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2022.11.10
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テーマ: 読書(8289)

本のタイトル・作者



ママにはならないことにしました 韓国で生きる子なし女性たちの悩みと幸せ [ チェ・ジウン ]

"엄마는 되지 않기로 했습니다
아이 없이 살기로 한 딩크 여성 18명의 고민과 관계, 그리고 행복"
by 최지은

本の目次・あらすじ


プロローグ
インタビューに参加した人たち

第1章「子なしで生きる」と100%確信して決めたのか?--自分の心と、「母性」について考えたこと
誰もがママになりたいと思うものなのか? 
産むか産まないか、そう簡単には決められない 

妊娠中絶について
子どもが嫌いだから産まないのですか?
ママになることへの恐れ
ある日「マンマ・ミーア!」を観ていて 
親にならないと大人になれないって? 
子なし人生のゆとり お金と時間はこう使う 
わが子の代わりに世界中の子どもに手を差し伸べる 

第2章 出産するのは私なのに、なぜ非出産はすべての人が納得しなければならないのか?--配偶者、両親、友人たちとの関係について
配偶者とはどうやって合意しましたか? 
子どもがいないという理由で別れるなら 
結婚は四方からの攻撃だ! 義両親からの圧力 
結婚は四方からの攻撃だ! 実家の両親の期待 

もし、男性が子どもを産めたなら… 
オー、わが甥っ子! 
猫を飼う嫁として生きること 
子どもがいてもいなくても いつだって友達でいられたら
両親のせいなのかと聞かないでください 

「じゃあ、なんで結婚したの?」という質問に答える方法 

第3章 韓国でママになることは何を意味するのかーー子なし女性の就職とキャリア、そして社会構造について
子なし夫婦の家事分担 
「子どもを育てるために必要な金額」を計算してみたら… 
非出産がキャリアに及ぼす影響
子なし女性と産休・育休 
子なし女性の求職が大変な理由 
地方で子なしで暮らすこと 
バラエティ番組で育児を学ばないように 
ノーキッズゾーンに行かない理由 
子なし夫婦のための政策は必要か? 
韓国で子どもを産みたい日はくるか?

エピローグ
訳者あとがき

引用



予測不可能なことや楽しいこともたくさんあるのだろうが、その冒険に飛び込むほどの強い動機はもっていない。子どもを産んで育てることで感じるであろう胸アツの感情や経験を味わえないのは少し残念ではある。
でも、子どもを育て、四六時中話を聞いてやり、要求にこたえてやる日々に私が耐えられないことは自分が一番よくわかっている。子どもの友人関係や学校生活、才能や進路について自分のことのように悩み、泣いて笑う日々は考えただけでもぞっとするが、もしかしたらものすごく幸せなのかもしれない。
でも、私は自分の人生を誰かにそこまで侵されたり、揺がされたりしたくない。
それと同時に少し不安にもなる。子どもを産む前は私と同じようだった人も産んでから気が変わったんだろう。その人たちの世界はもっと広がって豊かになったことだろう。
そして次の瞬間、また考える。それでも私は違う。


感想


2022年290冊目
★★★★

韓国で既婚で「子どもを持たない」ことを選択した女性たち。
著者は放送作家。
姉の子どもの面倒を見るのに手伝いに来てくれと言われ、半日行った姉の家。
姉は社内託児所で2歳の子どもを迎え、家の近くの保育園で下の子をベビーカーに乗せる。
家に帰ってからも一瞬も休む暇なく続く家事と育児。
私には無理。はやく家に帰りたい。
そう思ったとき、姉から言われる

「一人ぐらい産んでみたらいいのに」

著者は思う。
子どもを育てることは、ほんとにそこまで言うほどのことで、誰もが一度は経験しないといけないことなのか?
結婚=出産で、子どものいない結婚生活は不完全なものとされる韓国社会で、子どものいない夫婦生活を選んだ「私たちの星」にいる人たちは、どんな悩みを抱えて、どんな幸せを感じているんだろう?
著者はあちこちに声をかけ、住む場所も職業もバラバラの、17人の女性たちに出会う。
インタビューに参加してくれた彼女たちの声。

前に読んだ、イスラエルの

母親になって後悔してる [ オルナ・ドーナト ]

これが「そういうものだと思って子どもを産んだけれど、自分は母親になるべきではなかった」と感じている人たちの話だから、本書とは対になる内容だ。
「そういうものだと思われているけれど、私は母親にはならない」という人たち。

韓国で「結婚したけど子どもを産まない」という選択をすることは中々に大変なんだな、とこの本を読んで思う。
日本でもそうだけれど、結婚することは「異性愛者である証明」であって、「敷衍した現行の社会制度を受け入れた表明」であり、多くの人が属するグループの一員になる踏み絵だ。
そこに組み込まれることは、マジョリティであることの確認でもある。
マジョリティであることのパスポート。優遇される仕組みへの参加。その一部になること。
著者も自分が結婚したことを、異性愛者であることの特権行使のように感じている。

