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今月上旬に松戸市内でルリビタキの姿を目撃したとニュースをもらいました。そろそろ、手賀沼沿岸の林などで姿を見かける時期となりました。図鑑類に四国・本州から北海道にかけての高山や亜高山帯で繁殖するものが、関東地方以南の山地や低地の林で越冬する、本州において高山で繁殖した個体は、低地に降りて越冬するとありますが、渡りのルートの裏付けはどうかと調べてみても限られた標識回収記録が存在するだけでした。文献を紐解いていくと、つぎのようなものを見つけました。参考までに紹介します。佐藤(1994)は、北海道函館山で標識放鳥した調査結果を整理し報告しています。函館山では繁殖も越冬もしないため渡る経路の中継地として積極的に選択し、渡りの時期に多くの個体が函館山を通過していると述べています。また、ルリビタキの秋季渡りは10月中下旬に始まりII月中旬にほぼ終わり、10月下旬~11月上旬が最盛期と記しています。さらに、本種が海岸伝いを東から西に移動しているためではないかと思われるとも述べています。調査結果から秋季の渡りについては日本海側を主経路として渡りをしていると思われ、その移動は、北~南への平行的なものであることを意味していると結んでいます。過去の回収記録はつぎの3例を報告しています。函館山放鳥023-0429581-10-27→82-02-06宮崎県南国市桑の川函館山放鳥1A-1172489-10-21→89-10-28山形県酒田市飛島函館山放鳥28-0681689-11-01→89-12-14愛知県豊田市長根なお、森本(2007)がルリビタキの分布や生息環境の知見を整理し報告している中で、「日本で記録されている亜種ルリビタキ(T.c.cyanurus)は日本、中国、モンゴル、ロシア等で繁殖し、この中でも北方の個体群は越冬期は南下、拡散する」と記しています。また、「北海道などでは夏鳥であるため、北海道を通過する個体群は比較的長距離を移動する」と報告しています。(引用)佐藤理夫.1994.函館市における鳥類の渡りについて.市立函館博物館研究紀要.第4号.p1-23.森本 元.2007.ルリビタキ.Bird Research News Vol.4 No.4.p3-4.(写真)2015年12月12日手賀沼沿岸、2018年1月28日野田市内、2020年1月12日松戸市内、2021年2月8日松戸市内で観察・撮影
2024.11.20
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ハンノキやヤシャブシの種子を好んで食べるマヒワ、実につかまり逆さになって種子をつまみ出す姿に出会うと釘付けになります。雄は顔から体下面が黄色で額から頭頂、目先、喉が黒く、雌は全体に黄色味が薄く下面が白くて褐色の斑があるアトリ類です。多くのファンが存在しますが、日本への飛来は規則性がなく、群れで観察できた年、まったく見かけない年といろいろです。(マヒワの飛来には木の実をなり具合が影響する)バードリサーチ(2011)は、2011年の冬鳥の観察記録をなり整理し報告しています。その中で「マヒワは本州中部以北の山地帯でも少数が繁殖していますが、日本に飛来するマヒワの繁殖地がどこか良くわかっていません。しかし、ともすると今冬の少なさは、食物の関係で日本から遥か離れた場所で繁殖したために越冬地が変わり、本州以南へはほとんど飛来しなかったのかもしれません。今冬のマヒワの状況は,日本の森林にマヒワの食物となる木の実が少なかったために、秋に渡ってきたものの素通りしてさらに南へ移動した可能性も考えられます」と報告しています。その後、バードリサーチ(2024)が、2023年から2024年冬の小鳥たちの観察記録を整理し報告しています。その中でマヒワについて、「マヒワの情報件数は近年減少傾向でしたので、繁殖環境が悪化して繁殖成功率が低下しているのかもしれないと懸念していましたが、23年冬は21年冬や22 年冬よりも多くの情報が寄せられました」と述べています。ただし、多くの情報が寄せられた要因については触れられていません。木の実は豊作傾向と聞いていますから、晩秋から冬にかけてその姿と出会えたらいいのにと思っています。フィールドを探索する際には、大好きな杉の実、ハンノキ、松の木などを注目してみようと思っています。(引用)バードリサーチ.2011.2011年冬鳥ウオッチ.pp6バードリサーチ.2024.2023年冬⿃ウォッチ.pp4.(写真)2019年10月20日柏市内、2011年2月14日柏市内で観察・撮影
2024.11.17
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鳥友から今年も手賀沼にミサゴの姿が見られるようになったが、いつ頃から秋・冬に滞在するようになったのかと質問をもらいました。(1880年代から2000年までの手賀沼の猛禽類)文献を振り返ると、我孫子市(1995)に1880年代に手賀沼で記録されたワシタカ目の鳥類はオジロワシのみ、1959年から1969年の間ではトビ、クマタカ、チュウヒ、ハヤブサの4種の記録があると報告があるのみです、ところが、1970年から1980年代になるとワシタカ類の種類は非常に増加しミサゴ、トビ、オオワシ、ツミ、オオタカ、ノスリ、サシバ、チュウヒ、ハヤブサ、チョウゲンボウの10種の記録があると記され、ミサゴについては1977年以降断続的に記録があると報告されています。また、我孫子市(1995)が引用した手賀沼の記録に原典と思われる手賀沼の鳥(1994)に1977年9月11日現在の柏市大井新田先の手賀沼、1978年9月10日同地で観察記録があると記されています。ただし、1981年1月までは断続的に観察されたものでした。ところが、1985年9月以降2001年までは9月から12月の期間に滞在と思われる報告があり、さらに2002年以降では翌年3月ごろまで滞在と思われる観察報告が寄せられています。(2001年以降の手賀沼でのミサゴの観察記録)2001年以降になると、1月から4月、8月から12月の間で姿が観察されています。しかも、2003年10月には沼で魚を捕獲し水面の杭に止まって食べている姿が目撃されています。2000年から運用が開始された北千葉導水路による利根川の水の沼への導水により、水位が上昇するとともに沼に放流されているコイやぎんぶな等が増殖したなどにより、ミサゴの餌場としての条件が揃ったものと思われます。千葉県(2011)が県内のミサゴについて数少ない旅鳥または冬鳥と報告していることを考えると、繁殖期を除く期間に滞在しているのは貴重な記録と言えます。(引用)手賀沼の鳥.1994.20年の観察記録.p26.我孫子野鳥を守る会.我孫子市.1995.我孫子市自然環境調査 鳥類調査報告書.p81.千葉県.レッドデータブック鳥類.p30-124.千葉県生物多様性センター.(写真)2021年1月2日、2019年11月10日、2018年10月7日いずれも手賀沼で撮影
2024.11.15
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そろそろ、ツグミが渡来する時期となりました。埼玉県草加市に住んでいる鳥友から市の刊行物にツグミの滞在期間が短くなっている(*)と説明があったが柏市、手賀沼と周辺地域ではどうかと質問をもらいました。手元の観察記録を振り返り、柏市でのツグミの滞在期間を掲載してみました。(柏市でのツグミの滞在期間:初認から終認日までの日数)2000-2001滞在143日、2001-2002滞在160日、2002-2003滞在178日、2003-2004滞在160日、2004-2015滞在182日、2005-2006滞在173日、2006-2007滞在167日、2007-2008滞在174日、2008-2009滞在164日、2009-2010滞在172年、2010-2011滞在178日、2011-2012滞在162日、2012-2013滞在185日、2013-2014滞在163日、2014-2015滞在169日、2015-2016滞在161日、2016-2017滞在153日、2017-2018滞在152日、2018-2019滞在142日、2019-2020滞在161日、2020-2021滞在160日、2021-2022滞在131日、2022-2023滞在133日、2023-2024滞在165日最も長い期間滞在した年:2004-2005の182日最も短かったか年:2021-2022の131日最も長い年と最も短い年を比較すると51日短く(71%)なっています。(いつ頃から温暖化が顕著となったか)気象庁がホームベージで公表している内容を見てみると、つぎのように記されています。「2000年前後から2010年代前半にかけて世界の平均気温上昇は停滞しましたが、その後は急激に上昇し、2016年から2020年の5年間は、1850年以降で最も高くなったとみられています(IPCC, 2021)」(温暖化が顕著となった2016年から2020年と2000年から2010年の気温上昇が停滞した期間)温暖化が顕著となった2016年から2020年でのツグミの滞在期間は平均147日、気温上昇が停滞した2000年から2010年でのツグミの滞在期間は平均167日で、約20日短くなっています。(吉川市の報告しているとの比較)鳥友から閲覧した資料の提供をしてもらい、内容に目を通すとつぎのように記載されていました。「最近では気候変動の影響で冬が暖かくなってきているため、ツグミの日本での滞在期間が短くなってきているようです。23年間で40日以上も短くなったと言われています」(そうかいきものだより2023年11月第26号.p2)柏市でのツグミの滞在期間に注目してみると、最も長い期間滞在した年:2004-2005の182日、最も短かったか年:2021-2022の131日で、最も長い年と最も短い年を比較すると51日短く(71%)なっています。柏市での滞在期間が吉川市よりもさらに短くなっていると言えます。(写真)2023年12月20日柏市内で撮影
2024.11.11
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和田(2016)は、潜る水面採食ガモについて研究者の報告を整理し報告しています。水面採食ガモの体は浮かび方や脚のつく位置も潜水ガモと違い、潜水用にできているとは思えないのに、水面に浮かんだ姿勢のまま翼をふるわせて水しぶきをあげて潜水すると述べ、弾みをつけて水しぶきを立てず潜るキンクロハジロとはまったく異なると記しています。つぎに和田(2016)が報告している潜水時間、どうして潜るのかについて述べいる内容を紹介します。(潜水時間について)潜水時間に着目すると、マガモで2~12秒(平均5.8秒)、コガモで2~8秒とホシハジロやキンクロハジロが10秒以上潜水することが多いのと比べるととても短いと報告しています。(どうして潜るのか)潜る理由は、捕食者からの回避、採食の2つがあげられると記しています。コガモでは浮かんできてから採ってきた藻類を食べていたのが観察され、潜水したマガモの80%が二枚貝を採食していたと述べています。しかし、いつも潜っているわけではなく、食物が乏しくなる厳冬期に潜水して二枚貝を食べるようになる可能性を指摘しています。(水面採食ガモと潜水採食ガモについて)氏原(2015)は、カモ類は水面採食ガモと潜水採食ガモに大別されるが、それは採食方法の違いでの表現であり、以前淡水ガモ、海ガモとの表現では海ガモてでも淡水を好む種もいるし海に浮かぶ淡水ガモがよく見られるので言い方を変更しているのが一般的と指摘しています。また、水面採食ガモと潜水採食ガモの違いについて、水面採食ガモは足が体のほぼ中央にありバランスが良い、潜水採食ガモは足がより体の後部にあるため体が立ち気味となっていると説明をしています。(柏の葉公園で観察したオカヨシガモとオナガガモの採食について)2021年1月5日に柏市柏の葉公園で30羽ものオカヨシガモの集団が池の水面で逆立ちをして水底で採食している光景を目撃しました。以降、同年11月にも同じ光景を観察しました。また、オナガガモも2021年1月5日に同様の行動をしていました。写真でわかりずらさがあると思いますが、池の底に付着していた藻を嘴で剥がし取るように採食していたことがわかりました。和田(2016)がコガモが藻類を食べていたと報告していると同様でした。ただし、その後は大雨の影響などの要因で藻の生育が不良となったのか同様の光景は見かけていません。(引用)和田岳.2016.身近な鳥からの鳥類学.第30回潜る水面採食ガモ.むくどり通信第241号.日本野鳥の会大阪支部報.2016年1-2月号.氏原巨雄・氏原道昭.2015.日本のカモ識別図鑑.p29.文一総合出版.(写真)オカヨシガモ一枚目:2021年11月18日、二枚目:2022年1月5日、三枚目2022年2月19日、オナガガモ:2022年1月5日いずれも柏市柏の葉公園にて観察・撮影
2024.11.09
