偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2014.06.23
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カテゴリ: 万葉

 前頁の「であいのみち」公園で見かけた植物の写真で未掲載のものがありましたので、余禄としてアップして置くこととします。また、歌碑も4件掲載洩れとなっていることに気付きましたので、これも掲載することとします。
 ヤマガタ、ヤマナシ、ヤマグチ、ヤマブキ、異質なのはどれか。ということで、まずヤマブキです。山吹と言えば橘諸兄が植えたことに始まると伝えられる京都府綴喜郡井手町の玉川堤のそれが有名であるが、花の季節は過ぎて、今は実の季節です。

玉藻刈る  井堤 ( ゐで ) のしがらみ 薄みかも 恋の淀める わが心かも
                          (万葉集巻11-2721)

ヤマブキの実 (3)
(ヤマブキの実)

 山吹の実は4個で1セットのようですね。栗は3個セットでイガの中に納まっているので、なか(中、那珂)の枕詞として「三つ栗の」が使われる。また、樫の実は1個ずつ生るので、「樫の実の一人行く児に・・」などと「ひとり」の枕詞に使われる。
 これに倣うなら、「山吹のよたり集へば・・」などと「四人」の枕詞に「山吹の」を使ってもいいのかも(笑)。

ヤマブキの実 (2) (同上)

ヤマブキの実 (同上)

 であいのみち公園の東隅に児童公園があり、そこに地元の子供たちのそれでもあるか、誕生記念樹としてヤマモモの木が3本植わっていました。そのヤマモモがたわわに実を付けて色付き始めていました。

ヤマモモ (ヤマモモの実)

ヤマモモ (2) (同上)

 ヤマブキ、ヤマモモと「山」の付く木が続きましたが、同様に「山」の付く植物は結構ある。思い付くだけでも、「ヤマタチバナ」(ヤブコウジのこと)、「ヤマゴボウ」(洋種山牛蒡のほかアザミの根も山牛蒡と呼ばれる。)、「ヤマヂサ」(万葉集巻11-2469の歌に登場するが、エゴノキ、イワタバコ、アブラチャンの3説がある。)、「ヤマブドウ」(古名・エビカズラ)、「ヤマイモ」、「ヤマスゲ」(ヤブランのこと)など。

この雪の  ( ) 残る時に いざ行かな 山橘の 実の照るも見む
                    (大伴家持 万葉集巻 19-4226
山ぢさの 白露おもみ うらぶれて 心に深く わが恋やまず
                            (万葉集巻11-2469)
ぬばたまの 黒髪山の 山菅に 小雨降りしき しくしく思ほゆ
                (柿本人麻呂歌集 万葉集巻11-2456)

 山に対する語は里。山は神の住まう処、里は人間の住む場所。その中間が野ということになるか。サト ノ→ヤマ。人間の領域に取り込まれた山が里山、神の領域のそれが奥山。
 山に美称を付けて「みやま」などと言うが、これは山の神への畏敬によるものか。どうやら、同じ美称でも「サ」と「ミ」には大きな違い、使い分けがあるようです。
 「サ」は「小、狭、早」などの漢字が使われるが、親近感を表す愛称と言うべきものであるのに対して、「ミ」は「御、美、深」などが使われるように、畏敬・賞賛を表す敬称と言うべきもののようです。サト(里)も原型は「さ」の「と(処)」、つまり「おらが場所」ということであったのでしょうかね。

 さて、掲載洩れの歌碑は下記の4件です。

万葉歌碑 (14) 万葉歌碑 (10)
(こうぞ)           (ひおうぎ)

春過ぎて 夏来たるらし 白たへの 衣干したり 天の香具山
                    (持統天皇 万葉集巻1-28)
(注)たへ(栲)=こうぞ(楮)のこと。樹皮が和紙の原料となる。
佐保川の 小石踏み渡り ぬばたまの 黒馬の来る夜は 年にもあらぬか
                    (坂上郎女 万葉集巻4-525)
(注)ぬばたま=ヒオウギの種子。真っ黒なので、黒、夜、夢、髪などの
        枕詞で使われる。

万葉歌碑 (4)   万葉歌碑 (13)
(すすき)          (やぶかんぞう)

婦負の野の 薄おしなべ 降る雪に 屋戸借る今日し 悲しく思ほゆ
                 (高市黒人 万葉集巻17-4016)
(注)婦負(めひ)=富山県婦負(ねい)郡。神通川中下流域。
忘れ草 我が下紐につく 香具山の 古りにし里を 忘れむがため
                   (大伴旅人 万葉集巻3-334)
(注)忘れ草=ヤブカンゾウのこと。

 本日は大学の同窓会(青雲会)の幹事会です。もう少ししたら出掛けます。青雲会囲碁の例会としてこのブログでは度々取り上げている囲碁の例会の会場としても使っている、青雲会交流センターまで出掛けます。幹事会の後、懇親会もありますので、MTBではなく、不承不承電車で出掛けます。
 また、喫茶ナナから電話があって、7月も8月も万葉の会を持つこととなりました。取り敢えず7月は16日(水)午後2時から、と決まりました。何をテーマにしますかね。
 というようなことで、本日はここまでとします。では、どちら様もご免下さいませ。






