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急速に進化していくペトルチアーニ 人は進化する、というのは、類人猿が現生人類に至る進化論の話をしているのではなくて、一人の人がその人生において変わっていくことの方の話である。ミシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani)は、1963年、南フランスに生まれ、4歳の時にやりたいといったピアノで頭角を現し、20歳になる頃にはアメリカへ進出した。先天性の病(骨形成不全症)の彼は1999年に36歳で亡くなってしまったが、この人の36年間という“短い人生”は、普通の人の一生分の変化や進化に富んでいたのではないかと思わされることがある。 そんな面が垣間見られるのが、この『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード(Live at the Village Vanguard)』という盤。その名の通り、ヴィレッジ・ヴァンガードで1984年に実況録音されたピアノ・トリオ演奏が収められている。 1982年の渡米前にペトルチアーニは既にアルバム作品を発表していて、そこでは早くも完成されたセンスとテクニックを聴くことができる。当然、その感性と腕前を持ってアメリカに渡ったわけ(その演奏を聴いたチャールズ・ロイドが即座に楽器を出して来て演奏を始めたというエピソードもある)だけれども、20歳そこそこの当時のペトルチアーニは、まだまだ発展途上にあったのだろう。2年後の84年の本盤では、初期の作品と比べると大きな進化の後が見られる。 そうした変化の特に顕著な点として、次の二点が挙げられるように思う。一つは、フリー・ジャズか不協和音か、ぴったりくる表現が浮かばないが、意図的に“ありがちではない音”を出している点。つまりは、曲全体やソロの幅が大きく広がって行っているのがわかる。もう一つは、ピアノ・タッチの強さ。ライヴ演奏ということもあるだろうけれど、それ以前のスタジオ作に比べて演奏するピアノの一音一音の力強さが際立っている。 いきなり時事的な話になってしまうけれど、こうしたペトルチアーニという個人の“進化”を見ていて、昨今の社会はどこへ向かおうとしているのか不安になったりもする。“俺は俺”、“自分に合った仕事”といった類の表現は、そうした個人の変化=進化にブレーキをかける価値観になってしまっていないだろうか。“なりたい私になる”というのも、一見違っているようで、同じく思考停止の一種かもしれないと思ったりする。というのも、“なりたい”が既にわかっている範囲の成長や進化より、“いままだ思いが及ばない(予想がつかない)”地平へ踏み出す方が、人生ワクワクできるし、そっちこそが本当の進化と言えるんじゃないだろうか…。就活を頑張って新たな仕事を始めた新入社員の報道が続いたこの季節、ペトルチアーニの進化を聴きながら、ふと“キャリアアップ”や“スキルアップ”といったキャッチフレーズばかりが、ひょっとすると空虚に踊ってしまっている今の社会における“個人の成長/進歩”の本当の意味も問い直してみたくなってしまう。[収録曲]1. Nardis2. Oleo3. Le Bricoleur De Big Sur4. To Erlinda5. Say It Again And Again6. Trouble7. Three Forgotten Magic Words8. Round Midnight[パーソネル、録音]Michel Petrucciani (p)Palle Danielsson (b)Eliot Zigmund (ds)1984年3月6日録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤】Live At The Village Vanguard [ Michel Petrucciani ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年05月21日
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初期キャノンボールの真摯なハードバップ演奏 1955年にニューヨークに登場して以降、キャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)は次々と順調に吹き込みをこなし、様々な企画(例えばデビュー早々のウィズ・ストリングス盤もその一つ)も設けられた。亡くなったチャーリー・パーカーと入れ替わるように登場し(バードは1955年3月死去、キャノンボールの初録音は同年6~7月)、ニューヨークのジャズ・シーンで注目されていったわけである。この当時のキャノンボール、つまりは“ファンキー”という形容詞や“ソウル・ジャズ”などの表現が付きまとう以前の彼の演奏は、ある時点以降の彼の作品群と並んでもっと取り上げられていいように思う。 この『キャノンボール・アンルート(Cannonball Enroute)』は、1957年2月と翌58年3月にかけての吹き込みで、これのうち2度目のセッションの数日後には、かの『サムシン・エルス』(参考過去記事)の吹き込みが行われている。ただし、実質的にマイルス・デイヴィスのセッションであったブルーノート盤『サムシン・エルス』とはメンバーはごっそり違っており、共通しているのはベースのサム・ジョーンズのみ。他は『ソフィスティケイテッド・スウィング』と共通する面子で、1957年2月のセッションは両方の作品の音源となっている(その意味ではあわせて聴くのもよい)。 過去に書いたことの繰り返しになってしまうけれど、キャノンボール・アダレイのよさのうち、“伸びやかさ”は重要な一要素だと思っていて、この盤でもそのよさはいかんなく発揮されている。本作の中でそれがよく出ているという点では、3.「18thセンチュリー・ボールルーム」が断然いい。ナット・アダレイとレイ・ブライアントのペンによる軽快な曲調に乗って、短い演奏ながら伸びのあるサックスが非常に印象的。他にも1.「ア・フォギー・デイ」、8.「今宵の君は」といったスタンダード曲の演奏もなかなかよい。実際に人気が集中するのは少し後の作品群とはいえ、これら早い時期のキャノンボール盤、筆者的には捨てがたい魅力を持ったものが多い。 [収録曲]1. A Foggy Day2. Hoppin' John3. 18th Century Ballroom4. That Funky Train5. Lover Man (Oh, Where Can You Be?)6. I'll Remember April7. Porky8. The Way You Look Tonight[パーソネル・録音]Cannonball Adderley (as)Nat Adderley (cor)Junior Mance (p)Sam Jones (b)Jimmy Cobb (ds)1957年2月7日(1.~3.,5.)、8日(7.~8.)、11日(4.)、1958年3月6日(6.) 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【新作CDポイント3倍対象商品】JAZZ THE BEST 70::キャノンボール・アンルート [ キャノンボール・アダレイ ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年05月18日
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オリジナル5曲とスタンダード6曲、バランスのとれた好盤 『ナイト・ミュージック』というカタカナのタイトルを見て“夜”と思い込んではいけない。同じ“ナイト”でも、ジャケットの絵にあるように“騎士”(原綴りはnightではなくknight)の方。さらにジャケットの原題をよく見ると、アルバム内容もわかるようしっかり表現されている。“George Wallington plays 5 originals and 6 standards”つまりは、ジョージ・ウォーリントンが演奏する5つのオリジナル曲と6つのスタンダード曲が収録されているという構成になっている盤というわけである。 そのオリジナルとスタンダードの配分は、LPでのA面とB面(CDだと前半と後半)という風に明瞭に分けられている。ジョージ・ウォーリントンは白人ピアニストとして優雅なタッチと評されるが、彼には2つの側面があった。一つはビバップの只中で育まれてきたミュージシャンとしての側面。この部分は本盤の前半、つまりはオリジナル曲の部分によく表現されている。他方、もう一つの彼の特徴的な側面は、親しみのあるスタンダード・ナンバーを洗練されたピアノ演奏で聴かせるという一面である。実際、本盤の演奏で前半と後半を分けて聴けば、彼のピアノ演奏の二面性がA面とB面になかなか明瞭に表れているように思う。ピアノ・トリオでの演奏ということもあり、こうした特徴は本盤では明瞭に出ている。 それでもって、上の2つの側面は、どっちがいいか? 正直なところ、そのように天秤にかけられる種類のものではないと感じる。“両方ともが彼そのもの”なのである。そんなわけで、前半・後半それぞれのベスト曲を無理やり1曲ずつ選んでみるとすれば、筆者の独断と偏見では次のようになる。まず、オリジナル曲の中で出色は1.「ゴッドチャイルド」。この曲は、マイルス・デイヴィスの『クールの誕生』でも取り上げられていて、ウォーリントンの曲としてはよく知られている曲の一つである。 続いて、後半のスタンダード曲のベストはというと、あれもこれも結構迷うのだけれど、わかりやすさを買って9.「イン・ア・センティメンタル・ムード」を挙げておきたい。繊細かつ洗練度の高いピアノ演奏をわかりやすいナンバーにのせて美しく聴かせる、という意味ではこの曲は本盤収録の優れた演奏の中でも上位に挙げていいと思う。単に“洗練された美しいピアノ”というのは、下手をすれば、“聞き流し”(BGM扱い)ということになりかねないけれど、本盤でのウォーリントンの演奏は概ね後半のどの曲も、そのような次元を超越しているように思う。現在のCDでは、当然のことながら全編が連続しているわけだけれども、1.~5.、6.~11.で半分に割って楽しみ続けてもらいたいと思う盤である。[収録曲]1. Godchild2. Serendipity3. Billie's Tune4. The Ghostly Lover5. Up Jumped The Devil6. It's All Right With Me7. The End Of A Love Affair8. Will You Still Be Mine9. In A Sentimental Mood10. World Weary11. One Night Of Love[パーソネル、録音]George Wallington (p) Teddy Kotick (b) Nick Stabulas (ds)1956年9月4・5日 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】[枚数限定][限定盤]ナイト・ミュージック/ジョージ・ウォーリントン[CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年05月15日
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デトロイトゆかりのミュージシャンたちの邂逅の記録 ケニー・バレル(Kenny Burrell)は、1931年デトロイト生まれのジャズ・ギター奏者。彼の最初のリーダー作としてよく知られているのは、ブルーノートでの『イントロデューシング・ケニー・バレル』という盤である。同盤が吹き込まれたのは1956年5月末だが、その直前(正確には4月末と5月初め)に、ほぼ同じメンバー(コンガがなくてバリトンサックスが加わっている以外は同メンバー)でサヴォイで別の録音がなされている。それがここで取り上げる『ジャズメン・デトロイト(Jazzmen Detroit)』という作品である。 当時、多くのミュージシャンがニューヨークに進出し、そこでキャリアや成功を重ねていったが、その背後には、シカゴやデトロイトなどからニューヨークを目指した奏者が多くいた。本盤はデトロイトゆかりの若き奏者が参加している。ケニー・バレル、トミー・フラナガンはデトロイト生まれで、当時は20歳代半ばかそれを過ぎたばかりの年齢。ペッパー・アダムスとポール・チェンバースは、デトロイト出身ではないものの、そこを拠点とした経験やデトロイト育ちといった経歴をもつ。ついでながら、これら4人はその数年後にも別の盤(過去記事参照)で“モーター・シティ”(デトロイトのこと)をキーワードに共演している。これらのメンバーにケニー・クラーク(デトロイト出身ではなくピッツバーグ出身で、ちょうどMJQのドラマーの座をコニー・ケイに譲ってパリに拠点を移そうとしていた頃)を加えての録音である。 デトロイトは“自動車の街”と同時に、都会的なジャズメンを送り出す場所でもあった。本盤の録音はニューヨークだけれど、べったりアーシーでもなく、時代の最先端をひた走るわけでもなく、実に巧妙でセンスある都会的な演奏に仕上がっている。20歳代後半の若者たちを中心としたセッションというには、いい意味でのリラックス度が高い。無論、“リラックス”といっても“聞き流せる”というのとは別で、肩肘張らず、かといって緊張感が高すぎないまま、全編を通じて適度な緊張感とリラックス度が持続する。こういう音楽というのは、演っている本人たちもさぞかし楽しいのだろうな、というのが素直な感想だったりする。 個人的な好みは、肩の力がいい具合に抜けた1.「アフタヌーン・イン・パリ」、ペッパー・アダムス作で彼のバリトン・サックスとケニー・バレルのギターの絡みが印象的な3.「アポゼム」、小気味よさと全体のまとまりで聴かせる6.「トムズ・サム」といったところ。特にこの最後の6.は、上で述べた緊張感とリラックス度のバランスが実に心地よいと思う。[収録曲]1. Afternoon in Paris2. You Turned the Tables on Me3. Apothegm4. Your Host5. Cottontail6. Tom’s Thumb[パーソネル、録音]Pepper Adams(bs), Tommy Flanagan(p), Kenny Burrell(g), Paul Chambers(b), Kenny Clarke(ds) 1956年4月30日(4.~6.)、5月9日録音(1.~3.)。 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】ジャズメン・デトロイト/ケニー・バレル[CD]【返品種別A】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2014年05月13日
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さらりと聴かせるピアノ・トリオ レイ・ブライアント(Ray Bryant)は、1931年フィラデルフィア出身のジャズ・ピアノ奏者。早くからプロとして活動し、レスター・ヤングやマイルス・デイヴィスなどと共演したほか、1950年代後半からは独自のトリオなどで名声を得た。 そんなレイ・ブライアントのピアノ・トリオ盤といえば、『レイ・ブライアント・トリオ』(プレスティジ盤)や『レイ・ブライアント・プレイズ』を挙げるのが定石だろう。けれども、今回は、『オール・ブルース』に続いて、少し捻りをきかせて、この『コン・アルマ(Con Alma)』というトリオ盤を取り上げてみたい。 本盤の聴きどころとなるポイントは2つあるように思う。1つは、表題曲の1.「コン・アルマ」と、彼の代表曲として知られる6.「クバノ・チャント」。ともに軽快なラテン風味の演奏で、ドラマーのミッキー・ロッカーが繊細かつ巧妙にこのリズムを先導する。その一方で、もう1つのポイントとなっているのは、定番曲の多さ。2.「マイルストーンズ」や3.「ラウンド・ミッドナイト」、8.「枯葉」に9.「Cジャム・ブルース」などと、有名曲のオンパレードという側面も本盤は併せ持つ。 でもって、それらスタンダード曲の演奏があるからこそ、本盤はいいのだと思う。全編を通してラテン風味だと、聴き手は飽きてしまう。かといって、スタンダードナンバー目白押しでは、よほどの奇抜な演奏がないとわざわざ聴く気にはなれない人も多いだろう。スタンダード曲では個性を出しながらも暴走はせず(とはいっても、8.や9.なんかは結構お気に入りだけれど)、1.と6.でアクセントがついている。そんな意味では、通して聴いてこその作品と言えるかもしれない。 余談ながら、レイ・ブライアントは、およそ3年前、2011年6月にニューヨークで亡くなっている。享年79歳だから、早世の人が多いジャズ界では、“天寿を全う”に近いのかもしれないが、やっぱり惜しまれる。[収録曲]1. Con Alma2. Milestones3. 'Round Midnight4. Django5. Nuts and Bolts6. Cubano Chant7. Ill Wind8. Autumn Leaves9. C Jam Blues1960年11月25日、1960年1月26日録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】コン・アルマ [ レイ・ブライアント ] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2014年05月10日
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多様な曲が居並び、歌心を愉しむ盤 ハンク・モブレー(Hank Mobley)という演奏者は、2つの特徴があると言えるような気がする。1つはハード・バップ奏者として鳴らした腕前。“イモ・テナー”などとひどいことを言われたりもするけれど、やっぱりこの人の演奏は確かだと思う。その一方、もう1つの特徴というのは、作曲家としての側面である。この腕前で歌心いっぱいに、異なったタイプの曲も見事に演奏するのは、この2つめの作曲家としての才能が関係しているのではないだろうか。そのようなわけで、ジャズ界の大物演奏者たちがしばしば解釈そのもの(そこには演奏する楽器の腕前と共にアドリブやら音色やらの要素が含まれる)で評価されるのに対し、ハンク・モブレーには違った“特技”があり、メロディメイカーとして優れていることが、歌心いっぱいの演奏そのものにも大きく影響しているように思う。 こんな観点に立ってみると、1965年の本盤『ディッピン(Dippin’)』は楽しく興味深いアルバムである。熱気よりも歌心が先に立ち、しかもバリエーションに富んだ曲目が並んでいる。おそらくもっとも目を引くのが、2.「リカード・ボサノバ(Recado Bossa Nova)」だろう。モブレーが最初ではないものの、本盤の吹き込みの頃からジャズ・スタンダードとして定着していくことになったもので、元々はブラジルのジャルマ・フェレイラ(Djalma Ferreira)によるボサ・ノヴァ・ナンバーだった。 ともあれ、「リカード・ボサノバ(Recado Bossa Nova)」が本盤の代表曲や聴きどころなどと言いだすと、本盤の価値は半減するように思う(ジャズ喫茶で流れ続けた、あまりにも有名なこの曲そのものやこの曲の演奏がよくないと言っているわけではないので、念のため)。むしろ、他に並ぶナンバーとの対比があって初めて意味を持つというわけである。 時代の潮流の変化からか、8ビートを使った1.「ザ・ディップ(The Dip)」は、収録曲中4曲(1.,3.,4.,6.)を占める自作曲のうちの一つ。かと思えば上記2.のブラジリアン風ジャズの演奏を聴かせる。3.や4.ではリー・モーガンもろともまだまだハード・バップから脱却できないというか、頑なに続けているスタイルの片鱗が窺える。これで終わりかといえば、そうではない。5.「アイ・シー・ユア・フェイス・ビフォー・ミー(I See Your Face Before Me)」は、古いブロードウェイ・ミュージカルの曲で、これを録音したフランク・シナトラと張り合うのかといわんばかりの甘~いテナーの歌を聴かせる。最後の6.「ボーリン(Ballin')」は、再びリー・モーガンとのアンサンブルにそれぞれのソロが緊張感を保ったまま楽しく流れていく。 このように、楽曲および演奏の多様さと、それを見事にできる手腕こそが、本盤の特徴だろうと思う。その中に「リカード・ボサノバ」が含まれているからこそ、この曲のよさがあるというものだろう。結局、全体として聴くならば、歌心に満ちた、しかも優れた作曲家ならではの多様な曲調が見事に演奏されているのを愉しみたい一枚だと思う。[収録曲]1. The Dip2. Recado Bossa Nova3. The Break Through4. The Vamp5. I See Your Face Before Me6. Ballin'Blue Note 4209[パーソネル、録音]Hank Mobley (ts), Lee Moprgan (tp), Harold Mabern, Jr (p), Larry Ridley (b), Billi Higgins (ds)1965年6月18日録音。 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】ディッピン/ハンク・モブレー[CD]【返品種別A】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2014年05月08日
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ブラウニー、もう一つの推奨盤 クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)の作品と言えば、『スタディ・イン・ブラウン』や『クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ』がよく名の挙げられる定番=名盤となっているけれど、これも忘れるわけにはいかない、と思うのがパシフィック・ジャズ・レーベルの本盤『ジャズ・イモータル(Jazz Inmortal)』である。ジャケットにも大きな文字で記されているように(“Featuring Zoot Sims”)、テナーサックスのズート・シムズを迎えての録音盤。 クリフォード・ブラウン自身、ウェスト・コースト・ジャズ・ムーヴメントには関わっていないし、グループの活動開始こそ西海岸だったものの、演奏者としては、彼は東側のハードバッパーと言っていいだろう。それが、この作品では、そのブラウンが、クール・ジャズの面々に混じって東西共演を立派に果たし、成功を収めたことが確認できる。ぎくしゃくした感じは全くなく、“東西”で変な対立(?)を期待する聴き手を見事に裏切ってくれる盤と言えば、チェット・ベイカー(参考過去記事)と並んでこの盤という見方もできそうだったりする。 厚みのあるアンサンブルが印象的な中、プレイとしては“東海岸的”なブラウニーの演奏が変に融和するでも、すり寄るでもなく、うまく組み合わさっている。元々、彼のトランペットには、流れるような爽やかさという要素があるので、その部分がうまく噛み合っているのかなと感じる。さらには、ズート・シムズの気持ちよく揺れるサックスとの相性もなかなかしっくりとくる。 “死んだら忘れ去られる”と冷たいことを言う音楽ファンもいるらしいけれど、活動期間が5年に満たない中、これだけの見事な吹き込みを残して逝ったクリフォード・ブラウンは、やはり忘れ去られてはならぬ演奏家だろう。悲劇の死というストーリー性は必ずしも必要ないかもしれないが、本盤は他の代表盤と並べてもっともっと推されてもいい1枚だと思ったりする。[収録曲]1. Daahoud2. Finders Keepers3. Joy Spring4. Gone With The Wind 5. Bones For Jones6. Blueberry Hill7. Tiny Capers~以下、2001年版CD所収の追加曲~8. Tiny Capers [別テイク]9. Gone With The Wind [別テイク] [パーソネル、録音]Clifford Brown (tp)Stu Williamson (valve tb)Zoot Sims (ts)Bob Gordon (bs)Russ Freeman (p)Joe Mondragon (b, 1-3)Carson Smith (b, 4-9)Shelly Manne (ds),Jack Montrose (arr)1954年7月12日(1.-3.)、8月12日(4.-9.)録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤】Jazz Immortal (Rmt) [ Clifford Brown ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2014年05月04日
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巨匠による“硬さ”と“柔らかさ” ベン・ウェブスター(Ben Webster)というサックス奏者は、何とも不思議な魅力を持っている。時代が古い(1909年生まれで、1973年に64歳で死去)だけに、後の奏者に与えた影響とか、スウィング期の代表的奏者云々といった文脈で一般には語られる訳だけれど、たまにはこの手の“中毒性”のサックスに酔いしれるの悪くないと思うこともしばしばである。 本盤『キング・オブ・ザ・テナーズ(King of the Tenors)』は1953年のリーダー作で、ソロ作としては比較的早い時期のもののようである。ウェブスター自身は1930年代後半からレコーディングをしていたが、リーダー名義としては50年代後半以降に盤が集中している。さて、この人のサックスの特徴はと言えば、何と言ってもしゃくりあげるような甘さとゴリッとした無骨さの両面性にある。後の時代になれば、より“甘さ”の比重が高くなるが、本盤辺りは、両者のバランスも結構とれているという感想を持っている。 “甘さ”という面では、1.「テンダリー」、4.「ザッツ・オール」、8.「ダニー・ボーイ」といった曲が典型的。その一方、無骨さもしくは“硬さ”がよく出た演奏としては、2.「ジャイヴ・アット・シックス」と7.「コットンテイル」が一押しである。両者の接点はというと、案外(といっては失礼だが)丁寧でうまくスウィングし流れるような演奏にあって、3.「ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニモア」や5.「バウンス・ブルース」によく表れているように思う。 それはそうと、この人の作品が近寄りがたい理由は大きく2つあるという気がする。一つはこのジャケット(というか、どの盤も似たり寄ったりだったりしないでもない)である。暑苦しそうなサックスを持ったオッサンのジャケットは(他の作品にはサックスを持っていないものもあるけれど)、間違っても“ジャケ買い”ということはなさそうなタイプ。こうした“いまいちジャケット”は、ジャズ界に他にもいっぱいあるとはいえ、ジャケットのイメージで選んでもらえなさそうな典型例であることは確かだである。その一方、ベン・ウェブスターという名前は聴いたことあるという人の中では、“枯れたバラード吹き”のようなイメージもある。上にも書いたように、甘めのバラードも彼の特徴であるが、この“硬質さ”も彼の特徴であって、未聴という方にはぜひ一度試していただきたい。ジャズ史上も明確な位置を与えられにくく、上記のようなレッテルを貼られやすい人なだけに、実際に聴いてみれば印象が異なる問うこともあるのではないかと思う。結局のところ、筆者はこれが結構好きだったりするのだけれど。[収録曲]1. Tenderly2. Jive At Six3. Don't Get Around Much Any More4. That's All5. Bounce Blues6. Pennies From Heaven7. Cotton Tail8. Danny Boy[パーソネル、録音]Ben Webster (ts)Oscar Peterson (p)Ray Brown (b)Barney Kessel (g; 5., 7., 8.)J. C. Heard (ds; 5., 7., 8.)Harry "Sweets" Edison (tp; 1.-4., 6.)Benny Carter (as; 1.-4., 6.)Herb Ellis (g; 1.-4., 6.)Alvin Stoller (ds; 1.-4., 6.)1953年録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤】King Of Tenors [ Ben Webster ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2014年05月01日
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マイルス/ギルの最高傑作の真価 マイルス・デイヴィス(Miles Davis)はアレンジャーとして名高いギル・エヴァンスと何度かにわたってコラボしている。その中で、最高傑作と謳われるのが、本盤『スケッチ・オブ・スペイン(Sketches of Spain)』である。『マイルス・アヘッド』(1957年)の美しいサウンド、苦心の末に生み出された『ポーギーとベス』(1958年)を経て、1959~60年にかけてレコーディングされたのがこの作品だった。 そもそも、この作品の制作が始まったのは、マイルスが“頭から離れなくなってしまった”という、J・ロドリーゴ作の「アランフエス協奏曲」を聴いたことに始まる。同じレコードを聴いたギル・エヴァンスもこれを気に入り、ギルのアレンジで本レコーディングを行う流れになったとのことである。 一般的なイメージとしては、“考えるギル”に“感性で臨むマイルス”ということになるのかもしれない。けれども、実際には、ギル・エヴァンスがイメージ通りに様々な編曲やパーツの組み合わせを入念に考えていたのに対し、マイルス・デイヴィスの方も相当に考え抜いての演奏ということになったのではないだろうか。マイルスが言ったとされる“あのメロディはとても強いから、柔らかく演奏すればするほど強くなるし、強く演奏すればするほど弱くなる”という言葉は、そのことを如実に反映しているように思う。結果的に、マイルスはこのスペイン音楽を力で乗り切る(というか押し切る)ことはしなかった。だからこそ、“モダン・ジャズ風スペイン音楽”になることもなければ、“スペイン音楽そのまんま”にもならなかったのだろう。 そのようなわけで、本盤に“マイルスらしさ”を求めるのはあまり正しくないかもしれないし、もちろんのことながら、“スペイン音楽そのもの”を求めるのも正当ではない。マイルスは思索の末にスペイン音楽に歩み寄り(もちろんそこにはギル・エヴァンスという編曲家の尽力が大きい)、結果として、元の音楽とも異なっていて、マイルスの歩みそのものとも違っているという、新種の音楽が作品としてでき上がった。 スペインへの憧憬など、21世紀の今(スペインが国際的観光地で、EUの一員となって、変な意味での幻想の地ではなくなったという意味において)となっては、笑い種かもしれない。でも、その“理想化されたスペイン”と、それをそのまま演じるのではなく、かといって自分流に引きつけるだけでもない演奏を見事に成し遂げたのがこの作品だと思う。当然のことながら、その立役者がギル・エヴァンスその人に他ならない。一般には1.「アランフエス協奏曲」と4.「サエタ」が名演とされる。確かに、これら2曲は文句のつけようもない感動ものだけれど、個人的には2.も5.も、というわけでほとんど全編が、上で述べたように、スペイン音楽そのままでもなければ、マイルスそのまんまでもない、という特徴の上に、見事に完成された演奏としてでき上がっているのだと思う。[収録曲]1. Concierto de Aranjuez2. Will O’The Wisp3. The Pan Piper4. Saeta5. Solea[パーソネル、録音]Miles Davies (flh, tp)Gil Evans (arr)ほか 【楽天ブックスならいつでも送料無料】スケッチ・オブ・スペイン +3 [ マイルス・デイビス ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2014年04月28日
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実力派セルフ・タイトル第二弾 1999年録音の『カイザー』に続いてライアン・カイザー(Ryan Kisor)のリーダー作として録音されたのが2000年レコーディングの本盤『カイザーII(Kisor II)』。世紀転換期のこの若き(1973年生まれなので、当時は20歳代後半)トランぺッターの出現に、レコード会社や批評家からは、“これからのジャズ界を牽引”とか“21世紀のホープ”のような文句と共に喧伝されていた。 十数年の歳月が流れた今、少し冷静に捉え直してみると、何か急激に新しいことや革新的なことを期待するタイプの奏者ではなかったのかもしれないと改めて感じている。彼のトランペットの演奏は、実にオーソドックスでスタンダードであり、何か劇的な革新性を期待するタイプのものではなかったように思える。要するに、何が凄いのかと言われると、その“腕前”が極端に抜きんでているのであって、ジャズという音楽の長い積み重ねを21世紀の今に見事に表現できる実力派だというのが正当な評価なのではないだろうか。 実際、明らかにクリフォード・ブラウンを連想させた前作『カイザー』と同様、今回も先人を連想させるスタンダード名曲を臆することなく披露している。その典型例と言えるのが4.「セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン」で、言わずと知れたマイルス・デイヴィスのナンバー。さらには、同じくブルー・ミッチェルを思い出してならない2.「アイル・クローズ・マイ・アイズ」も収められている。特にこの2.は、そもそも抑揚やわかりやすい聴かせどころが元々あまりない、言い換えれば、演奏者の実力が見事なまでに問われるスタンダード・ナンバーで、ライアン・カイザーの実力発揮にはもってこいの曲だったと言えそう。 他に本盤のハイライトとなりそうなのは、1.「ザ・ソング・イズ・ユー」と5.「イン・ザ・ナウ」。前者は、勢いのある演奏ではあるのだが、最初から最後までどこかしら肩の力が1つ抜けた余裕を感じさせてくれる。結果、スピードがあるはずなのに滑らかに仕上がっていて、上記の2.と並んで本盤のいちばんの聴きどころと言えるかもしれない。後者は、やはりさらりとした部分のある演奏なのだが、トランペット奏者によってはもっと鋭い音の鬼気迫る演奏にもできそうな曲の典型例だと思う。それをこのように優しく料理できるというのは、彼の本領なのだろう。 最後に、極めて個人的な感覚ではあるのだが、この盤はぜひ午前中に聴くべし。その訳は彼のトランペットの音色の“柔らかさ”と、どこかしら聴いた後に残る“爽快感”にある。朝や午前中に聴けば、爽快な午後を迎えられること間違いなし、というのが個人的な感想でもあったりする。[収録曲]1. The Song Is You2. I’ll Close My Eyes3. The Imposter4. Seven Steps To Heaven5. In The Now6. My Little Suede Shoes7. Everytime We Say Goodbye8. Memories of You[パーソネル、録音]Ryan Kisor (tp)Peter Zak (p)John Webber (b)Joe Farnsworth (ds)2000年11月14日録音。 【送料無料】 Ryan Kisor ライアンカイザー / KisorII 【CD】↓こちらは廉価再発版↓ 【送料無料】 CD/ライアン・カイザー/カイザーII (初回生産限定盤)/VACZ-1506下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年04月12日
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東海岸の名手たちとのハードな共演 チェット・ベイカー(Chet Baker)と聞いて思い浮かべるのは、西海岸(ウェスト・コースト)ジャズらしい爽やかなトランペットの調べ、優しい雰囲気のするバラード演奏、あるいは、甘く官能的なヴォーカルというのが、一般的なところだろうか。そのイメージからすると、だいぶかけ離れた印象を与える1枚が、この『チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク(Chet Baker in New York)』というアルバムである。 タイトルが示す通り、ニューヨークでの録音で、内容としては東海岸で活躍するプレーヤーたちとの共演。中でも、クインテットとなってジョニー・グリフィンが加わっている演奏を聴くことができ、それらの演奏ではグリフィンの存在感の大きさが目立つ。当時のグリフィンは、ちょうどブルーノートからリバーサイドへと活躍の場を移した頃で、こちらの盤なんかも本盤と同じ年の録音である。その他の曲はカルテット編成で、アル・ヘイグ(ピアノ)のほか、ポール・チェンバース(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)という、いかにも東海岸ハードバップ的な面々による演奏となっている。 いきなり話が飛んでしまうが、本盤を聴いて思い出す有名盤がある。アート・ペッパーの『ミーツ・ザ・リズム・セクション』である(メンバーも、ベースとドラムが共通だったりする)。西海岸のハンサム・ボーイだったアート・ペッパーは、当時のマイルス・デイヴィスのグループのメンバーを借りて録音を行ったわけだが、それこそ緊張感がみなぎっていて、録音に当たっては、ビビりまくったペッパーがヤクを打ってからレコーディングに臨んだなんて逸話がある。チェットの気合の入りようもこれに近かったのかもしれない。“ハードな”東海岸組のメンバーは彼らの流儀でこのセッションに臨んだのだろう。それに対する“クールな”西海岸側のチェットの反応はというと、無理に合わせることもなく彼らしさを見事に出すことに成功している。元の盤のライナーにあるように、最終的には演奏スタイルや全体の雰囲気で西と東に分けることの無意味さに行きつかざるを得ない。 収録曲の中でもとくにお薦めは、飄々とした感じのチェットのトランペットが心地よい1.「フェア・ウェザー」、適度な緊張感が最後まで維持される3.「ホテル49」、名曲の名演とも言えそうな6.「ホエン・ライツ・アー・ロウ」。ジョニー・グリフィンの全体的には控え気味のテナーが、チェット・ベイカーのトランペットとうまく絡んでいるのも印象に強く残る。[収録曲]1. Fair Weather2. Polka Dots & Moonbeams3. Hotel 494. Solar5. Blue Thoughts6. When Lights Are Low7. Soft Wind (CD追加曲)[パーソネル、録音]Chet Baker (tp)Johnny Griffin (ts)Al Haig (p)Paul Chambers (b)Philly Joe Jones (ds)1958年9月録音。 【Aポイント+メール便送料無料】チェット・ベイカー チェット・ベイカー / チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク[+1][CD]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年04月10日
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ツボにはまるとやめられなくなるテナー ハロルド・ランド(Harold Land)は、1928年生まれのテナー・サックス奏者(2001年没)。生まれはテキサス州ヒューストンだが、幼いころにカリフォルニア州サン・ディエゴに移って育ち、ずっと西海岸を拠点として活動した。サイドマンとしては、クリフォード・ブラウン=マックス・ローチのクインテット(参考過去記事(1) ・(2) )への参加でも知られる。 リバーサイド系列のジャズランド・レーベルの吹き込みであるこの『ウェスト・コースト・ブルース(West Coast Blues!)』は、その名が示すように西海岸(サンフランシスコ)での録音。本盤の演奏者の組み合わせは、東海岸から西海岸へツアーに来たピアノ・トリオに、現地のミュージシャン(ハロルド・ランド、ウェス・モンゴメリー、ジョー・ゴードン)を加えたものである。 だからといって西海岸=クール・ジャズみたいなイメージではない。ハロルド・ランドは個人的に結構好みなのだが、その素性を知らない人が聴いて“西海岸だ”と思うようなタイプではない。時に陰鬱ですらあり、全体として重さを感じるテナー演奏がこの人の魅力になっている。彼のテナーという点に絞れば、本盤の中では、1.「ウルスラ」、3.「ドント・エクスプレイン」、4.「ウェスト・コースト・ブルース」が特に気に入っている。 他方、上のような言い方だと、暗くて重いのは聴きづらいという印象を与えてしまうかもしれないが、実際にはウェス・モンゴメリーの参加によってその印象は全く違ったものになっている。彼のギターが随所で“一服の清涼剤”となっていて、重さに対する軽やかさや滑らかさの役割を担っている。その意味では実に巧妙な緩急のついた盤とも言えるかもしれない。ハロルド・ランド盤は決して多くなく、その中でも筆者自身はいくつかしか知らない。けれども、過小評価されてきたサックス奏者というのはその通りなのだろう。いつかすべての吹き込みを聴いてみたいと思っている演奏者の一人だったりする。[収録曲]1. Ursula2. Klactoveedsedstene 3. Don't Explain4. West Coast Blues 5. Terrain6. Compulsion[パーソネル・録音]Harold Land (ts)Wes Montgomery (g)Joe Gordon (tp)Barry Harris (p)Sam Jones (b)Louis Hayes (ds)1960年5月17日(5.,6.)、18日(1.~4.)録音。 【楽天ブックスなら送料無料】【輸入盤】West Coast Blues [ Harold Land / Wes Montgomery ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年04月07日
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地味なんだけど、落ち着いて聴くとそのタッチに惹き込まれて… ケニー・ドリュー(Kenny Drew)というピアニストは、少なくとも60年代に入って欧州に活動拠点を移すまでは個性の割に目立たない、損な役回りの奏者だった。 “通好み”と言われたりするが、それは裏を返せば、“一般受けしにくい”ということでもある。その理由は何だったのだろうと考えてみたりする。本盤『パル・ジョーイ(Pal Joy)』なんかは、その理由が少しわかる気がする盤であったりするように思う。 楽曲的には、アルバム表題と同名のミュージカル(1940年初演で1950年代には繰り返し上演のほか映画化もされた)の楽曲をトリオ演奏しているもの。吹き込みは1957年10月で、上記映画(リタ・ヘイワースとフランク・シナトラが出演)の発表とほぼ同じ時期に録音がなされたことになるが、収録曲のセレクションはフィルム・バージョンと連動していたとのこと(ただし、本盤がLPリリースされたのはその2年後だった)。 でもってその演奏内容はというと、…確かに“地味”なのである。テクニックよし、スウィング感よし、甘さもあり…と申し分ないピアノ演奏で、バックもウィルバー・ウェア(ベース)にフィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)と安定感抜群。なのに地味にきこえるのは何故だろうか。 ケニー・ドリューの演奏に影があるというのは確かにそうかもしれない。少し引きずるような重さを残したノリがそんな印象を与えるのだろう。やがて彼は人種差別に嫌気がさして活動の場をヨーロッパへ移し、そこで“受ける”ことになったわけだけれど、確かに、既存の米国のジャズのイメージの中で評価されるよりも、もう少し広い(欧州の場合のようにクラシックの素養も含めた)範囲の中での方が評価されやすい演奏者ということだったのかもしれない。さらりと流れるのではなく、どこか引っかかりながら流れていくピアノのタッチ。気を落ち着けて聴くと最高だと個人的には思うのだけど、それにしても本盤は全体の印象もジャケットも地味すぎて損をしているといったところだろうか…。[収録曲]1. Bewitched, Bothered and Bewildered2. Do It the Hard Way3. I Didn't Know What Time It Was4. Happy Hunting Horn5. I Could Write a Book6. What Is a Man?7. My Funny Valentine8. The Lady Is a Tramp[パーソネル、録音]Kenny Drew (p), Wilbur Ware (b), Philly Joe Jones (ds)1957年10月15日録音。 【送料無料】JAZZ THE BEST 142::パル・ジョーイ [ ケニー・ドリュー ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2014年03月04日
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スウィング期の3大テナー奏者の繊細さと叙情 ベン・ウェブスター(Ben Webster)というテナー奏者は、決して取っつきやすくはないかもしれない。けれど、ひとたびその虜になると抜け出しにくくなる、きっとそういうタイプの奏者なんだろうと思う。 彼は1909年カンザスシティに生まれ、1930年代にデューク・エリントンやその他いくつかの楽団で演奏し、1940年代からソロイストとしての名声を確立していった。“ザ・ブルート”の愛称で呼ばれ、1973年に亡くなっている。ソロ楽器としてのテナーサックスの地位が確立されていった時期に活躍した奏者で、コールマン・ホーキンス、レスター・ヤングと並んでスウィング期の3大テナー奏者と言われたりもする。 本盤『ソウルヴィル(Soulville)』は彼の代表作の一つとされ、オスカー・ピーターソンのピアノ・トリオを基本にしたメンバーとの演奏。とにかくウェブスターのテナーの“歌”が堪能できる一枚である。はまってしまいがちな点は、端的には、この“すすり泣き具合”、そして、一音一音の繊細さ。哀愁ある独特の細やかな節回しの演奏である。これが筆者的には何ともクセになる部分で、中毒性がある。キャリア後半になってウェブスターは特にこの側面に磨きをかけていった。本盤所収曲の中からいくつかお気に入りを挙げると、1.「ソウルヴィル」、3.「タイム・オン・マイ・ハンズ」、4.「恋人よ我に帰れ」、7.「イル・ウィンド」。いずれも細やかさが際立っている。 これがウェブスターのすべてだ、などと言ったならば、熱心なファンからはお叱りを受けるかもしれない。“ブルート”の名が示すように荒々しいプレイも彼の身上で、それもまた魅力であるのはその通りである。でも、筆者の最初の印象とそれがツボにはまった具合から、今回はこの盤(本盤は個人的にたまたま最初に聴いたウェブスター盤の一つでもあった)を取り上げてみた。さらなる機会を見つけて、今後、他の盤も取り上げていきたいと思う。[収録曲]1. Soulville2. Late Date3. Time on My Hands4. Lover, Come Back to Me5. Where Are You?6. Makin' Whoopee7. Ill Wind[パーソネル、録音]Ray Brown (b), Herb Ellis (g), Stan Levey (ds), Oscar Peterson (p), Ben Webster (ts)1957年10月15日録音。 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】ソウルヴィル+3/ベン・ウェブスター[SHM-CD]【返品種別A】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2014年03月02日
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初リーダー・セッションを含む初期の軽快なドナルドソン節 ルー・ドナルドソン(Lou Donaldson)は1926年生まれで、85歳となった現在も存命中のアルト・サックス奏者。米国ノース・キャロライナ生まれで、徴兵期間があったものの、1950年代初頭からニューヨークに出てきて、1952年にミルト・ジャクソンやセロニアス・モンクの吹き込みに参加。その後、同年からリーダーとして作品を録音し始めている。 本盤に収録されているのは、まず、1952年6月20日の初リーダー・セッションとなったカルテットの吹き込み。続いて11月19日には、トランペット奏者のブルー・ミッチェルを含めたクインテットの録音を行っている。その後、翌年にはまだ新人だったクリフォード・ブラウンとの吹き込みを残しているが、こちらの方は本盤には収録されていない。さらに翌年の1954年8月22日には、今度はトランペッターにケニー・ドーハム、さらにトロンボーンのマシュー・ジーを迎えてセクステット(6人組)の録音を行った。これらの録音は、元々は10インチ盤2枚としてリリースされたが、12インチ時代に入って一部をカットして1枚にまとめられた。その結果が本盤『ルー・ドナルドソン・カルテット・クインテット・セクステット(Lou Donaldson Quartet/Quintet/Sextet)』というわけである。 ドナルドソンは“パーカー派”なんて言われたりもするが、元々はソニー・スティットをかなり意識していたようで、後からチャーリー・パーカーも聴いて影響を受けたらしい。まあ、どちらにしても、スタイルが似ているのだけれど、先達の影響を既にいい意味で消化していると思える演奏が並ぶ。全体にビ・バップ感がいい感じで漂っているのが大きな特徴とでも言えそうなところ。 聴きどころとして筆者のお薦めは、まずはクインテットでの演奏の1.「イフ・アイ・ラヴ・アゲイン」。ブルー・ミッチェルのトランペットをフロントに据えた好演奏で軽快さが心地よい。3.「ザ・ベスト・シングズ・イン・ライフ・アー・フリー」はルー・ドナルドソンのアルトの“滑らかさ”が存分に発揮された好演奏。同様のことは、4.、5.、8.のカルテット演奏にも言えると思う。セクステット(6人組)での演奏の7.、9.、10.は全体に楽器の種類も多く華やかだけれど、何よりもドナルドソン自身のブルージーで、かつ流れるようなアルト・サックスのプレイが聴きどころとなっている。 全体として、“何気なく流れていく演奏に耳を奪われる”というのが本盤の特徴と言えそうに思う。後の粘っこさの片鱗があるけれど、どちらかと言えば“軽快に流れるプレイ”という印象に近い。そのようなわけで、聞き流そうと思えばそうなってしまうかもしれない盤でもある。けれども、軽快さとプレイの味を注視すれば、何とも心地の良い一時を過ごすことができる。派手な名盤や名演奏というわけではないかもしれないが、こういう楽しみ方こそ、ジャズを聴いていて“楽しい!”と思える瞬間の一つだと思ってみたりもする。[収録曲]1. If I Love Again 2. Down Home 3. The Best Things in Life Are Free 4. Lou's Blues5. Cheek to Cheek6. Sweet Juice7. The Stroller8. Roccus 9. Caracas 10. Moe's Bluff[パーソネル、録音]Lou Donaldson (as)Blue Mitchell (tp, 1.~3.、6.)Kenny Dorham (tp, 7.、9.、10.)Matthew Gee (tb, 7.、9.、10.)Horace Silver (p., 1.~6.、8.)Elmo Hope (p., 7.、9.、10.)Gene Ramey (b, 4.、5.、8.)Percy Heath (b, 1.~3.、6.、7.、9.、10.)Art Taylor (ds, 4.、5.、8.)Art Blakey (ds, 1.~3.、6.、7.、9.、10.)1952年6月20日(4.、5.、8.)、1952年11月19日(1.~3.、6.)、1954年8月22日(7.、9.、10.)録音。 ブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2014年02月27日
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ちょっと不思議なサックス奏者の代表盤 ウォーン・マーシュ(Warne Marsh)は、1927年ロサンゼルス出身のテナー・サックス奏者。1950年代にレニー・トリスターノの教えを乞い、主要な吹き込みを行ったほか、1970年代にはスーパーサックス(Supersax)にも参加したが、1987年にステージ上で演奏中に倒れそのまま帰らぬ人となった。 これまで本ブログでは『アート・ペッパー・ウィズ・ウォーン・マーシュ』や『リー・コニッツ・ウィズ・ウォーン・マーシュ』を紹介しているが、本盤も同じ50年代後半のもので、1957年末と翌年初頭に録音されたもの(厳密にはコニッツとの共演盤は1955年、ペッパーとのそれは1956年に吹き込まれている)で、しばしば彼の代表盤として名が挙げられる作品である。 ウォーン・マーシュの不思議なところは、毎日聴くと飽きそうだけれど、たまに引っ張り出して聴くと実に心地いいという点にある。褒めているのかけなしているのかよくわからない言い方だが、正直、これが本心といったところ。同じサックスでもその演奏の仕方は一様ではなく、個性がある(いや、それは当たり前)。いやはや、個性があっていいのは当たり前で、型にはまろうという気配がないのはこの人の演奏面での特徴の一つとも言える。 2曲がカルテット演奏で、残りはトリオ。レニー・トリスターノの“コード進行に基づくアドリブの可能性を追求”というテーマを追い求めつつ、吹きたい放題に吹いているようで、なおかつ掴みどころのない彷徨い方の不思議なサックス。ストレートに入ってくるというよりは身をよじりながらようやく聴き手に届いている感じのメロディ。これがたまに聴くと何とも心地よい。[収録曲]1. Too Close For Comfort2. Yardbird Suite3. It's All Right With Me4. My Melancholy Baby5. Just Squeeze Me6. Excerpt[録音・パーソネル]Warne Marsh (ts)Ronnie Ball (p, 1. & 3.)Paul Chambers (b)Philly Joe Jones (ds, 1. & 3.)Paul Motian (ds, 2. & 4.-6.)1957年12月12日(1., 3.)、1958年1月16日(2., 4., 5., 6.)録音。 【送料無料】JAZZ BEST COLLECTION 1000::ウォーン・マーシュ [ ウォーン・マーシュ ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年02月10日
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特異な輝きを放つサックス奏者の個性 フランク・アンソニー・モンテローズ・ジュニアは、1927年デトロイトに生まれたイタリア系米国人のサックス奏者。“ジュニア”を前にもってきて、J・R・モンテローズ(この理由からJRと続けて表記されることもある)と呼ばれる。個性的プレイで知られ、1993年に66才で亡くなっている。 彼にとって唯一のブルーノートでのリーダー作の本盤は、1500番台の中で実に特異な輝きを放っていると思う。白人系プレイヤーだからというだけでなく、演奏そのものが既に(この1956年の吹き込み時点で)ビバップどころかハードバップのその先を見据えている。“出たとこ勝負”とは真逆の、“入念に準備された演奏”であることは、この盤を一聴すれば、すぐに気づくだろう。もちろん、予定調和とかいう悪い意味ではない。アルフレッド・ライオンがミュージシャンに提供したリハーサルの機会が功を奏した完成度の高さという意味においてである。 その中で強烈に個性が発揮される。全体の演奏からはっきりと浮かび上がってくるテナーのカッコよさ。トランペットを加えた二管編成は完成度と聴きやすさ(とっつきやすさ)の源になっている。収録曲の半分がオリジナルで、もう半分は自作以外の曲だが、本人曰く“自分の曲ばかりにすると自分だけのサウンドになる”と考えたからとのこと。十分個性的なのだから、そのまま突っ走っても悪くなかったような気もするが、性格はリーダー向きではなかったということなのだろうか…(なお、サイドマンとしても『カフェ・ボヘミアのケニー・ドーハム』をはじめいい演奏を残している)。 話は唐突に現代の時事問題へと飛ぶのだけれど、昨今の大学入試の改革の話で“個性のある入学生選抜”とかいう不思議な話が出ている。“みんなちがってみんないい”なんて言われるけれど、その中で強い個性を発揮できる人もいればそうじゃない人もいる。J・R・モンテローズみたいな強烈な個性(それは、選ばれし者たちが吹き込みをしているジャズの世界の中で、さらに輝きを放つほどの飛び抜けた個性!)があればともかく、なくても無理やり“成功体験”を語らせられる就活生のように、今度はありもしない個性を無理やり高校生が語らせられるとしたら…?これから成長していく子どもたちがあまりに可哀想な気もするのだけれど。[収録曲]1. Wee-Jay2. The Third3. Bobbie Pin4. Marc V5. Ka-Link6. Beauteous7. Wee-Jay (別テイク) ←CD追加曲[パーソネル・録音]J. R. Monterose (ts)Ira Sullivan (tp)Horace Silver (p)Wilbur Ware (b)Philly Joe Jones (ds)1956年10月21日録音。 【送料無料】【輸入盤】Jr Monterose (24bit) [ J.R. Monterose ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年02月03日
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絶対に聴くべし、「ザ・チャンプ」の名演 先に取り上げたジミー・スミス(Jimmy Smith)の『ア・ニュー・サウンド・ア・ニュー・スター~ジミー・スミス・アット・ジ・オーガンVol. 1』の続編が、この『ザ・チャンプ(A New Sound-A New Star: Jimmy Smith at the Organ, Volume 2)』という作品である。邦題だけを見ると別物のように思われるかもしれないが、原題を見れば、デビュー作と同じタイトルのパート2となっているのがわかる。 今の時代の感覚からすれば信じられないことかもしれないが、ジミー・スミスの最初のレコーディングからわずか1か月ほど後、ブルーノートは次の録音を行っていた。つまりは、先に録音した分がまだ発売すらされていない段階で、次なる作品を準備し始めていたわけである。普通なら、1枚目の反応(聴衆の間での受容度や人気具合、はたまた売れ行き)を見定めつつ、第2集を作るというのが“常識”だろうし、いまどきのレコード会社ならどこだって1枚目の売れ行きも分からないのに2枚目を出すような愚は行わないだろう。けれども、当時のブルーノート(というかアルフレッド・ライオン)は違っていた。よほど気に入っていたのか、はたまた売れるという確信が相当にあったのか、思い切ったレコーディングを進めた。 結果、ジミー・スミスはブルーノートの不動の売れっ子となった。1500番台として知られるシリーズ(大雑把に言って1501~1600番までの100枚だが、厳密には出なかったアルバムもあるので実際のところはそれより数枚少ない)のうち、何と13枚ものリーダー盤を残すことになった。100枚足らずのうちの13枚とは相当な比率であり、いかに売れっ子だったかが容易に想像できるだろう。さらに、それらのアルバム作品からは、これまた20枚ものシングル盤(45回転盤)が出され、ジュークボックスを賑わすこととなった。 本盤のベストは文句なしに1.「ザ・チャンプ」の名演。時間にして8分を超えるこの演奏は、半分に割ってまでシングル盤にも収録されたほどの、熱のこもった演奏である。“これがすべて”などと言うつもりは毛頭ない。でもやっぱり、これを聴かずしてジミー・スミスを語れないぐらいの名演とだけは言いたいと思う。[収録曲]1. The Champ2. Bayou3. Deep Purple4. Moonlight In Vermont5. Ready 'N Able6. Turquoise7. Bubbis[パーソネル、録音]Jimmy Smith (org), Thornel Schwartz (g), Bay Perry (ds)1956年3月27日録音Blue Note 1514 駿河屋なら各種キャンペーンにエントリーするとポイント5倍以上!【中古】ジャズCD ジミー・スミス/Vol.2~ザ・チャンプ【05P17Jan14】【画】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2014年01月25日
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意図的な無計画性が成功の秘訣? ジョニー・グリフィンは、1928年シカゴ出身のテナー・サックス奏者。1950年代後半から1960年代前半にかけてとりわけ多くの録音があり、その後1980年代~90年代にいたるまで作品を残しているが、2008年に80歳で亡くなっている。 以前、『ザ・コングリゲーション』や『ザ・ケリー・ダンサーズ』を取り上げた際にも触れたように、グリフィンの魅力はただパワフルでスピードあふれるブロウにあるわけではない。特に初期の作品で印象が強いそうした部分も魅力ではあるけれど、いい具合にリラックスした感じが入って初めて“偉大なサックス奏者”と言えそうな気さえする。 その意味では、典型的にハードバップ的なセッションでありながら、表題が示すとおりの、どこかリラックスした雰囲気をもった1枚がこの『スタジオ・ジャズ・パーティー(Johnny Griffin’s Studio Jazz Party)』という盤。録音場所はニューヨークのスタジオなのだけれど、招待客(知り合いのミュージシャンや友人、その他の人たち)を聴衆として入れ、司会者(バブズ・ゴンザレス)を用意してパーティ仕立ての雰囲気で録音されている。 実際、1.「パーティ・タイム」と題された最初の短いトラックは、バブズ・ゴンザレスのマイク・パフォーマンスで、クラブでのライヴ風セッションの幕開けとなる。このMCから続けて2.「グッド・ベイト」は、グリフィンによるゆったりとしたテンポのテーマに始まる。次第にテンポを上げていきリラックスした雰囲気のまま展開されるアドリブは演奏内容だけでなく観客の盛り上がりも含め本盤の聴きどころになっている。 他の収録曲を聴いても同様のリラックス感を感じさせるものが多いのだが、このリラックス具合はどう演出されたのだろうか。ライナーでジョニー・グリフィン自身が明かしているところでは、小コンボでのブロウイング・セッション的演奏が好きで、あえて事前準備なしにソロを聴かせるこのスタイルに拘った。こうした“段取りされた無計画性”を考えた時、3.「ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー」のテナー・ソロなんかは実によくできた演奏のように思える。無計画に(?)アドリブ演奏が繰り広げられるセッションという雰囲気を意図的に作っていた訳である。[収録曲]1. Party Time2. Good Bait3. There Will Never Be Another You4. Toe-Tappin'5. You've Changed6. Low Gravy[録音、パーソネル]Johnny Griffin (ts), Dave Bums (tp), Norman Simmons (p), Victor Sproles (b), Ben Riley (ds), Babs Gonzales (MC)1960年9月27日録音。 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2014年01月17日
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オルガン・ジャズ第一人者のデビュー盤 ジミー・スミス(Jimmy Smith)は、1925年(1928年説もあり)ペンシルヴェニア出身のジャズ・オルガン奏者。1950年代半ばから2005年に亡くなるまで、半世紀近いキャリアを重ねたが、その最初期のアルバムがブルーノート・レーベルのこの『ア・ニュー・サウンド・ア・ニュー・スター~ジミー・スミス・アット・ジ・オーガンVol. 1(A New Sound-A New Star: Jimmy Smith at the Organ, Volume 1)』である。 元々、ジミー・スミスは父親のクラブ周りに子供の頃から加わっていた。そこでピアノも覚えたという。加えて、その頃のピアノと踊り(タップダンスをしていたらしい)が後に訪れる転機のベースになったと言われる。1950年代に入り、彼は、オルガン奏者ワイルド・ビル・デイヴィスの演奏を聴き、オルガンに目覚めたとのこと。借金をしてハモンドオルガンを手に入れた後は、水を得た魚の如く、その演奏に磨きをかけていく。ハモンド・オルガンを弾くには、鍵盤楽器なのだから、ピアノの能力がそのまま生かされるというのは想像される通りだろう。けれども、オルガン演奏には“脚”も必要である。踊りの経験はおそらくそのままオルガン演奏に生かされることになったということになったようだ。 そんな中、折しもブルーノートは名作群を世に送り出していこうという時期を迎えていた。1956年1月にジミー・スミスがニューヨークで初出演を果たすと、アルフレッド・ライオンとフランシス・ウルフは早速、この男のレコーディングを企図する。所謂“1500番台”の展開とぴったりと歩調があうことになったのが、この当時の彼であった。次々と吹き込まれ発売されていくオルガンによるジャズが世間の注目を集めるようになり、ジミー・スミスはオルガン奏者の代表としての立場を築き上げていくことになる。 とまあ、このような経緯で最初に録音されたのが、ブルーノートからの本デビュー作であったが、当時の聴き手にとっては、とにかく“びっくり玉手箱”的な音楽だったことだろうと想像する。ベースの部分もオルガン、メインでメロディを聴かせるのもオルガン、組み合わされているのはギターとドラム。3人編成にしてこの音の隙間のなさであるから、ジミー・スミスのオルガンの働きぶりがどれほどのものかがよくわかる。なるほど、マイルス・デイヴィスの“世界8番目の不思議”という評ほどこの驚異を的確に表しているものはないと言えるのかもしれない。[収録曲]1. The Way You Look Tonight2. You Get 'Cha3. Midnight Sun4. Oh, Lady Be Good!5. The High and the Mighty6. But Not for Me7. The Preacher8. Tenderly9. Joy[パーソネル、録音]Jimmy Smith (org), Thornel Schwartz (g), Bay Perry (ds)1956年2月18日録音Blue Note 1512 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】【送料無料】[枚数限定][限定盤]ア・ニュー・サウンド・ア・ニュー・スター/ジミー・スミス[SHM-CD]【返品種別A】 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2014年01月15日
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起伏を楽しむホーン入りガーランド盤 レッド・ガーランド(Red Garland)は、マイルス・デイヴィスのクインテットのメンバーとして広く知られ、1955~58年までその一員だった。そのおかげで、1956~62年にかけてプレスティジやジャズランドといったレーベルに次々と録音を残す。その後、いったん引退してから70年代後半に復帰したものの、1984年に心臓発作で亡くなっている。 プレスティジ系の彼の吹き込みを見渡してみると、25枚のうち19枚がトリオでの吹き込み。名盤としてよく名が挙げられる『グル―ヴィー』を始め、本ブログでこれまで取り上げたところでは、初リーダー作の『ア・ガーランド・オブ・レッド』、個人的にお気に入りの『レッド・イン・ブルースヴィル』や『ブライト・アンド・ブリージー』など、トリオ演奏の印象が強い。けれども、トリオ盤を吹き込む一方で、管楽器を取り込んだ盤も残し、特にジョン・コルトレーン(テナー・サックス)とドナルド・バード(トランペット)をフィーチャーしたクインテットの一連のレコーディングがある。 本盤『ハイ・プレッシャー(High Pressure)』は、そちらの方の代表作。このメンバーでガーランドは、1957年11月15日と同年12月13日にまとめて録音を行っており、この盤では両日から5曲が収録されている。なお、この同じメンバーでは『ソウル・ジャンクション』があるが、そちらの方は11月15日の録音が収められている。実は、この2日間のセッションは、マイルスの“マラソン・セッション”みたいに、後でアルバムとして編集されることになるいわば“録りだめ”のレコーディングだった。前年のマイルスの2日間の吹き込みは、“契約の消化”という側面があったものの、レッド・ガーランドの録りだめにはどうやらそういう理由はなかったようだ。つまりは、純粋にイケるメンバーが揃い、ここぞとばかりにまとめて録音をしたということなのだろう。 実際のところ、本盤の内容はと言うと、決して衆目を集める盤ではないかもしれないが、“これぞハードバップ”なお見事な1枚。ジョン・コルトレーンは、この年、マイルスのグループを抜けた後、モンクのもとで研鑽を積み、初リーダー作を吹き込んで、独自のサウンドとスタイルを確立していったというまさに変化と昇り調子の時期。コルトレーンが“神の啓示をうけた”と語っているのがこの年の7月、そして、『ブルー・トレイン』を吹き込むのが9月で、その数ヵ月後が本セッションであった。他方、トランペット奏者のドナルド・バードも伸び盛りの時期で、この年はジジ・グライス(アルト・サックス)とのグループを結成していた。翌年からはブルーノートの吹き込みを開始し、59年の名盤『フエゴ(フュエゴ)』へと向かっていく。 トリオ盤との違いは、大きく言うと、やはりその起伏にあるように感じる。1.「ソフト・ウインズ」はアップテンポで、2.「ソリチュード」はエリントンのバラード。これだけでも起伏は十分にあるけれど、さらに、5.「トゥー・ベース・ヒット」では期待通りに(?)コルトレーンが突っ走っていく。単にガーランドのピアノを楽しむという発想ではなく、トランペット(D・バード)にサックス(J・コルトレーン)入りのピアノ・トリオを楽しむと考えて聴く方がいいだろう。二人のハードバップを体現する、想像力あふれるソロの合間をガーランドのピアノが転がっていく。ブローイング・セッションと形容するほどの激しさはないけれど、“やっぱりジャズっていいね”というセリフに落ち着く、実に好演奏が繰り広げられている。[収録曲]1. Soft Winds2. Solitude3. Undecided4. What Is There to Say?5. Two Bass Hit[パーソネル、録音]Donald Byrd (tp) John Coltrane (ts) Red Garland (p) George Joyner (b) Art Taylor (d)3.、4.: 1957年11月15日録音1.、2.、5.: 1957年12月13日録音 【当店専用ポイント(楽天ポイントの3倍)+メール便送料無料】RED GARLAND / HIGH PRESSURE (輸入盤CD)下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年01月13日
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ブルーノートでの第1作に見る新たな地平 ニューヨーク出身のアルト・サックス奏者、ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)は、若いうちからレコーディングの機会を得て、例えば1951年には20歳そこそこでマイルス・デイヴィスの『ディグ』の録音にも参加している。1950年代半ばからはリーダー作も吹き込み、主にプレスティジに次々と録音を行って作品を発表している(過去記事(1) ・(2) )。そして、プレスティジとの契約が切れた後の1959年からはブルーノートと契約し、このレーベルで作品の吹き込みを行うようになる。同年1月には早速ブルーノートでの初リーダー・セッションが録音されているが、この音源はすぐには作品にはならなかった(後に『ジャッキーズ・バッグ』のA面3曲となる)。 本盤『ニュー・ソイル(New Soil)』は、その数か月後(1959年5月)の録音。結果的には、このセッションがブルーノートからリリースされたマクリーン第1作となった。それまでのレコーディングと、ブルーノートでのレコーディングには大きな変化があった。『ニュー・ソイル(新しい地)』というタイトルは、本人曰く、彼のキャリアの大きな変化となる節目を示している。続けてマクリーン自身が語っているように(本盤ライナー参照)、ブルーノートでは長期間のリハーサルが与えられ、いきなりの本盤ではなく、5週間の準備期間の上にレコーディングがなされた。 その結果、この考え込まれ精緻さを増した演奏の質につながっているのだろう。良くも悪くも“出たとこ勝負”なのではなく、細部の緻密さのレベルが格段に高く、見事な完成度を誇る盤になっている。5週間というリハーサルを有効に活用したマクリーンも素晴らしいが、そもそもこれを用意したブルーノート(アルフレッド・ライオン)側はさらに素晴らしい見通しを持っていたのだろう。本作が吹き込まれた1959年というのは、ジャズの転換期を示す重要な年となった。マイルスの『カインド・オブ・ブルー』しかり、コルトレーンの『ジャイアント・ステップス』しかり…。ハードバップの時代から次の新たなジャズの時代への胎動が進んでいた。マクリーンはそうした次のステージを見据え、従来の演奏・録音スタイルからの転換をうまく成し遂げた。 上述の精緻さと完成度はアルバム全体から感じられるが、あえて典型(かつ筆者のお気に入り)を挙げるならば、2.「マイナー・アプリヘンション」と5.「デイヴィス・カップ」。マクリーンが言うように“これまでとは違ったプレイ”を見せるドナルド・バードのトランペットとのアンサンブル、流れるように展開されるマクリーン自身のソロの本領がとりわけ発揮されている。さらに付け加えると、本盤で起用されたピアニスト(かつ半数以上の曲の作曲者)、ウォルター・デイヴィス・Jr.の活躍も見逃せない。本盤所収の演奏が間延びせずに流暢に展開していく上でこの人の存在はなかなか大きかったのではないだろうか。ちなみに、この数か月後、ウォルター・デイヴィス・Jr.もまたブルーノートでのリーダー盤(『デイヴィス・カップ』、ただしこの表題の曲は同盤ではなく本マクリーン盤に収録と少々ややこしい)を吹き込むことになる。[収録曲]1. Hip Strut2. Minor Apprehension3. Greasy4. Sweet Cakes5. Davis Cup6. Formidable(CD追加曲)[パーソネル・録音]Jackie McLean (as)Donald Byrd (tp)Walter Davis Jr. (p)Paul Chambers (b)Pete La Roca (ds)1959年5月2日録音。Blue Note 4013 【送料無料】【輸入盤】New Soil (Hyb) [ Jackie Mclean ]↓通常(廉価)版↓ 【当店専用ポイント(楽天ポイントの3倍)+メール便送料無料】ジャッキー・マクリーンJACKIE MCLEAN / NEW SOIL (輸入盤CD) (ジャッキー・マクリーン) 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2014年01月03日
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哀愁たっぷり本領発揮の名ピアノ盤 ソニー・クラーク(Sonny Clark)と言えば、米国ではともかく本邦では一世を風靡した大人気の『クール・ストラッティン』があるだけに、ついついその陰にかくれがちな名盤の一つがこのタイム盤『ソニー・クラーク・トリオ(Sonny Clark Trio)』。陰にかくれがちと言っても、ジャズ・ファンの間では有名な盤の一つなわけで、要するに、名盤ガイド類などになるとどうしても1枚に的を絞らざるを得なくなってついつい後回しにされるという感じ。上記のような有名盤があると致し方ないのだろうけれど、それにしてもたまにしかそうした場で取り上げられないというのはもったいない。彼のリーダー作は、確かにホーン入りの編成もよい(さらにサイドマンとしての参加盤も魅力的なものが多い)のだが、ピアノ・トリオでもじっくり聴きたいとなると、さらに選択肢は増える。そんな中で、推奨盤かつ個人的お気に入りの一つが本盤である。 ちなみに、『ソニー・クラーク・トリオ』というタイトルの作品は2つ存在する。一つは1957年ブルーノートの吹き込み。そして、もう一つは1960年のタイム盤。今回取り上げるのは、後者のタイム盤の方である。前者がスタンダード系の選曲であるのに対し、本盤の方は全編オリジナルで占められている。1960年という録音年月はオフィシャルなものではそう書かれているが、1990年代の未発表テープ発掘の経緯から1959年1月の録音だったのではないかとの説もあるようだ。 さて、ソニー・クラークのピアノは、何といっても独特の引きずるようなタッチ、そしてとりわけマイナー調のもの悲しさが最大の特徴であり、魅力だとされる。1950年代途中まで西海岸で活動してから、57年に東海岸へ移り、そこから1~2年の間に、ヒットにこそ結びつかなかったもののブルーノートでは破竹の勢いで録音を行った。本『ソニー・クラーク・トリオ』の頃には、既に複数のリーダー盤やその他の吹き込みを行っていたわけなので、若々しく意気揚々と、というよりは既に経験を積んだピアニストとしての風格が出てきているように思う(とはいえ、この数年後、1963年にヘロインの過剰摂取で31歳でその生涯を終えている)。 捨て曲なしの名盤なので、お気に入りをピックアップするのは意味がないと言われそうだけれども、敢えていくつか挙げてみたい。1.「マイナー・ミーティング」からしてソニー・クラークの本領発揮と言えそうな演奏。ピアノのタッチは粘り気があり、哀愁に満ちている。この典型的な彼のイメージを念頭に置くと、3.「ソニーズ・クリップ」、6.「ジャンカ」、8.「ソニア」といったところが聴きどころになってくるのではないだろうか。そうは言っても、ただだらだらともの悲しさの漂うピアノに酔いしれる、といった発想だけで聴くのではあまりにもったいない。2.「ニカ」の余裕を持った曲展開のスケール(別テイクではブラシが目立っていてリズムはこっちの方がいいかもしれないが、ピアノは正式テイクの方がいいのでこちらが正式テイクだったのだろうか)、そして、7.の気迫あふれるピアノは、ソニー・クラークのステレオタイプなイメージとは違う側面を見せてくれる演奏だと感じる。 全体として、テーマからの展開も明瞭でピアノタッチもはっきりしているけれど、聴き手の“受け”を狙っているような感じは全くしない。ということは、こういう演奏こそが最もソニー・クラークのやりたかった、正直な演奏だったということではないだろうか。 余談ながら、ジャケットの絵はミノ・チェレッティ(1930年生まれのイタリアの画家)なる人の作品。ピアノを弾くソニー・クラークを描いたものなのか、それともここに使われているからピアニストに見えてしまうのか、真相は不明。けれども、本盤を聴きながらじっと見つめていると、自然とこのジャズ・ピアニストを描いた絵に見えてくるような気がするのだけれど…。[収録曲]1. Minor Meeting2. Nica3. Sonny's Crip4. Blues Mambo5. Blues Blue6. Junca7. My Conception8. Sonia(以下、再発時の追加未発表トラック)9. Nica –alternative take-10. Blues Blue –alternative take-11. Junca –alternative take-12. Sonia –alternative take-[パーソネル、録音]Sonny Clark (p)Max Roach (ds)George Duvivier (b)1960年3月23日録音。 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】【送料無料】ソニー・クラーク・トリオ+6/ソニー・クラーク[SHM-CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年12月26日
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強烈な個性で主張する女性ピアニストの代表盤 男性・女性とか白人・黒人とか、そういうレッテルで評価するのがいいとは思わない。だけれども、このドロシー・ドネガン(Dorothy Donegan)なんかを聴いていると、“これだから女流ピアニストはたまらない!”なんて思わず口走りたくなってしまう。似たようなパターンとしては、ユタ・ヒップ(参考過去記事)なんかもそうなんだけれど、女性ピアニストには何とも独自の世界を見事に発露する人がいるという印象に、結果落ち着いてしまう部分がある。 さて、このドロシー・ドネガンという人は、1922年シカゴ生まれで、1942年に初レコーディング。アート・テイタムの教えを受け、1996年にはようやく初来日しているものの、その2年後の98年に亡くなっている。そんな彼女の代表作とされるのが本盤『セプテンバー・ソング(September Song)』である。 正直、この盤を初めて聴いた時、筆者は吹っ飛ばされた(笑)。押しが強く、個性があるピアノ、というのが最初の印象だった。何度聴いてもこの評価は変わらない。日本における(しかも日本人が愛してやまない)ピアノ・トリオの評価は、しばしば“リリシズム”とか、“音の間”を大事にするような風潮に流れがちだけれど、ドロシーのピアノはどちらかというとその真逆の路線を行っていると言ってもよいかもしれない。すなわち、“これでもか”と言わんばかりに次々とたたみかけてくるスタイル。この強烈な個性がなぜか筆者のツボにははまってしまうのである。 彼女は、ライヴの際には歌も歌ったり、踊りながらピアノを弾いたりという、アクション系(というのだろうか…?)のアーティストだった。スタジオ録音である本盤の演奏は、そうした奇抜な行為はさすがにないけれども、このピアノ演奏だけでも十分に奇抜と言えるかもしれない。そのピアノははじけるように、かつ流れるように個性を主張しているように感じられる。 単なる“美しいピアノ演奏”に飽きて、何か個性的なものを欲する方には、ぜひこういうのを聴いていただきたい、と言いたくなるような印象的1枚である。[収録曲]1. I Can't Give You Anything But Love2. September Song3. Up a Lazy River4. Happiness is a Thing Called Joe5. St. Louis Blues6. Love for Sale7. Tenderly - Stella by Starlight8. Lullaby of Birdland9. Dancing on the Ceiling10. I Get a Kick Out of You[パーソネル、録音]Dorothy Donegan (p),不明 (b),不明 (ds)1955年録音。 【送料無料】JAZZ名盤 BEST & MORE 999 第4期::セプテンバー・ソング [ ドロシー・ドネガン ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年11月30日
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オルガンをバックにした粘度のあるテナー どうもジャズ(概してモダン・ジャズ)の聴き手というのは、保守的になりがちに思う。そんな中で、いかにも“後世受け”しそうな人は敬遠されるということが起きる。ドン・ウィルカーソン(Don Wilkerson)という人もそんな一人なのかもしれないと思ったりすることがある。 ドン・ウィルカーソンこと、ドナルド・ウィルカーソンは、生まれこそルイジアナだがすぐにテキサス州ヒューストンに移り、“テキサス・テナー”という呼称にまさしく合致する演奏を繰り広げたテナー奏者である(1932年生まれ、1986年没)。テキサスにやってきたレイ・チャールズの目に留まり、彼のバンドに参加したことからそのキャリアが始まり、やがてキャノンボール・アダレイから声がかかり、リバーサイドで初リーダー作(筆者は未聴)を録音。その後、ブルーノートと契約し3作を残すが、麻薬の不法所持で逮捕され刑務所行きとなる。 本盤『シャウティン(Shoutin'!)』はブルーノートでの3枚目で、最初のオルガン・トリオとの演奏盤。上述のような経緯で刑務所送りになった後の彼は、ヒューストンでプレイしていたそうだが、1986年に54歳で亡くなってしまった。何とも皮肉なのは、その死と入れ違うように、ロンドンのクラブシーンで“再発見”され、再評価が進んだという点。特に本盤はオルガンをバックにした演奏ということもあり、この再評価の流れの中で受け入れられやすかったのではないかと想像する。 実際、本盤の演奏は“ダンサブル”とも形容できるかもしれない。軽快でありながら粘度のあるテナー演奏が耳に残る1.「ムーヴィン・アウト」なんかはその典型だろう。アップテンポのブルースである2.「クッキン・ウィズ・クラレンス」は“べったり”なテナーが炸裂し、それを受けて途中で展開されるグラント・グリーンのギター・ソロ、ジョン・パットンのオルガン・ソロもいい緊張感を継続させている。4.「ハッピー・ジョニー」もオルガン・トリオ+テナーという編成を活かしてのスリリングな演奏だが、やはり吹きまくりのテナーが中心となっている。個人的に意外と好きなのが6.「スウィート・ケイク」で、シンプルなブルース・ナンバーをリラックスした雰囲気で演奏しているのだが、やはり粘度の高い、いわゆる“テキサス・テナー”的な演奏が、彼らしさをよく出していて、しかもオルガン演奏ともマッチしている。[収録曲]1. Movin' Out2. Cookin' With Clarence3. Easy Living4. Happy Johnny5. Blues for J6. Sweet Cake[パーソネル・録音]Don Wilkerson (ts)Grant Green (g)John Patton (org)Ben Dixon (ds)1963年7月29日録音。 Don Wilkerson / Shoutin 【CD】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2013年11月29日
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40万アクセス記念、いま聴きたいジャズ・ナンバー(其の10)~ジェリー・マリガン編 すっかり秋めいてというか、冬の足音が近づいてくる時期になりました。そんな日の夜に(いやはや別に昼間でもよいのですが)、静かに耳を傾けたいナンバーで最後は締めてみたいと思います。 全編に“クールな夜の雰囲気”が漂う1963年のジェリー・マリガン(Gerry Mulligan)盤『ナイト・ライツ』。表題曲もいいかなと思ったのですが、今回は別のお気に入り曲、2.「カーニヴァルの朝(Morning of the Carnival (Manhã de Carnaval))」です。 もともとは1959年の映画『黒いオルフェ』の主題歌としてブラジルのルイス・ボンファが作曲したもの(そのため、曲名自体「黒いオルフェ(Black Orpheus (Orfeu Negro))」と呼ばれることもあり)。サンバ曲で、要はラテン・ブラジル風の曲なわけですが、スタン・ゲッツをはじめジャズ界でも取り上げられる機会の多いナンバーです。 ジャズの世界でバリトン・サックスの地位確立にも大きな役割を担ったマリガンですが、とにかく吹けばよいというものではないというのが、このナンバー(それから収録アルバム全体)からはよく分かります。こういう抑え気味の雰囲気と繊細さ重視のマリガンは、編曲者・解釈者としての彼の才能の高さをつくづく再認識させてくれます。 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】ナイト・ライツ/ジェリー・マリガン[SHM-CD]【返品種別A】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2013年11月20日
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40万アクセス記念、いま聴きたいジャズ・ナンバー(其の9)~ケニー・バロン編 今回は、先頃紹介したばかりのアルバムから、超絶品と言っていいほどの名演奏を取り上げたいと思います。 ケニー・バロン・トリオの『ザ・モーメント(The Moment)』に収められた「フラジャイル(Fragile)」です。ケニー・バロン(Kenny Barron)は60年代から様々なジャズ奏者と共演し、自己名義作も数多く発表しています。 ロックファンは一聴しておわかりのように、この「フラジャイル」というのは、元ポリスのスティング(参考過去記事)の曲です(1987年作『ナッシング・ライク・ザ・サン』に収録)。80年代半ばにソロになってからのスティングの曲にはジャズ的な影響も垣間見られるので、ある種、ジャズ側から解釈するのにも適していると言えるのかもしれません。 他方、ケニー・バロンの方はというとナチュラルなタッチでさらりと弾きこなすように見えて絶対に真似できなさそうな個性があります。この曲では実にリリカルな情感たっぷりな演奏を披露していますが、テクニックだけでなくこのニュアンスはやっぱり他人には真似できなさそうですね。余談ながら、今年で70歳を迎え、春には来日ライヴもしていましたが、まだまだお元気なようです。 といったわけで、原曲よし、アレンジよし、演奏よし、と三拍子そろったお気に入り曲です。 【送料無料】【輸入盤】Moment [ Kenny Barron ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2013年11月18日
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40万アクセス記念、いま聴きたいジャズ・ナンバー(其の8)~ルー・ドナルドソン編 この晩秋にぴったりの1曲をいってみたいと思います。タイトルもずばり「秋の夜想曲」、つまり「オータム・ノクターン(Autumn Nocturne)」です。 この演奏を思い出したのは、先日、カサンドラ・ウィルソンの昔の盤(彼女の最初のスタンダード集『ブルー・スカイ(Blue Skies)』、1988年)を聴いていた時です。カサンドラによるこの曲が出てきたら、今度はルー・ドナルドソン(Lou Donaldson)のサックス演奏によるこれを思い出し、無性に聴きたくなったというものです。 この演奏は、ルー・ドナルドソンの代表作の一つ『ブルース・ウォーク』に収録されていて、ピアノのハーマン・フォスター(Herman Foster)がなかなかいい味を出しています。この二人のコンビは、こういうしっとりなはずの曲をやっても、どこかべったり(失礼!、でも、もちろんいい意味で)というか、粘っこさみたいなのが顔を出すように思います。何だか回りくどい言い方になってしまいますが、さらりと仕上がっていないところに逆に魅力がある、といった感じでしょうか。 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2013年11月17日
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40万アクセス記念、いま聴きたいジャズ・ナンバー(其の7)~Wケニー編 W(ダブル)ケニーと言ってもウィントン・ケリーのことではありません(笑)。トランペット奏者ケニー・ドーハム(Kenny Dorham)とギター奏者ケニー・バレル(Kenny Burrell)、2人のケニー、という意味です。 ケニー・ドーハムの有名盤『カフェ・ボヘミアのケニー・ドーハム('Round About Midnight At The Cafe Bohemia)』に収録された「メキシコシティ(Mexico City)」です。まさしくハードバップそのものといった雰囲気。加えて、決して極端に短い演奏時間ではない(6分ほど)のに、勢いであっという間に終わってしまう疾走感。おまけに曲そのものも名曲だと思います。 この演奏には別テイクがあります。内容はそう大きく変わらないのですが、個人的にはなぜか以下の別テイクの方が気に入っています(単に先に聴いた、回数多く聴いたからという理由かもしれません)。こちらのテイクの方は、ケニー・バレル名義の『ケニー・バレル Vol. 2(Kenny Burrell)』(同過去記事続きはこちら)に収録されたものです。また、後には上記ドーハム盤の音源発掘によるコンプリート盤にも収録されました。 それはそうと、この曲のタイトルは「メキシコシティ」ですが、いまだにどうメキシコシティ(メキシコ合衆国の首都、メキシコ市)なのだかよくわかりません。メキシコシティには仕事で何度も行ったのですが、この曲調とあの街のイメージにどう接点があるのか、不明なのです。まあ、名曲は名曲、名演奏は名演奏なので、表題はどうでもいいと言えばいいのですが(笑)。 【送料無料】【新作CDポイント3倍対象商品】カフェ・ボヘミアのケニー・ドーハム [ ケニー・ドーハム ] [CD] ケニー・バレル(g)/ケニー・バレルVol.2(生産限定盤) 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2013年11月15日
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40万アクセス記念、いま聴きたいジャズ・ナンバー(其の6)~ミシェル・カミーロ編 今日は朝から元気になる曲(?)を取り上げてみたいと思います。ミシェル・カミーロ(ミッシェル・カミロMichel Camilo)の『ランデヴー(Rendezvous)』の冒頭を飾る、「トロピカル・ジャム(Tropical Jam)」です。 ちなみに、ミシェル・カミーロは、1954年ドミニカ共和国出身の、“超技巧派”などと形容されるジャズ・ピアノ奏者。1980年代からアルバム作品を発表し始め、現在、2010年代に至るまで作品をコンスタントに発表しています。 お聴きになっての通り、早くて強いタッチのピアノが印象的というより衝撃的です。この曲に関していうと、一気にたたみかける演奏はジェットコースターを思い出させるほどです。収録盤の記事のところにも書いたのですが、かれこれ20年近く前、彼のライヴに行き、この曲の演奏を聴いて受けた衝撃は今でも鮮明です。 もちろん、この“超絶技巧”だけが彼の売りではありません(例えばこちらの過去記事も参照)。そろそろ60歳代に差し掛かろうかという彼ですが、その後も表現者としてどんどん進化していっています。技あり、ラテン風あり、さらに繊細かつ知的な部分が演奏に垣間見られる…気になった方、この曲や所収盤に限らず、ぜひミシェル・カミーロの世界をお楽しみください。 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】【送料無料】ランデブー/ミシェル・カミロ[CD]【返品種別A】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2013年11月14日
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40万アクセス記念、いま聴きたいジャズ・ナンバー(其の5)~ジョン・コルトレーン編 第5回となる今回は、超有名盤からこの曲をいってみたいと思います。ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の『ソウルトレーン(Soultrane)』に収録の「グッド・ベイト(Good Bait)」です。 時々近隣から練習中のサックスでこれが聞こえてくるというのもあるのですが、この曲を取り上げたくなった理由は、今回は他にあって、実は“トンカツ”なのです(笑)。たまに行くトンカツ屋さんでなぜがジャズが流れています。店主の趣味なのか何なのか不明ですが、最近は焼き肉を食べにいってもジャズが流れていたりするわけですから、そんなに珍しいことでもないのかもしれません。 ともあれ、先回このお店へ行った際、トンカツの定食を注文して待っている間に流れてきたのが、コルトレーンのこれだったわけです。有名な演奏ですし、“やっぱりトンカツとは合わないか…”と思いながら定食の到着を待っていたのですが、すっかり食べ終わる頃には、「グッド・ベイト」の気分でおいしくいただきました。ちなみに、店を出た時に流れていた曲は記憶にありません。そう、トンカツを食べながら、頭の中ではこのコルトレーンの演奏がひたすら駆け巡っていたのでした…。 【輸入盤】JOHN COLTRANE ジョン・コルトレーン/SOULTRANE(CD)下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年11月13日
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40万アクセス記念、いま聴きたいジャズ・ナンバー(其の4)~ソニー・クリス編 多人数編成(10人編成)のミニ・オーケストラの中で、“泣き”のアルトが歌う、そんなナンバーを今回は取り上げてみようと思います。ソニー・クリス(Sonny Criss)の1968年の作品『ソニーズ・ドリーム~新クールの誕生(Sonny’s Dream (Birth of the New Cool))』所収の、同盤いちばんの聴きどころとなっている楽曲です。 ソニー・クリス(1927-77年)は、パーカーの影響を強く受けたサックス奏者の一人ですが、この流れるようでありながら揺れのある、“泣き”の入ったサックスは個人的にお気に入りです。 残念なのは、時にこの盤がソニー・クリスの代表作の一つなどという風に数えられてしまうことでしょうか。ホレス・タプスコットのアレンジによるちょっと変わった編成で、ある種、普段とは趣向を変えたというか、受けを狙ってみたというか…(大編成の割にはソニー・クリスの演奏が大きくメインでクローズアップされてはいます)。 ともかく、ソニー・クリスの典型盤とは言いにくい部分があるのですが、サックス演奏そのものは彼本来の硬派な演奏で、個人的には結構好きなのです。余談ながら、途中のピアノ・ソロは地味ながら、“名演奏の陰にこの人あり”とよく言われるトミー・フラナガンだったりします。下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年11月12日
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40万アクセス記念、いま聴きたいジャズ・ナンバー(其の3)~アート・ペッパー編 前回のブッカー・アーヴィンに続き、もう一つ、個性派の「枯葉(Autumn Leaves)」をいってみたいと思います。 コンテ・カンドリ(Conte Candoli, トランペット)、アート・ペッパー(Art Pepper, アルトサックス)らが参加した『ムーチョ・カロール(Mucho Calor)』(日本では誤表記の『ムーチョ・カラー』と呼ばれてしまっています)に収録されたものです。ペッパーのソロは短い(というか曲の演奏そのものが短い)ですが、少々ユニークなラテン風アレンジの「枯葉」の演奏です。 アート・ペッパーは他にも「枯葉」の吹き込みを残していて、完成度という点では、必ずしもこの『ムーチョ・カロール』のものが優れているというわけではないのですが、たまには気分を変えてこういうのもいいのではないでしょうか。 アルバム自体も、期待しすぎるとがっかりしかねませんが、あまり期待せずに聴くと結構楽しめる盤ですので、興味のある方はぜひご一聴を。 【送料無料】 Art Pepper アートペッパー / Mucho Calor 輸入盤 【CD】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年11月10日
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40万アクセス記念、いま聴きたいジャズ・ナンバー(其の2)~ブッカー・アーヴィン編 秋なので、などと言ってしまえば、安直ではあるのですが、過去にもやったことのある「枯葉」です。今回は、ジャズ史上、おそらくは最もコッテリした、コクのある個性派の「枯葉」を取り上げてみたいと思います。 誰もがトライする有名曲、ということは、星の数ほどその演奏ヴァージョンが存在する曲ということになるかと思います。星の数ほどは聴いていませんが(苦笑)、数ある演奏の中でこれほど個性的な「枯葉」はそう多くないのではと思ったりします。1960年録音の『クッキン(Cookin’)』に収録された演奏ですが、ブッカー・アーヴィンの特徴であるコッテリした、粘度と濃度の高い演奏です。 秋はどこか心寂しくなったりする季節ではありますが、そんな季節に、こういう熱い演奏の「枯葉」も折角ですので楽しんでいただきたいものです。 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】クッキン/ブッカー・アーヴィン[CD]【返品種別A】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2013年11月08日
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40万アクセス記念、いま聴きたいジャズ・ナンバー(其の1)~マイルス・デイヴィス編 40万アクセス記念ということで、ほぼ毎年の恒例行事になりつつありますが、“いま聴きたい曲”をピックアップして10回ほどお届けしたいと思います。 とはいっても、マンネリ化しつつあるのも事実で、これまでの10万、20万、30万アクセス記念の際は洋楽(ロック・ポップス)から選曲しましたので、今回は、個人的気分もあわせてジャズ・ナンバー編という形でお届けします。選曲の条件は、過去に本ブログで紹介した作品に含まれている中から、いま聴きたいと思ったナンバーです。 さて、第1回目は、深まりゆく秋、近づきある冬の足音というこの時期にぴったりな(と個人的には思う)1曲です。マイルス・デイヴィスの代表盤の一つ『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』の冒頭を飾る表題曲「ラウンド・ミッドナイト」です。 この冒頭のミュート演奏だけでも、聴き手側としては既にノックアウト状態。“静かに動的”という表現が何ともぴったり当てはまるように思います。繊細かつ静かに躍動的な名演奏に相応しいと言ったところでしょうか。 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】【送料無料】ラウンド・アバウト・ミッドナイト+4/マイルス・デイビス[CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年11月07日
