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2017.06.18
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カテゴリ: 観照 [再録]

2013年9月17日からご紹介を始めた「祇園祭」関連のまとめがあります。 この楽天ブログに書き始める前のものを記憶の一つとしてここに再録して、集積しておきたい所存です。

2013年9月17日、こんな文章から書き始めていました。
「昨日は嵐山・渡月橋のあの激しい汚濁のさかまき、そして桂川の氾濫。各地での被害に遭われた皆様には災害お見舞い申し上げます。土砂崩れ、家屋倒壊で亡くなられた方に、合掌。
私の住む、宇治市域にも避難指示が出されていました。宇治川が何とか氾濫せずに助かりましたが、一部地域で浸水がありました。後始末が大変だろうと推測します。

さて、酷暑の記憶、特に暑かったこの夏。祇園祭で夏の本格化を感じ、大文字の送り火で過ぎゆく夏の始まりを季節感として抱いてきていたのですが、今年は前後の期間に暑さが長く広がり、これも地球温暖化のしっぺ返しかと感じているところです。

その暑さにめげずに今年も飽きることなく祇園祭の宵山、山鉾巡行を見に出かけました。遅ればせながら、その記憶を整理しておきたいと思います。仕事などでやむなく京都に居なかった時を除き、何十年と毎年のように出かけています。ほんと、飽きることがない。あのお囃子の音と鉾や山の装飾品類の伝統美を再び味わえる楽しみは、私の年中行事として欠かすことができない・・・・・のです。

毎年山鉾のすべてを見ることはなかなかできません。今年経巡ったなかからいくつかをまとめてみようと思う次第です。」

記録を残すと、当時の状況を鮮やかに思い起こすインデクスになります。
再録にあたり、当時の文章を読み直し、最小限の必要な加筆削除修正にとどめて再録し、ご紹介します。重複部分があると思いますが、ご寛恕ください。

今年も間近になってきた「祇園祭」への誘いになれば、幸いです。

宵山の「菊水鉾」の夜景 から始めます。
京阪電車の祇園四条駅で下車して、四条通を西に進んでいくと、徐々に宵山に出かけてきた人で混雑が増して行きます。それに伴い、宵山の雰囲気が盛り上がっていくのです。やはり、お囃子の直の音を耳にし始めると、テンションが高まります。
四条通の車道をこのときとばかり、西に進み、烏丸通を横切り、室町通を左折し少し北に上がると、菊水鉾町です。でんと菊水鉾が建てられています。

ほぼ毎年必ず見る鉾の一つが菊水鉾。昭和に再建された鉾なのですが、胴掛の麒麟図が好きな図柄の一つです。これは宵山あるいは宵々山に出かけてきたときは欠かさず見ています。後でご紹介します。

四条通を西行すると、まず長刀鉾が目に入ります。烏丸通を横切ると函谷鉾、その西南方向、四条通南側に月鉾が眺められ、郭巨山の灯火がかなり西に見えます。函谷鉾と月鉾の間に南北の室町通があるのです。宵山では混雑緩和のための一方通行により、まずは室町通を北行していくことから経巡るためにも、菊水鉾を鑑賞してから進むことになります。

今年(Y2013)特に見たかったのはこの 新調された前掛「大黒天図」 です。
16日の宵山では透明のカバーが掛かっていたのがちょっと残念でしたが・・・・。
新聞報道で知ったので、現物を眺めてみたかったのです。

昔は17日当日、山鉾巡行を見に出かけることができる機会には、早く出かけて、四条通から河原町通や御池通で場所を定め、見ることが多かったのです。しかし、最近は巡行がテレビでライブ放送されていて、籤あらための儀が放映されているのを眺めてから四条に出かけていくことが多くなりました。四条河原町通の角を辻回しする鉾や山を行列の途中から少し見て、四条通を西行しながら山鉾巡行を眺め、写真を撮りながら、新町通を北上するのです。 新町通のどこかで山鉾町に戻るところを眺めるという次第

新町通を下ってくる菊水鉾の正面です。
菊水鉾は幕末の大火で焼失され、昭和の年代に巡行復帰した鉾です。
1952(昭和27)年、仮鉾の形で巡行に参加し、翌年1953年、懸装品がない木組だけの裸鉾に、「周囲には雨除けの合羽に菊水の紋を染め抜いたのを巻き、長押の天水引には翠廉をつらね、江戸時代を偲ぶ出し花の造花を破風下に飾った」 (資料1) 姿からの再建復帰だったそうです。
この新調前掛は、縦2.57m、横2.63mのつづれ織り。
(資料2,3)
祇園祭の山鉾は、従来からの伝統的な懸装品を存続維持しながら、それぞれの山鉾町が古き品々の傷みを考慮し、保存の為に、順次、新たな意匠を採り入れたに懸装品の新調を営々とされていきているという側面があります。長年の伝統を維持し後世に継承していく努力が、累々と重ねられてきているのです
古き物の中に新しきものが加わり、渾然一体となって、その年の動く伝統美術館、伝統芸能の囃子が鳴り響くのです。この魅力に私は虜になっていると言えます。 単なる伝統墨守ではない局面を包含した伝統行事にです。


鉾の車輪は台車の木組みに固定されていますので、車として前後の回転はしますが、自動車の車輪のように左右に振れません。そのため四つ角(交差点)を回るときには、 「辻回し」 という作業が黙々と行われます。 この辻回しを見るのが山鉾巡行の魅力の一つ。


鉾の正面に見える稚児人形は「菊丸」 と称します。 能の「菊慈童」から取材したもの である点は補遺でご推測・ご理解いただけることでしょう。能装束の舞姿です。人形師の岡本正太郎氏による1956(昭和31)年の作です。