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最終更新日  2014.06.23 15:28:21
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Re:山〇も色々です。(06/23)  
ふろう閑人  さん
ヤマブキに実がなるのですか。
花は良く見ますが、実が生っているのは見たことが無かったです。
今度ヤマブキを見た時『観察』することにします。 (2014.06.23 17:43:29)

こんばんは  
霊峰などといいますように山は古くから畏敬・信仰の対象となってきましたからね。

神仏が住まうところ、また、やあそのものが神であるとも言えますね。
(2014.06.23 20:12:16)

Re:山〇も色々です。(06/23)  
こんばんは(^^♪

山吹が4個が1セットというのも知りませんが、栗が3個、樫が1個というのも、勿論知りませんでした。
2個は何でしょうか?
私が思い浮かぶのは瓢箪木です。
万葉に使われてはいないでしょうが、瓢箪木は、大小二つの実が可愛く並んでいます。
http://www.weblio.jp/content/%E8%8A%B1%E7%93%A2%E7%AE%AA%E6%9C%A8

幹事会、お疲れ様です。 (2014.06.23 21:48:47)

Re:山〇も色々です。(06/23)  
小万知 さん
今日、二上万葉の森まで銀輪散歩してきました。
石川サイクリングロードから河南橋を渡り、叡福寺を越えて竹之内街道をひたすら行きました。
どこをどう間違ったのか、目的の出会いの道には出会えず(笑)
でも森の中は静かで涼しく、ブルーの山紫陽花の群落が素晴らしかったです。
万葉歌碑が自然の板木に書きとめられ、大伴家持の萩や山振の花を詠ったものがあり、坂を登ったかいがありました。
鹿谷寺跡や石切場跡は階段になっていたので諦めました。
<和を以て貴しと為す>のマンホールもいっぱい見つけましたよ。
森の中に莫山さん書の石碑、<花アルトキハ花ニ酔い 風アルトキハ風ニ酔ウ>を見てうんうんとうなずきながら下ってきました。
竹之内街道をあと8キロ行けば大和高田の表示あり、犬を乗せての峠越えは無理とあきらめました。 (2014.06.24 00:12:06)

ふろう閑人さんへ  
けん家持  さん
七重八重 花は咲けども 山吹の 実のひとつだに なきぞかなしき(兼明親王 後拾遺集)
の歌で、山吹は実が生らないものという誤解が生まれたようですが、一重咲きの山吹は実を結びます。実の生らないのは八重咲きの山吹だけのようですね。
 蕊が花弁に変化して八重咲きになっているということで実が生らないということのようですが、八重の桜や椿も同じですかね。柘榴も八重に咲くのは実を結ばないとブロ友の英坊3氏が先頃のブログ記事にて紹介されていました。
(2014.06.24 07:47:21)

Re:こんばんは(06/23)  
けん家持  さん
ふぁみり〜キャンパーさんへ
 まあ、あらゆるものに神が宿るとするアニミズムからすれば、山に限る訳ではないのでしょうが、荒ぶる神が山から里に下り、それを丁寧にもてなすことによって荒魂から和魂に変化し、稲を実らせてくれる・・という信仰が、山の神への特別な思いとなったのかも知れませんね。山は天つ神の下る処でもあり、国つ神の住まう処。そして、山そのものが神となる。まあ、この順序は逆の場合もありですかね。
 山はまた、国と国との境をなすものでもあれば、山を越えれば異国の神様の領域に入るのですから、そこで神祭りをして旅の無事を祈らなくてはならない、ということになる。
 万葉の時代は日本という国が出来て、中央官僚が各地に出向くようになる。また、地方の農民が防人のような形で移動を強制される。そんなことで、土地褒めの歌や望郷・家族を思う歌が多く作られるという環境が生まれた。それが万葉集に結実した、そんなことではないですかね。
(2014.06.24 08:22:49)

Re:山〇も色々です。(06/23)  
ウーテイス  さん
山吹の実は4個で1セットのようですね。栗は3個セットでイガの中に納まっているので、なか(中、那珂)の枕詞として「三つ栗の」が使われる。また、樫の実は1個ずつ生るので、「樫の実の一人行く児に・・」などと「ひとり」の枕詞に使われる。
 これに倣うなら、「山吹のよたり集へば・・」などと「四人」の枕詞に「山吹の」を使ってもいいのかも(笑)。
~~~~~~~~~~~~~
へえ~!!!
教えられる事が多い なぁ~るほど!!

~~~~~~~~~~~~
(ヤマモモの実)⇒これ!!!!

小田原駅前 日本食のお店で 食後  
始めて食べた!
一粒 1個 だけ!!!

