淡島祭り:流し雛神事
平安時代の後期には建てられたという淡島神社に女性の幸せと安産を願う信仰は、
江戸時代には三浦半島一帯まで盛んであったといいます。
今の形で「流し雛」の祭りが行われるようになったのは平成元年からで、
毎年多くの参拝者と観光客が訪れる横須賀の有名なお祭りの一つに数えられています。
海岸から参道の階段までの道路にはたくさんの露店が店を並べていました。
よく晴れた雛祭りの日、観光ガイドさんに連れられたツアーの方たちや
外国人の方も何人か来ていました。
近隣の子どもたちは毎年露店で買い物をするのが楽しく、かなり前から心待ちにしています。
海を左にして歩いていくと、露店が切れるあたりの右手に神社に上る参道に続く階段が。
階段の手前には願いをかいて奉納する「底抜け柄杓」の頒布所(初穂料300円)があります。
なぜ「底抜け柄杓」を奉納するのか、そのいわれをお話しましょう。
この神社の祭神は少彦名命ですが、和歌山の淡島神社の淡島明神の御魂も迎えて祭っています。
淡島明神は隣の十二所神社の祭神である天照大神の妹で、住吉大神の妃でした。
しかし、こしけ(腰)の病気のため離縁され和歌山の粟島(淡島)に流されました。
高天原から島に流されていく途中、船が浸水し柄杓で水をくみ出しました。
途中で柄杓の底が抜けてしまいましたが水をくみ出すことができたという故事があります。
女神は流された島で女性であるための悩みを持った人を救う誓いを立て、
淡島明神になったといわれています。
そこで底抜け柄杓に麻のひもを結んで奉納し、淡島明神に病の救済、
女性の幸せの成就=縁結び、安産 を願うとかなえてくれると信じられるようになりました。
一説には「水が抜けるように安産ができますように」と祈願するためとも言います。
「あわせてください淡島様よ、お礼参りは二人づれ」ととなえ
よき伴侶との巡り逢いを祈願する女性も多くいます。
さて、底抜け柄杓を買って進むと急な階段があります。
いつもはほとんど人がいない寂しい道なのですが、
この日ばかりはたくさんの人が訪れ一方通行です。
階段を上がりきると左右に紅白の梅の木があり、ほのかな香りが漂っていました。
その先に社殿があります。
この日以外はこの小さなお社の扉が開かれることも、ご神体が拝めることもありません。
本殿の手前には人形供養の申し込みができる所があります。
もう使わなくなったお人形を持ってきてここで供養してもらうのです。
昔は海に投じて供養したのですが、今ではお焚きあげで神主さんが供養してくれます。
中央の画像の箱に入っているのが流し雛にする人型(お札)です。
これに願い事を書いておくと巫女さんが神事の後、海に投げ入れてくれるのです。
水にとける紙が使われていると聞き、環境への配慮も忘れないお祭りなのだと思いました。
ひな壇の前には「針供養」の針山もありました。
さすが女性のお祭りですね。
拝殿の扉はこの日は開けられ女性たちが順にお参りをしています。
いつもは見られない絵がかけられ、ご神体が拝殿の前に出されています。
真中にあるのは子どもを産むように増えるという「子産石」です。
昔、近くの久留和海岸にはこのようなまん丸の石が砂浜でよく見つけられたといいます。
その石を持ち帰り玄関前に置いたりしておくと、いつの間にか丸い小さな石がそばに現れ
その家は子宝に恵まれ、栄えたと言い伝えられています。
実際に今でも門柱の上や玄関わきの植え込みには「子産石」が置いてある旧家もあります。
女性たちは「底抜け柄杓」を奉納し、それぞれの願いを祈りに込めていました。
午後もしばらくするとお雛様を乗せた小舟が浜へ降りていく時間になりました。
お社を出た船は境内の中では巫女さんに運ばれます。
急な階段のくだりでは男性が巫女さんに代わり船を運びます。
いよいよお雛様を乗せた小舟が浜に出てきました。
お清めが済んでしめ縄の張られた所に小舟に乗ったお雛様たちが安置されます。
3月3日3時30分、神事が始まり祝詞が奏上され神主さんが鈴を持って舞を奉納します。
神事が終わるといよいよ小舟が海へ出ていきます。
まずはお雛様たちが乗船し、巫女さんたちが続きます。
少し沖に行くまでお雛様の小舟は船で運ばれて、そこで海に下ろされます。
船にひかれたお雛様たちはゆっくりと数回湾内を回っていきます。
船からは願い事が書かれたお札が海にまかれ、祈願成就が祈られます。
年に一度の淡島祭り。
毎年この日には初ウグイスが聞かれることも多く季節が大きく春へと舵をきります。
今年は風もなく穏やかに晴れ渡り、海も静かで春を満喫できた流し雛でした。
一心に幸せを祈る女性たち、そんな女性の祭りを守っていく人たち。
これからも平安な時代が続き、お祭りが続いていきますように。
そんなこともお祈りした今年の淡島祭りでした。
やっと晴れた、けど寒い 2017.04.12 コメント(2)
お花見に行けるかしら 2017.04.09 コメント(3)
PR
キーワードサーチ
フリーページ
サイド自由欄
カレンダー