菊水鉾が他の鉾と異なる点は、唐破風屋根で軒下に翠簾 (すいれん) をかけているということを後日調べていて知りました。巡行の見物では、見物する立地場所により鉾のある側面しか見えませんので、これは未だ未確認です。
鉾の細部の違いを見比べると、ますます鉾に魅了されていきます。


車輪の下に割竹を敷き詰め、打ち水をたっぷりして、滑りをよくしながら、大勢の曳き手が音頭に合わせて、ぐいと曳き、少しずつ車輪をずらせながら90度の角度を回すのです。これが何回の動作でスムーズに回るか・・・・割竹をセットし打ち水する一群の人々と、鉾の先に立ち音頭をとる人、大勢の曳き手の生み出す力量であり、ハーモニーです。 きれいに辻回しが進行すると、どっとどよめきと拍手が 沸き起こります。観客も一体となる瞬間です。 この瞬間が実にいいのです。



菊水の額が懸られた真木と榊
鉾頭の頂には、金色透しの上向き菊 が付けられています。 小林尚珉氏作。

鉾・欄縁に腰掛けた囃子方の鉦を打つ手の動きにつれて、長く垂れた紐と房が微妙に揺れ動きます。

囃子方の頭上の天水引(上水引)は画家・ 三輪兆勢氏肉筆の水辺の鳥の景色図 です。


欄縁下の水引は手許資料では確定できませんでした。後に図書館で調べてみて、 下水引は「春景吉野桜図」で皆川月華作 とわかりました。その下の胴掛が砂塵を巻き上げて雲を疾走する 麒麟二頭の図もまた皆川月華作 です。


この見送は再建10周年を祝って作られた 緞帳風の図柄、「孔雀花草図染織繍」。皆川月華氏作、長谷川文平氏刺繍 だとか。菊花飾金具が上部に大房2本、裾房5本が飾られています。


鉾町に戻ると、直ちに懸装品の片付けが始まるのです。
鉾本体に飾られた懸装品が次々に手際よく取り外されていきます。このとき、邪魔にならないように注意しながら、懸装品を鑑賞できるのです。今回はもちろん新調前掛をしばしの間ですが、見て写真を撮るのが私の愉しみでした。

鉾の四隅には、隅房ではなくて、 薬玉が吊されている ところが特徴的です。
「隅金物は流麗な蘭を球形に意匠し、これに濃紅丸組紐の総角結び、菊花飾結び薬玉、大型菊花結び、も一度薬玉、そして菊花結びがあって長房という華麗なもの」です。

前掛の部分図を撮ってみました。     



そして、こちらは麒麟図と反対側の胴掛け。 前掛側からは左側の胴に麒麟図。右側の胴にこの狛犬風獅子2頭が牡丹の園に戯れる図です。こちらも皆川月華氏の作品。


鉾の天井部分には龍図が。この片付けの機会でないとなかなか天井図は見られません。


鉾の屋根の唐破風造の正面には、 鳳凰の懸魚 が飾られ、きらびやかに羽ばたいています。
彫師海老名峰彰作。



菊水鉾の装飾は再建25周年を迎えて、一通り完成したと言います。
そして、今年前掛が新調され、菊水保存会では再建60周年記念として、左右の胴掛と後掛の新調が勧められているそうです。鉾継承に営々とした努力が地道に続けられているのです。

菊水鉾一つをとっても、まだまだ全容を細部まで完全に鑑賞できたとは言えません。
それ故に、毎年新たな発見をしながら、祇園祭をエンジョイしている次第です。

さて、次回は、私の好きな船鉾をご紹介します。
(宵山で経巡り、巡行当日に見た順番とは無関係に、思いつくままのご紹介順序です。)

ご一読ありがとうございます。

参照資料
1) 『祇園祭細見 山鉾篇』 松田 元著・ 郷土行事の会発行、1978年再版
   p36-42他 以下本文で適宜参照しています。
2) 「波間に大黒さん 涼やか」(2013 祇園祭) 京都新聞 2013.7.2朝刊
3) 祇園祭 菊水鉾 前懸 「杼入(ひい)れ式」を実施   菊水鉾保存会 pdfファイル

【 付記 】 
「遊心六中記」と題しブログを開設していた「eo blog」が2017.3.31で終了しました。
ある日、ある場所を探訪したときの記録です。私の記憶の引き出しを維持したいという目的でこちらに適宜再録を続けています。
再録を兼ねた探訪記等のご紹介です。再読して適宜修正加筆、再編集も加えています。
少しはお役に立つかも・・・・・。他の記録もご一読いただけるとうれしいです。

補遺
菊水鉾   山鉾について :「公益財団法人 祇園祭山鉾連合会」
京都祇園祭  :「京都・祇園祭ボランティア21」
大黒天  :ウィキペディア
菊水の井跡  :「京の名水」
菊慈童  能楽事典 :「銕仙会  ~能と狂言~」
武野紹鴎  :「茶の湯 こころと美」(表千家)
小林尚珉 ←  尚工舎 小林尚珉 鋳銅爬龍文 穀類を盛る器 :「大和骨董図鑑」
            このページに同氏の略歴が載っています。

三輪兆勢  :「京都市立芸術大学芸術資料館」
皆川月華  :ウィキペディア
海老名峰彰 ←  09高台寺 初秋の特別展~10月18日まで~  :YouTube
            高台寺特別展 仏教彫刻展 海老名峰彰
懸魚とは何?   :「懸魚 ~由来と形態~」
 :「京都発 季節の逸品」

   ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

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その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。


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Last updated  2017.06.20 21:01:36
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