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そろそろ、カシラダカの姿を目撃する時期となります。過日の読書会で鳥友たちと山階鳥類研究所著「足環をつけた鳥たちが教えてくれること」の中でメンバーの注目を集めたのが、尾崎(2024)が報告している「激減するカシラダカに何が起きている」でした。1980年には標識調査で捕獲された67000羽のうち、カシラダカが18000羽(27%)を占めていたが、2017年には約4000羽と激減したと報告されています。また、北欧フィンランドとスウェーデン、日本の双方で1985年からの30年間に75~87%減少していることが判明したと記しています。2017年以降は、山崎・平野(2023)が野鳥の個体数を調査している情報を使って分析したところ、個体数は有意に減少していると判定され、今もなお個体数は減少し続けている可能性があると指摘しています。また、その要因は、カシラダカの群れが越冬していた場所の中には,草地が縮⼩し数も減少している場所もあると報告しています。(手賀沼沿岸でのカシラダカ)1972年から2024年の間の手賀沼と周辺地域におけるカシラダカの観察記録を振り返ると、2001年1月28日降雪の影響で30羽の群れを観察した以外は10羽未満の観察であり、遊歩道脇にわずかに残されている水田環境がほとんどで採食環境が乏しいことを表していると言うことができます。これに対して、隣接する茨城県菅生沼では2023年2月8日に250羽のカシラダカが葦原の中に降り立った光景を観察しています。また、上村(1989)が千葉県野田市と流山市の境にある調査地で約400羽のカシラダカを観察したと報告しています。いずれも、カシラダカが草の種子を食べることができる環境と群れが退避できる林が残っており、手賀沼と周辺地域との違いとなっていると思われます。(引用)上村 孝.1989.越冬カシラダカ群中にみられる鳥.Strix第8巻.p292-293.日本野鳥の会.⼭﨑優佑・平野敏明.2023.2023年冬⿃ウォッチ.https://www.bird-research.jp/1_katsudo/fuyudori/img/fuyudori2023.pdf尾崎清明.2024.激減するカシラダカに何が起きている?.足環をつけた鳥たちが教えてくれること.p100-103.山階鳥類研究所著.山と渓谷社.(写真)一枚目:2016年12月18日手賀沼沿岸、二枚目:2018年1月28日野田市、三枚目:2017年1月28日流山市撮影
2024.11.07
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バードリサーチが実施しているベランダバードウォッチは、身近な鳥たちの年ごとの変動を記録し報告しています。2014年冬の報告に冬季に全国的に生息し個体数も多い冬鳥のツグミとシロハラを対象に記録率と記録個体数の年変動を取り上げて報告しています。2014年冬は、住宅地にツグミが多かったと述べています。報告のうち、ツグミとシロハラは少なくとも2009年以降は1年毎に記録率が変動し、それが個体数の変動とも関係していたと言えそうだと記されています。2015年冬から2023年冬のベランダウオッチの報告のツグミに関する記述を整理し仮説との関係を整理してみました。今冬は、1年毎に変動する仮説通りならば多い年ですが、さて。(仮説)多い年:2016年、2018年、2020年、2022年少ない年:2015年、2017年、2019年、2021年、2023年(2015年から2023年冬のツグミの記録)2015年から2023年冬のベランダウォッチの報告を振り返ると、多かった年:2016年、2019年、2020年、2023年少なかった年:2015年、2017年、2018年、2021年、2022年と整理できます。植物の種子の豊凶、ベランダバードウォッチの調査地の多くは市街地付近に位置し郊外の林や農耕地には木の実や植物の種子が多くあった等の要因で市街地付近を利用しなかった可能性などにより、仮説通りにならなかった可能性があります。(年ごとのツグミの記録について)2015年はピーク時の記録が低い2016年は2015年に比較して顕著に高かった。2017年は2016年冬より低い2017年冬:16年冬より低いが、1月下旬や2月上旬に記録率が一時的に高くなった。2018年冬:11月下旬から1月上旬の記録率が低く、1月下旬に17年冬より一時的に高くなったなったが、その後は17年冬より低い。2019年冬:19年冬の方が 18年冬より記録個体数がやや多い傾向にあった。2020年冬:20年の方がやや高い傾向で、12月中旬から2月上旬には19年より記録率がやや高くなった。2021年冬:身近な環境に生息する冬鳥は予想に反して個体数が少なかった。2022年冬:2020年冬などと比べると記録率や記録個体数がやや少ない傾向だった。2023年冬:渡来数は23年冬では22年冬よりやや多かった。(引用)バードリサーチ.2023~2014冬のベランダバードウォッチ報告.バードリサーチ・日本野鳥の会栃木.(写真)2010年2月18日柏市内、2022年2月26日柏市内
2024.11.03
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宮城県伊豆沼に9月22日マガン6羽が飛来が観察され、10月25日現在92000羽超のガン類が飛来していると鳥友から便りをもらいました。越冬期のマガンの食物内容はどうなっているのか、春の渡りの中継地ではとげうなさているか文献に目を通し、鳥友とも情報交換をしました。(越冬地での食性)嶋田・鈴木・石田(2002)は、糞分析法をもちいてマガンの食物内容の季節変化を調査した結果を報告しています。マガンの採食行動の活性は早朝から10時ごろまで高く,11時から14時まで一度低下した後15時から夕方にかけて再び増加したと報告しています。マガンの糞内容物は、10~1月にかけてどの月もモミの削合がもっとも高く、全体の40.0~53.8%を占め、イネの葉と単子葉類、双子葉類の葉の占める割合は26.0~47.0%であり,イネ葉の割合の減少にともなって単子葉類と双子葉類の割合が増加する傾向が認められたと記しています。また、糞にはどの月もある一定の割合で草本類が含まれており、タンパク質を含むいろいろな栄養素を含む草本類を積極的に摂食している可能性があると指摘しています。また、積雪のためモミが採食できなくなり、畔などの草本類に食物が移行すると採食時間は増加したことが判明したとも述べています。(春の渡りの中継地での食性)先日、北海道の鳥友と情報交換していたら、春に美唄市宮島沼周辺や十勝地方で見かける個体では、下腹部のふくらみのある個体を多く見かけると教えてもらいました。ガン類が植食性ですが、春の中継地で多大なエネルギー摂取を必要とするので小麦の葉を摂取するのだそうです。質の高い食物を大量に摂取する採食し下腹部に脂肪を蓄えるのだそうです。下腹部が膨らんでいる個体が目撃されるのはこのためです。(引用)嶋田哲郎・鈴木康.石田みつる.2002.糞分析法による越冬期のマガンの食性.Strix第20巻.p137-141.日本野鳥の会.(写真)2023年12月7日伊豆沼沿岸、2014年12月14日伊豆沼沿岸
2024.11.01
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宮城県伊豆沼に9月22日マガン6羽が飛来が観察され、10月25日現在92000羽超のガン類が飛来していると鳥友から便りをもらいました。越冬期のマガンの食物内容はどうなっているのか、春の渡りの中継地ではとげうなさているか文献に目を通し、鳥友とも情報交換をしました。(越冬地での食性)嶋田・鈴木・石田(2002)は、糞分析法をもちいてマガンの食物内容の季節変化を調査した結果を報告しています。マガンの採食行動の活性は早朝から10時ごろまで高く,11時から14時まで一度低下した後15時から夕方にかけて再び増加したと報告しています。マガンの糞内容物は、10~1月にかけてどの月もモミの削合がもっとも高く、全体の40.0~53.8%を占め、イネの葉と単子葉類、双子葉類の葉の占める割合は26.0~47.0%であり,イネ葉の割合の減少にともなって単子葉類と双子葉類の割合が増加する傾向が認められたと記しています。また、糞にはどの月もある一定の割合で草本類が含まれており、タンパク質を含むいろいろな栄養素を含む草本類を積極的に摂食している可能性があると指摘しています。また、積雪のためモミが採食できなくなり、畔などの草本類に食物が移行すると採食時間は増加したことが判明したとも述べています。(春の渡りの中継地での食性)先日、北海道の鳥友と情報交換していたら、春に美唄市宮島沼周辺や十勝地方で見かける個体では、下腹部のふくらみのある個体を多く見かけると教えてもらいました。ガン類が植食性ですが、春の中継地で多大なエネルギー摂取を必要とするので小麦の葉を摂取するのだそうです。質の高い食物を大量に摂取する採食し下腹部に脂肪を蓄えるのだそうです。下腹部が膨らんでいる個体が目撃されるのはこのためです。(引用)嶋田哲郎・鈴木康.石田みつる.2002.糞分析法による越冬期のマガンの食性.Strix第20巻.p137-141.日本野鳥の会.(写真)2023年12月7日伊豆沼沿岸、2014年12月14日伊豆沼沿岸
2024.11.01
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昨日、吉川美南でハシビロガモの水面採食を観察しました。以前、探鳥会リーダーが「ハシビロガモは水面採餌ガモ類でも濾過機能の優れた嘴を持っていて、表層水を濾過し動物プランクトンを主に採餌します」とガイドしてくれたことを思い出しました。石田(2015)をはじめとする文献が、ハシビロガモについて「群れでくるくる回って水面採食する行動がみられる。集団で渦をつくってプランクトンや植物の種子などを渦の中に集め効率的に採食する行動で渦巻き採食と呼ばれる」と述べていることが背景にあるものと思われます。しかし、消化器官から動物プランクトンが検出された事例はほとんどないとされます。それは、文献をふりかえってみました。松原(1992)は、ハシビロガモの摂食行動と飛来する湖沼の動物プランクトンの季節変動などの関連はどうか等の食性を再検討する目的で調査を行い、結果を報告しています。調査は1991年3月1日から31日の期間で行われ、捕獲から消化器官の内容物摘出までの処理を行ったものと述べています。捕獲した7羽のうち、羽の胃内容はほとんど橈脚類(ききゃくるい:浮遊生物ケンミジンコ)によって占められており、その他の3羽からも橈脚類の断片が多数検出され、輪虫類(ワムシと呼ばれる水中の微小動物)、線虫類(長さ0.2から5mm程度の線形の小さな動物)に属すると思われるものが検出されたと記されています。また、植物性のものでは付着性の糸状緑藻が4羽から検出されたと報告しています。(消化器官から動物プランクトンが検出された事例はほとんどない要因)松原(1992)が報告するように、動物プランクトンを摂取しているのに消化器官から検出された事例がほとんどない要因は、つぎのような可能性があります。(1)捕獲対象の群れが採餌を開始して間もない群れで餌が食道内に蓄積されなかった(2)動物プランクトンの密度が低く摂取されたものがすぐに消化されてしまっていた(引用)松原健司.1992.手賀沼におけるハシビロガモの消化管内容物.日本陸水学雑誌 53巻.p373-377.石田光史.2015.野鳥図鑑.p44.ナツメ社.(写真)1枚目:2024年10月29日吉川市吉川美南2枚目:2015年1月10日、3枚目2019年2月28日、4枚目:2022年1月30日いずれも成田市
2024.10.30
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閲覧しているブログに10月23日茨城県涸沼にてミヤマガラスを観察したと記事があり、その後25日流山市で私共がミヤマガラスを観察しました。渡りのルートがどうなっているかと文献に目を通してみました。(西日本から東進し拡大した時代と北日本から太平洋側に拡大した時代)高木(2010)が、ミヤマガラスは1970年代には主に九州地方に渡ってくる冬鳥として知られていたが、越冬地は1980年代に中国・四国地方や北陸地方へ拡大し、その後、1990年代に北日本から本州太平洋側へと拡大したと報告をしています。その後、高木ほか(2014)が東日本の渡り経路を解明するために衛星による追跡調査を行い報告しています。調査は、秋田県八郎潟でミヤマガラス20羽に装着した送信機により動きを追跡したものでした。追跡した20羽のうち11羽は日本海を渡りロシア沿岸地方に到達するまで追跡ができ、11羽のうち8羽は繁殖地に到達したことを追跡できたと報告しています。八郎潟のほか男鹿半島、能代平野に滞在したあと北上をスタートさせたと記しています。北上した個体のうち日本から渡去した地域を特定できたのは8羽で、飛び立ち地域は8羽のうち2羽が青森県津軽半島、5羽が北海道渡島半島、1羽が積丹半島だった述べています。その後、沿海地方にたどり着いた11 羽のミヤマガラスのうち、5羽はハンカ湖とアムール川にかこまれた中国黒竜江省三江平原に到達し、3羽は三江平原を越えてアムール川を遡ってロシアのブラゴヴェシェンスクの東の一帯に到達し、その地域が繁殖地と考えられる旨を報告しています。この結果から、東日本に渡来するミヤマガラスの繁殖地がこれらの地域と推定されたとの結論に至ったと結んでいます。以前は、西日本の九州地方から東に向けて分布が広がったと考えられていました。しかし、高木ほか(2014)によって大陸から渡来するミヤマガラスの繁殖地が推定され、東日本越冬個体群は西日本越冬個体群とは別に拡大した可能性が高まったと述べています。ちなみに、私が閲覧しているブログに10月23日に茨城県涸沼にてミヤマガラスを観察したとあり、その後25日流山市で私共がミヤマガラスを観察しています。大陸から同じルートで渡ってきたのかと思っています。(引用)高木憲太郎.2010.日本におけるミヤマガラスの越冬分布の拡大.Bird Research Vol. 6.pp. A13-A28.高木憲太郎・時田賢一・平岡恵美子・内田 聖・堤 朗・土方直哉・植田睦之・樋口広芳.八郎潟で越冬するミヤマガラスの渡り経路と繁殖地.日本鳥学会誌.第63巻.第2号.p317-322.(写真)2019年1月23日手賀沼沿岸で撮影、2012年11月25日流山市市内で撮影
