偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2012.07.30
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  毎日が暑い。
  こう暑いと、銀輪散歩の花逍遥も、新潟のふぁみり~キャンパーさんに倣って夜の「花火逍遥」に切り替えるべきなのかも知れませぬが、懲りぬヤカモチは汗に濡れつつ「花」逍遥なのであります。

019オミナエシ.JPG (オミナエシ)

  猛暑続きにて「秋」の到来が待ち遠しいことでありますが、そんな中でも野辺を行くと、早くもオミナエシの花が咲き出しているのであります。
  オミナエシも亦、万葉人が愛した花にて、14首のこの花の万葉歌があります。

ひぐらしの 鳴きぬる時は  女郎花 ( をみなへし )
           咲きたる野辺を 行きつつ見べし
                (
秦八千島 ( はたのやちしま )  万葉集巻17-3951)

  八千島さんが仰る通り、立秋となってヒグラシやツクツクボウシが鳴き出した頃がオミナエシの花も見頃なんでしょうが、早朝からシャンシャンと暑苦しいクマゼミの声がうるさい時期には、秋の花であるオミナエシは似合わないようであります(笑)。それでも汗づくの銀輪散歩にあって、この花が道の辺に咲いているのに出会ったりすると、「わが待つ秋の近づくらしも」という気にもなって、吹き来る風にも何やら涼しさが感じられもするのであります。

クマゼミの 鳴ける朝なれ  女郎花 ( をみなへし )  咲けば野辺はも 秋づくならし
                                    (偐家持)

019オミナエシ (2).JPG

秋の田の 穂向き見がてり 吾背子が
           ふさ手折りける 
女郎花 ( をみなへし ) かも
 (大伴家持 万葉集巻17-3943)

をみなへし 咲きたる野べを 行きめぐり
           君を思ひ
( )  たもとほり来ぬ
                (大伴池主 万葉集巻17-3944)

  熱中症対策。木陰に入って水分と塩分補給。ついでに煙分も補給しつつ、傍らの木を見上げると、ツルが巻き付いていて、そのツルのものと思われる実とも花ともつかぬものが顔を見せている。

045.JPG (何の木?)

  この植物は木蔦(キヅタ)でありました。8月5日の若草読書会の席で小万知さんから教えて戴きましたので、追記して置きます。(2012.8.6.追記)
  <参考>
木蔦

  何と言う植物であるのかは分らぬが、一応写真に撮って置くことにしました。

046.JPG

  次は小生も名を知っているカラムシです。
  風が吹くと白い葉裏を見せて一斉に翻るので、如何にも涼しげな眺めとなる。このカラムシも万葉に登場する植物である。

011カラムシ.JPG (カラムシ)

  カラムシは茎を蒸して皮をとり細かく裂いて繊維をとる。平安朝の女性が被った市女笠に垂らす薄い布も、このカラムシの繊維で作られたとのこと。

むしぶすま  ( なご ) やが下に 臥せれども 妹とし寝ねば 肌し寒しも
                      (藤原麻呂 万葉集巻4-524

  「むしぶすま」とは、カラムシの繊維で作った夜具のことである。この歌の作者、藤原麻呂は藤原不比等の4人の息子の内の一番下の息子である。家持の叔母であり義母でもある大伴坂上郎女の2番目の夫ともなった人物。この歌は麻呂が坂上郎女に贈った歌である。
  このクソ暑い季節には時期外れ、時じくの歌でありますな。

013カラムシ (2).JPG (カラムシの群生)

  さやさやと木陰に風が吹けば、カラムシは白き葉裏を見せて波が立つよう。こういう光景を目に出来るとあれば、真夏の銀輪花逍遥も悪くはないのであります。

013カラムシ (4).JPG

からむしの 白き葉裏の 波立ちて 夏野の空に 風吹き抜ける
                                   (偐家持)

011カラムシ (2).JPG

  そして、お馴染の「忘れ草」こと、ノカンゾウとヤブカンゾウです。
  忘れ草など眺めつつ、暫し暑さを忘れて戴きましょう。暑さを忘れるのはいいが、水分と塩分の補給を忘れないことが、熱中症にならないためには不可欠であります。
  今回、ノースリーブのシャツで炎天下を走り回りましたので、上腕から肩までしっかり日焼け、ヒリヒリになってしまいました。

017ノカンゾウ(V.2012_07_29__08_24_31).jpg 005ヤブカンゾウ(V.2012_07_29__08_22_58).jpg
(ノカンゾウ。右は八重咲きなので、ヤブカンゾウですかな。)






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最終更新日  2014.05.02 10:48:11
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おはようございます  
今年は本当に暑いですね~

節電もほどほどにしないと熱中症で倒れてしまいますね。
まだ7月8月にはどうなるやらです・・・ (2012.07.31 07:41:31)

