じゃくの音楽日記帳

じゃくの音楽日記帳

2010.08.12
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(これはすぐ前の記事の続きです。)

休憩の終わり頃にホール内に戻ってみると、オケの入場にさきがけて、合唱団が先にはいってきていました。通常通りP席部分で、前の方に児童合唱、後方に女声合唱が座りました。そしてオケが入場し、そのあと独唱者とともに指揮者が入場してきました。当然のように盛大な拍手がわきおこりました。(というより、関係者が舞台裏から拍手を始めていました。)ま、休憩後ですからこの拍手は仕方ないといったところでしょう。そして独唱者は指揮者のすぐ左の位置に立ちました。

第4楽章。ここではコンマスのソロが、深みのあるいい演奏でした。先行楽章のソロはやや不調だったのですが、休憩で気持ちが切り替えられたのか、とても良かったです。

第5楽章、合唱がしっかりしていて好演でした。そして前述したチューブラーベルの位置がユニークであることに、このとき初めて気が付きました。細かなことですが、以下に書いておきます。

以前の記事にも書いたように、この曲のスコアには、第5楽章の冒頭に、チューブラーベルと児童合唱を高い位置で、と明白に指定されています。しかしこの指定を守る指揮者は、コバケンや、三河/小田原フィルなどのごくごく少数派で、ほとんどの演奏では普通にステージ上に他の打楽器と同じような位置に置かれて演奏されてしまいます。今回も、演奏前に見たときには、ステージの雛壇の一番後ろの段に、他の打楽器と並んで配置されているだけのように見えたので、ごく普通の方法だな、と思っていました。しかし第5楽章が始まっていざチューブラーベルが叩かれ始めたのを見ると、チューブラーベルの位置が妙に高いことに気が付きました。当然、ベルを叩く奏者の位置も妙に高いです。僕の席は1階の真ん中あたりだったんですが、そこから見ると、他の打楽器奏者の頭の位置よりも、ベルの奏者の頭は身の丈半分ほど高いところに位置していました。(丁度、ベルの奏者の頭が、P席最前列の児童合唱の頭の高さと他の打楽器奏者の頭の高さの中程あたりに位置していました。)

このあたりのことを確かめるために、演奏が終わってから舞台に近づいて見てみると、チューブラーベルは、ステージの雛壇の一番後ろの段の上に、通常よりもかなり高く設置されていました。そしてそこには、ベルを叩く奏者が登るための2段の段が置かれていました。チューブラーベルを良く見ると、1本がかなり長くて、このくらいの高さがないと、床につっかえてしまい吊せない状態であったことがわかりました。

シュピーラーさんが果たしてスコアの指定に従うためにベルを高く配置したのか、それともただ単に長い1本を吊り下げるために高くしたのかはわかりませんが、結果的にはスコアの指定にやや近づく(児童合唱の高さに近づく)配置となった(^^;)わけでした。

第4、第5、第6楽章はスコアの指定通りアタッカで演奏されました。

ここでもうひとつ細かなことですが、いつもどおり、声楽陣の起立・着席のタイミングについても書いておきます。今回、特別な工夫は何もなく、普通に、第4楽章が終わるとすぐに合唱団を立たせ、第5楽章が終わるとすぐに声楽陣全員(合唱、独唱とも)を着席させるというシンプルな方法でした。この方法、シンプルではありますが、第4楽章の終了とともに合唱団が起立、というのは良くみかける一方で、第5楽章の終了とともにすぐ着席、というのはかなり珍しいです。



さて今回は、第5楽章が終わってすぐの着席ですから、終楽章が開始される重要な瞬間に、やはり多少なりとも視覚的あるいは聴覚的なノイズが発生しました。しかし今回は不思議にも、そのノイズがほとんど気になりませんでした。着席によって生ずるノイズが、音楽の流れを妨げる感じがせず、ノイズを含んだその場全体が、音楽の世界に自然に溶けこんでいるような感じでした。こんなことは滅多にない体験です。このシュピーラーさん、相当すごい人なんじゃないかと思います。