2024.10.26
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田尻(2007)が述べているようトモエガモは、極東アジアにのみ分布.東部シベリアを中心に繁殖し、東はチュコト半島からカムチャツカ半島,西はエニセイ川流域まで.越冬地は朝鮮半島西~南岸の湖沼、中国南西部、日本では主に本州日本海側と九州北部で越冬するガンカモ科の鳥類です。近年、千葉県印旛沼にトモエガモがの大群が飛来することで知られていますが。2016年以前は姿を見かけないか、限られた個体数が記録されるのみでした。ところが、2019年以降、個体数が急激に増加しています。今シーズンの動向が注目されます。(絶滅が危惧された時代)トモエガモは、かつては環境省(2002)が報告しているように1930年前後を境に渡来数が急激に減少し、国内に飛来していたトモエガモの個体数は1000から2000羽飛来していたものが1990年代前半には300から400羽に落ち込んだと報告しています。さらに、先行きを注視する必要があるとして絶滅危惧種Ⅱに区分されました。(日本の越冬数が増加)ところが、環境省(2021)が実施したガンカモ科調査の結果、2010年ごろから数千羽以上のサイズの群れの記録が増え、神山・櫻井(2023)が報告しているように2017/18年の越冬期から急に数が増えていると述べ、最大の越冬地韓国の最近10年くらいの越冬数は毎年30-40万羽で安定しており韓国の越冬群が日本へ分散してきたのではなく、トモエガモの総数が増えたために日本の越冬数が増加した可能性を指摘しています。(印旛沼の越冬個体数)環境省(2021)は、調査地以外でも千葉県北印旛沼で毎年数千~数万羽が飛来しているとの情報もあり 、太平洋側でも飛来数の多い場所があるかもしれないと記しています。印旛沼での観察記録(私信、未発表)を振り返ると、2016年12月24日に10羽、2019年12月28日に沼で1羽、沼近郊の公園の池で38羽、2020年2月29日に636羽、2021年11月28日8988羽を観察しています。それが、2021年12月19日に3万羽を超える個体数、2022年1月13日5万羽を超える個体数、2023年12月13日64000羽の個体数を記録しています。印旛沼では2019年から2020年冬に増加傾向が見られ、2021年11月に急増しました。(他地域の動向)読売新聞(2024)が報じた記事によると、2024年1月に島根県内7か所で水鳥個体数調査の結果では2022年度より6万9043羽多い11万9458羽の野鳥をち約半分がトモエガモで、このうち宍道湖では5万8000羽だった。県によると、県内7か所のトモエガモは19年度が2羽、20年度が8002羽、21年度が000羽、22年度が4023羽で今年度の数が突出していると述べています。(読売新聞2024/01/18)(引用)環境省.2002.改訂日本の絶滅のおそれのある野生生物.p150-151.田尻浩伸.2007.トモエガモ Bird Research News Vol.4 No.12.p4-5.環境省.2021.モニタリングサイト1000 ガンカモ類調査 ニュースレター2021年10月発行.神山和夫・櫻井佳明.2023.トモエガモ全国調査がスタート.バードリサーチ 水鳥通信.2023年1月号.p1.(写真)2枚とも2024年1月27日印旛沼で撮影
2024.10.25
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今月発売された新刊「足環をつけた鳥が教えてくれること」を鳥仲間で目を通し、興味深く感じた内容について情報交換する集いを開催し、東京と福岡のユリカモメの体サイズの違いの件を紹介しました。もうひとつ注目を集めたのがフエノロジカルミスマッチについての報告でした。温暖化で気温が上がっても渡りの時期が変わらない渡り鳥が存在しており、繁殖期に子育てのための食物を確保できず個体数を減らす減少が起きています。これをフエノロジカルミスマッチと呼んでいます。澤(2024)は、出口ほか(2015)が報告しているカッコウの出現時期が晩期化している点、ツバメ、オオヨシキリ、コムクドリの出現および繁殖時期が早期化していることを紹介しています。具体的には、ツバメ、オオヨシキリ、コムクドリの成鳥および巣内雛の出現時期は国内の気温が高い年ほど早期化する傾向が見られているという内容です。また、北極圏で繁殖しているコオバシギが、フエノロジカルミスマッチの影響で食物が十分摂取できず生まれてくる幼鳥が嘴が短く体も小型化している事例、温暖化の影響で北極連で繁殖しているシギ・チドリ類の巣へのげっ歯類レミングなどによるによる捕食圧が上がっていることを紹介しています。(手賀沼とその周辺地域でのツバメの初認、オオヨシキリの初鳴き)我孫子野鳥を守る会(2024)に収録されている観察記録を振り返ると、1978年から2000年の間でツバメの初認日では、最も早かったのは1989年3月19日、最も遅かったのは1998年3月31日でした。これに対して2000年から2023年の間の観察記録を振り返ると、最も早かったのは2021年2月9日でした。なお、初認日は3月3週から4週が大半を占め、顕著に遅い年は見当たりませんでした。また、オオヨシキリの初鳴き日を見返すと、1978年から2000年の間では5月連休頃が最も多い傾向でした。対して、2020年以降に注目すると、2020年4月21日、2021年4月23日、2022年4月15日、2023年4月21日に初鳴きを観察したとの報告があります。気象庁がホームページで発表している内容によると、2021年の日本の年平均気温偏差(1991~2020年の30年平均値からの偏差)は+0.65℃(1~11月の期間から算出した速報値)で、統計を開始した1898年以降、2020年と並び、最も高い値と報告があります。前記に述べたように、外気温が高くなることとオオヨシキリの初鳴きが早くなったことには相関があるように思えます。(引用)出口智広・吉安京子・尾崎清明・佐藤文男・茂田良光・米田重玄・仲村 昇・富田直樹・千田万里子・広居忠量.2015.日本に飛来する夏鳥の渡りおよび繁殖時期の長期変化.日本鳥学会誌.第64巻.第1号.p39-51.澤 祐介.2024.足環をつけた鳥が教えてむくれること.山階鳥類研究所著.p112-115.山と渓谷社.(参考)我孫子野鳥を守る会.2024.会報.no1-300.1975年-2024年9-10月号.(写真)ツバメ:2024年7月13日、2024年7月29日いずれも柏市内で撮影オオヨシキリ:2枚とも2024年6月9日茨城県稲敷市で撮影
2024.10.22
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今月発売された新刊「足環をつけた鳥が教えてくれること」を鳥仲間で目を通し、興味深く感じた内容について情報交換する集いを開催しました。標識個体を観察したことで判明した内容は、ひとつひとつが宝物。関心を集めたのが、東京と福岡のユリカモメがどこか違うと題した報告でした。澤(2024)は、標識調査で福岡県で捕獲したユリカモメを計測し、東京の個体と比較した結果を報告しています。内容で注目されるのが「雌雄ともに東京の個体よりも福岡の個体が有意に小さいという結果が得られた。(中略)仮説として考えられるのが東京と福岡では異なる繁殖地の集団が渡ってきているというものです」「東京で越冬する個体群は体サイズの大きいカムチャッカ半島繁殖群由来のものが多く、福岡では体サイズの小さいシベリア内陸部の繁殖個体群由来のものが多い可能性が考えられる」という部分です。続いて2021年3月韓国から一通の連絡が届き、2019年2月に福岡で足環を装着したユリカモメ(45A)が韓国慶州(きょんじゅ)で観察できた内容でした。福岡で越冬した後、春の渡りで韓国東海岸に移動したものと考えられました。このことから福岡で越冬するユリカモメは朝鮮半島を経由し北上することが判明し、東京越冬個体(夏はカムチャッカ半島で、春秋は道東や東北地方沿岸で観察され越冬帰還は東京に戻ってくる)とは違う渡りのルートを持っている可能性が高いということが判明したといのです。今後、朝鮮半島の渡りのルートがどうなっているか、同じ種類でありながらルート、繁殖地が異なることで種の保全をどうしていくかという点の宿題があるねと鳥友の間で意見の一致を見ました。(引用)澤 祐介.2024.足環をつけた鳥が教えてくれること.東京と福岡のユリカモメがどこか違う.p34-37.山と渓谷社.(本文とは関係はありませんが、過去に観察したものから抽出した標識装着個体の写真)1枚目:2013年11月27日不忍池で観察した標識L72枚目:2014年2月26日不忍池で観察した標識DP3枚目:2014年11月16日北浦で観察した標識E54枚目:2022年1月17日水元が観察した標識T95枚目:2024年2月7日水元で観察した標識A04(標識装着個体の概要)カラーリング青 L7、足環番号8A-33154、性別:不明、年齢:成鳥、放鳥日:2013年2月11日、放鳥場所:墨田区吾妻橋隅田川カラーリング青 D/P、足環番号8A-32814、性別不明、年齢:初年度冬羽放鳥日:2013年3月8日、放鳥場所 千葉県市川市福栄カラーリング青 E5、足環番号8A-33080、性別 不明、年齢 成鳥放鳥日:2012年3月20日、放鳥場所 東京都墨田区吾妻橋隅田川カラーリング青 T9、標識番号8A34804、性別不明、2歳以上の成鳥放鳥日2013/04/06、放鳥場所 東京都墨田区吾妻橋隅田川カラーリング青 A04、足環番号8A-37132、放鳥日2023/01/6放鳥場所:水戸市千波湖、性別不明、2歳以上の成鳥
2024.10.19
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10月に入り、カモの姿を見かけるようになりました。この時期は、雄エクリプス、雌非繁殖羽、幼鳥の姿があり、識別だけでも一苦労。でも識別のポイントを習得することで観察の楽しさが倍増します。カモをめぐっては日本に飛来する種類は、雄が多いのか、雌が多いのかと質問をもらうことがあります。少し前の報告で興味深いものがありますので、紹介します。バードリサーチ(2015)は、2014年に調査した日本国内の調査地でのオスの割合と緯度・経度、雌雄の合計個体数との関係に関する結果を6区分をあげて報告しています。(1)北の地域、または東の地域へいくほどオスの割合が高くなる種類としてコガモ、ホシハジロをあげています。(2)北の地域にいくほどオスの割合が高くなる種類としてヒドリガモ、マガモをあげています。(3)西の地域にいくほどオスの割合が高くなる種類としてオシドリ、ヨシガモをあげています。(4)南の地域に行くほどオスの割合が高くなる種類としてオシドリをあげています。(5)総個体数が多いほどオスの割合が高くなる種類としてマガモ、ヨシガモをあげています。(6)傾向が見られない種類としてオカヨシガモ、オナガガモ、キンクロハジロ、ハシビロガモをあげています。さらに2015年に調査した結果では、ホシハジロでは昨年と同じ傾向が得られ、緯度から見ると北に行くほど群れの中のオスの割合が高くなる傾向が、経度から見ると東に行くほど群れの中のオスの割合が高くなる傾向がみられ、コガモでは、北に行くほどオスの割合が高くなる傾向が得られたと報告しています。(身近なフィールドでの雌雄の割合)今月に入り、水元、吉川美南、柏の葉を訪ねました。水元で見かけたホシハジロは6羽中雌が1羽、キンクロハジロは雌1羽、ヨシガモ5羽中3羽が雌と思われる個体、吉川美南ではマガモ雌1羽、ハシビロガモ6羽中1羽が雌2羽、柏の葉ではヨシガモ4羽中雌は1羽でした。個体数の分母が小さいので雌雄の比率について言及するのは適当ではありませんが、これからどのように変化するのか注視していきたいと思っています。バードリーチ(2014)が述べているように東の地域にいくほどコガモ、ホシハジロの雄が多いのであれば、千葉県ではこの2種の雄が目立つはずです。これからのシーズンでは注目してみたいと思います。(引用)バードリサーチ.2014.カモの性比国際調査調査報告書.pp8バードリサーチ.2015.カモの性比国際調査2年目調査報告書.pp5(写真)コガモ:2020年12月12日手賀沼、2016年9月14日手賀沼で撮影ホシハジロ:2022年11月16日、2021年11月23日いずれも水元公園で撮影
2024.10.17