Re:花逍遥・オミナエシ、カラムシ、ノカンゾウ(07/30)  
英坊3  さん
おはようございます。

暑いですね。・・何の木・・への歌・・

 「道の辺に 成るつぶら実は いにしえの

         千成ひさご 太閣ぎぼし」

 PCは部品取り寄せ関係で盆過ぎに修理完了です。

 替え歌有難うございました。節をつけて歌いましたよ。



  (2012.07.31 08:19:34)

Re:おはようございます(07/30)  
けん家持  さん
ふぁみり~キャンパーさんへ
 新潟にても暑い日続き、益してや大阪は、でありますな。
 夜も熱帯夜が続きます。クーラーなしでは死んでしまいますね。上の藤原麻呂の歌になぞえるならば、

むしぶすま 蹴上げ裸に 臥せれども クーラーとし寝ねば なほし暑しも (偐家持)

でしょうか。

>まだ7月8月にはどうなるやらです・・・
-----
 焼け死なずに居たいものです(笑)。
(2012.07.31 10:34:03)

英坊3さんへ  
けん家持  さん
おはようございます。
 本当に暑いですね。外に出てしまえば覚悟も決まるのですが、この暑さではつい出掛けるのが億劫にもなります。

>道の辺に 生るつぶら実は いにしえの 千生りひさご 太閣ぎぼし (英麻呂)

なるほど、千生り瓢箪ですか。

千生りの ひさごなるかや つるの実は
       つばらつばらに 見つつも行かむ (太閤山家持) 

 PC修理完了はお盆過ぎになりますか。
 こきりこ節・英坊篇、お気に召しましたか(笑)デデレコデン。
(2012.07.31 10:53:56)

ネパールRe:花逍遥・オミナエシ、カラムシ、ノカンゾウ(07/30)  
花逍遥、うれしいですね、そして楽しみです。
周りにはまだまだ知らない花(植物)が一杯ですから。

カラムシ、よく見かけますが名前を知りませんでした。
あまりにもあり過ぎるので名前を調べる気にもならなかったですね。(笑)

>熱中症対策。木陰に入って水分と塩分補給。ついでに煙分も

水分、塩分そして煙分
三拍子がそろわないと・・・。
(2012.07.31 20:04:13)

Re:こんばんは~。  花逍遥・オミナエシ、カラムシ、ノカンゾウ(07/30)  
ひろろdec  さん
花逍遥も少しずつ季節の移ろいが感じられます。^^
こちらの奥会津の昭和村は、「からむし織の里」、織姫交流館があり全国から若い織姫が移り住み 村に溶け込み生活しながら学んでいます。地元青年と結婚して永住する方も。。
 ^^*
平安の世からからむし織が行われていたとは驚きです。

「からむしの白き葉裏の波立ちて。。」さやさやと風渡る音が聞こえてきそうです~☆ *^^*


(2012.07.31 22:09:55)

ビッグジョン7777さんへ  
けん家持  さん
 ありふれた雑草や野草などでよく目にするのに名前の知らないものというのが随分とありますね。通勤電車などでよく出会い顔だけは知っているが口をきいたこともなく、名前も知らないという人が多くいたのと同じですかね(笑)。
 まあ、その人達の名は知りたいとも思いませぬが、草花や木の名前は知りたいというか、知っていた方が楽しく、日常の景色が豊かになるような気がします。
 カラムシはどこにでもありますね。万葉の頃はこれから繊維を取って布にしていた、と父に話したら、戦時中には同じことをした、と父が話したのを覚えています。戦争が国民に万葉時代の布作りまで逆行させる生活を強いたのかと思いましたが、ひろろさんのコメントにもあるように、現在でもカラムシ織というのがあって、今に生きている織物であるのですな。
 万葉では「むし」と呼ばれているカラムシですが、似た植物で、茎・葉が毛で覆われたヤブカラムシというのもありますね。
 木陰に入って水分と塩分補給。これは熱中症対策。ついでの煙分補給は、物事に熱中し過ぎないための、熱中防止策でありますな。小生の辞書では「水を差す」という言葉は「煙を入れる」という言葉に置き換わっているのですな。 (2012.07.31 23:28:15)

Re[1]:こんばんは~。  花逍遥・オミナエシ、カラムシ、ノカンゾウ(07/30)  
けん家持  さん
ひろろdecさんへ
 そうですね。猛暑続きの今日この頃ですが、野の花たちは、しっかりと来たるべき秋に備えての準備というか営みを行っているのでもありますな。
 そうですか。奥会津の昭和村では、「からむし織」の布作りが行われているのでありますか。万葉の昔から続く織物だと思うと、何やらゆかしく、「織姫」という呼称もムべなるかな、であります(笑)。

>「からむしの白き葉裏の波立ちて。。」さやさやと風渡る音が聞こえてきそうです~☆ *^^*
 その通りです。炎天下を走って火照った体には木陰の風は何よりのご馳走、カラムシがさやさやとそよぐ様も音も涼しげにて、暫し、暑さを忘れて・・でありました。
(2012.07.31 23:42:15)

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