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大晦日。関西地方はおだやかな天気です。皆さまはいかがお過ごしでしょうか? 家の中の片付けは終わりましたか? おせちの準備は万全でしょうか。 さて、ことし一年、うらんかんろのブログを訪問してくださった皆さま、有難うございました。とくに、共感や励ましの温かいコメントをくださったブログの友人の皆さんには、改めて心から感謝を申し上げます。 開設2年が過ぎ、10万ヒットの節目も通過して、3年目を走っています。3年目は原則「中3日」のペースにスローダウンしておりますが、どうか来年も何卒よろしくお願いいたします。 我が家にはあす元日午後から、家族のほかに4組(ひょっとして5組?)の友人夫婦らが訪れて来て、飲めや歌えや(?)の大宴会となる予定です(総勢10数人!)。 昨年の正月は前年に義父が亡くなったため喪中だったので、、ことしはにぎやかな1年のスタートになりそうです(おせちの準備も、たぶん万全?! 手作りの「正月飾り」=写真=も作りました)。 相次ぐいじめ、子どもの自殺、ホームレス殺人、耐震強度偽装、談合3知事の逮捕等々…暗い、不愉快なニュースばかりが目立った2006年。来る年には、とにかく明るいニュースを届けてよと願うばかりです。 皆さまと皆さまの家族にも、穏やかで幸(さち)多い1年でありますように!こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2006/12/31
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神戸を代表する老舗の酒場が、あす(28日)を最後に約40年の歴史を閉じる。 三宮のBar「SAVOY(サヴォイ)」。オーナー・バーテンダーの小林省三さん(75)は、世界カクテルコンテストで優勝したほどの素晴らしい腕を持ち、関西だけでなく、日本全国のバーテンダーにその名を知られた方だ。 物腰柔らかく、気配りあふれる接客、そして時折放つジョークの数々。これぞバーテンダーの教科書のような人で、その立ち振る舞いがすべて「絵になる」素敵なプロだった(写真左=「マティーニ名人」で知られる小林さん。流れるような所作も美しい)。 阪神大震災で受けた大きな被害(店は「震度7」のエリアにあった)も乗り越えて、店を再建した小林さんだったが、ことし奥様を亡くされてから、めっきり元気がなくなった。体調を崩し、店を休むことも多くなった。 弟子のバーテンダーの皆さんたちや常連客らが励まし続けたが、それでも店に幕を引く決断をしたのは、一緒に店を切り回していた“戦友”のような奥様の存在を失ったことで、体力や気力が奪われてしまったのが大きく影響したのかもしれない。 長年お世話になった小林さんに御礼を言いたくて、僕は昨夜(26日)、「SAVOY」にお邪魔した。小林さんは、店のフィナーレで連日たくさんの客の相手をしているためか、やや疲れた顔をしていた。 僕は、やはり最後にもう一度、「SAVOY」のカウンターで、小林さんのマティーニが飲みたいと思って、お願いした。道連れで同行してくれた友人ももちろん、マティーニを頼んだ(写真右=2杯目にいただいた「Sun Expo」は70年大阪万博でのカクテルコンテストでのグランプリ作品!) 「店がなくなってしまうなんて、ほんとに悲しいです。残念でなりません」と話しかけた僕に対して、小林さんは「いやぁ…これは僕の一事だから…」「もう、潮時だしね…」と言葉少なに語った。 小林さんほどの人脈があれば、探せばいくらでも後継者は見つかっただろう。お弟子さんは何人も育って、「SAVOY」の名を付けた「2号店」もあるのに、小林さんはそういう選択はせず、一代限りで幕を引く決断をした(その決断に、赤の他人の僕がどうこう言うべきではないだろう)。 小林さんはこの先の予定について、はっきりとは語らなかった。「元町でちょっと教える仕事もあるし…」とポロっと漏らしていた。店はなくなっても、またどこかで小林さんに会えるなら、とても嬉しいのだけれど…。 店を去る時、僕は小林さんの手を両手でしっかり握って、「元気でね。また戻ってきてよね。待ってるから…」と伝えた。小林さんはただ、「ありがとう、ありがとう」と言って、笑顔で僕の手を握り返すだけだった。その笑顔を見て、僕はもう少しで泣きそうになった。 こうして、老舗BARの灯がまた一つ消える。2代、3代と続くBARもあるが、バーテンダーに寿命がある以上、BARは永遠ではない。永遠であり続けるためには、その歴史を紡いでいってくれる後継者たちが必要だ。 「SAVOY」が一代限りで消えることは、寂しすぎる、悲しすぎる現実だが、僕の記憶の中では、小林さんの思い出とともに、「SAVOY」は永遠に生き続ける(写真左=「SAVOY」の玄関。このプレートも見納めかと思うと悲しい)。 「SAVOY」閉幕まで、きょうを含めてあと2日。もし、神戸の老舗BARの最後の輝きを見たいという方は、ぜひきょう、あすの2日間のうちにお越し下さい。【Bar SAVOY】神戸市中央区北長狭通2-1-11 玉廣ビル4F 電話078-331-2615 午後6時~午前0時こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2006/12/27
