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非革新的・非天才的ハード・バップの髄 アート・ファーマー(Art Farmer)は1928年生まれの米国のジャズ・トランペット奏者で、後にはフリューゲルホルン(この楽器を演奏している盤はこちら)、さらにはフランペット(トランペットとフリューゲルホルン双方の特徴を兼ね合わせた楽器)も演奏している。厳つい顔つきとは裏腹に、生真面目な性格で音楽と真摯に向き合う人物だったらしい。1950年代初頭にライオネル・ハンプトン楽団に在籍し、1953年にプレスティッジとの契約を得た。その後、50年代半ばからリーダーとして様々なアルバムを残すことになるが、ちょうどその時期、1954~56年に断続的ながら存在したのが、ジジ・グライスと組んでの“ファーマー/グライス・グループ”であり、その成果の一つが本盤『ホエン・ファーマー・メット・グライス(When Farmer Met Gryce)』であった。 ジジ・グライス(Gigi Gryce)は1925年フロリダ生まれのアルト奏者で、フルートやクラリネットも演奏した。ファーマーと同時期にハンプトン楽団に在籍しており、このグループは“旧友の再会”の上に成り立っていた。ジジ・グライス自身は演奏キャリアもそう長くはなく、ふだんあまり注目されないが、作曲家・編曲家としてもすぐれた人物であった(本盤の収録曲もすべてグライス作)。 本盤の特質を一言で表すならば、ハード・バップそのものでありながら、創造的なハード・バップ盤とは一線を画すというものである。わかりやすい例で言えば、マイルス・デイヴィスが新たなハード・バップの世界を創造的に切り開いていったようなイメージとは大きく違う。同じトランペッターの例を挙げるならば、リー・モーガンのような天才的な勢いがあるわけでもない。 では凡庸なハード・バップ盤かと言えばそうではない。知的な味わいのあるハード・バップだという言い方もできる。しかし、それ以上にどこか安心して聴けるという印象が、筆者にはことさら強い1枚なのである。日常的に気軽に聴くことができるとでも言えばもっとも適切な言い方になろうか。 その要因はどこにあるのか。ハード・バップの形式を革新したり、無理に斬新な方向には向かおうとせず、知的なフレイバーをつけたのがその一因であることは間違いない。けれど、なによりも安心して聴ける最大の理由は、アート・ファーマーとジジ・グライス2人の、決して“だれることのない”息の合った演奏にあるのではないだろうか。 実際、ハード・バップではその前のビ・バップに比べて個人の天才的演奏よりもチームワークに依存する比率が断然高い。バックのミュージシャンに腕利きを揃え、その上で二人の息の合った掛け合いが展開される(しかもそれは実験性をあまり持たない)からこそ、この安心感が生まれたのだろう。 バックを固めるメンバーは1954年録音の前半(1.~4.)と翌年録音の後半(5.~8.)で大きく入れ替わっているが、以下に記しておくように、ホレス・シルヴァー、アート・テイラーなど腕の利く奏者が名を連ねている。ちなみに、アディソン・ファーマー(後半のベース奏者)は、アート・ファーマーの双子の兄弟である。 最後に個人的好みでベスト3曲(順不同)を挙げておきたい。ブルックリンのクラブの名前をとった1.「ア・ナイト・アット・トニーズ」は、テーマと両者の掛け合いがとにかくカッコイイ。テーマのかっこよさという点でこれに劣らぬよさを持つのは、3.「ステュペンダス・リー」で、ミディアム・テンポの柔らかでメロディックなところがほっとさせてくれる。マイナーへのチェンジとそれが醸し出す抒情性が印象的な6.「カプリ」は、フレディ・レッド(ピアノ)とアート・テイラー(ドラム)の演奏もなかなかいい味を出している。聴いた後で疲れが残らず、何度も繰り返し聴け、そうするうちにじわりと沁み込んでくる好盤である。[収録曲]1. A Night At Tony’s2. Blue Concept3. Stupendous-Lee4. Deltitnu5. Social Call6. Capri7. Blue Lights8. The Infant’s Song[パーソネル]1.~4.(1954年5月19日録音):Art Farmer (tp)Gigi Gryce (as)Horace Silver (p)Percy Heath (b)Kenny Clarke (ds)5.~8.:(1955年5月26日録音)Art Farmer (tp)Gigi Gryce (as)Freddie Redd (p)Addison Farmer (b)Arthur Taylor (ds) 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年08月30日
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2010年08月30日
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二つのヴァージョン違いはどちらも名唱 先回のホイットニー・ヒューストンのデビュー作『そよ風の贈りもの』(1985年リリース)からは複数のシングル・ヒットが生まれた。とりわけ、「すべてをあなたに(Saving All My Love For You)」とこの「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール(Greatest Love Of All)」は、洋楽バラード好きの人は“聴かずには絶対死ねない”と声を大にして言いたいほどの名唱である。 そのうちの「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」をここで取り上げる次第なのだが、実は2種類のヴァージョン違いが存在する。オリジナル・バージョンとシングル・バージョンと呼んで区別しておけばいいように思う。オリジナルの方は、当初の米盤(当時はLPレコード)に収録されていたらしく、それはそのまま日本盤のLPならびにCDにも引き継がれた(したがって日本盤はずっとオリジナルを収録し続けた)。他方、米盤はこの曲がシングルとしてヒットした時点で、アルバム収録分もシングル・バージョンに差し替えられた。その後も米盤は長らくシングル・バージョンを収録していおり、2010年に出た記念エディションになってついにオリジナル・バージョン収録という形に戻されたらしい。 一聴して大きな違いは、オリジナルはピアノのイントロ(それも小さな音でバックから聞こえてくる)で始まるのに対し、シングルはキーボードのしっかりとしたイントロに差し替えられている点である。けれどもさらによく聴くと、演奏だけでなくヴォーカルのテイクも違っている。大雑把にいえば、オリジナルの方が丁寧にまっすぐ歌っているのに対し、シングルの方が起伏をつけて“濃い”節回しを試みているようで、なおかつ歌い方もこなれているという印象を持つ。 正直なところ、どちらが好きかと言われると結構悩む。両方聴きたいという理由で、結局のところ邦盤と米盤の両方を手元には持っているのだが、甲乙つけられないでいる。発売時から聴きなれていたのはオリジナルの方だが、実はその当時にはラジオなど違う媒体でも繰り返しシングル盤を聴いている。なので、多分に経験的だが、アルバム内で通して聴くならオリジナル、1曲だけ正座して聴くならシングル・バージョンといったところだろうか。 ちなみに、この「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」という曲は、ホイットニーのオリジナルではない。彼女よりも先に録音したのはジョージ・ベンソンで、彼のバージョンを聴いてもこの曲がそもそも名曲だというのがわかる。ホイットニーを発掘してデビューさせたクライヴ・デイヴィスは、この曲を録音するのに当初は反対し、ホイットニーが必死に説得した上で録音にこぎつけたとのこと。結果は、聴いての通り見事な仕上がりで、歴史に残る名唱が録音されて本当によかった。この詞を書いたのは、シンガーソングライターのリンダ・クリード(結婚後はリンダ・エプスタイン)で、彼女は若くして乳がんを発症し、そんな自身の境遇から若い母親の心情を詞にしたのがこの曲だそうである。結局、闘病の末、1986年4月にリンダは亡くなり、今度はこれと入れ替わるようにして数週後にホイットニーの「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」がチャートの1位に上りつめた。こんな裏話を思い起こしながらこの曲を聴くと、強い“自己愛”を顕示するかのように見える歌詞も、一見したのとは違う風に響いてくるのではないだろうか。[収録アルバム]Whitney Houston / Whitney Houston (邦題:そよ風の贈りもの) (1985年) 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年08月28日
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いきなりの完成度で世界を驚愕させたデビュー作 ホイットニー・ヒューストンは、米国ニュージャージー生まれのR&B/ポップ歌手。母のシシー・ヒューストンもシンガーで、この母はエルヴィス・プレスリーやアレサ・フランクリンらのバックを務めた経験がある。いとこにもディー・ディー&ディオンヌ・ワーウィック姉妹がいるなど、ゴスペル、R&B、ソウル系の音楽家族の環境で育ち、幼少の頃には聖歌隊のソロイストも務めた。ニューヨークのナイト・クラブで母とともに活動していたところ、プロデューサーのクライヴ・デイヴィスによって見出され、1985年に本盤『そよ風の贈りもの(Whitney Houston)』でデビューした。 無名の新人のアルバムなので当初の売れ行きはゆったりとしたものだった。1985年の2月に発売され、半年ほど経って夏頃からセールスを伸ばし始め、翌1986年になってビルボードで14週連続No.1という記録を樹立した。もちろん、こうしてセールスが伸びていく間にはシングルのヒットがあったためなのだが、最初のシングル1.「そよ風の贈りもの(ユー・ギヴ・グッド・ラヴ)」は全米3位を記録したが、本格的に人気に火が付き始めたのは1985年夏にシングル発売された4.「すべてをあなたに(セイビング・オール・マイ・ラヴ・フォー・ユー)」が全米シングル1位に輝いてからだった。その後も6.「恋は手さぐり(ハウ・ウィル・アイ・ノウ)」、9.「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」が立て続けに1位を獲得。デビュー・アルバムでのこれだけのヒットはそれ以前も以後も例のない記録であった。 全体にわたって質が高く、捨て曲がほとんどなく、デビュー・アルバムにしてこれだけ売れたのも納得できる。中でもホイットニーのデビュー時点でのシンガーとしての完成度の高さが伺えるのは、スロウ系の歌い上げるナンバーである。上述の4.「すべてをあなたに」と9.「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」、さらには後者のシングルでB面としても収録された7.「オール・アット・ワンス」の3曲は“これらを聴かずに死ねるか!”と声を大にして言いたくなるほどの名唱。