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2021.12.13
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テーマ: 読書(8190)

本のタイトル・作者



バスクル新宿 [ 大崎 梢 ]

本の目次・あらすじ


出発前に言葉を交わした女性が、パーキングエリアから戻ってこなかった。
下車後、同じく女性と会話した老夫婦と、彼女はどこへ行ったのかを話す。
「バスターミナルでコーヒーを」

部費を使い込んだ友人をバスターミナルに捕まえに来た。
隣り合った探偵に彼の特徴を伝えるうち…。
「チケットの向こうに」

修学旅行先で一時行方をくらました友人。

「犬と猫と鹿」

このバスの中に犯人がいる?
パーキングエリアで警察が乗り込んできた。
怪しい男は、その時席を外していた。
「パーキングエリアの夜は更けて」

少年がいなくなった。
各地から発見されたのは、彼の名前の診察券や図書カード。
「君を運ぶ」

感想


2021年292冊目
★★★

バスターミナル、夜行バスをめぐる群像劇。
著者の『めぐりんと私』みたいに、バトンを渡すように物語が続いていく。
最後の「君を運ぶ」の男の子が、森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』の古本市の神さまみたいな存在かと思っていたら、実在だったので「あれ」と思った。


あの夜の感じ、奇妙な高揚感を思い出した。
就職試験のために、東京行きの夜行バスに乗ったこと。
身体がバキバキになったこと。朝日が眩しかったこと。
トイレで着替えて面接に向かい、面接が終わって猛烈な眠気に襲われたこと。

深夜バスは、そのまま夜を朝に運んでしまう。


バスターミナルに行けば、日本中あちこちへのバスが出ている。
このバスに乗れば、どこへでもいける。
飛行機ほど面倒な手続きもない。ただ乗り込むだけ。

どこへでも行ける、ということは、どこへ行きたいか?ということでもある。
たまに、驚くことがある。
大きな町へ行って、都会へ行って、こんなにたくさんの人が、みんなが目的地を目指して足音高く歩いていることに。
みんな、行くところがあるのだ。やることがあるのだ。待っている人がいるのだ。帰る場所があるのだ。
私は?
ふと立ち止まれば、歩けなくなるような気がする。
行きたいところなんて、どこにもないのだと気付く。
どこへも行けやしないのだと、思い知る。

でもきっと、私は行けるのだ。
バスに乗って、遠くまで。
誰かが運転してくれるそれに、みな小さな子供のように身を委ねて眠る。
朝日とともに夜のとばりは開け、徐々にものごとの輪郭が露わになる。世界が目覚める。
眠りから覚めた子どもたちは、寝ぼけ眼をこすりながら期待に胸を膨らませてそれを見る。
その朝を夢想する。
どのバスに乗るか、決められないままに。

これまでの関連レビュー


めぐりんと私。 [ 大崎梢 ]




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最終更新日  2023.01.01 01:22:21
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