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2008.01.12
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テーマ: いい言葉(576)
カテゴリ: 文学・芸術
▼錬金術の薔薇3



扉の向こう側には大きな円形の部屋があり、天井にはモザイクの巨大な薔薇が、壁にはやはりモザイクで神々と天使たちの戦闘の様子が描かれています。やがて古代の音楽に合わせて踊りが始まります。舞踊の輪は、頭上にある薔薇の形を床の上に再現するように動きます。舞踊は次第に熱を帯びてきて、イェイツの意識も朦朧としてきます。ふと天井を見ると、そこに描かれた大きな薔薇は、まるで生き物のように、香の立ち込める空中をゆるやかに下ってくるのが見えます。

幻想なのか、現実なのか。イェイツは香の煙の中をさまようように踊ります。髪にユリを挿した不死の女が現れて、恍惚感の中で一緒に踊ります。ところが突然、不死の女が自分の魂を飲み込むのではないかとの恐怖感に襲われ、そのまま意識を失います。

どのくらい時間が流れたのでしょうか。イェイツは、何かに起こされたように目を覚まします(セクション5)。モザイクの薔薇だと思ったものは、大雑把に描かれた薔薇の絵で、壁の絵も描きかけで、何の絵かも定かでないものでした。イェイツの周りには、20人ほどの人たちが服を乱して仰向けになって倒れています。夜明けの光が窓から差し込んできました。

そのとき、家の外から男女の怒声が聞こえてきます。町の人たちが、マイケルの「錬金術の薔薇団」を怪しげな儀式をする「邪教集団」とみなし、押しかけて来たんですね。彼らの多くは漁師ですが、ニシンが獲れなくなったのは邪教集団のせいであると考えているようです。

イェイツは近くで倒れていたマイケルを起こそうとしますが、意識が混濁したまま起き上がれません。漁師たちは玄関の扉を打ち破ろうとしています。怖くなったイェイツは、台所の扉から外へと逃げ出します。後方からは漁師や女たちの叫び声が聞こえます。惨劇が繰り広げられているのでしょうか。振り向くと、押しかけた男の一人がこちらを指差して、仲間に向かって何か叫んでいるところでした。イェイツは命からがら、その場を立ち去ります。

その事件から10年以上が経ち、イェイツが当時を振り返ります。

There are moments even now when I seem to hear those voices of
exultation and lamentation, and when the indefinite world, which has

to claim a perfect mastery; but I carry the rosary about my neck, and
when I hear, or seem to hear them, I press it to my heart and say:
'He whose name is Legion is at our doors deceiving our intellects
with subtlety and flattering our hearts with beauty, and we have no
trust but in Thee'; and then the war that rages within me at other
times is still, and I am at peace.

今でも、あの叫び声や嘆き声が聞こえる気がするときがある。心や知性の支配を半ば失ったような不確かな世界が、今でも私の中で完全な支配を求めているように思われるときがある。しかし私は、首にロザリオをかけており、あの声が聞こえたとき、あるいは聞こえたと思われたときには、ロザリオを胸に押し当て、次の言葉を唱えるのである。「レギオンという名の男が戸口に現れ、私たちの知性を欺き、美によって私たちの心を誘惑しています。しかし私たちは、神であるあなたのほかには、何ものも信じません」。すると、私の心中で荒れ狂う感情は静まり、平穏を取り戻すのである。

(注:レギオンとはローマ軍団の名前ですが、新約聖書には、レギオンによる虐殺を目撃して発狂し、悪霊にとり憑かれた男が、イエスに名前を尋ねられ「レギオン」と答えるという説話があります)

物語はこれで終わります。面白いのは、ここで10年以上前のことを振り返る冒頭のイェイツに戻るような形で終わることです。冒頭でイェイツは、10年以上前に起きたマイケル・ロバッツとその仲間の悲劇について触れます。だから、その後の展開は当時を振り返る形で進むのですが、マイケル・ロバッツと再会した後で、イェイツは「この男はマイケル・ロバッツでは断じてない。彼は10年、いや20年前に死んだのだ」とつぶやく場面があります。この言葉によって、実はこの物語が円環していることがわかるんですね。

しかも、この物語の中に出てくる登場人物はすべて、イェイツの心の反映でもあります。ケルト的な魔術の世界を代表するマイケル・ロバッツ、秘密結社を邪教だとして否定する民衆(世俗)、世俗から離れ穏やかな瞑想的生活を続けるイェイツ。詩人のイェイツは、永遠の美に触れることのできる魔術に惹かれながらも、恐れから逃げ出し、キリスト教の象徴であるロザリオを固く握り締めます。すべてが、イェイツの葛藤の世界の出来事であると解釈することができますね。その心の揺れが、円環となってイェイツの心に何度も去来するわけです。

物語の最後では、キリスト教の神への帰依を確認して終わる形になっていますが、物語が円環することにより、実はそうではないこともわかります。実際、この物語を書いた後もイェイツは秘密結社「黄金の夜明け団」の会員であり続け、ロンドン支部長にもなるんですね。



薔薇
(続く)





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最終更新日  2008.01.12 13:24:27
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