この3曲だけのためでも本アルバム1枚を買う価値は十分すぎる上、他の曲も、ジャーメイン・ジャクソンとの2つのデュエット曲(5.「夢の中の二人」と8.「やさしくマイ・ハート」)、テディ・ペンダーグラスとのデュエット(10.「ホールド・ミー」)など聴きどころが多い。 ところで、いつだったかCD(たぶん90年代半ばの輸入盤CD)を入手してからずっと不思議なことがある。当時(レコードの)A面だと思って聴いていた部分がアルバム後半に収録されているのだ。つまり、筆者の記憶では同CDの6.~10.がA面、1.~5.がB面だったはずなのである。以来しばらくはその輸入盤CDを聴いていて、多少は慣れたもののやはり違和感がある。ところが、国内盤はCDで再発され続けても、筆者がレコード時代に聴いた日本盤LPと同じ曲の順序である。ジャケットが違う(米盤は“過激すぎる”という理由で、白い水着姿のジャケットが別の写真に差し替えられた)のは知っていたが、曲順のこの違いは何がどうなってこういうふうになったのか、いまだもって不明である。ちなみに最近の記念エディションではついに日本盤も米盤と同じ曲順に変わったようだ。 1990年代後半から2000年代にかけては離婚騒動、薬物依存症、セックス中毒などいろんな問題を抱え込み、すっかりそのシンガーとしての存在がくすんでしまった。もっぱらゴシップ報道を賑わすようになってしまったホイットニーだったが、2000年代末から復活してきている。現在、47歳とまだまだ老け込む年齢ではないので、第二の全盛期が訪れることを期待したい。[収録曲]1. You Give Good Love2. Thinking About You3. Someone for Me4. Saving All My Love for You5. Nobody Loves Me Like You Do (duet with Jermaine Jackson)6. How Will I Know7. All at Once8. Take Good Care of My Heart" (duet with Jermaine Jackson)9. Greatest Love of All ←動画はこちら10. Hold Me (duet with Teddy Pendergrass)1985年リリース。なお、日本盤の曲順(&邦訳タイトル)は以下の通り。1. 恋は手さぐり2. オール・アット・ワンス3. やさしくマイ・ハート(デュエット・ウィズ・ジャーメイン・ジャクソン)4. グレイテスト・ラヴ・オブ・オール5. ホールド・ミー(デュエット・ウィズ・テディ・ペンダーグラス)6. そよ風の贈りもの7. シンキン・アバウト・ユー8. サムワン・フォー・ミー9. すべてをあなたに10. 夢の中のふたり(デュエット・ウィズ・ジャーメイン・ジャクソン) 【送料無料】そよ風の贈りもの/ホイットニー・ヒューストン[CD]【返品種別A】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年08月27日
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2010年08月25日
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流行にとらわれず自然体で演るアメリカン・ロックの力作 ボブ・シーガーのアルバムはこれまでに『ライク・ア・ロック』や『ザ・ファイアー・インサイド』といった盤を紹介してきたが、古くからのファンにとっては『ライク・ア・ロック』以前こそが本来のボブ・シーガーというイメージをお持ちの方も結構いるのではないだろうか。そこで、今回は『ライク・ア・ロック』からややさかのぼって1980年発表の一枚を取り上げたい。本盤『奔馬の如く(原題:Against the Wind)』は、ボブ・シーガーにとっては12枚目の、シルバー・ブレット・バンドを率いては3枚目のアルバムに当たる。これまでのボブ・シーガーの全アルバムの中で唯一全米1位を獲得したヒット・アルバムである。 ボブ・シーガーのアルバムはどれもジャケット・デザインがいまいちというのが個人的な印象である。けれども、本盤は例外中の例外で、5~6頭の馬が駆け抜ける光景の絵画がアルバムの表紙を飾る。ジャケット・デザインはどこかしら爽やかだが、無論、音楽の内容は決してそうではない。ボブ・シーガー・サウンドそのものの王道を行くコアなアメリカン・ロックである。『奔馬の如く』という邦題はとてもカッコいい響きだが、上記ジャケットからの連想によるものと思われ、原題は収録曲6.の「アゲンスト・ザ・ウィンド(風に逆らって)」そのままである。 このアルバムは、とりわけボブ・シーガーという人の感性がストレートに表現され、曲調のヴァリエーションもバランスよく配されていると思う。1.「地平線のバップ」や5.「長い二本の平行線」のようなボブ・シーガーのイメージ通りの典型的ナンバーがメインだが、テンポを落とした4.「誰もいない国」、6.「アゲンスト・ザ・ウィンド」、7.「大切なものへ」、10.「輝ける夜明け」がいいアクセントになっている。とりわけ、表題曲の6.は筆者の大のお気に入りで、シングルとしても全米5位(ビルボード)を記録した。ちなみにこの曲の後半でコーラスをしているのはボブ・シーガー自身だけでなくイーグルスのグレン・フライも参加している。また、他の曲(9.「ファイアー・レイク」)では、彼に加えて同じくイーグルスからドン・ヘンリーとティモシー・シュミットもコーラス参加している。 別項(『ザ・ファイアー・インサイド』を参照)でも書いたが、ボブ・シーガーは年齢の積み重ねとともにますます“自然体”に磨きがかかっていったアーティストである。本作の時点でも、肩の力が抜けきってはいない部分もあるものの、重いアメリカン・ロック調の演奏をさも自然にこなしてる感じがする。生まれつきとは言わないが、長年にわたって体に染みついてきたものを表現するからこそ、このナチュラルさというのが意識的ではなく自然に湧き出てくるのだろう。本盤を通して聴く機会がある方は、アルバムの最後を締めくくる10.にも耳を傾けてもらいたい。ギターがソロをとることはなく、本来のアメリカン・ロック・サウンドのイメージとは少し違う曲だが、サックスをフィーチャーした曲のアレンジ、バックのピアノ演奏、ギターのカッティングはそのベースになるもの、いわば典型的アメリカン・ロック・サウンドの“骨格部分だけ”のような演奏だ。その演奏の中、ボブ・シーガーの迫真のヴォーカルは、気負いすぎるのではなく、自然体でこれができることを如実に示している。[収録曲]1. The Horizontal Bop2. You'll Accomp'ny Me3. Her Strut4. No Man's Land5. Long Twin Silver Line6. Against the Wind7. Good for Me8. Betty Lou's Gettin' Out Tonight9. Fire Lake10. Shinin' Brightly1980年リリース。 【Aポイント+メール便送料無料】ボブ・シーガー&シルヴァー・バレット・バンド Bob Seger & The Silver Bullet Band / Against The Wind (輸入盤CD) 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2010年08月24日
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これぞブライアン、面目躍如の1枚! しかし、ヒットせず… 悲劇のアルバムである。全英では1位を獲得したが、米国や日本では大したヒットには至らなかった(全米は最高で31位止まり)。ブライアン・アダムス(Bryan Adams、ライアン・アダムスRyan Adamsとは1字違いだが別人なので念のため)は、カナダ出身のロックンローラーで、20歳になるかならないかでメジャーレーベル(A&M)と契約し、まもなくデビュー。1984年の『レックレス』が世界的に大ヒットし、ストレートなロックンロールで聴衆を魅了したアーティストである。 本来はロックン・ローラーとしての音楽的キャリアを重ねてきたブライアン・アダムスだったが、90年代に入ってからの彼は映画の主題歌なども歌い、世間にはすっかりバラード・シンガーのイメージがついてしまっていた。映画『ロビン・フッド』のテーマソング(「アイ・ドゥ・イット・フォー・ユー」、1991年)、ロッド・スチュワートおよびスティングとの3人組で『三銃士』の主題曲(「オール・フォー・ラヴ」、1993年)、さらには『ドン・フアン』の主題歌(本盤収録の13.「リアリー・ラヴド・ア・ウーマン」、1995年)。いずれも映画のテーマ曲でバラードという共通点があり、しかも全米1位を獲得した曲である。つまり、聴き手はブライアン・アダムスにピュアなロックを求めておらず、甘いバラード・シンガーのイメージを追い求めていたのだろう。80年代のかつての若きロッカーとしての彼のイメージは過去の話になり、半ば忘れ去られてしまっていた。 そんな中、1996年にリリースされた本盤のタイトルは『18 Til I Die』、つまりは、“死ぬまで18歳”というものであった。1.「君しか見えない」からして直球の正調ロック・ナンバー。2.「ドゥ・トゥ・ユー」もギターをしっかりフィーチャーした曲で、バラードを期待する聴き手は肩透かしを食らう。3.の「レッツ・メイク・ア・ナイト・トゥ・リメンバー」でようやくゆったりした曲調かと思いきや、4.では表題曲の超ストレートなロック…。アルバム全編を通してこのような調子だから、リスナーの期待には全く沿っていなかったのだろう。結局、過去の諸作のようなヒットには結びつかず、冒頭で書いたように“悲劇のアルバム”となったわけである。 予想を下回るヒットしかしなかったからと言って、それが駄作かどうかは無論、別問題である。その点からすると、全英で1位になったというのは、イギリスのファンがハリウッド映画の主題歌に(少なくとも米国の聴衆ほどは)感化されておらず、ロック・アルバムとしてのこの作品の本質を見抜いていたということなのだろう。 15年近くたった今、さらに過去の『レックレス』やその前後のアルバムと聴き比べてみて、本盤は遜色ないどころか、もしかすると上を行っていたのではないかとすら思うほどの出来映えである。何よりいいのは、表題曲の4.「18 Til I Die」。上記のように“死ぬまで18歳(の気分でいく)”という曲だが、実際に“いつか55歳になっても、18歳でいるぞ”というストレートな歌詞でストレートなロックをやられた日には、聴き手は“その意気だ!”と同調するか、さもなくば“参りました”とひれ伏すしかない。同じく一直線なロックという意味では、1.「君しか見えない(ジ・オンリー・シング・ザット・ルックス・グッド・オン・ミー・イズ・ユー)」や7.「ウィア・ゴナ・ウィン」がいい。 他方で、3.「レッツ・メイク・ア・ナイト・トゥ・リメンバー」、5.「スター」、8.「アイ・シンク・アバウト・ユー」、12.「ユア・スティル・ビューティフル・トゥ・ミー」といったようなミディアム~スロウ系のロック・ナンバーにブライアンの成長ぶりが見られ、しかもアルバムの収録曲順上、いい具合で散らばって配置されている。