タミフルによる害とその因果関係および発症のしくみを総合的に考察した英語論文が、薬剤の危険と安全に関する国際医学雑誌(International Journal in Safety and Risk in Medicine)の最新号(2008年4月)に掲載されたので、その原文全文(PDF版)と要約(翻訳)を先に公開していましたが、今回は、翻訳完全版を掲載いたします(正誤表(日本語)、正誤表(英語)あり)。 「二度と薬害を起こさない行政の舵取りをしっかり行いたい」と述べている舛添要一厚生労働大臣をはじめ、医薬品の安全にかかわる国の関係者(厚生労働省薬事・食品衛生審議会薬事分科会、安全対策部会安全調査会委員ならびに、医薬品メーカー(中外製薬)に対して、因果関係を認めるよう、また、重要資料の開示を拒否しないよう、要望書をつけて、論文の原文全文翻訳完全版とともに送付しました。 また、安全対策部会安全調査会参考人、作業部会、疫学調査研究班(廣田班)、副作用・感染等被害判定部会などの各委員や研究班員には、それぞれ送付状をつけて厚生労働大臣への要望書とともに論文の原文全文と翻訳完全版を送付しました。 これまでNPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)では、厚生労働省や専門家、製薬企業の見解とは異なり、タミフルによる害とその因果関係があること、発症機序などについても機会あるごとに公表してきました。今回の論文は、それらの内容を体系的にまとめ、英文で公表したものです。
今回公表した論文は、英文のため世界に発信できるという強みのほか、これまでの論文や資料にはない、以下の重要な3点を特徴としています。すなわち、タミフルを使用後に死亡あるいはかろうじて死を免れた複数の症例(訳註:追加2人を含め10人)を報告した初めての原著論文であることです。第2に、タミフルの害反応の全体像を総説した初めての論文であり、第3に、タミフルの害反応の全体像のそれぞれについて因果関係とその発症機序を総説した最初の論文です(3.13.What this paper adds to earlier reports":pp30-31、訳文本稿における新知見p28より)。そのため、引用文献103件、32頁におよぶ大部のものとなっています。 編集長のCJ van Boxtel教授は、巻頭論説でこの論文を評して以下のように述べています。 「私たちはこの記念すべき合併号(註:20年目)に、オセルタミビルの安全面について、初めて徹底的に総合レビューした論文(the first in depth review of the safety aspects of oseltamivir)を特筆することができたということを祝したい。オセルタミビルの危険/益比の分析のために、これはタイムリーなレビューである。特に現在、米国をはじめ多くの国々は、鳥インフルエンザから新型インフルエンザのパンデミックが起きる危険性に直面しているとの考えから、オセルタミビルを備蓄しているからだ。」 「オセルタミビルのインフルエンザAに対する治療の有効性は十分かもしれない。しかし、安全に関してはどうだろうか? 嘔気と嘔吐が最もよく報告される有害事象であり、ロシュ社は危険な副作用に関しては完全に否定している。しかしながら、オセルタミビルが人によっては精神神経系の副作用を引き起こすかもしれないとの指摘がある。主に10歳代に関心の焦点が当てられているが、成人でも幼児でも問題例が報告されている。」 「2007年には、厚生労働省は、オセルタミビルを10歳~19歳には原則禁止の措置をとった。また2006年11月には、米国食品医薬品局(FDA)は、オセルタミビルの添付文書を改訂し、警告として、せん妄や幻覚症状、あるいは、それらに関連した(異常)行動などが起こりうることを加えた。これらの、時には死に至る神経毒性に関する詳細な記述を、このジャーナルの今号において読むことができる。」 Boxtel編集長は、以下のように結論。