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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2011.12.31
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カテゴリ: 文芸

 上下2分冊の大作だが、上巻はあっと言う間に読み終えてしまった。
 舞台は21世紀半ば、近未来。
 しかし、今の時代に起こった話として読み進めても、全く不自然でない。

 主人公は、システムエンジニアの渡辺。
 彼にとって、妻はとんでもなく恐ろしい存在。
 浮気を疑われ、これまでにも痛い目(肉体的に!)にあわされており、
 このお話しの始まりも、彼女の指示による拷問シーンから。

読んでいて、本当に鳥肌が立つほど、リアルに痛い。

もちろん、実際に肉体的な痛みはないが、心の方は恐怖でブルブル震えてしまう。
途中で登場する、指をちょん切る道具は、さらにスゴイ。

ホント、こういう場面を描かせたら、伊坂さんは天下一品だ。
余程のSかMではないかと、想像してしまう。
なのに、こういう場面でさえ、ユーモアを忘れない。
この絶妙なバランス感覚が、とてもイイ。

こういった暴力的で恐怖に満ち溢れたシーンを各所に散りばめながら、
渡辺が、自らを巻き込んだ不可解な仕事の謎に立ち向かう様が描かれる。
そして、渡辺の親友として登場するのが井坂好太郎。
伊坂さんの分身的存在とも思えるこの小説家と渡辺との会話に、こういう下りがある。

  「俺の小説が、過去に映画化されたのは知っているだろ」

  「なったんだよ。その時にだ、俺は痛感したね。
   小説にとって大事な部分ってのは、映像化された瞬間にことごとく抜け落ちていくんだ」
  「どういう意味だよ」
  「映画の上映時間を二時間とするだろ。その二時間に、ひとつの物語を収めようとする。
   そうするとどうするか」

  「まとめるんだよ。話の核となる部分を抜き取って、贅肉をそぎ落とす。そうするしかないわけだ」
  井坂好太郎は自分の発言に酔うかのようだった。
  「粗筋は残るが、基本的には、その小説の個性は消える」(p.200)

伊坂さんは、井坂好太郎の口を借りて、自身の経験や思いを吐露しているのだろうか?
もちろん、それも十分に考えられる。
しかし、それだけではないだろう。
なぜなら、この部分の会話は、お話の核となる次の言葉へと繋がっていくものだからである。

  「人生は要約できねえんだよ」(p.201)





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Last updated  2011.12.31 15:41:59 コメントを書く


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