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稲敷市稲波干拓地は、広さ230haの水田地帯で1985年2月に34羽のオオヒシクイの姿が目撃されて以来、毎年越冬しています。平年では11月に入るとその姿を見せてくれる時期となります。、ところが、2010年代半ば頃から越冬生活に変化が見られ、今シーズンはどうか注目しています。変化の中身は、2015年シーズン後半から原因不明の飛び出しが続き、稲敷雁の郷友の会が要因を調査し報告しています。その内容の一部を紹介します。稲敷雁の郷友の会(2016)は、大別すると、2つの要因を指摘しています。(1)外的圧力による要因稲波干拓内やその周辺の環境(外的 圧力)に敏感に 反応し、さまざまな要因で飛び出し、稲波干拓から飛去する回数が増加している。今シーズンの飛び出し 件数 は、干拓から北東方面に飛去した回数が114回、干拓内の移動に留まった回数が39回で合計153回を記録したと述べています。(2)稲作から蓮田への転換による変化稲作から蓮根栽培に転作する農家が増加傾向にあり、年々蓮根田が増加 している。栽培田の分布は越冬地北東側と南西側の一部に栽培が行われているだけだったが徐々に栽培面 積が広がり、従来オオヒシクイが越冬期間中に餌場やねぐらに80%以上も利用する区画の中心に蓮根 栽培が始まり、オオヒシクイの行動に変化が起きていると記しています。具体的には、オオヒシクイが越冬する時期と蓮根収穫時期が重なり、干拓地内の農作業が途切れないこと、作業車 が通過することから警戒した飛去が発生していること、収穫作業中の人や車 ポンプ用発動機の音等に警戒し、干拓 地上空を周回し 降りるのを諦めて北東方面に引き返した事例が発生していると報告しています。(3)休耕田の分布と影響越冬地南西部にある水田は、放置され田は葦類が茂り藪化しており、オオヒシクイに影響があるのではないかと危惧されています。(引用)稲敷雁の郷友の会.2016.国の天然記念物 オオヒシクイ越冬観察記録.2016年度シーズン.pp21.(写真)2023年12月8日、2015年11月21日、2013年12月23日撮影
2024.10.14
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山路(2015)をはじめとする図鑑類などで「ジョウビタキは越冬地には10月中旬ごろ渡ってきて渡来とともにオスとメスは別々になわばりを構えて生活する」と記されているものかほとんどです。ところが、村上(2015)が岡山県岡山市犬島で非繁殖期のジョウビタキを観察した結果を報告している中で、「非繁殖期である秋季でも雌雄ともに複数個体の集団で生息しており、囀り行動や縄張り争いが盛んであった。このような光景は本土では報告がなく、島だけで見られる姿の可能性がある」「非繁殖期でのジョウビタキは単独性とされているが、犬島では集団で生息することが確認できた。本州本島側の岡山市街にもジョウビタキは生息しているが、これほど集団で生息している場所の報告はない」と報告しています。他地域では同じような行動が見られているのか、注目されます。(引用)山路公紀.2015.ジョウビタキ 生活史 社会システム.Bird Research News Vol.12 No.11.p1-2.村上良真.2015.岡山市犬島で確認された非繁殖期におけるジョウビタキの集団囀りと縄張り争い.岡山理科大学.:研究・社会連携機構 自然フィールドワークセンター 研究報告.第19巻.p37-39(写真)2023年12月25日柏市内、2017年2月3日柏市内で撮影
2024.10.13
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一昨日、房総のむら、印旛沼沿岸に向かって愛車で移動中に手賀沼沿岸で3地区でノスリがそれぞれ電柱に止まっている姿を発見しました。毎年、この時期に姿を現し、翌年春まで沿岸に滞在します。手賀沼沿岸、印旛沼沿岸では複数のノスリの姿を見かけます。その存在を可能としている環境について文献に目を通してみました。橋本ら(2014)は、印旛沼でのノスリの調査結果を報告し、「ノスリの生息確率には半径700 m圏内の水田割合が生息確率に大きく影響しており、主に水田を餌場にしていることがわかった。(中略)開けた水田だけでなく流域河川などの谷津田でも生息確率が高かった。林縁や開けた土地の中に立つ木や杭、電柱に止まり、地上を見張り、獲物を見つけると地上の獲物めがけて一直線に滑翔し、足の爪で取り押さえる」、「開けた土地,主に水田では道路にそって電柱が散在し、それをノスリが止まり木として利用していたためであると考えられる.」と報告しています。一昨日、手賀沼沿岸で目撃したポイントも道路に沿って電柱が散在し、複数のノスリがそれぞれとまり木として利用しているのは毎年のことです。橋本ら(2014)の報告と手賀沼沿岸で目撃した環境を振り返るとその生存を可能としているのは水田と流域河川の存在が食物資源の存在があるからだ学ばさせてもらいました。(引用)橋本 大・長谷川雅美2014.冬期の印旛沼流域における猛禽類の環境選好性と生息環境評価.千葉県生物多様性センター研究報告第7巻.p65-78.(写真)1枚目:2014年11月23日流山市で撮影、成鳥と思われる個体(虹彩は暗褐色、喉は黒色、腹部に幅広い褐色斑があり)2枚目:2018年10月13日流山市で撮影、成鳥と思われる個体(虹彩暗褐色、喉は黒色、胸が茶色味を帯びていた)3枚目:2020年3月7日手賀沼沿岸で撮影、成鳥と思われる個体(喉は黒色、胸はベージュ色)4枚目:2017年12月2日伊豆沼沿岸で撮影、若鳥と思われる個体(虹彩は淡黄色、喉は褐色味が強い)5枚目:2018年1月20日手賀沼沿岸で撮影(虹彩は淡黄色、上面は褐色で淡色の羽縁があり)
2024.09.28
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植田睦之さんが、野鳥の不思議解明最前線#82(2012)で目の色と瞼の色が正反対になっているカモ類に関して、文献で発表されている知見を整理し報告しています。その中でフランス研究チームが、カモは逆に仲間に寝ているか起きているのかをわかるようにしているのではないかと論文の内容を紹介しています。論文では、鳥の群れは他個体の警戒を利用することで1羽あたりの警戒に割く時間を減らしつつも,全体の警戒効率も高めていることが知られており、採食している時ならばまわりの個体が頭を下げて採食しているか、それとも頭をあげて警戒しているかを見ることで、自分が警戒すべきなのか,それとも採食すべきなのかを判断することができます。しかし群れで湖などで休息しているカモ類の場合は,身体の態勢では判断できず、まわりの個体が目を開けているのか。それとも目を閉じているのかを知る必要があることを記しています。植田(2012)が「とはいえ、その意味は「寝ていることを仲間に知らせている」とは限らず,なんらか他の意味があるのかもしれません。寝ていることをまわりに知らせる意味のある群れで休むような種と単独で休む種とでこのパターンに違いがあるか」と指摘しており、野外で観察する際のテーマです。(引用)植田睦之.2012.野鳥の不思議解明最前線#82.寝ていることを仲間に知らせてる?~目の色と瞼の色が正反対になっているカモ類~.(目の色、瞼の色)過去、フィールドで観察したカモ科の写真をいくつかアップしました。(1)目の色が黒っぽい又は褐色のカモオシドリ、アメリカヒドリ、トモエガモの目の色は黒、ハシビロガモは褐色です。これらの瞼の色は写真を参照いただくとわかるように白色です。(2)目の色が赤いカモウミアイサの目の色は赤色で、瞼の色は黄色味を帯びているように見えました。(写真)オシドリ:2013年11月16日栃木県真岡市で撮影アメリカヒドリ:2022年1月17日都内水元公園で撮影ハシビロガモ:2022年10月21日埼玉県川越市で撮影トモエガモ:2017年12月10日埼玉県さいたま市で撮影、2019年11月16日茨城県神栖市で撮影ウミアイサ:2022年2月21日千葉県浦安市で撮影
2024.09.27
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一昨日、柏の葉キャンパス駅近郊を探索した折、小さな調整池でバンの成鳥5羽と今年生まれの若鳥1羽の姿を観察しました。調整池の周囲には水草があり、茎や葉をからめて巣をつくるために欠かせない環境があり、昆虫、小魚などの餌を捕獲できるスポットなので毎年バンが巣づくりをしジュニアたちが誕生しています。この貴重な姿と子育てを観察できるエリアです。バンは、千葉県(2019)が保護上重要な生物のリストでも重要保護生物(個体数がかなり少ない、生息・生育環境がかなり限られている)指定し、保護の必要性を報告していることにくわえて、バードリサーチ(2022)が報告しているように2010年代に1990年代に比較して半分以下に減少したこともあり、2022年9月に狩猟鳥獣対象種の解除されました。バンは、オオバンと比べると泳ぐこと、潜水するのが苦手です。(それは、オオバンに弁足(*)がないからです。オオバンは弁足があるおかげで水を蹴って飛び立つことができ、泥の上でも沈まずスムーズに移動することが可能です)バンにとって小さな調整池は、子育ての場として貴重な環境になっています。(*)水かきは一本ずつの指の両側が平たくなり木の葉のような形状です。(引用)千葉県.2019.保護上重要な生物 千葉県レッドリスト動物編.pp44.植田睦之.2022.全国鳥類繁殖分布調査の結果でゴイサギとバンが狩猟鳥獣から解除に.バードリサーチニュース 2022年9月.(写真)一枚目、二枚目:2024年9月23日柏市内で撮影三枚目:2020年8月2日柏市内で撮影四枚目から六枚目:オオバンの弁足四枚目:2021年1月20日都内、五枚目:2018年2月10日流山市、六枚目:2024年2月29日都内で撮影
2024.09.25
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手賀沼沿岸にノビタキを探索しに出かけたおり、沼の水面を観察していたらユリカモメが2羽水面の上で休んでいる姿を発見しました。1994年以前は通年姿が見かけ冬に個体数は増加するパターンでしたが、1996年以降では9月から翌年4月頃まで姿が観察されるというように変化しました。1975年から2008年の間で最も多い個体数は2002年1月の202羽、最も少なかったのは2001年、2006年、2007年の各1羽でした。以降も増減を繰り返しながら観察されていましたが、2011年以降で変化が見られ、2019年12月200羽、2020年3月217羽、2021年1月200羽、と時折群れが観察されるようになりました。(手賀沼にはどこから飛来するのか)手賀沼に飛来するユリカモメの移動ルートの関する調査は、実施していませんので断定的なことは申し上げようがありませんが、2020年1月20日手賀沼で標識リングT9を装着したユリカモメを観察し、2013年4月に東京都墨田区で装着されたものと確認されました。標識個体の観察履歴より都内と手賀沼を往復していることが判明しています。竹重(2020)がユリカモメの飛行経路についての調査を実施し、「東京湾沿岸部で越冬するカモメ類は主に東京湾からやってくる」、「河川が水鳥の主要な移動経路であることを示すデをータが得られています」、「河川は採餌場所としてだけでなく、移動経路としても利用されている」と報告しています。標識を装着した個体とあわせて考えると、都内のユリカモメが河川(江戸川、利根川や中小河川)を移動経路として使って移動していると考えられます。ただし、ユリカモメは、水生昆虫や小魚を餌とすることが知られていますが、手賀沼では餌を捕食している光景を目撃したことがなく、今後の課題となっています。(写真)沼中央部に姿があり、写真記録ができなかったため、過去の写真を使用。一枚目:2023年12月1日手賀沼、二枚目:2016年4月3日手賀沼、三枚目:2023年12月16日手賀沼、四枚目:2020年1月20日手賀沼
2024.09.24
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昨日、吉川市の吉川美南調整池でセグロセキレイ雌雄の求愛行動を目撃しました。イソシギ、サギ類、カワセミの姿を観察していたら、セグロセキレイ雄が鳴きながらハクセキレイを追い回していた姿を目撃しました。直後、浅瀬にセグロセキレイ雌が鳴きながら尾を立てて何かを追い回しているようの移動するのを発見。しばらく待機していると、雌が追いかけていたのはセグロセキレイ雄個体でした。しかも尾を上にあげたまま追いかけていました。その迫力に雄もたじたじ。平野(2005)は、セグロセキレイの生態や知見を整理し報告しています。その中で「冬期も雌雄でなわばりを構え,10月ごろから再びさえずりやなわばり争いが活発になり,おもに水辺でなわばり争いを行なう。この場合,雄は雄同士,雌は雌同士で儀式的な争いを行なう」と記しています。吉川美南で目撃したのは、とても儀式的とは思えず、情熱的に雌が雄を追尾していたと見えました。ただし、交尾行動は確認することができず、繁殖行動なのかなわばりの中での雌の雄確保の行動なのかは不明です。同地では昨日観察したセグロセキレイ雌のほかにも雌の存在があり、セグロセキレイの行動に今後も注目していきたいと思います。(写真)一枚目、二枚目は2024年9月21日撮影三枚目は2024年8月27日撮影の雌個体(引用)平野敏明.2005.セグロセキレイ 生活史.Bird Research News Vol.2 No.10.p2-3.