映画関係でいくつものバラード曲を歌って、ロック魂を捨てたのかと思われるかもしれないが、決してそうではなかったと思う。ノリ一辺倒で押すのではなく、押したり引いたりする余裕をこの人はちゃんと身につけていたのだなと妙に感心してしまう。13.「リアリー・ラヴド・ア・ウーマン」は上述の流れを汲む映画主題歌バラードだけれども、とにかく曲と詞がいい。アルバムの途中に入れずに、最後に“おまけ的に”収録しているので、アルバム全体の流れもそう大きく崩れておらず、無難な曲順だったように思う。 というわけで、この頃のバラード・シンガー像の定着と、本来のロックンローラーとしてやりたいこととの狭間にあって、いくぶん矛盾を抱えた状況下で制作されただけにヒットしなかったのは仕方ない。おまけに、日本盤ではカタカナだらけで読みにくい曲名表記だったり、曲順と収録曲を見直した“修正ヴァージョン”を後から出したりと迷走したのもセールス失敗の要因だったのだろう。けれども、今になって冷静にその出来を見直せば、80年代のロッカーとしてのヒット期に劣らぬブライアン・アダムスの真髄が見えてくるアルバムだと思う。[収録曲]1. The Only Thing That Looks Good on Me Is You2. Do to You3. Let's Make a Night to Remember4. 18 til I Die5. Star6. (I Wanna Be) Your Underwear7. We're Gonna Win8. I Think About You9. I'll Always Be Right There10. It Ain't a Party If You Can't Come 'Round 11. Black Pearl12. You're Still Beautiful to Me13. Have You Ever Really Loved a Woman? 1996年リリース。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】18 TIL I DIE +3 [ ブライアン・アダムス ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年08月23日
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マドンナ『トゥルー・ブルー』のジャケット写真です。使用されている写真はハーブ・リッツによるもの。タイトルの『トゥルー・ブルー』に合わせて、ライナーの歌詞も青文字で統一。なおかつ、収録曲名はジャケのアルバム表題と同じ筆記体で青地に白文字で表記いう、なかなかアーティスティックな仕上がりと思う。ジャケの写真はこんな感じです。↓【Aポイント+メール便送料無料】マドンナ Madonna / トゥルー・ブルー(日本盤CD)上の写真には文字部分がないので、こちら↓もご覧ください。見にくいですが、MADONNAに重なるように筆記体で“true blue”と記されています。 【中古】CD トゥルー・ブルー/マドンナ 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年08月22日
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全盛期を迎えたマドンナの才能開花盤 案外知られていないようだが、マドンナ(Madonna)という芸名は、もともと本名の一部である。彼女は、本名をマドンナ・ルイーズ・チッコーネといい、イタリア系の父の家庭に米国ミシガン州で生まれた。このアルバムの頃は1961年生まれを自称し、サバを読んでいたが、数年後には1958年生まれと実際の年齢を公表している。1977年、なけなしの金を手にニューヨークへ出て、ダンサーとして活動しながら(後に話題にされた成人映画出演もこの頃)、1982年にシンガーとしてデビュー。当初はNYのダンス・クラブ・シーンで売れ出し、83年のデビュー・アルバム(『バーニング・アップ』)でポップ界でもヒット。さらに翌84年のセカンド・アルバム(『ライク・ア・ヴァージン』)が世界的規模のヒットを記録し、有名シンガーの仲間入りを果たす。 そんな状況で1986年に発表されたのが本盤『トゥルー・ブルー』で、まさしくマドンナの歌手活動の最盛期の幕開けとなった。全米(ビルボード)で1位に輝いたほか、イギリス、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、スペイン、スイスなどでも1位を記録した(ちなみに日本のチャートでは2位が最高位とのこと)。世界28カ国でのNo.1記録はギネスにも登録された。シングル曲としては、先行シングル4.「リヴ・トゥ・テル」からはじまり、1.「パパ・ドント・プリーチ」、6.「トゥルー・ブルー」、2.「オープン・ユア・ハート」、7.「ラ・イスラ・ボニータ~美しき島」の5曲がシングル発売され、うち3曲が全米1位(4.、1.、2.の3曲、ただし残る2曲も全英で1位)となった。 本作では、マドンナ自身が全曲のライティングに参加、さらに全曲のプロデュースにも加わり、前作までのダンス寄りの路線よりもよりロック/ポップスに歩み寄りを見せ、アーティストとしての実力を示した。1.はティーンエージャーの妊娠という社会問題を取り上げた曲で、単なるポップ歌手という当時までの世間の目を変え、プリンスやマイケル・ジャクソンといった当時のトップ・アーティストと肩を並べる評価の確立に一役買った。 今の時代から見ると、全体としてはシンプルな音作りだけれども、マドンナの原点というだけでなく、80年代以降のダンス/ポップの音作りの基盤になっているとも言える。ただし、収録の各曲は非常にヴァラエティに富んでいて、4.のような名バラードもあれば、5.(「パーティは何処に」)や9.(「ラヴ・メイクス・ザ・ワールド・ゴー・アラウンド」)のように一気に勢いで走る曲もある。さらに7.ではキューバのリズムやスパニッシュ・ギターといったラテン風味も初めて取り入れている。 シングル・ヒットを重ねていった80年代ということを考えると、時系列的にマドンナのベスト盤を聴くというのも悪くはないが、聴いた後の充足感ではこのアルバムにかなわない。80年代半ば時点を“輪切り”にしたような本盤を通して聴くというのもなかなかいいのではないかと思う。ついでながら付け加えておくと、ジャケット写真も秀逸。[収録曲]1. Papa Don't Preach2. Open Your Heart3. White Heat4. Live to Tell5. Where's the Party6. True Blue7. La Isla Bonita8. Jimmy Jimmy9. Love Makes the World Go Around1986年リリース。 【輸入盤】Madonna/True Blue [remastered] 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年08月22日
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典型的寄せ集め盤だが、このソニー・クリスは外せない 〈ジャズ・イン・パリ〉シリーズというのは、ユニバーサル・フランスが手がけたジャズCDのシリーズで、その一部については日本盤も発売された。デジタル・リマスターを謳っているが盤によっては音質がいまいちだとか、ジャケットがオリジナル無視のパリの風景だとか、いろんな声が聞こえてはくるものの、過去の貴重な音源が結構まとめてCD化され、それらを広く知らしめ普及させたという点では、ありがたいシリーズだ。本盤もそんな〈ジャズ・イン・パリ〉シリーズの1枚である。ただし、この盤に関しては、もともとのオリジナル・アルバムというのが存在するわけではなく、EP音源の寄せ集めである。 前半(1.~7.)はアルト奏者ユベール・フォル絡みのEP2枚分である。これら7曲のうち、1.~3.はユベール・フォルのワン・ホーンのカルテット、4.~7.は管楽器アレンジ系で、ヴィブラフォンも含むミシェル・ド・ヴィレ中心の8人編成の演奏。これらの音源は、それぞれ1956年と1954年に録音されたものである。 これに対して、後半(8.~14.)は1962年と1963年のEPを再録したもので、ソニー・クリスのカルテットおよびオルガン入りクインテットの演奏である。アルト・サックス奏者という共通点はあるものの、時間的にも最大10年近い隔たりがあるし、どう考えても無茶な組み合わせ、ずばり言ってしまえば、“パリ(サン・ジェルマン)”と“サックス(アルト・サックス)”というタイトルにしか共通性のない、“寄せ集め”の印象が拭えない。こう言ってしまっては身も蓋もないが、正直なところ、アルバムとしては間違っても出来のいいものとは言えない(実際、通して聴いたら、最後に空虚感や物足りなさが残る)。 前半(特に1.~3.)のユベール・フォルの柔らかなアルトも悪くはない。4.~7.の八重奏団のアレンジもそれはそれでいいものだと思う。しかし、本盤の聴きどころは(というか筆者が本盤を購入した目的もそうなのだが)あくまで後半のソニー・クリスにある。“寄せ集めだから”、“企画ものシリーズだから”といった理由で聴き逃すにはあまりにもったいない演奏だと思う。つまりは、“珍しい音源だから”というマニアの方もいるだろうが、そういう希少性とは別に、これらの演奏におけるサービス精神全開のソニー・クリスがいい。ソニー・クリス主体の8.~14.のうち、8.~11.はカルテット演奏、12.~14.がオルガン入りクインテットの演奏である。 まず8.「マイティ・ロウ」から始まるカルテット(4人組)演奏の部分であるが、全体の雰囲気はまったり、ソニー・クリスのソロはサービスたっぷりといった風情である。演歌顔負け(?)の得意の節回し全開で、時折擦れながら微妙に揺れるサックス音が心地いい。合間合間の小刻みな奏法についてはおそらく好みが分かれる部分ではあるが、11.「ウィル・ビー・トゥギャザー・アゲイン」に至るまでの4曲が本盤の最大の聴きどころであると個人的には思う。場合によっては、本盤のこの部分だけを聴くのもいいようにすら感じる。 続く12.からはメンバーがごっそり入れ替わり、録音年も別である(前の4曲と共通するのはソニー・クリスの他はドラマーのみで、およそ半年後の演奏)。ギターが加わり、オルガンを含めたクインテット(5人組)編成で演奏されている。残念なのは、12.がフェードアウトしてしまっているところだが、同じ曲の“パート2”である13.でオルガン入りの熱気はちゃんと伝わってくる。この曲がオルガンとサックスをメインにしているのに対し、14.はソニー・クリスのサックスがより中心に演奏が展開する。録音の問題と当日の演奏の問題が重なったのかとは推測するが、サックスの音のエッジがしっかりしていないのが心残りである。ただし、ソニー・クリス節はこれら3曲にもしっかり現れている。