第6楽章。ゆったりとしたテンポで、しなやかに雄大に、マーラーの音楽が歌い上げられていきます。途中からはもうすっかりシュピーラーさんの音楽に身を任せ、安心して音楽にどっぷりと浸ることができました。オケの頑張りも見事で、素晴らしい3番でした。

このオーケストラ、弦の音が明るくて素敵でした。特にチェロは、アマオケとしてかなりの美音でした。一方管は、細かなところの正確さにはやや乏しかったですが、総じて雰囲気は良かったです。なかでもトロンボーン隊は、かなり力があって良かったです。またトランペット隊も最後まで本当に頑張っていて、明るい良い音色で聴かせてくれました。

蛇足ながら、トランペット隊5人のカーテンコール時にシュピーラーさんは、1番ラッパを吹いた奏者(むかって一番右側)を立たせるより先に、右から5番目(向かって一番左側)の奏者をまず立たせていましたので、この方がポストホルンパートを吹かれた方だと思います。会場でブラボーをいいそびれたので、この場を借りてブラボーです!

ホルン隊はややパワー不足のところを、人数を増やすことで補っていました。すなわち曲の指定は8人ですが、プログラムには12人出演!とありました。実際に舞台上に12人いたかどうかははっきり視認できませんでしたが、少なくとも10人はいたようでした。これはホルンをパワーアップするために賢明な措置だったと思います。

それにしても指揮のシュピーラーさん、いい意味で職人気質かな、と思います。これだけのマーラ演奏をやってしまう人なので、おそらく、マーラーに相当こだわりを持っていると思います。しかし、憶測ですがこのシュピーラーさんは、そのこだわりを無理に押し通さず、実際面(演奏者の技術面など)と突き合わせ、現実的に一番いい音楽ができる方法をとったのではないでしょうか。曲半ばでの途中休憩しかり(理想的には休憩を入れたくないが、休憩を入れることでオケの調子を整えられるし、合唱団の入場もしやすくなるメリットあり)、声楽陣の起立・着席のタイミングしかり(シンプルにすることで合唱団が歌唱に集中しやすくなる?)、またホルンの増員しかりです。

フィルハーモニックアンサンブル管弦楽団は、もちろんアマオケですから、出てくる音としては気になるところはいろいろあります。でも、今日のような演奏を聴くと、そんなことはまったく小さいことだとつくづく思います。音そのものは、もちろん大事です。少しでも良い音の方がいい。しかし音楽にはそれよりももっとずっと、大事なことがある。音の背後の意味を響かせようとする思いが、指揮者とオケにあるかどうかで、音楽って決定的に違ってくるのだなぁと、あらためて感じます。そのような意味で、きょうの演奏は本当に素晴らしかった。

プログラムをみると、このオケは芸術顧問が小松一彦氏ということです。これまでにマーラーを、小松氏とは3番と5番を演奏しています。そして近年のマーラーは、コバケンと2番を3回演奏していて、なんと、うち1回はウィーンで(2007年)、もう1回はコンセルトヘボウで(2009年)演奏しているというのですから、驚きです!なるほど小松氏やコバケンの薫陶があるからこそ、マーラーの音楽にこのように共感し、その意図をひたむきに表現しようと志向するオケなのかと、納得させられました。素晴らしい3番演奏を、ありがとうございました。



なお、これまでのマーラー3番演奏会の記事の一覧をあげておきます。

2009/11/ 8 三河/小田原フィル (小田原)
2009/11/28 井上道義/OEK&新日フィル (金沢)
2009/11/29 井上道義/OEK&新日フィル (富山)
2010/ 3/30 インバル/都響 (サントリー)
2010/ 3/31 インバル/都響 (サントリー)
2010/ 4/23 金/神奈川フィル (横浜)
2010/ 5/ 4 齊藤/水星響 (東京文化会館)

このうちチューブラーベルの配置については、主に
三河/小田原フィル(小田原) 井上道義/OEK&新日フィル(金沢) を、
第三楽章の練習番号30,31の楽節については、主に
井上道義/OEK&新日フィル(金沢) および インバル/都響(3/30) を、
ご参照ください。





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Last updated  2010.08.13 02:45:01
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