2024.09.22
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稲刈りをしている田んぼにチュウサギが群れでコンバインと共に移動する姿を見かけます。稲の茂みから逃げ場を失ったカエルやイナゴを採食しています。益子(2014)がチュウサギの生態や分布などの知見を整理し報告しています。その中で、「1960~70年代に全国的に減少し、準絶滅危惧種に指定されている。1980年の全国規模のアンケート調査では,37県79コロニーのサギ類の総数約47,800羽のうち、チュウサギは約1,300羽(3%)にとどまっていた」と記している一方「1991~92年の全国調査では,コロニーに占めるチュウサギの割合は,関西で0.4%,静岡で3.1%だった一方,関東では12.9% と比較的高かった」と報告しています。ホームグランド手賀沼とその沿岸地域での観察記録を振り返ると、1975年から2008年の間では繁殖期に水田で採餌する10羽未満の姿が観察されていたのみでした。ところが、2019年10月に手賀川中州に塒をとっている30羽ほどの群れが観察されたり、2020年7月には葦原を刈り取った箇所で採餌をしている姿、2020年8月には130羽前後、2020年9月に400羽前後の群れで塒をとっている光景が観察されています。翌年2021年9月にも300羽前後、2022年9月には700羽前後が群れで塒をとっている光景が観察されています。益子(2014)が述べているように、10月中旬頃まで各地で集団ねぐらをとり、数十から百羽ほどの群れで南へ渡ることが知られています。どこから手賀沼とその沿岸地域に飛来し、どこへ向かうのか興味のあるところです。(引用)益子美由希.2014.チュウサギ 「準絶滅危惧種」の歴史といま.Bird Research News Vol.11 No.3.p4-5.(写真)2024年9月7日手賀沼沿岸
2024.09.19
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吉井(1992)は、世界の渡り鳥についての知見を整理し報告しています。その中でムナグロの齢差で異なる渡り時期について紹介しています。「長い給餌期間が終わる頃になると、雛を残したまま繁殖地を離れることを記しています。置き去りにされた雛たちは親からの給餌によって十分栄養を蓄えているので何日か絶食しても差し支えはない。過重状態の体重が適当に減り、翼も十分に発達して飛行に適するようになると、若鳥同士の群れをつくって渡りの旅に出る」「親鳥の方が先に繁殖地を離れる鳥類としては、オオミズナギドリ、アホウドリの仲間がいる」と報告しています。(引用)吉井正.1992.世界の渡り鳥.齢差で異なる渡り時期.動物たちの地球.通巻841号.p7-287.朝日新聞社.(写真)一枚目、二枚目:2021年9月24日茨城県稲敷市で観察・撮影三枚目:2023年11月8日茨城県稲敷市で観察・撮影(ムナグロ幼鳥の特徴)冬羽に似ていますが、眉斑の黄色味が強いこと、背や翼の黄色味が強い印象があります。
2024.09.09
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今月半ば頃になると、手賀沼沿岸でノビタキを見かけるようになります。ところが、どこから手賀沼沿岸に飛来しどこへ向かうのかは、標識回収が1例のみであり、しかも最長移動距離が7kmと標識を装着した近郊で回収された記録のため、どこからどこへ向かうのかは不明というのが現況です。(参照)https://www.biodic.go.jp/birdRinging/atlas/Saxicola_torquatus/Saxicola_torquatus.htmlただし、自然ガイドに従事していらっしゃる方がご自身のブログにて標識装着していた個体について報告しています。それによると、リング1H-96592を観察し山階鳥類研究所保全研究室に照会した結果、2021年4月23日に北海道新函館付近で標識を装着し放鳥した個体が、2021年10月23日京都府京都市賀茂川で観察された個体と判明したとありました。直線距離にして約900km、本州を経由して移動したものと思われる旨が記されていました。(引用)https://bird-kuge.com/(ノビタキの渡りルート)先崎(2016)は、ノビタキの生態や行動などの知見を整理し報告しています。その中で、「ジオロケータをつかって北海道石狩平野で繁殖するノビタキの雄12個体の秋の南下ルートを追跡したところ,10月初旬に繁殖地を発ち、直接大陸に渡り、沿海地方南部・ハンカ湖周辺に一時滞在した。その後、華北平原を通過し中国南部からインドシナ半島(ラオス,カンボジア,タイ,ベトナム)で越冬していた」と報告しています。あわせて、「北海道松前町白神岬と青森県龍飛崎では秋期を中心に渡りと思われる個体が見られることから、北海道と本州を渡る個体もいると思われる」と述べています。(手賀沼と周辺地域での観察記録)手賀沼と周辺地域では、9月から11月の間に姿が観察されています。最も多く観察されたのは2000年9月23日の10羽で、大半が1-2羽が田んぼの草むらで虫を採食しています。齢については、大部分が若鳥ですが、成鳥雌雄と若鳥4羽が2000年9月23日に記録されています。(引用)先崎理之.2016,本州を経由せず大陸に渡る石狩平野のノビタキ.Bird Research News Vol.13 No.10.p1-2.(写真)1枚目はノビタキ:2014年10月12日手賀沼で観察・撮影2枚目はノビタキ:2016年10月1日さいたま市秋ヶ瀬で観察・撮影
2024.09.02
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ツバメは他の種に比べて繁殖時期を柔軟に変化させられるような生理機能があるのかもしれないと話しを聞いたことがあります。今年は過去126年の間で最も暑い夏と言われています。温暖化が進行するとツバメの繁殖時期が変化し、秋冬繁殖が増えていくのではないかと思っています。神山(2024)が、「最近、11~12月にツバメが繁殖しているというニュースをよく目にします。SNSの普及やインターネットに地方紙の記事が載るようになって情報が広まりやすくなったせいもあるかもしれないので、秋繁殖が増えてきているのか確実なことは分かりません。しかし越冬ツバメ(繁殖はしていない)は40年前に比べて分布が広がっている」と報告しています。ホームグランド手賀沼とその沿岸の観察記録を振り返ると、2021年1月17日に手賀沼沿岸でツバメの姿が観察され、以降2021年は10月23日葦原の上を飛び交う姿が目撃された後、2022年、2023年と秋から翌年春にかけて姿が観察されています。繁殖の観察記録は見当たらないものの、その生活がどうなっているのか、餌はどうしているのかなどの興味があります。(引用)神山和夫.2024.秋冬に繁殖するツバメが各地で見つかっている.バードリサーチニュース.2024年1月16日.(写真)2024年8月1日柏市内、2024年7月13日柏市内で撮影
2024.08.24
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昨日、三番瀬でミヤコドリを観察してきました。澤(2016)が報告しているように、明治期の19世紀末には東京付近でも個体数が多かったと文献に報告が見受けられるものの、1973年~1975年に実施された「干潟に生息する鳥類の全国一斉調査」では、全国で1~6羽が記録されたのみであり稀な渡り鳥とされてきました。ところが、1990年代以降では渡来数がふえ、越夏をする個体も見受けられるようになっています。三番瀬および葛西臨海公園を訪れて観察記録を振り返ってみると、年を通じて最も個体数が多かったのは2016年1月31日の173羽で、最も少なかったのは2015年7月18日および2023年8月21日の2羽でした。また、繁殖期(4-9月)で最も個体数が多かったのは2021年8月6日の50羽で、最も少なかったのは2015年7月18日および2023年8月21日の2羽でした。ただし、三番瀬の場合、潮干狩りを楽しむ人の立ち入りの影響でミヤコドリが脅威を感じて葛西臨海公園沖に退避していまうため、個体数の変動が大きいのが特徴です。潮干狩りを楽しみ方が入る7月から8月の時期でも2015年9月19日に36羽、2017年8月6日17羽、2018年8月6日6羽、2021年8月6日50羽といった個体数が観察されています。(引用)澤 祐介.2016.ミヤコドリ.Bird Research News Vol.13 No.12.p1-2.(写真)一枚目:2017年8月6日(手前が上面に褐色味のある若鳥、奥が胸と上面が黒い成鳥)二枚目:2019年8月31日(胸と上面が黒い成鳥)三枚目:2021年8月11日(胸は黒いのでいが上面に褐色味が残っており成鳥に換羽中と思われる個体)
2024.08.22
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日本野鳥の会が報告しているように、2003年夏に国内14か所で越夏するクロツラヘラサギ(最大26羽)が確認されました。情報収集の結果、2003年、2004年と少なくとも20羽の越夏個体が確認されたものの、2005年には6羽しか観察されませんでした。越夏個体は若齢個体が多く、渡りの途中に越夏することが知られており、たまたま日本を選択したのか、2003年と2004年の繁殖成績が良好だった可能性があるとリポートしています。https://www.wbsj.org/activity/conservation/endangered-species/bfs-pj/bfs-info/今年は葛西臨海公園に複数回クロツラヘラサギの姿が観察され、4月12日に5羽の姿が観察されていましたが、5月2日に渡去しました。うち1羽は2023年11月に飛来した若鳥と思われました。繁殖地にむかったのか、どこかで越夏しているかと気になっています。(クロツラヘラサギの幼鳥、成鳥のメモ)多くの図鑑では若鳥は嘴は肉色で翼の先が黒っぽい、成鳥は黒色で目先が黒または黄色っぽいと説明されています。鳥友が撮影した画像で復習してみますと、幼鳥から第一回冬羽では嘴の色合いは全体にピンク色ですが、嘴の波状模様は現れていません。若鳥の2年目から3年目になると、嘴は黒くになり嘴の波状の模様が現れています。その後、4年目成鳥になると、嘴が黒く、波状の模様が先端まで認められ彫りが深い印象があります。(伊佐沼の個体)写真は2011年12月に埼玉県川越市で観察・撮影した個体です。発見した当初は嘴が黒く見えたので成鳥と思いましたが、角度によってピンク色に見えたことから若鳥とわかりました。嘴に波状の模様が認められなかったので2年目から3年目の個体ではと思いました。
2024.08.17
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鳥友から干潟でシギ・チドリを見ていると、痩せているものと太っているものを見かけるがどの位差があるのかと質問をもらいました。石川(1993)は、千葉県習志野市谷津干潟で観察した記録などを整理し報告しています。その中でトウネンの標識調査のデータの一部を紹介しています。8月の標識調査で扱った成鳥8羽、幼鳥75羽のうち、幼鳥では最小が22.5g、最大が44g、平均31.5g、成鳥では最小が35.1g、最大が48.2g、平均41.7gの結果だったと述べています。幼鳥の場合は最大の個体は最小の個体の2倍の体重となっています。成鳥の一番小さいものでも幼鳥の平均体重を上回っており、栄養分を脂肪として蓄えて渡りの際のエネルギーとしていると記しています。こうした関係で痩せているものと太っているものの差を感じるものと思います。以前、ツグミの日本に渡来したころの体重は65-88g、平均75g、翌年4月には106gに増加していたとの文献に記されていたことを紹介しました。体重が140%も増加していることになります。(引用)石川勉.1993.東京湾の渡り鳥.p61-63.晶文社.(写真)2021年8月28日茨城県浮島で撮影
2024.08.16