[収録曲]~Hubert Fol Quartet~ 1. A fine romance 2. They can't take that away from me 3. You go to my head~Michel de Villers Octet~ 4. Cat on the stairs 5. These foolish things 6. I only have eyes for you 7. Penitas de amor~Sonny Criss Quartet/Quintet~ 8. Mighty low 9. Don't blame me 10. Black coffee 11. We'll be together again 12. Early and later, part 1 13. Early and later, part 2 14. Blues pour flirter No.2[パーソネル、録音、原盤] Hubert Fol Quartet(1.~3.): Hubert Fol (as) Ren? Urtreger (p) Jean-Marie Ingrand (b) Jean-Louis Viale (ds) 1956年1月18日パリ録音、EP Barclay 74 016Michel de Villers Octet(4.~7.): Charles Vestraete (tb) Hubert Fol (as) Maurice Meunier (ts) Michel De Villers (bs) G?o Daly (vib) Andr? Persiany (p, arr) Alix Bret (b) Bernard Planchenault (ds) 1954年パリ録音、EP Decca 450 511Sonny Criss Quartet (8.~11.) Sonny Criss (as) Henri Renaud (p) Michel Gaudry (b) Philippe Combelle (ds) 1962年10月10日パリ録音、EP Polydor 27 004Sonny Criss Quintet (12.~14.) Sonny Criss (as) Georges Arvanitas (p, org) Ren? Thomas (g) Pierre Michelot (b) Philippe Combelle (ds) 1963年4月パリ録音、EP Polydor 27 049 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年08月21日
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66666アクセス感謝いつもご覧いただきありがとうございます。6が5つ並んで累計アクセス数が66666となりました。66666アクセス目はBasil*さんでした(景品などはありませんのであしからず)。あらためて感謝申し上げると共に、今後ともご愛顧をお願いいたします。 * * *下記(3サイト)のランキングに参加しています。励みになりますので、お時間の許す方はぜひ“ぽちっと”応援お願いします! ↓ ↓ ↓人気ブログランキング: 音楽広場: にほんブログ村:
2010年08月20日
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知性漂う初リーダー作 リニー・ロスネス(Renee Rosnes)はカナダ出身のピアニスト。リニーというのは芸名で、本名のアイリーンに由来する愛称とのこと。1962年生まれの彼女は、80年代にジョー・ヘンダーソンとの演奏で頭角を現し、90年以降、リーダーとしてアルバムを発表してきた。 リニー・ロスネスを紹介するのに、"才色兼備"とか"美人ピアニスト"とかいう形容がよくなされてきた。個人的にはあまりそのようなイメージを抱いてはいないのだが、女性ピアニストということで、見た目から入ったそういう売り出し方が効果的だったのかもしれない。けれど、よく考えてみると(というか、どう考えても当り前の話なのだが)、レコードやCDから出てくる音に、その演奏者本人が美人か否かが表現されるわけではない。聴き手の先入観という意味では効果的なのだろうけれど、演奏者の容姿なんぞ実際の音には一切関係ない。身も蓋もない言い方をしてしまえば、美人であろうがブサイクであろうが、音は音、容姿は容姿で関係ないのである。 さて、そんな文句を言いながら、実際にロスネスの演奏に耳を傾けてみると、何ともまあ"上品な"という表現がぴったりなのだ。奏でられる音は人の容姿を反映するわけではないわけだが、人柄は確かに音に反映されるのだと思う。性格が曲がった人間(必ずしも悪い意味ではなく)が出す音は、どこか一筋縄ではいかない音を出したりするわけだし、正直な人間(必ずしもいい意味とは限らない)が出す音は、よくも悪くも真っすぐだったりということがある。特にジャズの世界(ジャズ・ヴォーカルを除く)は、“歌声”(そしてその声で表現される詞の内容)にかかる比重がないので、詞の内容にも左右されにくく、“音=性格”という図式がより強くなるように思う。例えば、セロニアス・モンク(参考記事はこちらとこちら)のヘンテコ具合などは、演奏者の人格が音の中に表現されるという意味ではその典型だと思うし、ウィントン・マルサリス(参考記事はこちらとこちら)はきっとどこか“ええ格好しい”な部分があるのだろうと想像してみたりするというわけだ。 話はすっかりわき道にそれてしまってアルバムの紹介なのか何なのかわからなくなってきてしまった。けれども、そんなところから想像するに、やっぱりこのリニー・ロスネスという人は、容姿云々よりも、知性・上品といった形容の方が合うと思う。奏でられる音一つ一つに“品格”が感じられる。決して“きれいに”あるいは“美しく”弾こうとしているのではない。ごくフツーに演奏して、そこに表現される音から感じ取られるのが、“品のよさ”であり、“知性”なのである。 そうした演奏に豪華ゲストが加わったわけだから、本盤は、ある種、怖いもの知らずの演奏で、リニーの度胸が試された録音と言えるだろう。ゲスト陣には、ウエイン・ショーター、ブランフォード・マルサリス、ハービー・ハンコック、ラルフ・ボーエンといった名が並ぶ。要するに、テクニックがあり、知性があり、思い切りがある。これら三つの要素のうち、一つや二つを備えているミュージシャンは数多くいるだろうが、リニー・ロスネスのように三つとも備えているという例はそう多くないように思われる。[収録曲]1. Storyteller2. Playground for the Birds3. Bright Mississippi4. Diana5. I.A. Blues6. Punjab7. Everything I Love8. Fleur-De-Lis[パーソネル]Renee Rosnes (p)Ron Carter (b: 1.-3., 5.-7.)Lewis Nash (ds: 1.-3., 5.-7.)Branford Marsalis (ts: 1.; ss: 2)Ralph Bowen (ts: 3., 5., 6.)Wayne Shorter (ss: 4.)Herbie Hancock (p.: 8.) 録音: 1989年2月4日 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2010年08月20日
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しばらくサボっていましたが、INDEXページ(ジャンル別、アーティストのアルファベット順)を更新しました。 INDEXページへの入口は、下のリンク、もしくは本ブログのトップページ右欄(フリーページ欄)です。 アーティスト別INDEX~ジャズ編へ アーティスト別INDEX~ロック・ポップス編へ アーティスト別INDEX~ラテン系(ロック・ポップス)編へ 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年08月18日
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ギター小僧は必聴、ニルスの原点回帰盤 ニルス・ロフグレン(Nils Lofgren)は1951年シカゴ出身のロック・アーティスト。ギターとヴォーカルのほか、ピアノやアコーデオンもこなす。70年代前半にグリン(関連記事はこちら)というバンドを形成し、その後ソロで活動しているが、他方でニール・ヤングのレコーディング(『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』、『今宵その夜』)に参加したり、一時期はクレイジー・ホースのメンバーとなったり、また1980年代半ばからはブルース・スプリングスティーン率いるE・ストリート・バンドの一員として活動している。 80年代前半にギター・ポップ的なテイストを取り入れ、その一方で86年リリースのライブ2枚組LP(『ニルス・ライブ!~コード・オブ・ザ・ロード』)でそれまでのソリッドなギタープレイを集大成したニルスは数年間、E・ストリート・バンド(B・スプリングスティーンのバックバンド)での活動に専心する。しかし、ブルースが不調に陥り(E・ストリート~も結局一時解散)、ニルスは再びソロとしての活動も展開し始める。その第1弾となったのがこの『明日への旅路(Silver Lining)』で、1991年にリリースされた。 本盤は全体としてはロック・ギタリストとしてのニルスへの回帰であり、力の入ったギター・ソロが随所で聴かれる。70年代後半のニルスのアルバムにも多かった“このフレーズ、コピーしてみたい!”とギター少年たちが思いたくなるフレーズがあちらこちらにちりばめられている。個人的に好みなのは、1.「明日への旅路(シルヴァー・ライニング)」や6.「トラブルズ・バック」あるいは8.「ビーイン・アングリー」といったギターを中心的にフィーチャーした正統ギター・ロック調のナンバー。さらには2.「心はいつもヴァレンタイン」や10.「ガールズ・イン・モーション」のようなおとなしい曲調の中でさらりと見せるギター・テクニックも好みである。ヴォーカリストとしてはまだ発展途上な感じもないではないが、2.「心はいつもヴァレンタイン」は後々のヴォーカルの進化を予感させる。 多彩なゲスト陣も注目に値するので少しだけ触れておく。リンゴ・スター(3.のドラム、8.のコーラス)、ビリー・プレストン(1.と8.のオルガン、6.のキーボード)、元ザ・バンドのリヴォン・ヘルム(1.、6.、9.のハーモニカ&コーラス)、ブルース・スプリングスティーン(2.のヴォーカル)といった具合で、同時期にライブで一緒に活動していたメンバー中心に豪華なゲスト参加が参加している。アルバム全般は基本的にスリーピース(ギター&ヴォーカルのニルスに、ベース、ドラムを加えた構成)で、これらに曲によってゲスト陣が加わっている。 最後によくわからないのが日本盤の邦訳タイトル。当時はスプリングスティーンのバンド・メンバー、リンゴ・スター率いるオールスターバンド(89年の第1期、92年の第2期オールスター・バンドに参加)のメンバーということで着目されて日本盤も発売されたのだろう。本作の原題である『Silver Lining』が、邦盤では『明日への旅路』となっている。原題の元になった1.は“どんな雲でも裏側は銀色に輝いている(Every cloud has a silver lining.)”という諺にちなんで、先行きの見えない現代社会にもsilver liningがあるのだろうか、という内容だが、何かしっくりこない(しかも邦題がついている曲は1.と2.だけであとはカナカナ表記というのもなんだか中途半端)。今になって思えば、この後のニルスのソロ・アーティストの“新たな旅路”の一歩になったわけで、結果論で言えば外れてなかったので、よしと言えるだろうか…。[収録曲]1. Silver Lining2. Valentine3. Walkin’ Nerve4. Live Each Day5. Sticks And Stones6. Trouble’s Back7. Little Bit O’Time8. Bein’ Angry9. Gun And Run10. Girl In Motion1991年リリース。 下記ランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年08月18日