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メリー・クリスマス! ホット・カクテルの美味しい季節です。現時点ではまだ暖冬なのですが、寒い日には、僕もBARでホット・カクテルを頼むことが多くなってきました。 という訳で今冬、これまでにBARで頂いたホット・カクテルのなかで印象に残っているものを3つ、4つほどご紹介します。 まずは、「コアントロー・ショコラ」(写真左)。大阪キタの親しいバーテンダーのSさんがつくってくれたのですが、う~ん、一口飲んでこれは、もう絶品!です。思わず「旨い!」と叫んでしまったほど。 コアントローにチョコレート・クリームを加え、お湯で割ったという比較的シンプルなレシピ(アーモンドのすり下ろしを、最後に表面に散らす)なのだが、たぶん素人が同じようにつくっても同じように美味しくできないだろうなぁ…。 Sさんはテクニシャンだから、きっと何か、隠し味というか、客には分からない“仕掛け”をしているはずだから。でも、これってカロリーは高そう。 「高コレステロール気味だから要注意」との指示を医者から受けてる身からすると、美味しいけどあまり頼めないのがつらい(笑)。 2杯目は、その名も「ベネディクテン・ミルクティー」(写真右)。これは大阪・京橋のBar「M」のKさんのオリジナル。ミルク&ヨーグルト系カクテルの好きな僕としては、きっと気に入るはずだが、予想通りの旨さ。 ベネディクティンというのはフランスの薬草(ハーブ)系のリキュールなのだが、Kさんはこれを煮出したアッサム紅茶で割って、素晴らしいホット・カクテルに仕上げた。 薬草系リキュールと紅茶がこれほど相性がいいとは、僕にとっても新たな発見だった。薬草系リキュールはたくさん種類あるので、いろいろバリエーションが楽しめそうだ。 さて、3杯目。名前は知っていたのだけれど、まだ飲んだことがなかったので、先日、大阪キタのBar「C」で頼んだのが「ホット・イタリアーノ」(写真左)。 アマレットという甘口のリキュール(あんずの種などを原料にしたアーモンド風味のリキュール)にオレンジ・ジュースを加え、温める。そしてシナモン・スティックでかき混ぜていただく。 アルコール度数も低いから、お酒にそう強くない人でも十分楽しめるし、風邪をひいた時などの寝酒にもちょうどいいかもしれないなぁ。 ほかにも、別のBARではジンジャー・ワインのホット・カクテル(レモン・ジュースを少しプラス)っていうのも味わった。これもジンジャー(しょうが)の風味が効いて、病みつきになりそうな旨さだった。 ことしもいろんなBARでバーテンダーを困らせながら、いろんなホット・カクテルをつくってもらおう。願わくは、温かいお酒を飲みたいと思えるように、もっと冬らしい寒い気候になってほしいんだけど…。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2006/12/25
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ブログの友人、ステラビアさんから「年末にぴったりバトン」(?)をいただきました♪ でも結構難しい質問ばかり…。う~ん、答えるのが大変(笑) ◆2006年は、貴方にとってどんな一年でしたか? 第二の人生での生きる道(=夢)を、たとえ成功する保証がなくても、「絶対にやるぞ」と決心した1年でした。70歳、80歳になって、あのときこうしとけば良かったとはもう後悔したくないので…。 会社に出した「自己申告書」(年1回提出します)でも、再雇用を「希望しない」と書いて、自分の心の中では「退路」を断ちました。 ◆仕事/学業はどうでしたか? 来年はどうしたい? 仕事はまずまず順調でした。新しい職場も2年目に入り、結構思い通りできる部分も増えてきて、自分の「色」を出せるようになってきたかなぁと思っています。 学業は? いかん、いかん、「やり直し」を誓ったイタリア語、少しなまけてますねー。 ◆では、恋愛は? 叶わぬ恋なら、いくつもしました(笑)。来年はね…、いかんいかん、これ以上書いたら大変なことになってしまう(笑)。 ◆今年の一番大きな買い物は何? アンティ-クのカクテル・グラス。*万円也! アンティ-ク・グラスって、気に入ると、つい衝動買いしてしまうんですよね。墓場まで一緒に持っていけないことが分かっているのに…。男って、バカですよねー。 僕が死んだら、「持っているアンティーク・グラスのコレクションはすべて、親切にしてくれた何人かのバーテンダーに差し上げます」って、遺言書にはもう記しています。 ◆もうすぐクリスマスですが…予定は? 予定は未定です(笑)。でもきっと、どこかのBARで飲んでるか、「M」でセッションしているかでしょうね(^_^)v ◆年末ジャンボで100,000円当たりました。 何に使う? 10万円ですかぁ…、僕も現実的な金額に悩んでしまいます(笑) ちょっと勇気がなければ買えないモルト・ウイスキーかワインを買うでしょうね。 ◆どこで新年を迎える? 新年はだいたいいつも家で迎えます。いつもは大晦日、泊まりがけで遊びに来る友人夫婦と一緒にカウントダウンしてシャンパンで乾杯するのが恒例になっているですが、今年は一日遅れの元日に集合することになりました(だから、きっと家で飲んだくれながらの静かな年越しでしょうね)。 ◆年賀状はもう書いた? 何枚位出す? パソコン&プリンターで印刷はしましたが、まだ書いていません。次の週末に一気に書くつもり…。 惰性かもしれませんが、数は最少限に絞ってはいるけれど、毎年書いてしまいます。仕事関係も含めたら、なんと約400枚も…、はっきり言って疲れます。 ◆今年、一番楽しかったことや嬉しかったことは? ブログももちろんですが、今年もいろんな出逢いや再会があったこと。僕の将来への思いを理解してくれる友人と、素敵な思い出をつくることもできました。 ◆2006年の三大事件(自分のこと、世の中のこと何でも可) ☆新しい「家族」が増えることになった(さて誰のことでしょう?) ☆もう亡くなったと思っていた元BAR「Sunshine」のマスターと17年ぶりに再会できた & もうなくなったと思っていたBAR(「Charlie Brown」)がまだ健在で、その店を引き継いだマスター(故人)の奥さんと出逢えた。 ☆難しいバラの栽培に挑んだ(1種類は枯らしたので、まだ完全に成功したとは言えないけど…) ◆このバトンを回す人 強制するのはいやなので、お名前はあげませんので、よかったらご自分で書いてみてくださーい。Bさん、Jさん、Nさん、Kさん、Yさん、Mさん、Pさん、Hさん、Aさん、Iさん、Wさん、Eさん、Uさん…。 ◆お疲れ様でした。良いお年を。最後に来年の抱負をどうぞ 僕もステラビアさんと同じです。今やらなければならないことに頑張りつつ、将来の夢のために、真面目に少し準備も始めてみようと思っています。 そして、遊びももちろん、できる範囲で全力投球で。国内外の未知の土地のBARに足を踏み入れたい。ピアノももっと真剣に練習したい(ジャズのレパートリー増やすぞー)。イタリア語ももう一度まじめに取り組みたい(えっ、夢が多すぎるって?)。時間がいくらあっても足りないなぁ…。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2006/12/21
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いま、とてもハマっている曲があります。Mr.Children(ミスター・チルドレン)の最新シングル「しるし」(11月15日リリース=写真はジャケット)。 前作「箒星(ほうきぼし)」から約4ヶ月ぶりのシングルで、日本デレビ系のドラマ「14才の母」の主題歌なのですが、これがまた素晴らしい極上のバラードなのです。 僕はあいにくドラマの方は観ていません(もう終わったのかな?)が、主題歌は発売早々、オリコンのシングル・チャートで首位を独走しているとか。 最近はいささか凝り過ぎた曲づくりが目立っていたミスチルでしたが、「しるし」の切ないほど、美しいメロディーは初期のバラードにも似た、原点に帰ったような雰囲気があります。 ブログなどでは「しるし」をめぐるミスチル・ファンの書き込みも目立ちますが、そのどれもが「これは最高の1曲だ」「涙が出て止まらなかった」と誉めちぎっています。 哲学的とも言えるような歌詞。ミスチルの詞は他の曲でもそうですが、桜井クンしか書けない独特の世界があります。あんな発想や言葉の選び方は彼にしかできません(字余りで歌いにくいんです(笑))。歌詞の一部(全文引用するとたぶん著作権法違反になるので)を紹介すると――。 しるし(桜井和寿作詞・作曲) 最初からこうなることが決まっていたみたいに 違うテンポで刻む鼓動を互いが聞いている どんな言葉を選んでも どこか嘘っぽいんだ 左脳に書いた手紙 無茶苦茶に丸めて捨てる 心の声は君に届くのかな 沈黙の歌にのって ダーリン ダーリン いろんな角度から君を見てきた そのどれもが素晴らしくて 僕は愛を思い知るんだ 「半信半疑=傷つかないための予防線」を いま、微妙なニュアンスで 君は示そうとしている 「左脳に書いた手紙」とか「半信半疑=傷つかないための予防線」なんてフレーズは桜井クンでなければ書けないでしょう。素晴らしいメロディー・メーカーであるとともに、唯一無比の詩人である桜井クンに拍手です(ちょっとホメ過ぎかな?)。 振り絞るような歌い方がまたいいんです。胸にぐっと迫って、聴いていて惚れ惚れしてしまいます。「しるし」はミスチルの曲のなかでも、きっと最高の1曲になるのではないかと僕も信じています(ちなみに7分を超す超大作!)。 いい曲ならば自分で弾き語りして歌いたい僕。しかし、キーを変えながら何度がトライしましたが、駄目です。ギブアップです。原曲のキーはC♯、半音下げて歌いやすいCに移調しましたが、出だしはいいものの、「ダーリン、ダーリン」の歌詞で始まるサビが高すぎて、音(声)が出ません。 思い切ってキーをGに変えたら、今度はサビは何とかなるものの、出だしの部分は音が低すぎて、曲がサマになりません。要するに、この「しるし」、音域がめちゃくちゃ広い歌なのです。 テレビの音楽番組で、この「しるし」を歌っているミスチル&桜井クンを何度か見ましたが、首の血管が浮き上がり、声がひっくり返る寸前くらいのハードな歌でした。「プロの桜井クンにして斯様に難しい曲を、素人である僕に歌いこなせるはずがない」と納得して、無謀な挑戦はやめました。 そこで、たってのお願いです。この「しるし」をBar「M」で、僕の歌伴で歌ってくださる方を募集中です(笑)。キーは、貴方が一番が得意なキーに合わせます。我こそはと思わん方はコメント欄でご返信を!【追記1】お陰様でアクセスがまもなく10万ヒットを超えそうです。「泣いたり笑ったり 不安定な思いだけど それが君と僕のしるし」(「しるし」の歌詞から)。このブログはさしずめ、訪れてくれる皆さんと僕が共同で作り上げている「しるし」かもしれません。今後とも末永くよろしくお願いいたします。【追記2】12月17日午前6時41分、10万ヒットを超えました。皆さまに感謝でーす!(「キリ番」を踏んだのは、残念ながら僕のブログ友だちではありませんでしたが…)。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2006/12/17
