名妓と謳われる程の妓生だったとか。」
「何処で、そのような話を？」
「余は色々と知り合いが多くてな。そなたの事は、妓楼で聞いている。」
「まぁ・・」
「そなたは、ある男に身請けされたと聞く。それは本当なのか？」
「は、はい・・」
（一体、この人は何を言いたいんだろう？）
「あ、あの・・一体、どうしてわたしをここへ連れて来たのですか？」
「そなた、わたしの妃にならぬか？」
「それは、お断り致します。わたしには、心が決めた方がおります。その方は・・」
「わたしの、兄上か？」
「え？」
「今まで知らなかったのか？そなたを身請けしたのは―」
「総司、無事か！？」
部屋の扉が乱暴に開かれ、歳三が中に入って来た。
「てめぇ、一体どういうつもりだっ！」
「そんなに怒らなくても良いでしょう、兄上。」
まるで自分に威嚇するかのように歯を剥き出しにし、鋭い目で自分を睨んで来る歳三に対し、ユン王子は涼しい顔をして笑みまで浮かべていた。
「さっきから話を聞いていたが、総司をてめぇの妃にはさせねぇ、こいつは俺の妻だ！」
「そうか。では兄上、わたしも総司さんを諦めるつもりはありません。」
「何だとぉ！？」
「二人共、喧嘩は止めて下さいっ！」
「一体何の騒ぎです？」
歳三とユン王子が総司を間に挟んで言い争っていると、そこへユン王子の母・アン王妃がやって来た。
「これはこれは母上。ご機嫌麗しゅう・・」
「ユン、病状は回復したそうね。良かったわ。」
アン王妃は、そう言うとユン王子に優しく微笑んだ。
「王妃様、お久し振りでございます・・」
「あら、本当にここへ来たのね・・汚らわしい妓生の子の癖にっ！」
アン王妃の言葉は、まるで見えない鞭のように歳三の心を打った。
「総司、帰るぞ。」
「は、はい・・」
「勝手にここを出ていく事はわたしが許しません。」
「俺と総司は、勝手にここへ連れて来られたのですよ。出て行くのも、好きにさせて貰います。」
歳三は、そう言うと総司の手を握って東宮殿から出ようとしたが、たちまち兵士達に二人は取り囲まれた。
「お前達は、王宮で暮らすのです。」
「どうして、そんな・・」
「それは、王様がお決めになった事です。勝手にお前達がここから出る事は、このわたしが許しません！」
王宮でそんな騒動が起きている頃、土方家では信とユン氏が向かい合う形で座っていた。
「わたしに話とは何でしょうか、お母様？」
「歳三・・あの一族の厄介者が、王宮で暮らす事になったそうですよ、王族としてね。」
「まぁ、それは良かったじゃありませんか。」
「良くないわよ！今まで軽んじてきたあいつが、わたし達よりも身分が上になるなんて、許せないわ！」
「何を怒っているの、お母様？あの子がどんな人生を送ろうが、わたし達には何の関係もないわ。」
「信、あなたって子は・・」
「話が終わったのなら、わたしはこれで失礼致します。」
信はそう言うと、ユン氏の部屋から出て行った。
「待ちなさい、まだわたしの話は終わっていないわよっ！」
ユン氏の金切り声を背に受けながら、信は自室に戻った。
「お嬢様、どうかなさいましたか？」
「ごめんなさい、暫く一人にして貰えないかしら？」
「はい・・」

侍女が去った後、信は深い溜息を吐いた。