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ジョン不朽の名作の真価 ~後編~(前編・中編からの続き) ここまでジョン・レノンのアルバム『イマジン』の収録曲を1曲ずつ順に見てきた。一般的なイメージとは違って、本盤の収録曲のテーマは実に雑多で、悪く言えばまとまりがないことが分かっていただけたのではないかと思う。では、このアルバム『イマジン』は、“ごた混ぜ”の、1枚のアルバムとして完成された名盤とは言えないのだろうか。答えは否である。以下のことを考えるにつけ、まとまりのない1枚などとたやすくは言えない。 このアルバム1枚を通して聴いた後で、何かアルバム全体としての一つの意図のようなものを感じずにはいられない。同じジョンによる別の名盤『ジョンの魂』とちがって、本作『イマジン』は、どこか歌がストレートに響いてこない気がする。具体的に言うと、何となしにオブラートに包まれているような、もしくは、どこかしら“すりガラスの向こうで鳴っている音楽”のような印象を受けるのだ。この“すりガラスの向こうの感覚”は、きっと本盤全体のコンセプトであって、きっとジョンは(そしてプロデュースのフィル・スペクターは)それを意図的にやっていたのだろう。 1.「イマジン」の平和へのメッセージは天の彼方から聞こえてくる声のように響く。5.「兵隊になりたくない」のようなストレートな詞は、目前の声ではなくどこか遠いところ、もしくは別世界からの声であるかのように聞こえる。私的な色合いの強い3.「ジェラス・ガイ」や10.「オー・ヨーコ」のような曲が比較的ストレートに聞こえてきて、アルバム全体の中でいいアクセントになってはいるが、それでもなお、これらの曲もどこかしらまっすぐな声というよりは浮遊感、地声というよりは心の中から出てきた声という響きを残している。 以上のように、各曲を単独で考えるのはなく、アルバム全体で通して音に着目して聴くと、その“すりガラスの向こうの感覚”が作り手側の意図的な効果によるものだったのではないかという気がしてくる。確かにジョンの作品でこういうヴォーカルの響き方がするという傾向は他の盤にもある。けれど、この『イマジン』ではとりわけそれが意図的になされているように思われる。 作者であるジョン・レノンがこんなことまで想像しながら聴き手に聴かれることを意識していたかどうかはわからない(だからといってリマスター盤=筆者未聴=でこれを変えてしまったとしたならば、それは問題かもしれない)。しかし、上で述べたように考えることで、多様な、必ずしも一貫性のない主題の各曲がこの1枚に共存している理由もよく分かるだろう。言い換えれば、この“すりガラスの向こう感”というサウンド・コンセプトがあったからこそ、平和や反戦を志向する曲、元バンド・メンバーへの中傷ともとれる曲、ラヴ・ソングといった異なる曲群がまとまり得たのであって、バラバラの“ごた混ぜ”アルバムにならなかった理由であろう。それらバラバラに見える多様な曲群を敢えて1枚の中に放り込み、見事にまとめて見せたのは、結局、ジョン・レノンというアーティストの力量であり、才能であったということになるのではないか。[収録曲]1. Imagine2. Crippled Inside3. Jealous Guy4. It's So Hard5. I Don't Want to Be a Soldier6. Give Me Some Truth7. Oh My Love8. How Do You Sleep? 9. How? 10. Oh Yoko!1971年リリース。関連過去記事リンク: ジョン・レノン 『イマジン』 ~前編~ へ ジョン・レノン 『イマジン』 ~中編~ へ 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年08月16日
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ジョン不朽の名作の真価 ~中編~(前編の続き) 前回はジョン・レノンのアルバム『イマジン』の前半(LPではA面)を1曲ずつ見てきた。引き続き、今回の中編では、アルバム後半(LPのB面)を同じく曲ごとに見ていきたい。 6.「真実が欲しい(Give Me Some Truth)」は、1.および3.と同じくビートルズ時代からジョンが温めていた曲で、69年のゲット・バックのセッション時にレコーディングの試みがなされていた(一説ではジョージの歌ったヴァージョンが存在するとも言われる)。アルバムが作られた時期を考えれば、1.および5.とセットで“反戦”(ベトナム戦争)を意図したものだったことは明白だろう。1.が世界平和を指向するかのようなおとなしい曲調(歌詞の一部が過激と見なされることはあるにせよ)であるのに対し、この6.は5.と同様にもっとストレートで政治的なにおいがする。なお、この曲の英語表記は本来、“Give Me Some Truth”だったが、現行では“Gimme Some Truth”に変えられている(なぜ変わったのかは不明だがここ10~20年ぐらいの変化の模様)。 続く7.「オー・マイ・ラブ(Oh My Love)」は、本アルバム中で唯一、ジョン・レノン&ヨーコ・オノ名義の共作になっている曲。世間ではラブ・バラードとして解釈されるが、実際には、流産した子へ向けた詞をヨーコが書き、それにジョンが曲をつけて出来上がったとのことである。曲全体が空の彼方でなっている音楽みたいに聞こえるサウンドだが、この本来の曲の意味を考えればなるほど納得できる効果だと感じる。控えめながら、ジョージ・ハリスンがギターで参加している。 8.「眠れるかい?(How Do You Sleep? )」は、ビートルズの盟友ポール・マッカートニー批判の曲として有名である。“君が唯一やったのはイエスタデイ”(“イエスタデイ=昨日”はポールによる、ビートルズのかの名曲を指す)、“あの連中が君は死んだと言ったのは正しかった”(“君は死んだ”は1966年のポール死亡説に言及している)といった箇所にダイレクトに表れているように、名指しに近い形でポールを揶揄する詞である。実際、ジョン自身はこれらをわざとやったことを認めていて、意図的に“悪意のある歌”に仕立てたのだという。その原因はポール(&リンダ)マッカートニーのセカンド・アルバム『ラム』(1971年リリース)の中にジョンを含めジョージ、リンゴを暗に批判する詞を織り込んでいたからで、ポールのこの攻撃にジョンは相当頭に来ていたようだ。 9.「ハウ?(How? )」は当時ヨーコと一緒にジョンが受けていたプライマル療法からインスピレーションを受けて書かれたと言われる曲で、自身の生き方についての思索を歌にしている。筆者は精神世界とか苦手なのでどうも理解できないのだが、精神的な世界にのめり込んでいたジョージ・ハリスン(本作のレコーディングには参加していたが、この曲には参加していない)は、この出来上がった曲を聴いて“素晴らしい”と大絶賛だったという。 ラストを飾る10.「オー・ヨーコ(Oh Yoko!)」は、実名入りのストレートなラヴ・ソング。ニッキー・ホプキンズという、ビートルズのほかローリング・ストーンズやザ・フー等の録音に参加したセッション・ミュージシャンがピアノを担当していて、なかなか印象に残るプレイをしている。リズムの緩急というかメリハリがうまく付けられていて、最後にハーモニカ(これを吹いているのはジョン自身)も印象に残る、工夫された構成の曲だ。(後編へつづく)関連記事リンク: ジョン・レノン 『イマジン』 ~前編~ へ ジョン・レノン 『イマジン』 ~後編~ へ *全収録曲のデータは後編を参照ください。 (掲載後にリンクさせます) 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年08月15日
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ジョン不朽の名作の真価 ~前編~ 『イマジン(Imagine)』は、ビートルズ解散後の1971年にジョン・レノン(John Lennon)が発表したアルバムで、言わずと知れたタイトル曲「イマジン」を筆頭とする超有名盤である。ビートルズは恐れ多いという理由から、筆者はこれまでビートルズ盤について書くのを避けてきた(そのうち書きたいと思う盤は何枚もあるのだけれど)。今回も結局、ビートルズではなくて解散後のソロ作ではあるが、とりあえずは、このジョンの名盤を、敬意を表して3回シリーズぐらいで考えてみたい。第1回の今回は旧LP盤でのA面に相当する1.~5.の楽曲を順に見ていこうと思う。 冒頭の1.「イマジン(Imagine)」は、平和を訴える曲として有名で、比較的記憶に新しいところでは、9・11のテロ後にラジオ局にリクエストが殺到した。またもう少し前では、1985年ロサンゼルス五輪の開会式でもこの曲が流された。曲の内容については、 “天はない(there’s no heaven)”という歌詞から始まり、しばしば問題視される“宗教もない(no religi?n, too)”に至るまで、“ないものづくし”であり、最後に“そうすれば世界は一つになる(and the world will be as one)”と歌う。歌いだしの“創造してごらん(Imagine)”とうのは、オノ・ヨーコの詩から取ったとのことであり、ヨーコをクレジットに入れなかった事を反省していると思しきコメントを後になってジョンは残している。 2.「クリップルド・インサイド(Crippled Inside)」は、アップ・テンポでドブロ・ギターの音が印象的なカントリー・ロック調の曲。このドブロを弾いているのは、ビートルズで一緒だったジョージ・ハリスンである。曲調に対して詞の内容はシビアなもので、“君が隠すことのできないものは、内面からおかしい時だ”と歌っており、後述の8.「眠れるかい?」と同様、ポール・マッカートニーへの批判と解釈されることもあるが、聴きようによっては自己批判もしくは一般論としての人間批判とも理解できるように思う。 3.「ジェラス・ガイ(Jealous Guy)」は、個人的には本アルバム前半(A面)最大の聴きどころ。元々ビートルズ時代に作っていた曲とのことだが、恋愛関係の嫉妬心を素直に歌いあげたもの。演奏はピアノ・バラード調に仕上がっていて、途中の口笛パートもいい効果を演出している。政治色抜きでジョンのアーティストとしての力量が如実に表れている曲と言えるだろう。ジョン暗殺直後の1981年に追悼盤として日本でだけシングルとして発売され、1988年にようやく世界でシングル曲としてカットされた。 4.「イッツ・ソー・ハード(It's So Hard)」はジョンの人生観の一端を示す曲とされるが、一方で政治的メッセージが込められているという解釈もある。