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神戸・三宮にあるそのビア・パブのドアを開けるまでは、不安が消えなかった。「ほんとに来ているんだろうか…」。ちょっとワクワクしながら、入り口に通じる階段を登った。そして、ドアを押し、真っ先にカウンターに座る人たちを見た。いた! 忘れもしない、あのロバさんの顔が…。 17年ぶりの再会だった。少し太ったような感じだけれど、あまり変わっていおらず、元気そうな様子。「ロバさん、お久しぶりです。いつも店にお邪魔していた**です」。 少し戸惑った表情を見せたロバさんだったが、「よく来てくれたね。元気?」と、相変わらず少したどたどしい日本語で歓迎してくれた。 僕は心底、本当に嬉しかった。ロバさんとはもう一生会えないだろうと思っていたから(写真左=17年ぶりに再会したロバさんと僕)。 出会いはもう20数年前になる。神戸で仕事をしていた頃、僕はBAR好きの友人に連れられて、元町界隈のいわゆる「外人BAR」によく出入りしていた。なかでも僕が一番お邪魔する回数が多かったのは、中華街の少しはずれにある「サンシャイン」というBARだった。 「サンシャイン」はデンマーク人船員のたまり場だった。夜、店内にはいつもヒゲもじゃの船員たちが集い、アクアヴィットの杯を重ね、賭けダーツに興じていた。デンマーク語が飛び交う店内にいると、まるで日本にいるのを忘れるような空間だった。 同じくデンマーク人のロバさんは、その「サンシャイン」のマスターだった。元デンマークの船会社の船員だったが、寄港した神戸が気に入って居着いてしまい、日本人の奥さんをもらった(写真右=店の写真は1枚も持っていない。成田一徹氏の切り絵に描かれた「サンシャイン」が唯一、店内の様子を伝える)。 だが、コンテナ船の荷の積み下ろしの機械化が飛躍的に進む中、80年代後半になると、朝入港し、夕刻には出港というのが当たり前になってきた。昔は岸壁で一晩船体を休める間に、船員たちは陸に上がり、お気に入りの酒場で航海の疲れを癒した。 技術革新は船員たちの陸に上がる時間も奪ってしまった。そして、ミナト神戸の「外人BAR」からは、外国人船員たちもが急速に姿を消していった。当然の如く、「サンシャイン」は苦境に陥り、折しものバブル経済の過熱による地上げ攻勢もあって、1989年、ロバさんはやむなく店をたたんだ。 この日僕は、「ほんとは、店をずっと続けたかったんでしょう?」と聞いた。ロバさんは「船が港に一晩とまってくれないから、(閉店は)仕方なかったよ…」と応えた。ロバさんは「いい時に店を売ったよ」とも言ったが、その表情は少しさびしそうだった。 「デンマークに帰ろうとは考えなかったんですか?」と僕。「もう30年以上も神戸に住んでるし、ね。もうここ(神戸)の方がいいよ」とロバさん。この日、ロバさんの本名も初めて聞いた。ロバート・ローセン(Robert Laursen)。デンマーク語だと「ラウルセン」とでも読むのかな? 年齢もことし70歳だと知った(店を閉じた時は、まだ53歳の若さだったんだ!)。でも、70歳には見えないロバさんはいたって元気そう。このパブに毎週水曜日夕に訪れて、神戸在住のデンマーク人や昔の「外人BAR」の経営者仲間との旧交を温めているという。 ロバさんがこのパブ(写真左)に毎週水曜に出没しているという「特ダネ」を僕に教えてくれたのは、あの「チャーリー・ブラウン」のマスター、キディ(故人)の奥さん、律子さんだった。律子さん、ロバさんとの素敵な再会を取り持ってくれて、ほんとに有難う! 日本人客を取り込んで、今もしぶとく生き残っている「外人BAR」もある。「サンシャイン」は続いてほしかった酒場だったが、ロバさんは自分自身で、「ミナト神戸が華やかだった頃の象徴」の幕を引く決断をした。 時代の流れの中で、新たに生まれるものもあり、消えていくものもある。またの再会を約束して、僕はそのパブを後にした。「サンシャイン」は姿を消したけれど、このBARを愛したすべての人たちの脳裏で、思い出は永遠に生き続けていくだろう。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2006/12/14
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スコットランド産のシングル・モルトは、本土のほか、6つの島(アイラ島、ジュラ島、アラン島、マル島、オークニー島、スカイ島)で生産されている。 アイラ島以外の5つの蒸留されるモルトは、「アイランズ・モルト」とも言われ、それぞれに個性溢れるモルトを産み出している。 今回紹介したスカイ島産の「タリスカー(Talisker)」(写真左=オフィシャルの10年ものです)も、アイラでもジュラでもアランでもない、独特の味わいが特徴だ。 僕が「タリスカー」と出合ったのは、本格的にモルトを飲み始めてしばらく経った頃。島生まれのモルトに共通する潮の香りやスモーキーさはある。 しかしそれだけではなく、スパイシーで、力強くて、ぴりぴりくるようなテイスト。しかし少し加水すると、ドライ・フルーツのような甘い香りも現れるから面白い。 プロのウイスキー・ブレンダーはよく、「舌の上で爆発するような」とか「強い胡椒のような風味」とか表現する。そんなモルトはスコットランドでも、他にはない。強いて言えば、オークニー島産の「スキャパ(Scapa)」に近い雰囲気がある。 タリスカー蒸留所(写真右)は1831年、スカイ島の西岸にあるカーボストという町で創業。現在でも、島で唯一の蒸留所だが、当初は地元の教会から、「風紀が乱れる」と猛反対されたという話も伝わっている。 独特の「胡椒のような風味」はどこから生まれるのだろうか。それは、独特の形状をした蒸留所の初留釜(ポットスチル)に秘密があるという。 初溜釜から再溜釜へつながる中継管の途中から細い管が枝分かれし、その管は再び元の初溜釜へ戻る仕組みになっている。 初溜の後、中継管に残ったニューポット(蒸留されたモルトの原液)は再び、初溜釜に戻り、初溜釜のニューポットと混じり合い、再び蒸留される。 