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2019.08.03
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カテゴリ: 観照
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四条通南側歩道、新京極通の入口を北に、御旅所前に設営されたテントの傍で、花傘巡行の続きに、後祭の山鉾巡行を観覧しました。 祇園会の幟 が先頭を行きます。後祭の山鉾巡行では 「橋弁慶山」が籤 (くじ) 取らずの山であり、慣例として先頭です。
「橋弁慶山は、明応9年巡行の順番を鬮できめたとき、山でただ1基鬮とらずの一番先頭を行く特権を確保した」 (資料1) と言います。

今年の祇園祭案内のリーフレットを引用します。 (資料2)




花傘巡行のご紹介の折りに触れていますが、この山鉾巡行の時点では、御旅所に八坂神社の神輿3基-中御座・東御座・西御座-が逗留しています。八坂神社の御祭神(諸神霊)は神輿に遷座されて、御旅所にとどまっていますので、無事巡行してきた山鉾の関係者は、御旅所に居ます御祭神に礼拝されるということでしょう。無事巡行を終えることへの報告と御礼なのかもしれません。長年祇園祭を楽しんできていますが、この儀式が組み込まれていることを今回初めて知りました。


橋弁慶山は、弁慶と戦う牛若丸が橋の欄干の擬宝珠上に飛び上がり片足で立っている瞬間の場面を現出しています。人形は 仏師康運作で永禄6年の銘 があるとか。牛若丸は足駄の金具1本で支えられているのです。 前懸は富岡鉄斎原画の「椿石 (ちんせき) 霊鳥図」。水引は「百子 (からこ) 文様の綴錦」 (資料1,3)

水引の下部は、帯状の猩々緋金唐革細縁附で、少し楕円形の花鳥文刺繍が4種類繰り返しで並んでいます。胴懸は丸山応挙下絵とされる「加茂祭礼行列図綴錦」です。 (資料1,2,3)
後懸は江戸末期の「雲龍図刺繍」 
風流の趣向を見せた時代の形式を伝える古式の山 なのです。 (資料1)

2番は北観音山

鉾のように大型化した曳山です。鉾と同様に 2人の音頭取
「上り観音山」 とも称されます。

今年は、 天水引に「観音唐草図」が使われています 。「雲龍図」との隔年使用とのことです。 (資料4)
鉾と曳山との違いがあります。現在では長刀鉾に生稚児、他の鉾には稚児人形が同乗しますが、曳山にはそれがありません。正面に囃子方の姿が見えます。 鉾では真木・鉾頭 が立ち、鉾頭に各鉾の特徴が見えます。 曳山では真松 が立てられています。 (資料1,2)

北観音山の山舞台に飾屋根が付けられたのは天保4年(1833)だったそうです。 (資料4)


下水引は3枚が重ねられています。 一番水引は「関帝祭の図」(中島来章下図)の刺繍 です。唐人物百余人と車駕などによる王侯行列風俗が描かれています。 二番水引は「赤地牡丹唐草文様綴織」、三番水引は「金地紅白牡丹文様唐織」 で、復元新調されて2006年より使用されています 。胴懸(西面)はインド絨毯「斜め格子草花文様」 の復元品が使われています。 (資料4)
オイデコを持つ車方
車軸が固定されているので、進行方向の微調整や辻回しで車輪をこじるのに使用されます。ほかに 「カブラデコ」「カケヤ」 というのも使われています。 (資料1)

見送りは「鳳凰宝散額唐子嬉遊図」の綴錦 です。見送りの右脇から 柳の大枝 が差しだされています。これは観音懺法 (ざんぽう) に因み、 楊柳観音の三摩耶形 さんまやぎょう :シンボル)だそうです。 (資料1,4)




巡行3番は「鯉山」 です。




緑色の羅紗で覆った山洞に半ば隠れるように社殿が鎮座します。そして、真松に掛けて垂らされた麻緒をつかったものが滝に見立てられ、大きな鯉が瀧登りをしています。山正面の欄縁は深く切り下げられ、鯉の尻尾と波しぶきの彫刻が外側にはみ出しています。

鯉山の特徴は、一枚のベルギー製のタペストリーが裁断され、そのパーツが巧みにそのまま、あるいはパーツどうしを組み合わせ、あるいは唐物との異質の組み合わせとして、水引、前懸、胴懸、見送りを構成していることです。この詳細については以前にご紹介しています。
タペストリーの図柄は、ホメロスの叙事詩「イーリアス」中の「トロイヤ戦争物語」の一場面だという調査結果が出ているとか。 「トロイア王プリアモスと王妃ヘカペーの祈り」の場面 だそうです。 (資料5)