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鳥友から先月2日に手賀沼でコガモを観察したが越夏個体を観察した際のポイントを教えてほしいと質問をもらいました。(繁殖期に繁殖地に行かない野鳥)繁殖期に繁殖地にいかない野鳥を便宜的に越夏個体と呼んでいます。繁殖しない個体ですから非繁殖個体と呼ぶのが妥当と複数の研究者が指摘しています。観察時は、怪我、骨折、換羽の異常、初列風切の欠損などが外観から認められるか、生殖羽が認められるかどうか確認すべきです。(カモの非繁殖個体について)大塚ほか(2022)は、広島県での観察記録を整理し報告しています。その中で、2022年7月3日に観察したコガモ雄個体については、生殖羽を有している点から越夏個体と判定したこと、2021年6月13日に観察したオカヨシガモ雌雄個体については生殖羽を有し初列風切も三列風切が脱落している点から換羽期の個体がゆえに越夏になったこと、2022年3月から4月に観察されたホシハジロは左翼の初列風切が換羽のため欠落しており飛翔能力がないことが越夏の要因となったと報告しています。また、越冬中に怪我、骨折、換羽の異常などのなんらかの理由で繁殖地への渡りができない個体が存在し、種類について報告しています。内訳は、ヨシガモ、オシドリ、ヒドリガモ、マガモ、コガモ、ハシビロガモ、オナガガモ、ホシハジロ、スズガモ、キンクロハジロ、メジロガモ、アカハシハジロ、ビロードキンクロ、カワアイサの越夏個体が日本各地で確認されたことを紹介しています。また、カモ類以外にマガン、カンムリカイツブリ、オオバンなどの越夏も知られていると述べています。(シギ・チドリの非繁殖個体について)石川(1993)は、谷津干潟で観察した鳥類の観察記録を整理し報告しています。1976年から1990年の間で非繁殖個体が観察されれなかったのは7回/70日で出現率は90%にもなり、大半は冬鳥の若鳥だったと述べています。ダイゼン以外にもオバシギ、オオソリハシシギ、チュウシャクシギ、ダイシャクシギ、ホウロクシギなどの中・大型の種類に多く見られたと記しています。また、小型ではメダイチドリの所謂越夏が多く、ハマシギやトウネン、キョウジョシギではとても少ないと報告しています。なお、越夏個体の中ではメダイチドリは夏羽個体が比較的多いと述べています。(引用)石川 勉.1993.東京湾の渡り鳥.p42-43.晶文社. 大塚 攻ほか.2022. 広島県東広島市七ツ池におけるカモ類の出現記録広島大学総合博物館研究報告.第14巻..p17-24.(写真)一枚目:2017年7月9日メダイチドリ、三番瀬、二枚目:2017年7月9日オバシギ、三番瀬、三枚目、四枚目:2014年6月15日スズガモ、手賀沼(次列風切が欠損)五枚目:2019年6月2日カンムリカイツブリ、手賀沼、六枚目、七枚目:2021年6月28日シロエリオオハム、さいたま市彩湖
2024.08.14
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手賀沼沿岸で四年連続でアカハラツバメ(Hirundo rustica saturata)の姿を見つけたことはすでにリポートした通りですが、昨日野田市三ツ堀のこうのとりの里で亜種アカハラツバメと亜種ツバメの交雑個体を観察しました。下面は半分程度が薄茶色となっていました。東葛地区に複数の亜種アカハラツバメと亜種アカハラツバメと亜種ツバメの交雑個体が飛来しているものと思います。昨日観察した個体と2021年から手賀沼沿岸で観察しているアカハラツバメの画像をアップします。なお、鳥友から北海道七飯町で腹部がオレンジがかったツバメについての報告があると教えてもらいました。さっそく内容に目を通してみると、ツバメの日中の行動範囲内での移動個体と思われる個体の写真と報告が記されており、大陸系の亜種 H. r. saturata または H. r. tytleriに似ていると報告されていました。アカハラツバメは、カムチャッカやオホーツ地方で繁殖するとされています。七飯町は、渡島半島という陸域が狭くなった半島にあり小鳥類が渡りをする中継地として知られています。そこを通過し千葉県までやってきているのかしらと想像を膨らませています。(写真)一枚目:2024年8月10日野田市で撮影、二枚目から七枚目はいずれも手賀沼沿岸で撮影二枚目:2024年8月9日、三枚目:2024年8月4日、四枚目:2024年7月29日、五枚目2023年8月8日、六枚目:2022年8月11日、七枚目2021年8月22日撮影(引用)田中正彦・三上かつら.2017.標識データからみた北海道亀田郡七飯町の休耕田を通過する鳥類.鳥類標識誌第29巻.p1–15.
2024.08.11
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手賀沼沿岸に出かけた折、谷津田の一角で亜種アカハラツバメ、亜種ツバメを観察していたら、最初は電線に止まっていた亜種ツバメがなんと横向きにころっと姿勢をかえるのを目撃しました。これまでも電線に止まって翼を広げて眠りこけている姿や地面で横になっている姿を目撃して驚いた経験がありますが、今回の大技はそれらをこえるものでした。鳥類にとって羽毛の手入れは、一大関心事ですが、今回の技はどこで覚えたの?(写真)一枚目、二枚目:2024年8月9日、三枚目:2023年7月29日、四枚目、五枚目:2023年8月8日いずれも手賀沼沿岸で観察・撮影
2024.08.09
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中村(1991)が述べているようにイソシギは、他のシギ類が亜寒帯から寒帯地方で繁殖するのに対し温暖地方で繁殖すると報告され、本州中部から北の地方で繁殖しており、それ以外の西日本や沖縄では旅鳥または冬鳥として見ることができると種類です。ホームグランド千葉県手賀沼とその周辺地域での観察記録を振り返ってみると、興味深い変化があることに気が付きます。1977年から2008年の間では、おもに9月から10月の間に観察されていましたが、2020年以降は所謂繁殖期の4月から9月の間の観察記録が増加しています。ただし、イソシギが巣をつくるのに適した環境は見当たらないので、どこからか移動してきた個体が一時的に滞在していたのではないかと思われます。なお、今年6月に訪ねた長野県上高地の梓川では、大きな石や流木の上に止まり、雄がさかんにチッキイキ、チッキイキと囀って雌を呼び込む様子が見られたので、同様の環境で見かけたら繁殖している可能性が高いものと思います。個体の羽衣、鳴き声、採餌などを目撃したら要注目です。(写真)一枚目、二枚目:2024年6月6日上高地で観察した夏羽(翼にうっすら黒斑が入ります)三枚目:2022年10月24日谷津干潟で観察した若鳥(雨覆の羽縁が黄褐色)(引用)中村登流.川辺の孤独な住人.イソシギ.動物たちの地球.通巻825号.p210-214.朝日新聞社.
2024.08.05
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オフィスのある千葉県柏市ではヒメアマツバメの姿を春から秋に見かけます。ところが平田和彦さんが「しいむじな」(房総の山のフィールド・ミュージアムニュースレター)に「真冬にまで巣を使うヒメアマツバメ」について紹介しています。平田(2019)は、「日本ではほとんど記録のない鳥でした。1967年に静岡県で繁殖が確認されるまでは、日本ではほとんど記録のない鳥でした。その後、急速に分布を広げました。勢力を拡大できた理由は定かでありませんが、もともといたコシアカツバメやイワツバメの存在が影響した可能性も考えられます。冬の特集にツバメ“だなんて違和があるかもしれません。ヒメメアマツバメだけは留鳥として、夏に繁殖のため使った巣を冬にはねぐらとして使い続ける」と述べています。(東葛地区でのヒメアマツバメの観察記録)我孫子野鳥を守る会の観察記録によると、2005年5月27日に我孫子市内で飛翔している姿が観察され、2020年6月27日に柏市内で営巣した巣に出入りしていたのが目撃され、2021年4月23日に柏市内で8羽が飛翔する姿が観察され、以降2024年7月まで継続して姿が観察されています。ただし、いずれも繁殖期の観察記録ですがヒナは観察されておらず、塒として巣を使っているものと思われます。(引用)平田和彦.2019.房総の山のフィールド・ミュージアムニュースレター.第67号.p1-2(参照)我孫子野鳥を守る会.会報ほーほーどり.NO1-297.1975-2024年3-4月号(写真)2020年9月19日、2023年5月30日いずれも柏市内で撮影
2024.07.24
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昨日茨城県稲敷市甘田干拓地でコヨシキリを観察しました。ピーチュルピーチュルキリリリリリコロコロ」という声で囀っていました。しかも、石田(2015)が「鳴き始めはヨシの低い位置にいたのに、囀りながら徐々に高い位置に移動する」と報告している動きを観察することができてラッキーでした。ただし、濱尾(2014)が「オスは37~94種類もの音を組み合わせた長いさえずりをもっており、他種の鳴き声を取り込んだものまねも含まれている」(中略)「コチドリ、、ヒバリ、ツバメ、セッカ、オオヨシキリ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリの8種の鳴き声をまねていた」と述べている点は、次回以降の宿題となりました。(引用)濱尾章二.2014.コヨシキリ さえずりにおけるものまね.Bird Research News Vol.11 No.12.p6-7.石田光史.2015.野鳥図鑑.p296.ナツメ社.(写真)一枚目、二枚目は2024年7月21日稲敷市甘田干拓地で撮影したコヨシキリ三枚目、四枚目は2024年6月9日稲敷市甘田干拓地で撮影したオオヨシキリコヨシキリは、眉斑が白く黒い側頭線が目立ちます。これに対してオオヨシキリでは眉斑と側頭線は不明瞭です。
2024.07.22
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石田(2015)が述べているように、オオヨシキリは葦の茎や葉を組み合わせたお椀型の巣をつくることが知られています。ところが、バードリサーチの植田さんが雌が巣材にヘビ皮を使っているオオヨシキリ海外の論文を紹介しています。少し前のものですが、参考までに紹介します。植田(2011)は、スロバキアのオオヨシキリは巣材にヘビの抜け殻を使うとの論文を紹介しています。造巣中のオオヨシキリの巣の前にヘビの抜け殻とそれと似た感じのリボンを置いて、オオヨシキリの反応をみたところ、多くのオオヨシキリがヘビの皮を巣材に使ったのに対してリボンを使ったのはわずかでした。オオヨシキリはヘビの皮を好むようです」「オオヨシキリは一夫多妻の鳥で、雌にとって雄の給餌を受けられるかどうかが繁殖成績を左右する大きな要因になります。雌が自分の質を雄にアピールすることは重要そうです。めったにないヘビ皮を見つけて巣材にできることが雌が自分の質をアピールする信号になっているのではないかと考えています」と述べています。なお、日本ではヘビの抜け殻を使っているオオヨシキリはまだ見かけられていないことも触れています。なお、スロバキアのオオヨシキリもお椀型の巣をつくるとしたら、へび皮は葦と組み合わせるのか。興味津々です。(引用)植田睦之.2011.野鳥の不思議解明最前線#70.皮製品が好きな鳥たち~蛇皮を巣材に使うオオヨシキリの雌はセレブ?.石田光史.2015.野鳥図鑑.p295.ナツメ社.(写真)2020年5月24日印西市の印旛沼沿岸、2022年5月28日印西市の印旛沼沿岸で撮影
2024.07.18
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吉井(1992)は、世界の渡り鳥についての知見を整理し報告しています。その中でムナグロの齢差で異なる渡り時期について紹介しています。「長い給餌期間が終わる頃になると、雛を残したまま繁殖地を離れることを記しています。置き去りにされた雛たちは親からの給餌によって十分栄養を蓄えているので何日か絶食しても差し支えはない。過重状態の体重が適当に減り、翼も十分に発達して飛行に適するようになると、若鳥同士の群れをつくって渡りの旅に出る」「親鳥の方が先に繁殖地を離れる鳥類としては、オオミズナギドリ、アホウドリの仲間がいる」と報告しています。また、長嶋(2020)は、ムナグロの渡りについて文献が報告している内容を紹介しています。それによると、成鳥は遅くとも8月初旬までには繁殖地を旅立つ。大半が7月初旬から9月中旬に米国西海岸を通過、7月末から8月ハワイ諸島に到着、日本には7月末から8月に到着、幼鳥については、8月中旬から下旬に当年生まれが繁殖地を旅立つ。9月中旬日本に飛来していると記しています。(ムナグロは秋、当年生まればかりか)吉井(1992)、長嶋(2020)が紹介している内容を耳にすると、秋の日本では当年生まれの幼鳥が多いイメージを持ちます。ところが、若鳥以外の個体と出会うことが多いように思います。換羽の遅れる個体や換羽の程度には個体差があり、野外で観察を積み重ねる必要があります。(引用)吉井正.1992.世界の渡り鳥.齢差で異なる渡り時期.動物たちの地球.通巻841号.p7-287.朝日新聞社.長嶋宏之.2020.ムナグロ Pluvialis fulva の生態と年齢識別の紹介.https://www.wbsj-saitama.org/yacho/yacho-11.html(写真)一枚目:2013年9月1日茨城県稲敷市で撮影二枚目:2021年9月24日茨城県稲敷市で撮影三枚目:2017年9月3日千葉県印旛沼沿岸で撮影四枚目:2021年9月24日茨城県稲敷市で撮影五枚目:2017年9月3日千葉県印旛沼沿岸で撮影六枚目:2017年9月3日千葉県印旛沼沿岸で撮影