こうして繰り返し蒸留されたニューポットはどんどん、スパイシーで、濃厚な味わいに変身していくのだという(写真左=オーク樽で熟成させた後さらにシェリー樽で熟成させた「ダブル・マチュアード」。旨いです)。 もう一つの秘密は、モルトの造りの仕込み水に使われる蒸留所の周辺の地下水。この地下水なしではあの独特のスパイシーさは生まれないという。蒸留所の数だけ違った味わいがあると言われるのは、やはり仕込み水の個性に負うところが多いのかも。 そして、蒸留所はごつごつした岩場の多い海岸べりにある。長い熟成の眠りにつく間、海からの潮っぽい風に包まれて、スパイシーでパワフルでスモーキーな「タリスカー」が育っていく。 昔はそんなに飲まなかったタリスカーだが、最近は結構、BARで頼む頻度は多い。アイラでもスペイサイドでもない独特の個性。ボトラーズ(独立系瓶詰め業者)のモルトも数多い(写真右=今はなきオールドボトル。昔飲んだけど、感動ものでした)。 普通のモルトに飽きた人は、ぜひ一度BARで「タリスカーをストレートで」と頼んでほしい。そして、まずそのまま味わって、その後1対1くらいに加水して味わってほしい。きっと、今までとは違うモルトの世界が開けるはずだ。 ちなみに、銀座にこのモルトの名をとった有名なBAR(僕も時々お邪魔するお店です)があるけれど、マスターのUさんは、以前、ある雑誌で一番好きなモルトとして「グレンリベット」を挙げていた。じゃぁ、なんで「タリスカー」なのかな? 今度聞いてみようっと。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2006/12/10
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2005年11月20日、ビートルズの"ニューアルバム"「LOVE」(写真)がリリースされました。洋楽アルバム・チャートでは早速ベスト10に入る人気です。グループを解散して36年も経っているうえ、メンバー4人のうち2人もがもう他界しているのに、「ニューアルバムだって?」と疑問を思う人もいるかもしれません。 ビートルズについて言えば、未発表分も含めると膨大な音源が残されていて、既発表曲でも未発表テイクが多く、音の悪い海賊盤が氾濫していることでも知られています。ファンの一人としては、公式音源できちんとした未発表バージョンをリリースしてくれることを望んできました。 1995年には、80年に亡くなったジョンの未発表曲に残りの3人が演奏やコーラスで協力した「フリー・アズ・ア・バード」を、96年には同じ方法で「リアル・ラブ」という新曲を出してくれました(プロデューサーはジェフ・リン)。 その後、2003年にはデビュー後の長い間、彼らのプロデューサーをつとめたジョージ・マーチンの手によって、名アルバム「レット・イット・ビー」のオリジナル演奏の音源を使った「レット・イット・ビー・ネイキッド」が発表されたのは記憶に新しいところです。 以来、3年ぶりとなるこのアルバム「LOVE」は、なんと26曲入りというボリューム!。ことし80歳を迎えるジョージ・マーティンと、その息子のジャイル・マーティンが共同制作したものです。ただし、ニュー・アルバムと言っても、まったくの新曲があるわけではありません。 もともとこのアルバムの曲は、ラスベガスで行われた「シルク・ドゥ・ソレイユ」という劇団の音楽ショーのために、ビートルズの残した膨大な音源を使って制作され始めたのですが、ポールやリンゴの発案で最終的に一つのアルバムとして発表するようになったということです。 慣れ親しんだビートルズの複数の名曲が1曲にうまくリミックスされ、再アレンジされて、時にはまるで別の曲のように生まれ変わっています。一言で言えば、名曲の「音のコラージュ」という雰囲気。意外性の面白さと言ってもいいと思います。 ただ100点満点であえて点数を付けてば、結果的にあまり雰囲気が変わっていない曲も結構あるので、87点くらいでしょうか(第一印象では90点以上だったんだけど…)。ただ、もともとが素晴らしい名曲ばかりです。リミックスだという先入観抜きで初めてビートルズを聴く人には、きっと95点以上は付けられるアルバムだと思います。 結論として、ビートルズの音楽を知り尽くしたジョージ・マーチンにしても、名曲をいじって別の曲のように仕立て直すのは限界があったということでしょうね。さて、ヒマな僕が、じっくり聴いたうえで全26曲についてコメントすると――(ただし、僕は「ビートルズおたく」ではないので、間違いがあればどなたかご指摘ください)。 1.Because 「アビー・ロード」(1969)収録曲。完全なアカペラ・バージョンですが、曲自体の雰囲気はあまり変わりません。 2.Get Back~3.Grass Onion 言わずと知れた「レット・イット・ビー」(1970)の代表曲。冒頭に、「ア・ハードデイズ・ナイト」のイントロ、「ジ・エンド」のドラミングなどをうまくつなぎ合わせて、「ゲット・バック」の本編へ導入しています。曲中でも、「グラス・オニオン」「アイ・アム・ザ・ウオルラス」など計13曲の断片がうまくコラージュされているから、探してみるのも面白いです。 4.Eleanor Rigby~Julia 前者は「リボルバー」(1966)に収録。バックはストリングスをやや強調したアレンジ。でも、もともとストリングスが印象的な曲だったので、さほど新鮮さはありません。後者は「ホワイト・アルバム」(1968)でジョンがボーカルをとっている名曲ですが、これは短いインストルメンタルだけのバージョン。 5.I Am The Walrus 「マジカル・ミステリー・ツアーズ」(1967)に収録。前半はオリジナル・バージョンとあまり変わりませんが、後半はいろいろ細かい仕掛けも。 