恐らく同じように「ママにはならない」という選択をしても、「結婚していない」(独身である)状態であれば周囲がどうこう言うことは少ないんだろう。
何故なら、結婚という強固な制度がその先に「2、3人の子どもを成し、人口を再生産すること」も含まれているパッケージ販売だから。
そもそもその端緒を開いていなければ、メンバーの一員になることを拒否しているわけだから、「私たちは仲間なのだから」という意識で口を出されることも減る(はず)。

私の知る、ある人が言っていた。

「私は子どもを望んでいたけど長く出来なくて、その時一番傷ついたのは『人の親にならなければ一人前じゃない』という“母親になった人”からの言葉だった」

確かに親にならなければ分からないことはある。
と、自分が親になって思う。身をもって知らなければ分からないこと。
体感。
その身体的労働性や、時間的束縛性、精神的隷属性。

この本に紹介されていたコラム(女性記者が「復職して1週間で過労死した公務員ワーキングママの話」を読んで思い出した、自分の第一子の出産から復職して間もない時の事)の一文に胸を打たれた。

「あ、私は自殺する自由を失くしたんだ」


本の後半に登場する猫を飼うヨンジも言う。
彼女は結婚して引っ越し、夫の帰りを待つだけの日々を毎日泣きながら暮らしていた。
マンションの10階から飛び降りたらみんなリセットできるかな、と感じながら。

でも、全部投げ捨てて逃げ出したいときも、「この子たちがいるし、お金稼がないと」と思わせてくれる装置みたいな、ケアする対象がいるっていうことが、私を正しく生きる方向に導いてくれるような気がします。親としての気持ちもこういうものなんでしょうね。


私もそうだろうな。ここから逃げることは出来ない。
生きて、働いて、稼いで、子どもたちを育てなくては。
私が望んだことだ。私が彼らをこの世界に生み出した。
だから私はその責任を取らなくては。

けれどそれが「一人前」ということになるのか?

子どものいない教師の知人は、「でもどうせ先生には子どもがいないから分からないでしょ」と言われるそうだ。
私はいつも思うのだけど、宇宙に行った人だけが宇宙を語れるのだろうか?
だとしたら、宇宙飛行士だけがその資格を持つことになる。

宇宙飛行士はどうして宇宙へ行けたのか?
誰がその機材を作り、打ち上げを準備し、宇宙食を用意したのか?
彼らもまた、そのメンバーの一員ではないのか?

宇宙へ行った人だけが、その身体性と精神性を知っている。
それは真実だ。
無重力のなかで生活し、閉鎖空間で日々を送る。
けれどそれだけで世界が出来ているわけではない。
それはあまりにも狭量で暴力的な捉え方だろう。

宇宙飛行士になりたい人も、宇宙には行きたくないけど宇宙に関わる仕事をした人もいる。
そして宇宙にまったく興味がない人も。

NHKの「 理想的本箱 君だけのブックガイド 」で、「人にやさしくなりたい時に読む本」として白尾悠「サード・キッチン」が紹介されていた。
作中に登場するゲイの青年は言うのだそうだ。
世界はそういうところだと、自分の存在を含有する場所なのだと思ってほしいだけ。

多様性って結局、そういうことなんだよな。
自分が属する「ふつう」が一面的なものだと知って、それ以外にたくさんある可能性に目を開くこと。
たとえ自分ではどうしても受け容れなくても、多元的に広がる世界の存在を認めること。

母親になって後悔してる。
ママにはならないことにしました。

私にはどちらも分かる。

彼氏は?
結婚は?
子供は?
二人目は?

1つずつ社会的規範のチェックリストにマークをつけるほど、びっくりするほどたくさんの人が口出ししてくることに驚いた。
彼らは、まるで自分たちにはその権利があるのだと信じているようだった。
宇宙?知ってるよ。アマチュアだけど一家言あるんだ。
私たちは同じだという顔をして―――先輩面をして。

彼氏がいます。
結婚しました。
妊娠しました。女の子でした。
二人目は男の子が生まれました。

ほらこれで満足?と思う。
私は心の中で、その「誰か」に対して思い切り中指を立てる。
Happy now?

そうして私は思う。
もし私がそうしていなかったら。
平行世界の私は、どれだけ自由だっただろう。

絆は、「きずな」とも「ほだし」とも読む。
結ばれた縁は、縛られることでもある。
それを望んだのか―――そういうものだと、思い込んでいたのか。
がんじがらめになった彼女たちと、それを望まなかった彼女たち。

Happy now?

それは私に向けられた問いでもある。
今、幸せ?

これまでの関連レビュー


82年生まれ、キム・ジヨン [ チョ・ナムジュ ]
母親になって後悔してる [ オルナ・ドーナト ]



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最終更新日  2022.12.03 23:20:58
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