2024.07.14
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バードリサーチの植田さんが「野鳥の不思議解明最前線」に「一般に鳥は昼行性のイメージがありますが、シギチドリ類は日中だけでなく夜も活発に活動しています」とリポートをしています。オグロシギに関してスペインの研究者antiago-Quesadaさんたちの論文を紹介しています。興味深いのが、「春のオグロシギは主に水田で採食しており、夜間は採食せずに日中のみ落ち籾を採食していることがわかりました。そして日中で得られるエネルギー量だけで1日にとる必要のあるエネルギー量をみたしていました。それに対して秋の渡りの時期にはオグロシギは塩田でユスリカの幼虫を採食していました。そして春とは異なり夜間にも採食していました」「日中の採食で1分あたりに得られるエネルギー量は 0.27 ± 0.01 kJで,春の1.15 ± 0.03 kJと比べてかなり少ないことがわかり、そしてこの量は1日の必要エネルギー量より少ないのです」と述べている点です。一般の図鑑類では、オグロシギは河口、湖沼、水田など主に淡水域を好み、ミミズ、ゴカイ、甲虫類などを捕食すると説明しているものが多く、春と秋の餌の違いや夜間の採食については触れていないものがほとんどですからご存じない方も多いものと思います。(引用)植田睦之.2014.野鳥の不思議解明最前線#106.夜ごはんよりも昼ごはん?~採食量が不十分な時に夜の採食をするオグロシギ~.(写真)2016年8月29日三番瀬、2021年8月28日茨城県で撮影
2024.07.12
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そろいろ、シギ・チドリの渡りが本格的なスタートします。多くのファンが東京湾に広かる干潟に足を運び、出会いを楽しむものと思います。鳥友から東京湾の干潟のうち、東京湾北部に位置する谷津干潟と三番瀬と西部に位置する多摩川河口部干潟と多摩川下流部干潟のシギ・チドリの分布では谷津干潟、三番瀬での種類が多いのはなぜかと質問をもらいました。(1)シギ・チドリの採食に影響を与えるファクター一般的には、食物となるマクロベントス(*)と干潟の底質環境の影響を受けるとされています。(2)谷津干潟、三番瀬と多毛類の存在山本・佐野(2016)は、2014年、2015年に東京湾の干潟について、底質環境やマクロベントス量がシギ・チドリ類の種数や個体数密度に与える影響について調査した結果を報告しています。その中で、谷津干潟・三番瀬と多摩川河口部と下流部干潟について次のように述べています。「西部と北部の調査地間におけるシギ・チドリ類の分布の違いは,底質環境や分類群ごとのマクロベントス量では説明できなかった。しかし、一方で,多毛類(*)を大型個体と小型個体に分けてみると,前者は北部の調査地でのみ見られ、シギ・チドリ類の分布との関係が示唆された」と報告しています。さらに、「ダイゼンは視覚により採食するので,採食効率を高めるために多毛類の中でも大型個体を好み、一方、嘴の触覚をもちいて継続的につつきながら採食するハマシギでは,大型、小型の両方を含めた多毛類全体の個体数密度が高いほど効率よく捕食できるのではないかとし、大型多毛類は谷津干潟と三番瀬で多い傾向にあり、多摩川河口部や下流部においてはまったく採集されなかった。小型多毛類は2014 年夏には多摩川河口部と多摩川下流部、2015 年春には谷津干潟と三番瀬,2015 年夏には三番瀬で多い結果だった」と記してます。くわえて、「シギ・チドリ類全体の種数や総個体数密度が北部の調査地で多かったのは,視覚・立ち止まり型と触覚・連続型の存在のため」と報告しています。整理すると、餌となる大型多毛類が谷津干潟・三番瀬にのみ存在していたこと、視覚・立ち止まり型や触覚・連続型の種が谷津干潟・三番瀬に多かったことが種類と個体数の違いとなっているとまとめることができます。(*)多毛類:ゴカイやミミズ、ヒルなどが含まれる環形動物の仲間(*)マクロベントス:アサリ、ホタテ貝、タイラギやサルボウ等の二枚貝やダルマゴカイ等の多毛類やヨコエビ類など(3)シギ・チドリの採食には3つのスタイルa.視覚・連続つつき型(visual-continuous)視覚を使って継続的につついて採食する種類で、主な種類はつぎの通りです。ダイゼン、コチドリ、シロチドリ、メダイチドリ、オオメダイチドリb.視覚・立ち止まりつつき型(pause-travel)視覚を使って継続的につついて採食する種類で、主な種類は次の通りです。セイタカシギ、チュウシャクシギ、アオアシシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、イソシギ、キョウジョシギ、c.触覚・連続つつき型(tactile-continuous)触覚をもちいて継続的につついて採食する種類で、主な種類はつきの通りです。ミヤコドリ、オオソリハシシギ、オバシギ、ミユビシギ、トウネン、ハマシギ、キリアイ、(引用)山本正岳・佐野光彦.2016.東京湾の干潟における底質環境とマクロベントス量がシギ・チドリ類の分布と採食へ与える影響.Bird Research Vol. 12. pp.A1-A17.(写真)ダイゼン:2021年8月11日三番瀬、ハマシギ:2016年9月3日三番瀬で撮影
2024.07.11
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野田市三ツ堀にあるこうのとりの里でたける(個体番号J0760)、だん(個体番号J0761)が誕生し、7月1日に1日にたける、3日にだんが巣立ちました。その後、野外で観察しているとコウノトリの行動のいろいろを見かけます。野外での動き、行動は発見の連続です。(ヒナのために日陰をつくる親鳥)一枚目と二枚目は体で影を作っている光景、三枚目は翼を広げて影を作っていた光景です。直射日光が我が子に当たらないように身を挺しての行動でした。(ヒナの体に水をかけていた光景)四枚目は、親鳥が巣の直下の水田に降りて、稲わらをくわえ水を含ませて巣に帰還したと思ったら含んだ水をかけていた光景です。(ヒナへの餌の与え方)観察していると、親が餌場で捕まえた餌を飲み込んで巣に帰還してから未消化の餌を吐き戻してヒナに与えるパターンと水田でとってきた草を嘴にくわえて巣に帰還し、その上に吐き戻しをしてヒナがそれを食べていたというパターンが観察できました。また、餌が大きすぎてヒナが食べられなかった場合は、親鳥がもう一回食べてしまう光景を目撃しました。その場合は、親鳥が出かけた後に帰還すると、ヒナが親の嘴をつつくと餌を吐き戻して与えていました。(羽づくろい)七枚目は親が若鳥の羽づくろい、八枚目は若鳥同士が羽づくろいしている光景です。(クラッタリング)成鳥雌雄が巣に帰還した際の披露してくれたクラッタリングです。(写真)一枚目:2024年5月5日、二枚目:2024年5月18日、三枚目:2024年6月3日、四枚目:2024年5月18日、五枚目:2024年6月3日、六枚目:2024年7月5日、七枚目:2024年6月17日、八枚目:2024年6月26日、九枚目:2024年6月26日、十枚目:2024年7月5日撮影
2024.07.10
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環境省(2023)が報告している2023年度秋期調査では、ミヤコドリが前年の約3.5倍の個体数となったことやオバシギが前年比約1/3に減少、チュウシャクシギが半減、ハマシギ、ダイゼンも減少する結果となり、主に⼲潟で観察される種の減少が目立ったと記されています。来月からスタートするシギ・チドリの秋の渡りはどのような結果となるか、フィールドで丁寧に観察したいと思っています。(過去のシギ・チドリの動向)環境省(2020)は、2004-2017 年度に実施したシギ・チドリ類調査結果を整理し報告しています。2023年度秋期調査で減少したと記されている種類に着目すると、オバシギは2000 年から2017 年における秋で37%減、チュウシャクシギは春で32%減、秋も冬はデータ不足で評価できず、ハマシギは春で61%減、秋で17%減、冬で46%減、ダイゼンし春で31%減、秋で32%減となっていると述べています。あわせて、シロチドリ、タシギ、ハマシギが渡り期、越冬期を通して減少し、いずれかの季節で半減以上の減少率を示した種としてシロチドリ、タシギ、オオソリハシシギ、ダイシャクシギ、タカブシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、キョウジョシギ、オジロトウネン、ハマシギを列記しています。その要因としては、ロシア側の高緯度地域の繁殖初期の気温差が小さくなっていることが秋期のシギ・チドリ類減少の要因の一つと推測されるが、気温差が拡大しているアラスカ側の高緯度地域で繁殖し、日本で主に越冬していると考えられるハマシギ亜種も減少傾向にあり、繁殖地の要因のほかに中継地や越冬地の問題も複合的に関係していると考えられると指摘しています。(引用)環境省.2020.モニタリングサイト1000シギ・チドリ類調査とりまとめ報告書.pp201.環境省自然環境局 生物多様性センター.環境省.2023.モニタリングサイト1000 シギ・チドリ類調査ニュースレター2023年度 秋期概要.pp2.(写真:撮影はいずれも三番瀬)オバシギ2023年9月13日撮影ハマシギ2016年9月3日撮影チュウシャクシギ2021年4月28日撮影ダイゼン2021年8月11日撮影
2024.07.06
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サギ科の鳥類は、餌場で群れ、繁殖のためコロニーに集結している群れと夜一緒に寝るためのねぐらを形成します。このうち、餌場での群れを近年見かけくなりつつあります。2010年以前のホームグランド手賀沼沿岸では、6月に入るとアマサギ、チュウサギが餌場で群れを見かけました。所謂局所的集中と言われるもので、融合離散を繰り返しながら餌を探っていました。誰かがよい餌場を見つけては仲間が集まってきて餌をたべ尽くしてしまい、また違う餌場を探すといった光景が見られたものです。チュウサギとアマサギの餌は、前者がドジョウ、カエル、ザリガニ、淡水魚、後者がカエル、昆虫でカエルの多い水田では両種を見かけることが多かったのです。こうした光景が見られなくなった要因については、圃場整備でザリガニ、ドジョウ、カエルなどが激減したことを複数の研究者が摘しています。水田地帯の景色にあまり変化がないので気がつかず、そういえばと思ったときにサギの姿がなくなったということになります。先日、埼玉県南部の河川敷にあるサギのコロニーを訪ねた際、従来の四分の一程度の個体数になっていたのも餌場との関係があるのかもしれません。(写真)2014年8月3日、2012年8月5日茨城県南部、2009年6月28日手賀沼沿岸、2014年7月13日埼玉県南部で撮影
2024.06.30
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一昨日訪ねた野田市三ツ堀のこうのとりの里周辺では、まだホトトギスが鳴きながら移動する姿を観察することができます。現地にいらっしゃった方との会話で託卵の話題とになりました。託卵というとカッコウ科の鳥類の専売特許のように思っているのですが、小林(2023)が報告しているように、鳥類が他の鳥類に子を育てさせる習性を「託卵」と呼んでいます。上田(1993)が報告しているようにヨシゴイの巣へのバンが卵を生みこんだものも託卵です。発見は1993年6月2日埼玉県さいたま市でのことであり、ヒメガマの沼地(水深約30cm)で発見した産卵期(4卵目)のヨシゴイの巣(水面からの商さ80cm)にバンの1卵が産みこまれていたのを観察した内容です。あわせて、状況に応じて相手を選ばずに種内・種間の托卵を行なう種類として、アメリカホシハジロは有名で、托卵の相手としてオナガガモ、マガモ、アカシマアジ、アカオタテガモ、オオホシハジロなどのカモ類、アメリカオオバン、アメリカサンカノゴイにも托卵することが知られていることを紹介しています。さらに、ヨシゴイの巣でしかバンの托卵はみつかっていないが、本研究が行なわれた調奄地ではカイツブリやヒクイナもバンの托卵をうける可能性があると指しており、関東周辺の水辺や湿地では可能性としてオオヨシゴイ、サンカノゴイなども托卵相手として考えられると述べています。(引用)上田恵介.1993.ヨシゴイの巣に托卵したバン.Strix第12巻.p224-226.日本野鳥の会.小林さやか.2023.子育てを他人に押し付けるカッコウはずるい鳥.山階鳥類研究所のおもしろくてためになる鳥の教科書.p143-144.山と渓谷社.(写真)2021年6月13日手賀沼、2024年4月22日柏市内で撮影