その美味しさ それまでの人生で 味わった事がなかった のでした。。。。


調べたら
支那原産で 高木らしい

伊豆半島の付け根 あの辺に あるらしい

写真も見て 覚え込んだ

ビルマ タイ 国境 そこに!
ヤマモモ の写真 袋 買ったら

乾燥 ヤマモモ でした!

これを 大量に 強い酒に漬け込んだ

寝かせて

最高のワイン 同じ味わい

友人と、共に 飲み干した

色が美しい 上品な味わい 二日酔いも無い


日本へ
乾燥 ヤマモモ 郵送した
サクランボ 乾燥も

乾燥の果物が多いのです!!
輸出しています
楊貴妃が 好きだった と言う 竜眼

美味しいですが 栄養バランスも良い


これで ヒト財産築いた 友人

華僑の子孫


そうですか~!!

ヤマモモ
あるんですね

僕は世の中に こんな美味しい物があることに驚いた
貧乏して 発明資金稼ぎ の一生
発明貧乏 で ヤマモモなど 食べる余裕も無かった!

方法が不味かった と、気が着いたのは最近

馬鹿だった
気が付いたら 一生終わって 残り僅かな時期に気が付いた
  後で気が付く 馬鹿の智恵

好きなことが出来たけど アホだった

亜本だら教祖  
Uutisu

(2014.06.24 08:38:42)

小万知さんへ  
けん家持  さん
 早速に行かれましたか。道の駅のみならず、二上万葉の森までも(笑)。
 竹内街道は駒ヶ谷駅の前の逢坂橋で飛鳥川と出合いますが、「であいのみち」は逢坂橋の下流に位置します。すぐ傍をそれと気付かず通り過ぎてしまわれたのでしょう。
 岩屋登山口から更に登られたのですか。小生は、登山口の歌碑撮影で、本日の取材の目的達成と引き返してしまいましたが、奥には、万葉歌を記載した板木がありましたか。
>大伴家持の萩や山振の花を詠ったものがあり、坂を登ったかいがありました。
家持の萩の歌は複数ありますが、多分、「さ男鹿の 朝立つ野辺の秋萩に 珠と見るまで 置ける白露(巻8-1598)」でしょうかね。「山振の花」の歌は高市皇子が十市皇女の死を悼んだ巻2-158の歌でしょうね。
><和を以て貴しと為す>のマンホールもいっぱい見つけましたよ。
我々銀輪族は「輪を以て貴しと為す」なんですがね(笑)。
莫山さんで済ませ、大和高田まで行かれなかったのは正解(さかきこと)です。 (2014.06.24 09:28:45)

ひろみちゃん8021さんへ  
けん家持  さん
 山吹の実は4個1セットとは限らないようですね。3個のものや5個のものもあるようですから、個体差があるようです。
2個1セットは、小生もにわかには思い付きません。
 「二」に掛かる枕詞としては、「書き数ふ 二上山に 神さびて 立てるつがの木・・」(大伴家持 万葉集巻17-4006)の「書き数ふ」や「・・にほ鳥の 二人並びゐ 語らひし・・」(山上憶良 万葉集巻5-794)の「にほ鳥」などがあります。
 瓢箪木というのは初めて目にする名ですが、スイカズラのことをそう呼ぶのですか。スイカズラは白から黄色に花の色が変わって行きますね。先月頃には盛りの花を結構目にしました。これは万葉には登場しませんかね。テイカカズラは「石綱(いはつな)」とか「つた」として万葉に登場しています。
石綱の また変若(を)ちかへり あをによし 奈良の都を また見なむかも(万葉集巻6-1046)
 あと、サネカズラやヘクソカズラも詠われています。
あしひきの 山さなかづら もみつまで 妹に逢はずや わが恋ひ居らむ(同巻10-2296)
ざうけふに 延(は)ひおほとれる くそ葛 絶ゆることなく 宮仕へせむ(同巻16-3855)

幹事会の二次会の懇親会で帰宅は11時15分。最近はこういう遅い帰宅というのは殆どなくなりました。
(2014.06.24 09:35:34)

ウーテイスさんへ  
けん家持  さん
 山吹の実は4個で1セットとは限らないようです。此処で見た山吹は皆4個1セットでしたが、他の写真などでは、3個や5個のものなどもありますから、これは個体差があるようですね。
 ヤマモモは最近はあちこちで見かけますから、公園などの植え込みにも流行というのがあるのでしょうね。
よき人の よしとよく見て よしと言ひし おのが一生 よしとよく見よ(天運天皇)
めでたさも中位がいいのではないですか。ある程度の年齢になればなんであれ肯定的にものを見るというのも悪くはないように思いますが(笑)。 (2014.06.24 09:59:20)

Re:山〇も色々です。(06/23)  
英坊3 さん
ヤマブキ・ヤマモモの実は初めてみました。実はタネの源ですね。 (2014.06.25 05:15:27)

英坊3さんへ  
けん家持  さん
>実はタネの源ですね。
-----
実をブログのネタにするのは理にかなっているということになりますかね。 (2014.06.25 08:37:59)

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