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2021.04.28
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テーマ: 読書(8189)
カテゴリ: 【読書】未分類

本のタイトル・作者



羊は安らかに草を食み [ 宇佐美まこと ]

本の目次・あらすじ


認知症になった妻を、ついに施設に入れようと思う。ついては、足の悪い己に代わり、妻を連れて彼女の足跡をたどる旅に出てくれないか―――。
俳句教室で知り合って以来20年数年。
友人である益恵―――まあさんの夫から、最後の旅行を持ちかけられた富士子とアイは、快諾する。

大津、松山、五島列島…親兄弟を亡くし、11歳で満州から引き揚げてきたという益恵。
一人娘を幼くして失い、前夫に先立たれた彼女は、どのような人生を歩んできたのか。
彼女の詠む歌に隠された、記憶と過去。

第一章 旅の始まり


第二章 湖のほとりで
馬を駆る少年秋の風に溶け

第三章 天守閣の下で
凍て土ゆくわれに友あり白き月

第四章 島の教会で
生きて乗る船は祖国へ揚雲雀

第五章 旅の終わり

引用


しかし周さんのようにいい人もいた。きっともっといるに違いない。でもそういう人たちの心を感じるゆとりがなかった。毎日見る夕陽は美しかったのに、それを感じるゆとりがなかったように。


感想


2021年読書:069冊目
おすすめ度:★★★★

凄まじい物語だった。
はじめ、認知症の妻を、彼女の足跡をたどる旅に連れ出してくれ、と夫が頼んで、年配の女性の旅道中もの―――来し方と行く末を見つめつるような―――かと思っていたら。
益恵の作った歌集が現れ、歌が紹介され、場面がぱっと展開する。
(ここの入り方、めちゃくちゃ上手い。そして、句という短い定型に込められた、幾千万の言葉。)


その中を、懸命に生き抜く少女。
現在の旅と同時に、彼女の過去も進んでいく。

月影なぎさは、最初に登場した時から「そうかな」と思っていたのだけど、最後の最後のちょっとしたミステリ?要素は不要なのでは。
物語のこれまでの重厚な雰囲気とか、空気が一気に火曜サスペンス劇場になっちゃったぞ…。

私は、安穏と生きている。

それがどれほど得難いことか、そのことを、改めて感じた。
誰かが、辛酸をなめた過去の上に、私たちは生きている。
たくさんの屍の上に。
そして世界ではまだ、続いている。
いつかまた、そうなるかもしれない。

私が小学2、3年生だったころ、ひたすら戦争の本を読んでいた(お小遣いで戦争の体験記を買う子ども)。
子どもの目から見た戦争の話を、たくさん、読んだ。
都会で、大陸で、南の島で。
子どもは、奪われて、奪われて、それでも生きていく。
私はあの時、いったいどうして憑かれたようにそればかり読んでいたのだろう。
自分はまだましだ、と思いたかったんだろうか。彼らに比べれば。

被害者である彼らの目を通して、戦争を見た。
けれど、そうばかりでないことも、知っている。
この本にもたくさん出てくる。
戦争。勝敗。善悪の境目は、簡単に一変する。
被害者は、加害者でもある。

2020.09.08「 戦争の歌がきこえる [ 佐藤 由美子 ] 」を読んだときに思った。
私は、何を知らないのだろう。
そして、何を知りたいんだろう。

大学で第二言語を選ぶときに、中国語を選んだ。
その理由のひとつは、「わけもなく中国を嫌いだと言いたくないから」だった。
中国語が飛び交うとき、眉を顰める人を見て。
それは「わからなさ」にあるのではないかと思った。
分からないものは、怖い。
分からないから、怖い。
だから、目の前から消したい。
意識の外に追い出したい。
でも、すこしでも、分かれば。
そんなことないんだと、思えるんじゃないかと。
私は、何も知らないから、甘っちょろい戯言を弄する。
知りゆく過程でも、そのままでいたいと思う。




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最終更新日  2021.04.28 12:00:09
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