2024.06.28
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この6月から夏にかけて砂浜でシロチドリが巣をつくっており、卵が砂浜に埋まっていることが多く、どうしてだろうと思ったことがあります。この点ついてバードリサーチ奴賀俊光さんが、シロチドリが卵を埋める件で研究論文を紹介しています。参考までに紹介します。卵を埋める理由は、卵を隠す目的にくわえて卵の胚生発生を促進することにあると内容が記されています。奴賀(2015)は、卵の埋められ方は時間帯によって異なり、午前中により深く埋まっているという結果が得られたと報告しています。実験が行われた南スペインでは午前中の巣の周囲の温度は28.0~30.5℃で、埋められている卵は35~38℃になることが判明したと述べています。シロチドリの胚発生に最適な卵温度は、35~38℃であり胚発生のために理にかなっていることがわかったと報告しています。親鳥は、卵を埋めることで、外敵から隠すともに温度調節にもなり安心して外出できることを記しています。(引用)奴賀俊光.2015.シロチドリ,どうして卵を埋めるの?.Bird Research News Vol.12 No.7.p5.(シロチドリの羽色)・シロチドリ雄夏羽:頭部が橙褐色または全体に橙褐色を帯びる個体もいます。後者は先島諸島に生息する個体です。後頭部は白い。・シロチドリ雌夏羽、冬羽:頭部は灰褐色。嘴は細長く、胸帯は前でつながらず、灰褐色の斑があります。後頭部は白い。・シロチドリ幼羽:胸帯はバフ色気味で前でつながらない。後頭部は白い。(写真)一枚目:2014年12月6日千葉県旭市(雄成鳥)二枚目:2015年7月15日千葉県旭市(若鳥)三枚目:2015年4月22日千葉県船橋市(雄成鳥)四枚目:2015年2月11日千葉県船橋市(雄成鳥)五枚目:2012年8月15日千葉県船橋市(若鳥)
2024.06.23
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昨日、コウノトリを観察した野田市三ツ堀近郊は、びっくりする位ホトトギスの鳴き声、姿を観察できるフィールドです。滞在していた1時間半程度で合計4個体が7回も出現し、鳴き声はもちろん独特の飛翔スタイルもよく観察できました。波状飛行でヒヨドリの飛び方に近似しているような印象を持ちました。ホトトギスは宿主のウグイスの卵に似た赤い卵を産みます。上田(2016)が「万葉集にホトトギスがウグイスに托卵する習性を詠んだものがあり、万葉の時代から少なくとも1,300年間、ホトトギスは宿主転換をしていないということがわかります。カッコウのほうはたぶん何回か見破られて托卵相手を変えてゆく(以下。中略)、ホトトギスがなぜそうなったかというのはよく分からないのですが、ひとつ、ウグイスが1回目に繁殖する4月には、ホトトギスはまだ越冬地から渡ってきていないので、ウグイスは被害を受けない」と報告しています。一方、カッコウについては「戦前あたりまではカッコウは圧倒的にホオジロに托卵していました。ホオジロの卵は線状紋という糸状の模様がありますが、いま托卵しているオオヨシキリやモズやアオジの卵には線状紋はありません。ところがそういった種に托卵したカッコウ卵にも、ときに線状紋を持つものがあります。昔ホオジロに托卵していて、ホオジロが卵を捨てるようになったために宿主を変えたのだけれど、卵の模様にはホオジロの卵そっくりになっていたときの名残が現れるのではないかと言われています」と記しています。(引用)上田恵介.2016.第19回 山階芳麿賞 記念シンポジウム「子を他人に預ける鳥、カッコウ類研究の最前線」山階鳥研NEWS 2017年1月号.(写真)2023年10月13日千葉県松戸市で撮影
2024.06.18
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あこがれのコマドリに出会うため、5日夜から6日に長野県上高地へ出かけてきます。この記事は予約配信でしています。7日に観察リポートを配信する予定です。亜高山帯に生息するコマドリは、蒲谷(1995)が「雄同士のディスプレーは胸をそらし喉や胸を見せルルルルと強く鳴きくのに対して雌に対しての求愛ディスプレーは尾羽を扇子のように開いて下げ、翼を半開きにして羽ばたきルルルと鳴く」と報告されています。前者については、長野県上高地や長野県白駒池、福島県と山形県境で目撃したことがあります。今回の上高地行でも期待しています。駒鳥の名の由来について、蒲谷(1995)は、和漢三才図会にコマドリの囀りを必加羅加羅と聞き、この声を馬が走るときに鳴る口輪の金具の鳴る音に聞こえること、または頭を左右に振って鳴き姿が馬の走るときに似ているので駒鳥となったと記していることを紹介しています。(引用)蒲谷鶴彦.1995.日本野鳥大鑑下巻.p38-39.小学館.(写真)2021年6月29日長野県松本市上高地で撮影
2024.06.06
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鳥友からセイタカシギ雌は、大半が雄とヒナを残して立ち去ると聞いたと質問をもらいました。先月茨城源稲敷市で観察した際にもセイタカシギ成鳥雄と若鳥の姿を観察しましたが、そういえば雌の姿が見当たりませんでした。文献を紐解いてみると、北川(1991)が「育雛の途中でつがいの雌の半分ほどが雄と雛を繁殖地に残して立ち去ってしまう」と報告しているのを目にしました。また、「雛を育てる環境が排泄物で汚染されるのを減らしたり、雛をめぐる家族内の争いを少なくする利点がある」とも記しています。さらに、「早い時期に家出した雌は、行先で別の雄とつがい関係をむすび2回目の繁殖を行っている可能性もある」と述べています。セイタカシギは一夫一婦制が基本の婚姻形態と述べているものが多いのですが、実際はそれほど強固なものではないということになります。(引用)北川珠樹.1991.家族を基本とした群れ生活 セイタカシギ 雌の家出.動物たちの地球.通巻825号.6-198、6-199.朝日新聞社.(写真)2024年5月17日茨城県稲敷市浮島で撮影
2024.06.05
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昨日、印旛沼でヨシゴイを観察しました。雄個体が時間あたり29回の出現するのを目撃。その後、ウーッウーッと鳴き声が聞こえました。しばらくすると、その光景は見られなくなり、何もなかったように静けさに戻りました。鳴き声はどんな意味あいを持つのかと鳥友から質問をもらいました。(オス同士の追い払い行動と鳴き声)上田(1996)が、埼玉県での調査結果を報告しています。その中で「渡来当初、アシやヒメガマの群落に定着したヨシゴイは、特に夕方から早朝、「ウ-ッ,ウ-ッ」という低い声で鳴き続けている。この声は配偶者を引き寄せる意味に加えて、オス同士の,巣を中心としたなわばり宣言にももちいられているものと思われる。事実,はじめにアシ原やヒメガマの特定の場所に定着したオスが、近づくほかのオスを追払う行動がよく観察された」と記しています。印旛沼での頻繁に葦原の上を飛翔する姿は、オス同士の追い払う行動ではないかと思います。一枚目の写真は、昨日葦原の上に移動した後、喉を膨らませて鳴いていた時の様子です。(擬態)ヨシゴイは擬態を行うことが知られています。蒲谷(1996)が、敵が近づくと首を上に伸ばし枯れた葦が風にそよぐように体を振ると述べているもの、佐原(2013)が警戒時にヨシゴイがとる体をまっすぐ立ててクチバシを上に向けヨシに擬態すると記している報告があります。二枚目、三枚目の写真は、印旛沼で観察したヨシゴイの擬態です。いずれも嘴は上には向けていませんが、ヨシと同化しているように見えました。(引用)上田恵介.1996.ヨシゴイはなぜ集団で繁殖するのか:巣場所選びと繁殖成功.Strix.第14巻.pp. 55-63.(財)日本野鳥の会.蒲谷鶴彦.1996.日本野鳥大鑑.上巻.p34.小学館.佐原雄二.2013.ヨシゴイ 警戒態勢.Bird Research News Vol.10 No.1.p4-5.(写真)2024年5月30日、2021年6月26日、2022年7月7日いずれも印旛沼で撮影
2024.05.31
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今シーズン、手賀沼・印旛沼沿岸の水田地帯や茨城県南部の水田地帯でサギ科アマサギの姿をほとんど見かけません。なにかの要因で飛来が遅れているのか、それとも採餌環境が悪化して他地域に滞在地を移したのか、気をもんでいます。かつて、2001年春までは手賀沼沿岸の水田地帯で100羽前後の群れ、2008年8月に63羽の群れが見られていましたが、以降2011年から2019年の間は姿が見られず、2020年以降最も多かった2022年6月でも20羽前後の群れが観察されるのみと減少しています。バードリサーチ(2021)が、全国鳥類繁殖分布調査の結果から、アマサギ、コサギ、ゴイサギは、1970年代から1990年代にかけて確認メッシュ数が増加したがその後減少したと報告しています。減少の原因について、バードリサーチ(2019)は、湿地など開けた環境の悪化、食物の減少(畑の昆虫が減少)、大型のサギ類が増加し,小型のサギが減っている傾向があことからコロニーでの巣場所を巡る競争で小型のサギ類が大型のサギ類に負けてしまっていたなどが要因として考えられると指摘しています。(写真)1枚目:2014年4月20日印西市(夏羽:頭から胸にかけて橙黄色で背にも橙黄色の飾り羽があります)2枚目:2018年6月16日手賀沼沿岸(右側の個体が夏羽、左側の個体は頭が白色なので若鳥と思われますが、嘴が朱赤色になっていて婚姻色となっています)3枚目:2020年6月21日茨城県土浦市(頭にオレンジ色がまだらにあり、胸が橙黄色を帯びており、成鳥冬羽が夏羽に換羽中の個体と思われます)4枚目2018年6月16日手賀沼沿岸(嘴の色は成鳥に比べて淡く額にオレンジ色がないことから若鳥と思われます)5枚目:2019年9月14日印西市(頭から胸にかけての橙黄色と背の橙黄色が色あせてきており、夏羽から冬羽に換羽中の個体)
2024.05.28
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鳥友からカイツブリは双眼鏡を向けるとすぐに潜水してしまう。環境によって観察しやすいフィールドがあるのかと質問をもらいました。都内の公園でも釣人が多く見られるところとそうでないところでは潜水に違いがあります。釣人が多いところでは釣り糸に接近する動きが見られたり、水面をゆったり移動しているように感じます。この件で、文献を調べてみました。前田(2017)が滋賀県で行ったカイツブリの個体数や子育て、行動に関する調査結果を報告しています。その中で、「調査の結果からカイツブリには「人見知りが強いタイプ」と「わりあい人に慣れたタイプ」の 2 タイプがあることが見えてきました。人の近くで生息するカイツブリは、人の各種の行為が自分に利害を及ぼすものかどうかを学習するのではないでしょうか。「 釣り人の竿先から 10 mほどのところに近づき、そこで潜って採餌をした。釣り針付近に魚がいることを承知して、意図的に近づいているように見えた」という報告からカイツブリが人を利用している様子が伝わってきました」と記しています。報告の終わりに「調査地で地元の人に話しかけるとほぼすべての人がカイツブリという鳥を知って いて 、どこにいるか までご存知の方が 結構 いらっしゃいました。春から夏にかけては鳴き声が聞こえてくるからでしょうが、 漁業者や農家 の人 釣り人水辺に住む人 など 、普段自然に接する機会が多い方たちの目には留まっているということです」とむすんでいる点が印象的でした。(引用)前田雅子.2017.琵琶湖博物館フィールドレポーター2017年第1回調査「カイツブリに会いに行こう 」調査報告.pp22.滋賀県琵琶湖博物館.(写真)2021年8月5日柏の葉キャンパス駅近郊、2020年9月19日同左、2023年6月13日都内で撮影
2024.05.27
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