2006年05月13日
XML
カテゴリ: 連載小説


 小池くんとの食事は楽しかった。
 時々、私と小池くんが二人でいるということにちょっとした違和感があるけれど、それもそれほど不快な感じではなかった。

 念願のピザを食べ終えてから、私はからかうように小池くんに言った。

「私なんか誘ってないで、小池くんも良い人みつけなきゃね」

 すると小池くんは、笑顔で言った。

「……そんな、サヤカさんよりも良い女の人なんて、なかなかいないですよ。」

 私は思わず照れたが、お世辞なんて言っても何も出ないわよ、と冗談で返した。そして、二人で笑いあった。

 ふと、小池くんが真顔で言った。


「それに?」
「サヤカさんのこと、ほっとけないですよ」

 小池くんは真剣な声でそう言った。あまりにも真剣にそう言われてしまって、思わず私は顔をうつむけてしまった。
 私は、家族だけじゃなく小池くんにも心配をかけてるんだ。そう思うと申し訳ない気持ちになった。


 店を出て、帰るために駅のホームで電車を待っていた。
 私と小池くんは別方向の電車なのだけど、私が電車に乗るまで小池くんが付き合ってくれた。

「サヤカさん、あの……」
「なに?」

 小池くんは、ためらい気味に言った。

「香水、つけてます?」

 私は、少し緊張してしまった。


 今日、会ってすぐに小池くんが何かに気がついたような顔をしていたけれど、それはこの匂いのことだったのか、と私は気がついた。

 さらに小池くんは、私から目をそらして呟くように言った。

「それって、カズヒロさんの匂いですよね」

 そう言われて、私は思わず言い訳をするみたいに誤魔化してしまった。

「あー、うん。好きな匂いだから……」


 小池くんはさらに何かを言いたそうにしていたが、結局何も言わなかった。

 私には、小池くんが言いたいことが何なのか、なんとなくわかった。けれど気が付かないふりをした。
小池くんは、言えなかった言葉のかわりに、呟いた。

「もうすぐ、ニ年ですね」と。

 そうね、と私は答えた。



つづく






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2006年05月13日 17時18分01秒
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

プロフィール

かめ@ゴミスティピョン

かめ@ゴミスティピョン

コメント新着

雪村ふう @ Re:書きたいことを書くのって、難しい。(03/13) 就職決まったんですね。 おめでとうござ…
かめ@ゴミスティピョン @ Re:どうでもいいけど。(02/10) くみさん >アイスティーはコップじゃな…
くみ@ どうでもいいけど。 アイスティーはコップじゃなくて、グラス…
かめ@ゴミスティピョン @ Re:いい話じゃないですかー(02/15) ぼっつぇ流星号さん 読んでくれてありが…
ぼっつぇ流星号 @ いい話じゃないですかー こういうほのぼの幸せなのっていいと思い…

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: