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2008.07.23
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カテゴリ: 本・音楽・映画等


で、もう1つ考えさせられたことというのは、「編集者」という種類の人間についてであった。
『邪宗…』に登場する編集者たちの描写を読んでいて、この女子高生マンガ家とやり取りしていた頃の自分とが重なって見えてきたのである。

『邪宗…』に出てくる編集者は、センスのない自分のアイデアを自分が担当するマンガ家に描かせようとしたり、もしちょっとでもそんなアイデアが受け入れられようものなら、いかにも「自分のアイデアをそのマンガ家に描かせている」ようなことを周りに吹聴しだす。調子に乗るとつい「あのマンガはあのマンガ家の創作物というより、編集者のオレさまの創作物も同然」みたいな隠されたホンネまで口にしてしまう。そこにはマンガ家に対する「自分の優越」をアピールしようとする編集者の屈折があらわれている。

というのも、大手マンガ誌の編集者というのはたいてい有名大学卒なのだが、自分も多少はクリエイティブな世界に興味はあってもその世界で食うだけの才能も根性もないので、お勉強によって学歴の道を選択したような輩である。
大手出版社に就職した後は、自分にはないそういった才能や根性を持ったマンガ家に寄生し、おだてたりなだめたり騙したりスカしたりしてマンガを描かせ、他人が描いた作品を世に出すことで代理満足を得ているような、もともと「スケールの小さい人種」なのである。

ボクはこの編集者の描写を読んでいて、その女子高生マンガ家が発表する作品をいっぱしの編集者気取りで分析して解読してみせたり、彼女と同世代の少女マンガ家を引き合いに出して批評していた当時の自分というのは、まさにこれらのセコい「編集者」と同じような心理にあったと思ったのである。

当時を思い起こすと、手紙のやり取りを通じて彼女がボクの意見を尊重するようになっていくうちに、実際ボクは「そのうち原作でも書いて彼女にマンガにしてもらおうか…」などという密かな野望さえ抱いたことがあった(10年くらい前に実家に帰ったときに発見した高校生当時の日記には、その「原作」のあらすじが書かれていた(笑))。

それというのも、自分が読んで感心したような作品を描くような才能が自分にはないことを百も承知していながら、その作品を分析してみせることでいかにも自分が「史上最年少デビューの天才少女マンガ家」に優越しているかのようにカンペキに誤認し(笑)、しまいにはまるで自分が彼女の創作物に不可欠な影響を与えているような大きな錯覚にさえ陥っていたのである。

昨日も日記に書いたが、ゲージュツ家・創作者(しかもその道のプロ)の自己表現というのは、呪われた者が陥った生き地獄のようなものだと思う。『邪宗…』の主人公である作者自身や、彼がデビュー前にアシスタントをしていた売れっ子マンガ家「雨木傘二」のマンガ家生活の描写を見ても分かるように、いかに本が売れて華々しく取り上げられていても、その生活は荒れ果て、精神状態も狂気と紙一重…というよりすでにアッチの世界に逝ってしまっている。創作というのはまさに身を削るような行為の上に成り立っているのである。

つまるところ、感想を述べたり批評したり「分析」したりは誰にでもできるが、そのマンガはそのマンガ家にしか描けない。それが、たまたま作者が自分の感想や分析や提案を認めたり受け入れただけで、「編集者パーソナリティ」の持ち主は「自分がその作品に欠かせない影響を与えた」と思いたがる。所詮は、そんな生き地獄を生き抜くだけの根性もなければ才能・クリエイティビティもない人間が、離れ小島で孤軍奮闘している創作者に安全な場所から好き勝手なことを言って悦に入っているようなものではないかと思ったのだ。

ボクは、そんな当時の自分を思い出し、その後音楽だのアートだのをマジメにやった時期もあったとはいえ、所詮自分みたいな「編集者」根性の小者がほんの思いつきでバンドをやったり絵を描いたりしようが、最初から成功するワケなかったんだよなあ…なーんて思ったのである。

いずれしても、売れっ子マンガ家だろうがマンガ家予備軍だろうがマンガ誌編集者であろうが、とにかく自分がマンガの世界なんかに引き込まれなくてよかった、そしてその少女マンガ家の友人もマンガ界から引退して家庭に落ち着いてよかった…と『邪宗…』を読んでつくづく思ったのでした、とても長くなりましたが、おわり





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Last updated  2008.07.24 11:50:40
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郡山ハルジ @ Re[1]:おひとりさま(07/31) 放浪の達人さんへ あ〜なるほど、そう言え…
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