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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2017.11.05
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カテゴリ: 教育・子育て
​  『ブラック化する学校 』 を読んで、学校全体の様子を概観した後、
 そのブラック化の要因として常に挙げられる「部活動」について知るため、
 本著を手にすることにしました。
 著者は、現在、学校について様々な問題提起の発信源となっている内田准教授。

 巻末には、「部活動問題対策プロジェクト」をインターネット上で展開する
 真由子氏、藤野悠介氏と、内田准教授との対談が掲載されています。
 その活動については、本著第8章「先生たちが立ち上がった!」に記されており、


さて、部活動について記された本著ですが、
部活動以外の学校の課題についても、かなり詳細に紹介されています。
ここまで現場レベルの問題を、一般向けに紹介した書物は、そう多くはないです。
例えば、内田准教授の名前を全国に知らしめた「組体操」については、

  巨大な組み体操を披露すると、保護者や地域住民から盛大な拍手が送られる。
  子ども(一部を除く)も先生も、大きな満足感を得る。
  次の年、保護者、地域住民、子ども、先生のいずれにおいても、
  ハードルは一つあがってしまっている。(501)

  ※注 かっこ内の数字は電子書籍における位置を示しています。以下同じ。

これは、組体操についてだけではなく、
学校で行われている様々な取り組み全般について言えることです。

どんどんやるべきことが増えていってしまうという悪循環に陥っています。

そして、部活動だけでなく、教員の働き方について語るとき、
避けて通れないはずの問題が、教員の勤務時間と賃金についての問題です。
実は、学校では最大のアンタッチャブルな領域となっているこの問題について、
本著は、かなり突っ込んで記してくれています。


  (むしろ終業時刻を過ぎてから部活動が本格的に始まるといっても過言ではない)
  状況のなかで、
  それに残業代が一銭も支払われることがないというのは、
  労働基準法に照らし合わせれば、完全な違法状態での経営である。(1042)

本著第5章「教員の働き方改革 - 無法地帯における長時間労働」では、
教員の勤務について、その実態をかなり詳細に紹介してくれています。
なかでも、「休憩時間」についての問題は、
このような形で、世間一般に大きく取り上げられることが、ほぼなかったものです。

そして、内田准教授が記しているように、
現在の学校運営は、完全なる労働基準法違反の上に、やっと成り立っているものなのです。
世間大多数の声が「公務員だからそれくらいやって当然」というものであるために、
この状況が、黙って見過ごされ続けているだけです。

  今日、教育問題や子どもの問題の語り方は、
  子ども=善、教員=悪の構図で成り立っている。
  学校の外にいるマスコミや市民が、教員を含む学校内部を、予断をもって批判する。
  個別具体的な状況がわかる前から、
  教員はただ批判される側の立ち位置にいる。(1877)

この背景があることに加え、教員自身の無自覚、
さらには、学校の情報発信不足が、現状を招いていると言えるでしょう。

  すなわち、長時間労働が抑制されないのは、
  一つに「 教職調整額 」を含めた法制度の問題があり、
  もう一つに長時間労働を美化する教員文化の問題があるということだ。(1241)

この「長時間労働を美化する」という文化は、
教員だけのものではなく、かつて日本社会全体で広く共有されていたものだと思います。
しかし、その考え方が大きく変化し始めた今、
昔ながらの考えが、今もなお、色濃く残っているのが学校だとは言えるでしょう。

さて、いよいよ本著の本題、部活動についてです。
部活動は正規の教育活動ではないのに、指導せざるをえない教育活動。
このグレーゾーンとしての位置付けが、
様々な問題の根源になっていると、内田准教授は指摘します。

教科指導と違い、教師になるためのカリキュラムには組み込まれていないので、
素人が、勤務時間をはるかに超えて指導することを強要される場面が生じます。
また、授業のように活動場所や時間が、元来明確に設定されていないため、
場所や施設、備品等が不足し、時間設定もあいまいで青天井になってしまいがち。

  そして、グレーゾーンに置かれた部活動の指導もまた、
  授業とは別の側面から子どもの成長を促すものと評価される。
  社会性の育成、チームワークの醸成など、その教育的意義とされるものが、
  部活動の存在価値を高めている。(1034)

グレーゾーンでありながら、
その教育活動の意義は、世間にも大いに認められてはいるのです。

  部活動で生徒を夜まで拘束すれば、たしかに学校の外のトラブルは減るかもしれない。
  だが、はたして学校のなか、部活動のなかのトラブルはどうなのだろうか。
  そこをブラックボックスにしたまま、
  部活動の非行抑止効果を唱えることには慎重でありたい。(2268)

この非行防止効果については、本著において概ね否定的なものとなっていますが、
異なる意見を持つ人も少なくないと思います。
多くの教員の指導に従わないのに、部活顧問の指導には従う生徒がいるのも事実です。
授業力だけで、この影響力を発揮することは、容易いことではありません。

そして、帯にもある「楽しいから、ハマる。」。
これも事実で、授業に注ぐ労力の何倍もの労力を、部活に注いでいる教員も多いのです。
「教員の本務とは何か?」ということを、考えさせられてしまいます。
そして、内田准教授が示した方策は次のようなもの。

  もし部活動がどれほど頑張ってもほとんど評価されない、
  それどころか評価される場面(大会)も乏しいとすると、
  「部活動は麻薬」に転じにくくなる。
  どれほど部活動を指導しても、高揚感が得られないからだ。
  逆にいえば、それほどに部活動が評価されるということは、
  今日の部活動のあり方を大きく規定している。(995)

やがて、部活動のあり方が大きく変わることになるのかもしれません。
組体操と同じように。





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Last updated  2017.11.05 13:41:42コメント(0) | コメントを書く
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