注目すべきはサックスで参加しているキング・カーティス(R&B、ソウル、ファンク、ソウル・ジャズ系の有名サックス奏者)の演奏。ジョンはレコーディングに直接参加できないキング・カーティスのソロ・パートをわざわざ空輸し、このアルバムに使ったとのことだが、実は、演奏者であるキング・カーティス自身は、この録音の直後に口論から麻薬中毒者によって刺殺されており、この演奏がキング・カーティスの遺作となった。 5.「兵隊にはなりたくない(I Don't Want to Be a Soldier)」は、タイトルが明瞭に示しているように、ストレートに政治的メッセージとして反戦を歌ったナンバー。“僕は兵隊になりたくない、死にたくはない”というストレートな文言が、戦闘場面やそこに向かわされる人を想起させ、サウンド的にもおどろおどろしさを思わせる音で演出されている。アルバム表題曲の1.「イマジン」が理想論としての批判を受ける中、この曲はリアルな叫びに(少なくとも筆者には)聞こえる。「イマジン」への批判として、“印税をがっぽり稼ぐスターがそんな理想郷を歌っても…”というのがある。しかし、その批判は、この曲のメッセージを加味した上で果たして本当にそう言えるのかを考えてもいいように思う。ヴェトナム戦争に限らず、米国が仕掛けてきた近年に至るまでの様々な戦争の中で、これが当事者の声そのものだったのではないだろうか。(中編へ続く)関連記事リンク: ジョン・レノン 『イマジン』 ~中編~ へ ジョン・レノン 『イマジン』 ~後編~ へ*全収録曲のデータは後編を参照ください。 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年08月13日
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大転換&大ヒットのセルフタイトル作 ハート(Heart)は、アンとナンシーのウィルソン姉妹をフロントに据えたロック・バンド。1970年代前半にハート名義でのバンドが形成され、1976年に『ドリームボート・アニー』でメジャー・デビューした。レッド・ツェッペリンの影響を伺わせるバンド・サウンドが人気を呼び、1980年の『べべ・ル・ストレンジ』および同年の初のベスト・アルバム『ザ・グレイテスト・ストーリー(ライヴ&ベスト)』までは順風満帆のキャリアを重ねた。しかし、82年~83年に立て続けに出したアルバムはセールス的には不振に陥り(1982年のアルバムについては過去記事を参照)、79年以降の相次ぐメンバーの脱退と上記のセールス不振から、バンドは一大方向転換をする。その成果が1985年のこのセルフタイトル・アルバムで、スタジオ作にして8枚目(上記ベスト/ライヴも入れると9枚目)の『ハート(Heart)』である。 ハートが思い切ってとった一大転換とは、レーベル移籍(エピックからキャピトルへ)し、外部のライターの曲も導入し、プロデューサーにロン・ネヴィソン(Ron Nevison、ザ・フー『四重人格』やストーンズ『イッツ・オンリー・ロックンロール』でも知られるが、その当時はKISSやサバイバーのプロデュースを手掛けていた)を起用したというものである。結果、アルバムは見事に全米1位の大ヒットとなった。シングル曲としてもアルバム10曲中の5曲がカットされ、うち4曲が全米トップ10に入るというセールス面の成功を収めた。ちなみにシングル・カットされた5曲とは、本作のトラック・ナンバーで言うと、2.、3.、4.、8.、1.(発売順)で、うち4.「ジーズ・ドリームス」がシングル全米1位を獲得した。 後にウィルソン姉妹は、ロン・ネヴィソンのプロデュース(彼がプロデュースしたのは本盤およびその次作にあたる『バッド・アニマルズ』)には、明らかに売れ筋狙いの音作りで納得できない部分もあった、との発言をしているが、この徹底した“売れる音作り”がなければ、ハートの復活劇もなかったわけである。確かに、25年が経過した今からすれば、音がきらびやか過ぎて、違和感を感じる部分もなくはない。従来のハートを知るファンからすれば、このバンドの良さであるソリッドなサウンドとアコースティックな響きが消されてしまっている印象は拭えず、それに対してヴォーカルが強調され、しっかりとしたギター音は控えめにしか聞こえてこない(そのように音作りが意図的になされている)。それでもなお、5.「ザ・ウルフ」や10.「シェル・ショック」のように前作までの雰囲気に比較的近いサウンドの曲や、7.「ノーバディ・ホーム」の曲調から判断する限り、従来のハートらしさがちゃんと垣間見える曲も含まれている(ちなみにこれら3曲ともウィルソン姉妹の関わった共作曲)。 いずれにせよ、内容面でこれがハートのベスト作ということはないだろうが、“入りやすさ”という意味ではベスト作と言えるかもしれない。ハートを聴く人の層を大幅に広げたという意味では極めて重要なアルバムだった。しかも、昨今の80年代懐古の雰囲気とともに、新たなハートのリスナーを獲得する入口の一枚にまだまだなり得る。そう考えれば、本作や次の『バッド・アニマルズ』あたりから初めてハートを聴き始めるという選択肢も悪くないように思える。[収録曲]1. If Looks Could Kill2. What About Love3. Never4. These Dreams5. The Wolf6. All Eyes7. Nobody Home8. Nothin' At All9. What He Don't Know10. Shell Shock1985年リリース。関連過去記事:ハート 「ロックンロール -ライヴ-」ザ・ラヴモンガーズ 「バトル・オブ・エヴァーモア(限りなき戦い)」ハート 『プライベート・オーディション』 Heart ハート / Heart 輸入盤 【CD】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年08月12日
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ルーペで覗いたコンピューターチップという、『ラヴ・ミー・トゥモロウ(シカゴ16)』のジャケットです。ラヴ・ミー・トゥモロウ(シカゴ16)ネットで見てるとたいていは↑こういう風↑に「シカゴ」の文字がちゃんと読める向きで写真掲載されているのですが、ジャケットの向きは、↓こっち↓が正しいはずなのです(私が持っているCDもそうなっています)。【中古】afb【CD】シカゴ/ラヴ・ミー・トゥモロウ(シカゴ16)LP時代のジャケをCDにも踏襲した名残なんだろうけど、最近は縦横が変わっているのもあるようで(?)まぎらわしいですね…。そういえば、同じシカゴでは、これも若干デザインが変わってしまっていたような…。LPでは青い部分がこんなに大きくなかった気がするのだけれど、単なる記憶違い?シカゴI(シカゴの軌跡)関連過去記事:シカゴ 『ラヴ・ミー・トゥモロウ(シカゴ16)』シカゴ(シカゴ・トランジット・オーソリティ) 『シカゴの軌跡(シカゴ1)』 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年08月10日
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有名曲を含めども聴きどころは他のところにある1枚 シカゴ(Chicago)は60年代末にデビューした、その名のとおりシカゴ発のロック・グループで、ブラス・セクションを積極的に取り入れたスタイルから“ブラス・ロック”の代表的バンドとして知られる。70年代前半から中盤にかけて成功を収めた後、いくぶん低迷期を迎え、その後、80年代にラヴ・バラード路線で再び一世を風靡した。 本盤『ラヴ・ミー・トゥモロウ(Chicago 16)』は、そうしたラヴ・バラード路線の嚆矢とされ、良くも悪くもシカゴがアダルト系バラード・バンドとしての道を切り開いたヒット作というのが一般的認識である。初めてデビッド・フォスターをプロデューサーに迎えて制作されたこのアルバム自体は全米9位を記録し、前作の散々なセールス記録を回復した。また、本盤からのシングルとして、「素直になれなくて(Hard To Say I’m Sorry)」が全米1位に輝いた(同じく10.「ラヴ・ミー・トゥモロウ」もシングル・カットされている)。 さて、そのシングル「素直になれなくて」に如実に表れているのだが、意外にも本作の聴きどころはシカゴの伝統的な部分にあると筆者には思われる。実はアルバムに収録されている「素直になれなくて」には続きがあり、「ゲット・アウェイ」という曲と一続きで1曲を構成している(5.「素直になれなくて/ゲット・アウェイ」)。そしてこの後半部分(「ゲット・アウェイ」)は、以前からのシカゴ的ブラス・サウンド志向の曲なのである。 これで何が言いたいかはお分かりであろう。本盤の聴きどころは新たな指向として登場してきたバラード系ではなく、シカゴが70年代を通してやってきたブラス・サウンドの洗練にあった。そういう観点からすると、本盤の聴きどころは、3.「バッド・アドヴァイス」や、上述の5.に含まれる「ゲット・アウェイ」ということになる。またアルバム後半(LPのB面)の曲の多くも、それほどブラス・セクションの派手さはないが、曲調としてはシカゴ初期の楽曲に似たものもあって、やはり従来路線の延長線にあると言えるように思う。 本作のアルバム・ジャケットはルーペで何かを拡大している図である(ジャケット写真はこちら)。それは、コンピューターのチップを虫眼鏡を通して見たというもので、プロデューサーのデヴィッド・フォスターを起用したことによる音の洗練・近代化を含意していたらしい。しかし、その“音の洗練”は、バラード路線への変化とイコールではなかった。実際のところ、この後のシカゴは確かにアダルト向けの楽曲作りに一層の力を注ぐわけだけれども、本作の段階ではブラス・ロックと呼ばれた要素もまだまだ強く、メンバーの変更や新プロデューサーの起用という変化の中で従来のサウンドを変えるのではなく、それを洗練させ、極めていこうという意図が感じられる。つまるところ、このアルバムは新たなシカゴの第一歩というよりは、過渡期的な性格といった方が正確だろう。この時期のシカゴのイメージがシングル「素直になれなくて」だという人は、ぜひこのアルバムも試してもらいたい。そして、本作でのシカゴのブラスが耳についたなら、過去作をさかのぼってみてほしい。[収録曲]1. What You're Missing2. Waiting for You to Decide3. Bad Advice"4. Chains5. Hard to Say I'm Sorry/Get Away6. Follow Me7. Sonny Think Twice8. What Can I Say9. Rescue You10. Love Me Tomorrow1982年リリース。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2010年08月10日