6.I Wanna Hold Your Hand 1963年,5枚目のシングル。冒頭と終わりの歓声のコラージュ以外、あまりオリジナルと変わりません。 7.Drive My Car ~ The Word ~ What You're Doing これのメドレーというか、3曲のコラージュはめちゃ良く出来ています。このアルバムの中でももっとも完成度は高いです。まるで新しい曲みたいです。 8.Gnik Nus 「アビー・ロード」収録の「サン・キング」を逆回転したら、こんなおもろい曲になりましたというのがミソ。タイトルはもちろん「Sun King」のつづりを逆にしたものです。 9.Something ~ Blue Jay Way 前者は言わずとしれたジョージの代表曲です。オリジナルはよく知っているから、耳を凝らしてよく聴いてみましたが、どこがオリジナルと変わってんのかよく分からなかったです。すみません。ひょっとして、後者の曲をラストにつなぎ合わせただけ? 10.Being For The Benefit Of Mr. Kite ~ I Want You ~ Helter Skelter 3曲のミックスですが、「ヘルター・スケルター」はあまり目立っていません。でも出来はなかなかいいです。3曲以外にも、いろいろ混じっています。 11.Help 1965年発表、5枚目の同名アルバムのタイトル・ナンバー。ほとんどオリジナル・バージョンに近いです。 12.Blackbird ~ Yesterday 前者の有名なギター・イントロに、名曲中の名曲の後者をつなげたものですが、ちょっと安易かなぁという印象です。これをコラージュというのはちょっと辛いかなぁ。 13.Strawberry Fields Forever これはまったく新バージョン。デモ・テープでの弾き語りを導入部分にし、他にもいろんなテイクをつなぎ合わせているようです。「イン・マイ・ライフ」のや「ピギース」、「ペニー・レイン」「ハロー・グッドバイ」など有名な曲の間奏や歌のさわりをうまく混ぜ込んでしていて、面白い。こんな遊び心が大好きです。完成度も高くて、技能賞ものかな。 14.Within You Without You ~ Tomorrrow Never Knows 前者はジョージのインド指向を映した代表曲(「サージェント・ペッパーズ」=1967=収録)。あまりいじりようがないのでしょうねぇ…。後者は、「リボルバー」のなかの実験曲。さてこのメドレーの試みは成功とみるかどうか。 15.Lucy In The Sky With Diamonds 「サージェント・ペッパー」収録の名曲。オリジナル。・バージョンとは別テイクを基にしたアレンジなのか、それともオリジナル・バージョンを少しいじっているのかはよく分かりません。若干、変わった雰囲気に仕上がっていますが、オリジナルの域は出ていません。 16.Octopus's Garden 「アビー・ロード」収録。リンゴがボーカルをとった曲。冒頭の伴奏は「ホワイト・アルバム」の「グッド・ナイト」を重ね合わせていますが、これがなかなかいいです。「イエロー・サブマリン」の断片もうまくコラージュされています。 17.Lady Madonna 1968年発表のシングル。僕も大好きな曲の一つです。面白いアレンジで仕上げています。「ヘイ・ブルドッグ」の伴奏とこれほどうまくかみ合うとは驚き! これは成功例だと思います。 18.Here Comes The Sun ~ The Inner Light 前者は「アビー・ロード」に収録されたジョージの代表曲。パーカッションに少しインド風の味付けがしてあるのは、ジョージへの敬意の表れでしょうか。後者は次曲へのつなぎのような位置付けです。 19.Come Together ~ Dear Prudence ~ Cry Baby Cry 1曲目は「アビー・ロード」収録で、言わずとしれたジョンの代表曲。意外なほどオリジナル・バージョンに近いです。どこがコラージュなの? と思ったら最後の方で、2曲目(「ホワイト・アルバム」収録)がからんできました。3曲目は次曲へのつなぎです。 20.Revolution 1968年、シングルで発表された「ヘイ・ジュード」のB面。ジョン主体の曲ですが、僕は結構この曲が好きです(現役時代、4人でバンド・スタイルできちんと演奏しているプロモーション・ビデオはこの曲くらいでしょうね)。ギターの音のひずみ具合がオリジナルと少し違うので、別テイクかもしれません。 21.Back In The USSR 「ホワイト・アルバム」の1曲目に収録されたビートルズの代表曲。これもあまりオリジナルとは変わっていません。さすがのマーチン親子もこれだけ曲数があると最後の方はお疲れで、少し手抜きしたのかなぁ…。 22.While My Guitar Gently Weeps これはまったく新しいバージョン。ジョージのアコースティック・デモ・バージョンに、新たにアレンジし、録音したストリングスを重ねています。原曲の良さは生かしつつ、うまく仕上げているけれど、まったく別の曲になったかと言えば、原曲のメロディーがあまりに素晴らしいので、その域は出ていません。 23.A Day In The Life 「サージェント・ペッパー」収録の名曲。オリジナル自体が、ジョンとポールがそれぞれに作った別の曲をジョージ・マーチンがうまくくっつけた曲です。もともとがかなり実験的なことをいろいろやっているので、それをまたコラージュするのは難しかったようで、アレンジも基本的にはオリジナルを踏襲しています。 24.Hey Jude 1968年発表のシングルで、ビートルズのシングルで最も売れた曲とか。これもほとんどオリジナル・バージョンです。