巡行4番・八幡山、5番・黒主山が続きます。



八幡山は総金箔の社殿が、緋羅紗に覆われた山洞に半ば入った形で鎮座します。

朱塗り鳥居の笠木上に、向かい合う形で鳩が止まっています 。いまは、複製品が巡行で使用されています。宵山では会所に左甚五郎のオリジナルと並べて展示されていました。
前懸は「聖獣三態胴懸幕」(1990年復元新調)の内の「唐獅子」 です。 (資料6)

この 胴懸(西面)は「麒麟」 です。

今年は、見送りに「日輪双凰の帽額」が付いた「童 (わらべ) 」の図柄が飾られていました。 (資料6)


そして、黒主山

桜の木を見上げる 大伴黒主の人形 には、 「寛政元年五月辻又七郎狛 (こま) 元澄作」の銘 があるそうです。寛政元年は1789年。この山に飾られている桜の花は粽と同様に、戸口に挿しておくと悪事が入ってこないといわれているとか。 (資料7)

撰者の一人紀貫之が書いた『古今和歌集』の「仮名序」に大伴黒主のことが記されています。六歌仙の一人に取り上げられていますが、他の歌仙と同じく、黒主の歌についても手厳しい評言が記されています。該当箇所の現代語訳を引用します。
「大伴黒主は、歌の心はおもしろいが、歌の体 (さま) は低俗なところがある。たとえて言えば、薪を背負った山働きの人が、桜の花の下で休んでいるような、不調和なところがある」と。大伴黒主の歌は『古今集』に4首撰ばれています。その内2首が仮名序の黒主評での実例として記されています。 (資料8)
撰歌の一つが「題しらず」として詠まれた次の歌です。
  春雨のふるは涙かさくら花 ちるをおしまぬ人しなければ      88
序でに後の3首も併記しておきましょう。
  思ひ出でて恋しき時ははつかりのなきてわたると人はしらずや   735、仮名序
  鏡山いざ立ちよりて見てゆかむ年へぬる身は老いやしぬると    899、仮名序
  近江のやかがみの山をたてたればかねてぞ見ゆる君がちとせは  1086

なお、「大伴の黒主はという人物は多分に伝説的で、詳しいことはわかっていない」 (資料1) と言います。



水引は「雲龍文様の繻珍」。前懸は前懸は萬暦帝即位の折の御服と伝えられる古錦を復元した「五爪龍文様錦」。胴懸は「草花胡蝶文様の綴錦」。

見送は2004年(平成16)に復元新調された 「牡丹鳳凰文様」 です。
別に「宝散し額唐子嬉遊図」も復元新調されています。 (資料9)

この山の見送りの特徴は、上部に緋羅紗で覆った 釣板 に見送りがとりつけてあるという方式です。釣り板の表面3カ所に、高浮彫鍍金金具を飾り、浅葱総角結大房3本が飾られていることです。
釣板を利用するだけ、見送りが大きいということでしょうね。

  これが黒主山の最後尾です。

つづく

参照資料
1)  『祇園祭細見 山鉾篇』 松田元 編並び画
2) 今年入手した祇園祭ガイド配布資料
 「祇園祭宵山・巡行ガイド2019」「わかりやすい祇園祭2019」
 「令和元年 祇園祭 前祭/後祭 山鉾建ての位置と巡行路」
3) ​ 橋辨慶山 ​ オフィシャルサイト
4) ​ 北観音山 ​  :「祇園祭山鉾連合会」
5) ​ 鯉山町衆 ​  ホームページ
6) ​ 八幡山かわら版 ​ ホームページ
7) ​ 黒主山保存會 ​ ホームページ
8) 『古今和歌集』 窪田章一郎校注 角川ソフィア文庫
9)​ 黒主山 ​  :「祇園祭山鉾連合会」

補遺
三摩耶形 ​  :「コトバンク」
三昧耶形 ​  :ウィキペディア
大友黒主 ​  :ウィキペディア
大伴黒主 ​  :「千人万首」

   ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

観照 京都・祇園祭・後祭 花傘巡行 へ
観照 京都・祇園祭・後祭 山鉾巡行 -2 南観音山・役行者山・浄妙山・鈴鹿山・鷹山(唐櫃)・大船鉾 へ
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​​​​​​​​​ ​​ ​​​​​​こちらもご覧いただけるとうれしいです。
観照 [再録]  祇園祭 Y2014・後祭 山鉾巡行 -1
観照 [再録]  祇園祭 Y2014・後祭 山鉾巡行 -2
        この2回でご紹介しています。
観照 祇園祭 Y2018 後祭 -6 浄妙山・鯉山
観照 [再録]  祇園祭 Y2014・後祭 宵山 -2  鯉山
   タペストリーの裁断とその使われ方についてご紹介しています。
探訪&観照 祇園祭 Y2017の記憶 Part 2 -9 還幸祭 御旅所にて(1) ​ 
   2回のシリーズでご紹介しています。
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   2回のシリーズでご紹介しています。
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Last updated  2019.08.06 14:17:37
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