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カヴァーを聴くにつけ曲そのもののよさが明らかになる 「アイ・アム・ア・パトリオット(邦題は「明日を夢見て」)」は1984年、ソロ活動に専念すべくE・ストリート・バンドを脱退したリトル・スティーヴン(Little Steven、スティーヴ・ヴァン・ザント)が発表したセカンド・アルバム『ヴォイス・オブ・アメリカ』に収められた曲。E・ストリート在籍中に発表したファースト・ソロ・アルバム『メン・ウィズアウト・ウィメン』が基本はロックながらブルー・アイド・ソウル風の味付けであったのに対し、セカンドでは音も思想も過激になった。ちょうどスティーヴの活動が反アパルトヘイトのプロジェクトとそのアルバム『サン・シティ』へと向かっていく時期と重なっている。 そのセカンド・アルバムに収録された「アイ・アム・ア・パトリオット」は、レゲエ調のリズムに乗せて、「俺は~主義者じゃない」という詞を連発し、「自由(Freedom)」だけが拠り所の「愛国者(Patriot)」だという、実に政治的な意図の見える歌詞である。『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』で爆発的ヒット中のB・スプリングスティーンのバンドのギタリストがソロでアルバムを出せば、内容に関係なく売れるんじゃないかと思うだろうが、正直ここまで政治性を帯びるとファンは“ひいて”しまったのだろう。結果、大したセールスは残さなかった。 とはいえ、1989年にジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)がこの曲のカヴァーを自身のアルバムに収録した。ジャクソン・ブラウンはこの曲をいたく気に入ったようで(だからといって、彼のファンもそれを気に入ったとは限らないみたいだが)、ライヴのアンコール曲の定番にするほどの惚れ込みようだった。このジャクソン・ブラウンのヴァージョンは、原曲と違いまさしくシンガーソングライター風で、どちらかと言えばさらりと歌い上げている感じである。これを聴いて初めて気がついたのだが、本来の曲自体が非常によくできている。元のレゲエ風ヴァージョンしか聴かなかったら気づかずにいるところだった。 他にもこの曲をライブ等で取り上げているアーティストは多いようで、筆者が確認している限りでは、ジョン・ボン・ジョヴィ(ボン・ジョビのヴォーカリスト)やパール・ジャムといった著名アーティストがこの曲を取り上げている。けれども、聴いた中でいちばん気に入っているヴァージョンはと言うと、結局は原作者のリトル・スティーヴンに戻ってきてしまう。それも元のアルバムの・ヴァージョンではなく、スティーヴ自身のセルフ・カヴァーのライヴ・ヴァージョンである。入手の難しい音源なのだが、イタリアで制作されたプライベート盤で、サウスサイド・ジョニー&リトル・スティーヴンの『アンプラグド(Unplugged)』(1993年11月21日、NYでのライヴ)に収められたものである。このアコースティック・ライヴは、サウスサイド・ジョニーを中心に旧友リトル・スティーヴンが合流し、以前からサウスサイド・ジョニーのアルバムにも参加していた(そして、今ではE・ストリート・バンドの準メンバーとなった)ヴァイオリニストのスージー・ティレル(Soozie Tyrell)も参加したものである。 このライヴ・ヴァージョンでのリトル・スティーヴンは、基本アコギの弾き語り形式をベースにした(本当の弾き語りではなく、上記スージーのヴァイオリンもフィーチャーされている)、原曲とはまったく違うアレンジで、体内から絞り出すように淡々と歌い上げる。聴くたびに、やっぱり曲そのものがよかったのだろうと感じる。あくまで“たられば”だけれども、こういう政治的な歌詞じゃなくてもっとありきたりな日常や人生観でも歌った詞をつけていたら、そしてレゲエ調ではなくこういうアレンジで最初から提示していれば、実はロック史に名の残る名曲かつヒット曲になっていたんじゃないだろうか。[収録アルバム]レゲエ調の元ヴァージョン: Little Steven / Voice of America (1984年) Little Steven / Greatest Hits (1999年、ベスト盤) Various / Music Inspired By Fahrenheit 9/11 (2004年、コンピ盤)ジャクソン・ブラウンによるカヴァー: Jackson Browne / World in Motion (1989年) Jackson Browne / The Very Best of Jackson Browne (2004年、ベスト盤)L・スティーヴンのアコースティック・ライヴ・ヴァージョン: Southside Johnny & Little Steven / Unplugged (1994~95年頃?、プライベート盤) 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年08月09日
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ブルージーさ全開のバレル盤 ~後編~ (前編からの続き) さて、本盤の聴きどころはというと、選ぶのが難しいが、独断と偏見で筆者のお気に入りを挙げてしまおう。バレルのギター、ティモンズのピアノ、ティナのサックスの3つともが最高ということから、1.「バークス・ワークス」が本盤のベスト演奏だろうか。1曲目にアルバム内のベスト曲が入っているというのは、実際にアルバムを聴く上で実に心地いい。 他には5.「ハレルヤ」もいいのだが、ドラム一辺倒の部分で若干間延びしている感じがする。なので、本来のLPには未収録の曲だけれども、ここはあえて4.「スウィンギン」を二番手にしておきたい。三番手は同点で上記5.と、穏やかにエンディングを締め括る8.「36-23-36」(否、3.も捨てがたかったか…)。とまあ、頑張って4曲に絞ってみたが、残り4曲も甲乙つけ難い。 CDで曲が追加されて嬉しいことはあまりないのだが、この盤に関しては追加曲があって(なおかつ曲順の組み換えをやって)正解だと思う。同じセッションの曲でオリジナルの盤に入っていなかったものを追加するのは、通常は無謀な行為(しばしば指摘されるように元のアルバムを破壊する行為)だと一般論としては思う。けれども、この元の演奏は特段質が高く、なおかつこの音源をアルバム化する際には時間の制約から収録曲の順序を組み替える必要があったのだろう。そういう事情が重なったがゆえに、CDでの例外的な成功となったのではないかという気がする。 ところで、ファイヴ・スポットで繰り広げられたこの盤に収録の音の風景は、1959年の、つまりは半世紀以上も前のものである。40年、50年といった時間が経過すれば、“昔のもの”(決して演奏そのものが風化するという意味ではない)という感覚が生まれても不思議はないはずだ。 しかし、この音の風景は、今この瞬間にニューヨークで繰り広げられていても違和感がないように感じられる。その違和感のなさは、今から数十年後に聴いてもやはり同じなのではないかと想像する。要するに、特定の時代のものでありながら、ジャズがこの世に存在し得る限りにおいて、他の時代にも絶えず演じられていそうな音の光景なのである。とはいえ、これと同じ演奏が現在や未来に存在するかというと、実際にはそうやすやすと存在し得ない。ケニー・バレルのこの演奏、アート・ブレイキーのあのドラミング、ティナ・ブルックスのあのサックス音…、要するにこの音の全体像は、やはりこのタイミングでしか記録されようのないものだったからだ。でも、仮に第二のケニー・バレル、第二のティモンズ、第二のティナが登場し、ある日ある場所で集うことができたならば、やっぱりNYのどこかで鳴っていて違和感のなさそうな音である。 こういうのを“時代を超えた名作”と呼ぶのであろう。制作された時代と場所(特にブルーノートという“場”)特有の演奏・作品でありながら、時代を超えた音の風景を描き出している。筆者にとっての本盤はそんな1枚である。 [収録曲]1. Birk's Works2. Lady Be Good3. Lover Man4. Swingin' *5. Hallelujah6. Beef Stew Blues *7. If You Could See Me Now *8. 36-23-36*印…CD収録のボーナス・トラック[パーソネル]Tina Brooks (ts, 1~4)Kenny Burrell (g) Bobby Timmons (p, 1~4) Roland Hanna (p, 5~8)Ben Tucker (b)Art Blakey (ds) 録音: 1959年8月25日Blue Note 4021 関連過去記事リンク:ケニー・バレル『アット・ザ・ファイヴ・スポット・カフェ』(前編)(本記事の前編)ケニー・バレル『ケニー・バレルVol. 2』(前編) 同(後編)『ケニー・バレル&ジョン・コルトレーン』ケニー・バレル&ジミー・レイニー『2ギターズ』 【楽天ブックスならいつでも送料無料】アット・ザ・ファイヴ・スポット・カフェ [ ケニー・バレル ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2010年08月07日
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ブルージーさ全開のバレル盤 ~前編~ ケニー・バレルはブルーノートの看板ギタリストとして活躍した(他の作品については、過去記事(1)、(2)、(3)、(4))。そんなブルーノート・レーベルでの花形セッション的面子のライブ盤がこの『アット・ザ・ファイヴ・スポット・カフェ(On View at the Five Spot Cafe)』である。アルバム名の通り、ニューヨークの有名クラブ、ファイヴ・スポットでのライブ演奏を収録したものである。ちなみに、録音は1日でなされていて、アルバム前半(1.~4.、ただし長尺曲ばかりなので時間にすると後半よりだいぶ長い)と後半(5.~8.、主に短めの曲中心)でメンバーの異同があるが、これは昼の部と夜の部の演奏だったせいで、本盤収録と実際の当日の演奏順序は逆(アルバム前半が夜の部、後半が昼の部)だったらしい。 さて。本盤の面子には、実に特色があって個性の強いメンバーが並ぶ。ケニー・バレルのほか、ベース(ベン・タッカー)とドラムは固定され、ピアニストはアルバム前半と後半で入れ替わっている(ボビー・ティモンズとローランド・ハナ)。ちなみにドラムのアート・ブレイキーについては、ジャケットにちゃんと“ケニー・バレル・ウィズ・アート・ブレイキー(Kenny Burrell with Art Blakey)”との表示がある。さらに、管楽器としては、“幻のテナー奏者”と言われるティナ・ブルックス(参考記事はこちら)もアルバム前半に参加している。 前半のピアノを演奏しているボビー・ティモンズは “黒い”雰囲気がぷんぷんしており、1.「バークス・ワークス」のイントロとソロがとくに必聴。ティナ・ブルックスのサックスもブルージーな感覚に満ち満ちていて、上記1.や4.「スウィンギン」ではとりわけ物憂げなソロを披露している。アルバム後半のピアノのローランド・ハナも実に硬派で個性的な演奏を繰り広げている。 これらの“濃い”メンバーを迎え、ケニー・バレルのギター演奏はますます本領を発揮している。普段よりもいっそうブルージーに、“黒い雰囲気”のケニー・バレルを聴くことができる。しかしまあ、落ち着いて考えてみると、これだけ“濃い”メンバーでよく演奏がまとまったものである。その功績は、明らかにドラムのアート・ブレイキーにある。