おしゃれ手紙

2019.10.28
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カテゴリ: 映画
ハワーズ・エンド

愛が騒ぐ。自由の風が吹く。
葉群れと花々にこぼれるハワーズ・エンド邸を舞台に回る輪舞


知的中流階級で理想主義的なシュレーゲル家と、実業家で現実的なウィルコックス家。
正反対な両家は旅行中に親しくなり、シュレーゲル家の次女ヘレンは、田舎にあるウィルコックス家の別荘、"ハワーズ·エンド"に招かれる。
美しい田園風景と人々の歓待に囲まれ、ヘレンは次男·ポールに一目惚れするが、ある行き違いからウィルコックス家と気まずい関係になる。
その後、ロンドンのシュレーゲル家の向かいにウィルコックス家が越してきたが、ヘレンは彼らに会おうともしない。
しかし、姉のマーガレットは、合理的なウィルコックス家の中で、ただひとり魂や自然の声に耳を傾ける老婦人ルースと血のつながりを越えて深くわかりあう。
やがて「ハワーズ·エンドはマーガレットに」という遺言を残してルース夫人は逝ってしまう。
しかし遺言はもみ消され、マーガレットはウィルコックス家の当主ヘンリーの元へ嫁ぐ。
果たして、階級や立場を超えて、人は愛しあうことができるのだろうか――。

 「ハワーズ・エンド」、来た~~~!!
大好きな「ハワーズ・エンド」、2回目なので、細かいところまで、よくわかった。
最後の方で、「ハワーズ・エンド」をマーガレットに譲るというシーンのソファーの模様は、ウィリアム・モリスの柳の葉だった。

いろいろ書きたいけれど、1992年公開された時の文章を残していたので、ここにうつしておく。
「眺めのいい部屋」のジェイムズ・アイヴォリー監督が再びE・M・フォスターの小説の映画化に挑戦。
今世紀(*注20世紀)初頭のイギリスを舞台 にしたこの映画は、さまざまな魅力にあふれた傑作です。
まず、美しい田園風景や素敵なインテリア、登場人物たちの暮らしを通して、本物にイングリッシュ・スタイルを体験することができるのが大きな魅力。
 ヒロインのシュレーゲル姉妹のビスケットやケーキをつまんでのティータイム、もう一方の主役ウィルコックス家のお屋敷の庭での結婚パーティなど、イギリスならではの素敵なシーンがいっぱい!
タイトルになっている「ハワーズ・エンド」とは、この2つの家族を不思議な縁で結びつけていくことになる、ウィルコックス家所有の田舎のコテージ。
 このコテージの美しさはとりわけ際立っています。
ツタにおおわれたレンガの壁、庭に張り出したボウ・ウインドー。
古くて派手さはないけれど、周囲の自然に溶け合って人の心をなごませる、そんな魅力にあふれた家なのです。
映画の冒頭は、ウィルコックス家の夫人ルースが、この家のまわりを、夕暮れに歩き回るシーン。
家の中で談笑する家族からひとり離れ、何かに誘われるように外に出て、家を眺め、大きな楡の木に触れて・・・。
その姿はまるで幽霊か、 この家の守り神 のように見えます。
ハワーズ・エンドを愛してやまない彼女の気持ちが伝わってくるこのシーンは、映画の展開を暗示する印象的なシーンになっているのです。
実にたくさんの人物が登場し複雑な人間関係を織なしてゆくこの映画のストーリーは、大河ドラマ的な面白さと、格調高い文学の香りとを併せもっています。
ヒロインのマーガレットとヘレン姉妹は、教養があって情熱的な知識階級の人。
そして旅先で彼女たちと知り合った実業家のウィルコックス氏と子どもたちは現実的な考え方の持ち主。
ただ、ハワーズ・エンドで生まれ育った夫人だけは、どこか神秘的で家族のほかのメンバーとは明らかに異なっているのです。
このまったく異なった価値観をもつ2つの家の人々が、それぞれ反発したり魅かれ合ったりしてゆく様子を、映画は一定の距離を置いて描いています。
また、向上心がありながら、今ひとつ上の階級へのぼれずもがいている労働者階級の青年レナードの存在も重要になっています。

情緒的なもの、富裕な資本家階級と貧しい労働者階級。
こうした対照的な2つの世界が、反発しながらも触れ合って、この映画のストーリーは進んでいきます。
ハワーズ・エンドを愛するルース夫人が死んでからの波乱万丈の出来事は、TVの大河ドラマみたいで、それだけでも楽しめます。
だけど、この映画の魅力は、彼らの人生をある一定の方向へ導いている、不思議な力、スピリチャルな存在の視点で描かれているところです。
そのスピリチャルな存在を象徴するのが、ルース夫人とハワーズ・エンドなのです。
そういう点でとても印象深かったのは、マーガレットがハワーズ・エンドを訪れるシーン。
シュレーゲル家の荷物を預かった管理人の老婦人が、その荷物を解いてハワーズ・エンドの部屋に置きます。
すると、マーガレットの家具は、まるで昔からそこに存在していたかのように、この家のぴったりとなじんでしまうのです。
「あるべき物があるべき場所におさまる」そんな人事がこの映画の結末にぴったり。
さまざまな違いを乗りこえ、不思議に結びつく人間の運命を実感してしてしまいます。 文・清水倫子(雑誌「オリーブ」より)
家が持ち主を選びとる。
そんなこともあるよねって思わせる、文学の香り高い作品。

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Last updated  2019.10.28 00:10:37
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天地 はるな @ Re[1]:小早川家の秋★午前十時の映画祭(06/27) New! maki5417さんへ 1950年代か60年代のはじ…
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