各楽器パートの録音レベルは少し変えているようですが、あまり変わったという印象はありません。ラストで、ポールのベース・ソロを際立たせていますが、これがなかなかいいです。 25.St. Pepper's Lonely Hearts Club Band(Reprise) ヘイ・ジュードのラストがフェイド・アウトしていくのに重なって曲が始まりますが、曲自体は、これもオリジナル・バージョンに近いです。 26.All You Need Is Love ラストは1967年発表のシングル。オリジナルとは違うテイクで、ベースが冒頭から入っています。ラストもオリジナルとあまり変わり映えしなくてはファンに怒られると思ったのか、マーチン親子はこの曲では、「ペニー・レイン」他の名曲の断片をたくさんコラージュしています。曲の最後は、いつのまにか「グッド・ナイト」に曲が変わって終わります。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2006/12/06
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【前おきを少々】本日の日記は少々長いです。覚悟してお読みください。少しでも読みやすいようにと、小見出しを挟みました。また、我が愛する多くのBARのマスターやバーテンダーにとっては、少々きつい内容となっています。けれど、これはBARを愛してやまず、バーテンダーという職業を心から尊敬する一人のBARファンの言葉と思い、お聞き願えれば幸いです(以下、本文へ)。 人は何のためにBARへ行くのか 僕にとってBARがない人生も、BARがない街も、考えられない。だから、BARは僕にとって、永遠に居心地の良い場所であってほしい。酒呑みはなぜBARに行くのか? 単に酒を飲みに行くためでも、酔っぱらうためでもない。 僕が思うには、酒呑みがBARに通うのは、バーテンダー・バーテンドレスと会って話をしたいがためであり、彼らのつくる美酒を味わいたいがためである。そして、非日常空間で日常を忘れ、日々の疲れを癒したいがためである。 モルトウイスキーを片手に、そんな「独り言」を頭の中で反芻しながら、買ったばかりの月刊誌「男の隠れ家 2007年1月号」(あいであ・らいふ刊)を、家のリビングでパラパラとめくっていた。 思わず目にとまったやりとり すると、ある文章に思わず目が止まった。1月号は「東西146軒、男のくつろぎの空間 大人の酒場」と題したBAR特集である。今や女性もどんどん一人でBARを楽しむ時代に、「男の…」と限定する表紙のコピーのセンスにはがっかりさせられるが、内容はそれなりに充実している。 目が止まったのは、その特集のなかで、BARをこよなく愛する二人、切り絵作家の成田一徹氏と作家の森下賢一氏による対談。二人はBARという空間での楽しみ方をあれこれ語り合っているが、その末尾あたりに、次のようなくだりがあった。若干長いけれど引用させていただく。森下 ただチャージといって、諸外国にはない、座っただけでお金を取られるシステムはバーが普及する障害になっている。残念だね。成田 同感です。バーは僕にとっては「ハレの日に行く場所」ではなく、ごく日常の一部。できるだけ安く飲める“お得感”が大事ですね。森下 その点では、日本のバーはまだ“特別な場所”なのかな。ただ最近は都市部ではなく、郊外にもいい店は増えていて、そういうバーではチャージをとらない所も多い。ご近所にそんなバーがあれば、純粋にお酒を楽しむことができ、きっと人生に幅が生まれますよ。 いまだ国際スタンダードになれぬ訳は… このくだりを読んで、僕も思わず、「まったく同感、同感。その通りだ」と相づちを打った。日本でバーが、いまだ国際スタンダードにはなれず、なお「特別な場所」と思われ続けている最大の原因は、僕もこの「チャージ」という不可解なシステムにあると思っている。 欧米のBARには、僕の知る(訪れた)限り、ホテルのBARなどごく一部を除いてこのようなシステムはない(パブでは、キャッシュ・オンがほとんど。任意のチップがあるのみ)。 BARでは酒代がかかる。これは当たり前である。美味しい酒やカクテルにはそれなりの対価が必要だ。お値段は、美味しい酒を造った人への感謝であり、旨いカクテルをつくってくれるバーテンダー・バーテンドレスの技術への感謝(対価)である。 その値段に見合う、納得できる酒やカクテルであれば、僕は正当な対価として喜んで、支払う。例えば、ジン・リッキー。普通のBARでは、まぁ、700~800円くらいから1500円くらいの間だろうが、もし、素晴らしいバーテンダーがつくる訳(わけ)ありの、特別なジン・リッキーなら2000円払っても惜しくない。 不思議で、不可解なシステム しかし、日本のBARでは酒やフードの代金とは別に、もう一種類、「チャージ」という料金を取るところが多い。誰が始めたのかは知らないが、成田氏や森下氏同様、僕も以前から、この「チャージ」という、日本独特の料金システムを不思議に思ってきた。 だが、なかには「チャージ」を取らないBARもあるから話はややこしい。つまり、「チャージ」はBAR業界に必要不可欠な課金ではなく、経営者の裁量で、取るか取らないかや、いくらにするかを自由に決められる料金なのである。 しかし「チャージって何か?」と尋ねられると、これまた答えるのは難しい。「席料」だという言い方をする経営者もいる(一見都合のよい言い方だが、スタンディング=立ち呑み=でもチャージを取るBARもある)。そもそも、BARが席を用意することに客が対価を払う義務はあるのか、理はあるのか。僕ははなはだ疑問だ。 