ブレイキーと言うと、ナイアガラ瀑布(ナイアガラ・ロール)の名で知られる激しいドラミングばかりをイメージする人もあろう。けれども、ブレイキーの本領は“静から動へ”、“寄り添いから煽りへ”というメリハリの妙技にあるのではないかと思う。試しに本盤をドラムばかりに注目して聴いてみると、意図的にその存在を消している(もしくは存在感を弱くしている)箇所があちらこちらにあることがわかる。その分、激しく煽るようなドラム演奏が必要な部分に来ると、一層の効果を発揮するという具合である。つまるところ、本盤の各曲の演奏を方向づけまとめあげているのは、彼のドラミングに他ならない。 どうもケニー・バレルの盤となると話が長くなってしまう(以前の記事『ケニー・バレルVol. 2』も1回では長すぎるので、前編・後編の2本立てになってしまった)。今回も続きを後編にということにさせていただきたい。(後編に続く)[収録曲]1. Birk's Works2. Lady Be Good3. Lover Man4. Swingin' *5. Hallelujah6. Beef Stew Blues *7. If You Could See Me Now *8. 36-23-36*印…CD収録のボーナス・トラック[パーソネル]Tina Brooks (ts, 1~4)Kenny Burrell (g) Bobby Timmons (p, 1~4) Roland Hanna (p, 5~8)Ben Tucker (b)Art Blakey (ds) 録音: 1959年8月25日Blue Note 4021 【楽天ブックスならいつでも送料無料】アット・ザ・ファイヴ・スポット・カフェ [ ケニー・バレル ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2010年08月05日
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INDEXページ(ジャンル別、アーティストのアルファベット順)を更新しました。 ここしばらくの記事を追加しています。INDEXページへは、下のリンク、もしくは本ブログのトップページ右側(フリーページ欄)からお入りください。 アーティスト別INDEX~ジャズ編へ アーティスト別INDEX~ロック・ポップス編へ アーティスト別INDEX~ラテン系(ロック・ポップス)編へ下記ランキング(3サイト)に参加しています。応援くださる方は、各バナー(1つでも2つでもありがたいです)をクリックお願いします! ↓ ↓ ↓ ↓ にほんブログ村 : 人気ブログランキング: 音楽広場:
2010年08月05日
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まだまだ続くブルース・ロックの胎動 ジョン・メイオール(John Mayall)率いるブルースブレーカーズ(The Bluesbreakers)が1967年に発表したのが本作『ア・ハード・ロード(A Hard Road)』である。1933年生まれのメイオールは50年代から演奏活動を始め、ロンドンを起点にバンド活動をしながら62年にブルースブレーカーズを形成していた。そのブルースブレーカーズの名を一躍とどろかせたのは、1965年のアルバム『ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン』であった。 同作に参加した若きエリック・クラプトンは、ヤードバーズを脱退しての参加だったが、結局はこの一枚だけでバンドを去り、次のステージ(ジャック・ブルース、ジンジャ・ベイカーとクリームを結成、クリーム参考記事)に入っていく。そんなクラプトンの脱退後に発表されたのが、この『ア・ハード・ロード』だった。 実はクラプトンの加入~脱退の間には、その裏面というべき経緯もあった。クラプトンの加入によってギタリストのピーター・グリーン(Peter Green)が一度バンドを去っていた。しかし、短期間でクラプトンが脱退した後、本盤に際して彼が復帰している。そのピーター・グリーンは、本盤でのプレイを高く評価されるとともに、再びブルースブレーカーズを抜けて今度は自身のバンドを形成する。その新バンドとは、本盤でベースを弾いているジョン・マクヴィーに加え、同じブルースブレーカーズと録音経験のあるミック・フリートウッド(ドラム)のリズムセクションが核となり、ピーター・グリーンがリードする、フリートウッド・マック(Fleetwood Mac)なるバンドであった。 実際、本盤『ア・ハード・ロード』においても、ピーター・グリーンの活躍はめざましい。彼メインのバンドではないので、ずっと前面に出ているわけではないが、本アルバムには、10.「ザ・セイム・ウェイ」と11.「ザ・スーパーナチュラル」というグリーンのナンバーが2曲含まれている。とりわけ、11.は後にフリートウッド・マック(ピーター・グリーン在籍中の初期フリートウッド・マック)の代表曲の1つとなる「ブラック・マジック・ウーマン」を思わせる曲調とギター・プレイで、「ブラック・マジック・ウーマン」の原型となったとも言われている曲だ。この曲以外にも、同じくインスト曲の4.「ザ・スタンブル」では、後に自身のバンドで全面的に披露することになるギター演奏が全開で、これだけ単独で聴けば、初期フリートウッド・マックの曲かと思ってしまうような仕上がりである(さらに、8.「ダスト・マイ・ブルース」などもいかにもフリートウッド・マックがやりそうな感じの曲に仕上がっている)。また、上記10.に加えて3.「ユー・ドント・ラヴ・ミー」の計2曲で、ピーター・グリーンがリード・ヴォーカルを務めている。 このピーター・グリーンの才能と、ブルース・ロックの開拓者たるジョン・メイオールが一緒に盛り込まれたアルバムというのは、実は贅沢極まりない組み合わせのはずである。にもかかわらず、クラプトン参加盤の陰で、現在では半ば忘れ去られたアルバムになっているのは残念な話だ。クラプトン参加盤は確かに、わかりやすいギター・リフもあり、キャッチーに聴き手を引き寄せる部分がある。これに対し、本盤のピーター・グリーンは粘りのあるギタープレイで、クラプトンほどわかりやすく目立った部分がないとも言える。しかしよく聴けば、負けず劣らずの好盤であり、英国発のブルース・ロックのうねりはジョン・メイオールを軸にこの時点においてもまだまだ展開し続けていたことがよくわかる。そして、もちろんそのうねりは新たに結成されるフリートウッド・マックにも受け継がれていくし、“ジョン・メイオール学校”もさらなる人材を輩出していくことになる。[収録曲]1. A Hard Road2. It's Over3. You Don't Love Me4. The Stumble5. Another Kinda Love6. Hit The Highway7. Leaping Christine8. Dust My Blues9. There's Always Work10. The Same Way11. The Super-natural12. Top Of The Hill13. Someday After A While (You'll Be Sorry)14. Living Alone1967年リリース。*2003年には22曲追加(CD2枚組)もリリースされている(筆者は未聴)。 【輸入盤】Hard Road [ John Mayall ] John Mayall ジョンメイオール / Hard Road 輸入盤 【CD】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年08月03日
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「よくあるSSWの一人」ですましてしまうにはもったいない歌声 本作『テイルズ(Tails)』は、1995年にリリースされたリサ・ローブ(Lisa Loeb、正確には本作の名義はLisa Loeb & Nine Stories)のファースト・アルバム。つまりは、これがデビュー・アルバムなのだが、実はその前にナンバー・ワン・シングルを放っているという変わった経緯がある。1994年の映画『リアリティ・バイツ』のサウンドトラックに収録された「ステイ」(本盤13.)が大ヒットしたのだが、この時にはレコード会社とレコーディング契約すらなく、未契約アーティストしては史上初のナンバー・ワン・ヒット(ビルボード、シングル・チャートで1位)という珍記録を打ち立てていた。そんな彼女が翌年にゲフィン・レコードと契約し、デビュー作として発表したのがこのアルバムというわけだ。 この人の歌には、歌の中に聴き手を引き込む力がある。同じく女性で有名なシンガー・ソング・ライターを引き合いに出すならば、スザンヌ・ヴェガやトーリ・エイモスといった人たちと共通するような部分がある。しかし、彼女らとの違いを言えば、スザンヌ・ヴェガのように内省的でもなく、トーリ・エイモスのように強烈に個性的な世界を展開しているわけでもない。リサ・ローブの歌はもっとシンプルでスタンダードな印象が強い。収録曲はいずれも自作曲だが、その内容は日常の風景、あるいは作者自身の等身大の姿と思しきものだ。にもかかわらず、聴き手を引き込んでいく魅力がこの人の歌声にはある。 作詞作曲、あるいは楽曲の解釈方法、各曲の演奏の音作りといったアルバム制作の諸段階は、アーティストとして気合いの入る作業のはずである。けれども、想像するに、このリサ・ローブという人は結構気軽にこれらの作業をやっているのではないだろうか。無論、手を抜いてるというわけじゃない。適切な表現が見当たらないのだけれども、さしあたり“背伸びをしていない”とでも言えばいいのだろうか。無理に難しいことをしない。ありのままに表現をする。だからこそ、聴き手の心にすんなり届く作品ができあがり、結果、リスナーが知らず知らずのうちに彼女の歌声に引き込まれていく。 その後、リサ・ローブは毎年というような頻度ではないものの、数年おきにアルバムを発表し、これまでに計7枚のアルバムをリリースしているらしい。筆者がちゃんと聴いたのは、現時点では、このデビュー作を含めてほんの数枚に過ぎない。そのうち7枚全部を徐々に聴いてみたいと思いつつ、現在のところなかなかそれを達成できていない。他にもいい作品があるので機会があれば(そしてもっと多くのアルバムを聴きこんだ後には)、本項の続きをお伝えしたいと思う。[収録曲]1. It's Over 2. Snow Day3. Taffy4. When All the Stars Were Falling5. Do You Sleep?6. Hurricane7. Rose-Colored Times8. Sandalwood ?acoustic version-9. Alone10. Waiting for Wednesday11. Lisa Listen12. Garden of Delights13. Stay (I Missed You)14. Sandalwood ?band version-(日本盤ボーナストラック)1995年リリース。 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年08月01日
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