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2022.02.15
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テーマ: 読書(8289)

本のタイトル・作者



かか [ 宇佐見 りん ]

本の目次・あらすじ


暴力をふるい、他に女を作った「とと」と離婚し、うーちゃんとみっくんを連れて実家に戻った「かか」。
ジジとババ、かかの亡き姉の一人娘、明子。
6人が暮らす家で、19歳のうーちゃんは窒息しそうになっている。
酒をのみ、自傷し、ものを壊して発狂する母。
ささやかで陰湿な嫌がらせをする明子。
死んだおばと、その娘の明子を寵愛するババ。
呆けていくジジ。

汚れて壊れてしまったかかを、もう一度うんであげるのだ。

引用


おそらく誰にもあるでしょう、つけられた傷を何度も自分でなぞることでより深く傷つけてしまい、自分ではもうどうにものがれ難い溝をつくってしまうということが、そいしてその溝に針を落としてひきずりだされる一つの音楽を繰り返し聴いては自分のために泣いているということが。


感想


2022年036冊目
★★★

第33回三島由紀夫賞、第56回文藝賞受賞作。
第二作の『推し、萌ゆ』が第164回芥川賞受賞。

冒頭で「うん?」となり、読みにくくてなかなか話に入っていけなかったけど、語り口に慣れて登場人物が把握できてからはスラスラ読めた。

このひとは、感情をピクセルで見るんだろうな。
画像を拡大して、その感情のドットの色を表されたような作品。

『推し、萌ゆ』と基本的な構造というか、感情は同じ。
SNSが出てくるあたりは、
オルタネート [ 加藤シゲアキ ]
にも通じるものがある。
ぬるい、ぬくいコミュニティ。

現実社会では、決まった日常。

SNSはそこからひょいっと抜けていく。
見せたいものを、見せたいように。時に見せたくないふりをして。
それは、つるりとコーティングされたチョコレートみたい。
口にいれると甘い。
中には何が入っているのか分からない。


母と娘の関係性は、なぜいつもこうも濃厚で密着していて、はてしなく断絶しているんだろう。
みっくん(息子)と母は、さらさらと、どこかドライであるにも関わらず。
それは、自身も産むもの、であるからだろうか。
うーちゃんは、自身の身を呪う。女であること。孕む性であること。
臍の緒が繋がる。赤い糸が繋がる。ずっとずっと、はじめのひとりまで遡る。
自分がその流れのひとりに過ぎないこと。
その重責と絶望。

この本を読みながら、
漁港の肉子ちゃん [ 西加奈子 ]
と対照的だと思っていた。
「かか」の滅茶苦茶さは同じなのに、どうしてこうも違うんだろう。
傷をなぞりながら、その傷を愛おしむ生き方をするかどうか、だろうか。

これまでの関連レビュー


推し、燃ゆ [ 宇佐見りん ]




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最終更新日  2022.12.04 00:41:29
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