「チャージ」はそれともサービス料、すなわちおしぼり代やミネラル代、氷代? あるいはグラスが割れた時の保険か? バーテンダーの技術料か? トーク代か(チャージに見合うトークができる人は、そういないぞ…)。 一般的にはチャージ=サービス料かと思われがちだが、なかにはチャージを取りながら、10%~20%のサービス料を別に取る店まであるから、またよく分からない。経営者によって、チャージというものの概念(定義)がばらばらなのが原因だろう。余談だが、雑誌では「ノー・チャージ」と紹介しておきながら、会計の際に客からちゃっかり300円ほどのチャージを取っている老舗BARもある。取りたければ堂々と取ればいいのに、裏でこそこそやる商法はいただけない。 BAR側にも言い分はある 昔、名古屋のあるBARに行ったときのこと。名古屋ではチャージを高めにしてその分、1杯の値段を安く設定している店が多いが、この店もそうだった。チャージは2000円だったが、1杯の値段は600~700円からという設定にして気軽にお代わりしやすくしていた。「なぜこんなシステムに?」と聞くと、「名古屋のお客さんは1杯で粘るんですよ。だからある程度チャージをもらわないと商売あがったりで…」とそのマスター。 大阪のあるBARのマスターはこう言った。「チャージをある程度高くしないと、客層が荒れるんですよ」。確かに、ノー・チャージだと、懐がさびしい若者が多く集まって、店の雰囲気を変えてしまうかもしれない。 しかし、チャージを取らないBARはその分サービスを手抜きしているのか。チャージを取らない店は必ず客層が荒れるのか。それはまったく違う。例えば、大阪ミナミのBar「M」などは、接客も行き届いているし、客層だって、ばか高いチャージを取るBARと比べたらよほど良質である。 チャージを取って何も出さぬ店 チャージを取るBARでは通常、「お通し」という1品のおつまみを出す。この「お通し」に何を出すかや、どういう工夫をしているかで、そのBARのこだわりやホスピタリティ、すなわちサービス度も分かる。大阪キタのBar「C」などは、毎回とても手の込んだ素晴らしい「お通し」が出る(ちなみにこの「C」はチャージ500円で、サービス料はとらない)。 なかには、チャージを取らないのに1品を出すBARもあるが、これは客としては少し心苦しい。一方で、チャージやサービス料を取りながら1品も出さないというBARもあるが、これには、ただ経営者の神経を疑うしかない(この店の場合、いったい何の対価なのだろう?)。 僕は、BARは基本的にはお酒やカクテルの味やクオリティで勝負すべきで、チャージというサービス料が必要なら、お酒やカクテルの価格に反映させるべきだと思う。サービスに見合うお値段なら僕は喜んで対価を払おう。そして、どうしても「チャージ」というサービス料が必要ならば、1000円までに(できれば500円以下に)抑えてほしい(1品くらい用意するのは普通だろう)。 チャージに見合う満足が得られるなら… チャージ=サービス料だったとしても、1000円を超えるチャージを取るBARには、基本的に僕はあまり行かない。そのBARやそのマスターがどんなに有名でも、技術がとても素晴らしいという噂があっても、あまり興味はない。銀座や北新地などには、1500円~2000円もの高いチャージを取るBARもある。 かつて、銀座でチャージがバカ高いBARにお邪魔したことがあるが、マスターは一見の客に、格別愛想が良いわけでもなかった。マスターから話しかけてくることも、お会計の時まで一度もなかった。いくら技術は凄くてもその高いチャージ(別途サービス料10%!)に見合うとは、僕にはとても思えなかった(僕は、2杯頂いて7000円近く支払った)。ただし、チャージが少々高くとも、その額に見合う納得できる接客やサービス、味とクオリティがあるBARならば、例外的に時々お邪魔している店もある。 論外とも思える高いチャージを取る店に限って、接客やサービスが悪いことが意外と多い。常連だけにこびへつらい、マスターは気の利いたトーク一つすらできないということも多かった。「肩書きで飲む」客ばかりを大事にするBAR(こういう店に限ってチャージは高い)もあるが、そういう店には一度は行くことはあっても、「次」はない。 その1杯に正当な「対価」反映を 結論として、僕が思うのは、BAR(バーテンダー)は、提供するお酒のクオリティとカクテルなどの酒づくりの腕や知識、トークを含む接客、内装などの雰囲気づくりで勝負してほしいということだ。 それに対する対価(技術代と材料費、接客のレベルの高さなど)は、その商品である1杯、1杯の値段に反映させてほしい。日本のBARは限りなく、「チャージ」などという不可解な言葉と料金システムから解放されるべきだと思う。 もちろん経営者としての気持ちも分かる。おしぼり代だってかかる、グラスも割れることだってある、日持ちのしない在庫だってある、光熱費もかかる、トイレの電球だって切れる、従業員にボーナスも出さねばならない。考えれば、BAR経営は大変だ。僕もその辺は理解できる。 ならば、10~15%くらいのサービス料を堂々ととればいいと思う。サービスに、なによりも自信があり、サービス料を客からもらっても当然だという自負があれば、ゆめゆめ「チャージ」とは称さず、はっきり「サービス料」と言って徴収すればよい。 「チャージ」という説明不能な、曖昧な言葉に頼っている限り、日本のBARは永遠に国際スタンダードにはなれないと僕は信じている。【おことわり】1枚目の「男の隠れ家」の表紙写真以外の5枚の写真は、記事内容とは直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2006/12/02
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