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ブルージーにまとまったセッション盤 プレスティッジというレーベルは、適当にメンバーを集めてセッションし、そのまま盤にするという適当なことをやったりしていたが、それで好作品に仕上がっていくというのは、メンバーのクオリティの高さと同時に、当時のハードバップの勢いがそれだけの体力を備えたものだったからということだろうか。 『オール・モーニング・ロング』というアルバム名(および1.の表題)は、モーニングという単語で“朝”を想像しがちだけれども、より正確には“(日付が変わった)深夜から次の日の昼までずっと(つまり深夜から午前中にかけて)”といった意味合いと言えそうだ。実際、本盤はレッド・ガーランドを中心とするセッションで、“もう1つのマラソン・セッション”と言われたりする。1957年11月15日と翌12月13日の2日間の録音から、まとめてアルバム4枚分(本盤『オール・モーニン・ロングAll Mornin’ Long』のほか、『ソウル・ジャンクション』、『ハイ・プレッシャー』、『ディグ・イット』)の演奏が残されることとなった。この経緯からもわかるように、夜明けから午前に続いたセッションの世界という訳で、参加メンバーは次の通り。ピアノのレッド・ガーランドのほか、ジョン・コルトレーン(サックス)にドナルド・バード(トランペット)。さらには、ドラムがアート・テイラーだが、ベースは、いつものメンバー(?)的なポール・チェンバースではなく、ジョージ・ジョイナー(音的には似たタイプと言えそうではあるが)。 全体的には長尺のセッションで、各曲の収録時間は長い。表題曲の1.「オール・モーニング・ロング」は20分という長丁場で、残る2曲が10分強と6分強。要するに、ソロ・パートに当てられた時間も長く、典型的なプレスティッジ的セッション演奏である。こう書くと何か“だれた”あるいは“緩い”演奏なのかと思ってしまいそうだけれれど、実際はそうではない。特に長丁場の1.「オール・モーニング・ロング」からして、実によくまとまった演奏に出来上がっている。ブルース好きには極上の演奏で、安定したレッド・ガーランドのピアノを中心としたリズム隊の演奏に、J・コルトレーンとD・バードのソロが(あくまで目一杯とは到底言えないが)いい感じで絡んでくる。要するに、サックスやトランペットだけを堪能するには不十分かもしれないのだけれど、あくまでレッド・ガーランドのトリオがベースにあって、その上でコルトレーンやバードがフィーチャーされてると捉えられることを前提にして聴くならば、これほどバランスよくまとまっているのは見事ということになるに違いない。 そして、この演奏を特徴づけているのは、何といっても“ブルース”である。上述の1.はブルージーなナンバーとして申し分のない出来。続く2.「誰も奪えぬこの想い」と3.「アワ・デライト」も、ブルースジーさという観点からは文句の付けどころがない。2.はややリラックスした雰囲気、3.は鬼気迫るコルトレーンのサックスがより強い印象を与えるものの、いずれもブルース(無論、ジャズで言うところのブルースという意味)としての完成度は高い。 マイルスの“マラソン・セッション”もある種似たところがあるのかもしれないけれど、“まとめ録りなんて…”と思うのは誤った先入観なのだろう。まとめて録音し、うまく編集され(切り取られ)た暁には、こういう風に傾向がはっきり出て、なおかつ聴きごたえのある盤ができあがるということを証明している一枚でもあるように思う。[収録曲]1. All Mornin’ Long2. They Can’t Take That Away from Me3. Our Delight[パーソネル、録音]Red Garland (p)Donald Byrd (tp)John Coltrane (ts)George Joyner (b)Art Taylor (ds)1957年11月15日録音。 Red Garland レッドガーランド / All Mornin' Long 輸入盤 【CD】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年10月30日
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現代ピアノ・トリオの名盤 ケニー・バロン(Kenny Barron)は1943年フィラデルフィア生まれの米国のピアニスト。これまで数多くのサイドマンとして録音・共演経験を持つほか、60年代末からはリーダー名義の盤も多く残している。有名奏者との組み合わせでは、スタン・ゲッツとの80年代後半からゲッツ晩年の吹き込み(特に遺作となった『ピープル・タイム』での共演)がよく知られている。 本盤のジャケットを見ると、仲のいいおっさん3人が行楽地で取ったスナップみたいな写真(?)で、黄色に黒と赤(さらに黄緑色の文字も)という、少々どぎつい色の組み合わせで、あまり上品な演奏は想像できないかもしれない。けれども、中身は実に品格ある演奏なのでご安心を。 実際、ケニー・バロンのよさは、この“品格”にあるのだろうと思う。べったりの黒人臭さ(それは本来のジャズのよい部分の一つなわけだけれど)がせず、かといって白人クール・ジャズ的な(これはこれで好きなのだけれど)すました演奏になっているわけでもない。さりげなく上手く、さりげなく歌い、さりげなく品がある、というこの“さりげない三点セット”がケニー・バロンの大きな魅力になっている、というのがこれまでこの人のピアノを聴いて個人的に持っている感想だったりする。 本トリオのメンバーは、ベースがルーファス・リード(Rufus Reid)、ドラムがビクター・ルイス(Victor Lewis)。前者はバロンとほぼ同世代のベーシスト、後者はマンハッタン・ジャズ・クインテットでの活動経験もあるドラマー。3人合わせて出てくる音というのは、メイン・ストリームの現代的なピアノ・トリオ演奏で、筆者個人の好みではこのドラムがなかなかいい。バロンのピアノを上で“さりげない品格”と表現したが、まさにこれを最大限に生かしているのが本盤でのルイスのどらドラミングだと思う。 平均的にどの演奏も(3.は例外的に少し短い演奏時間だが)7~8分以上かけてじっくり聴かせるもの。演奏曲単位でのお気に入りをいくつか挙げると、まずは、2.「フラジャイル」。ロック好きの方はすぐにお気づきのように、スティングのあの曲だが、他にない超名バラード演奏に仕上がっている。次に表題曲で自作曲の7.「ザ・モーメント」。一見シンプルな構成ではあるが、バロンのピアノは、さらりと軽快に滑り出しながら次第に強いタッチが顔をだすという具合に、緩急と強弱のつけ具合が楽しめる。さらにもう一つ挙げると、定番曲の9.「ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン」。この演奏では、ピアノの確かなタッチと随所に顔を出すバロンの歌心(さらりとメロディックなラインが出てくるのが実に心地いい)が印象的。 ちなみに、本盤は1991年、レザヴォアというレーベルに吹き込まれた作品である。レザヴォアは1987年にニューヨークで設立され、80年代を終える頃から4ビート・ジャズの好盤を出してきたマイナー・レーベルの一つ。ピアノ・トリオに結構力を入れているようで、このバロンのほか、スティーヴ・キューンやジョン・ヒックスなどの吹き込みがある。加えて、本盤はRVG(ルディ・ヴァン・ゲルダー)録音で、デジタル時代を迎えてのRVGの傑作という声もある。[収録曲]1. Minority2. Fragile(→動画)3. Silent Rain4. I'm Confessin' (That I Love You)5. Jackie-ing6. Tear Drop7. The Moment8. Soul Eyes9. How Deep Is The Ocean[パーソネル、録音]Kenny Barron (p)Rufus Reid (b)Victor Lewis (ds)1991年8月22日録音。 【送料無料】【輸入盤】Moment [ Kenny Barron ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年10月27日
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上品で才覚溢れるサックス+その周りを舞うリーダーのピアノ アート・ペッパー(Art Pepper)の代表作はというと、当たり前ながら、『ミーツ・ザ・リズム・セクション』をはじめ、彼自身のリーダー盤に話は集中しがちである。けれども、他人のリーダー名義ながら外せない、代表盤的快演というのもジャズには多い。マーティ・ペイチ(Marty Paich)のこのリーダー作も、アート・ペッパーの側から見れば、そうした盤の一つに違いない。 アート・ペッパーという人は、酒にドラッグに溺れるという意味では、失敗を繰り返す人生だった。それどころか、これが原因で60年代を丸々棒に振ることにすらなってしまう。本盤の録音直前もロサンゼルスの群刑務所に9か月、連邦刑務所で10.5か月を過ごしたばかりで、1956年6月に出所後まもない同年8月に録音されたのが本盤というタイミング。出所からこの録音までの間、他の吹き込みはしているものの、出所後に発表されたレコードとしてはこれが最初のものだったらしい。ともあれ、この出所後のアート・ペッパーのサックス演奏は冴えわたり、この年から翌57年にかけての彼の吹き込みには見事な名演が並ぶ。 アルバム全体としては、ややさらりとした印象もあるが、それは見事にまとまった、そして変に盛り上げたりしないバックの演奏の成果であるように思われる。ピアノのマーティ・ペイチ以下のメンバーの演奏の上を、アート・ペッパーのサックスが美しくスウィンギーに舞うというのが全体的な印象。とはいえ、名義上のリーダーであるマーティ・ペイチはお飾りだったのかと言えば、まったくそうでもなく、そんなところにも本盤の成功の秘訣があったのだろう。マーティ・ペイチはカリフォルニアを活動の拠点とした作曲家・編曲家・プロデューサーで、本盤では完成度の高いピアノ演奏を披露している。無論、そうは言っても、ペッパー盤としての素晴らしさが第一義なのは否定しがたい事実だけれど。 そのペッパーの演奏の特徴がよく出ている演奏曲に、1.「ホワッツ・ライト・フォー・ユー」と2.「あなたと夜と音楽と」がある。前者は華麗というよりはまったり、閃きというよりは艶やかな演奏が楽しめる。後者の方はペッパー節前回の、筆者的には本盤のなかで3.「サイドワインダー」と並んでとくにお気に入りの演奏。他にペッパーの冴えた演奏が気に入っているのは、6.「オール・ザ・シングス・ユー・アー」と9.「マーティズ・ブルース」。とまあいくつの曲を挙げてみたところで、結局行きつく結論は“捨て曲なし”ということになってしまうし、長さ的にも一気に聴けるところがいい。 在りし日の作品にはよくあることではあるが、アルバム全体の総収録時間はわずか30分足らずと、現代のアルバム作品のイメージからすると短い。トータル70分~80分という長時間がアルバム収録の標準となった今の時代からすれば、あまりに短い収録時間のアルバムなのである。けれども、なぜか物足りなさを感じることがあまりない(とはいえ一部の曲のフェイドアウトにだけは物足りなさを感じるけれど)。短時間全9曲の充実感。ちなみに、しばしば特定のアルバムが聴き手の中で特定のシーンに合うものとしてイメージ化されてしまうということがあるが、筆者にとって、本盤はなぜか“休日の朝に爽やかに聴く盤”のイメージ(2.「あなたと夜と音楽と」があってもなぜかイメージは朝だったりする)。軽妙にして爽快な密度ある30分をお楽しみあれ。[収録曲]1. What's Right For You2. You And The Night And The Music3. Sidewinder4. Abstract Art5. Over The Rainbow6. All The Things You Are7. Pitfall8. Melancholie Madeline9. Marty's Blues[パーソネル、録音]Art Pepper (as)Marty Paich (p)Buddy Clark (b)Frank Capp (ds)1956年8月録音。 【Aポイント付+メール便送料無料】マーティ・ペイチ・カルテット / マーティ・ペイチ・カルテット~フィーチャリング・アート・ペッパー[CD] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2013年10月09日
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理屈抜きで“体感”したい好盤 いろんなことを考えたり、他人の感想を聞いたり、誰かが書いたりしたことを読みながら音楽を聴くのも楽しいけれど、細かいことや理屈抜きに聴いて愉しむというのが“正しい音楽の聴き方”なのだろう。こういう盤を聴くにつけ、そう思わされる。 いきなりこんな書き出しにしてしまうと、この後に書く文章は何なのだろうかということにもなってしまうのだけれど、心底、理屈抜きに楽しんで聴ける盤の一枚がジョニー・グリフィンとマシュー・ジーの双頭名義の『ソウル・グルーヴ(Soul Groove)』というアルバム作品。 ジョニー・グリフィン(Johnny Griffin)の方は『ア・ブローイング・セッション』などブルーノートからの諸作でその実力を既に世に知らしめ、“小さな巨人”としてリヴァーサイドで着実に実績を積み上げ、この作品の発表時点では確立されたミュージシャンであった。他方、マシュー・ジー(Matthew Gee)の方は、1925年生まれというから、年齢的にはグリフィン(1928年生まれ)よりも少し上だけれど、無名に近いミュージシャン。1956年に1枚のリーダー作を残しているが、どうやら他のリーダー作は1963年の本アトランティック盤のみと思われる。そのようなわけで、本盤が双頭名義になっているのも、グリフィンの名前に乗っかってマシュー・ジーの売り出しを図ったからとも考えられる。 ともあれ、ジョニー・グリフィンのテナー・サックスに、マシュー・ジーのトロンボーンを組み合わせ、聴衆受けしそうな場面でオルガンを加えるというラインアップは思いのほか成功だった。全体を引っ張っているのは、グリフィンの迫力あるサックス演奏であり、安定したアート・テイラーのドラムである。出しゃばることなく渋く決まっているハンク・ジョーンズのピアノも全体にわたって貢献度が高い。けれども、最終的にはテナーとトロンボーンのアンサンブル、そして両者の絡み合う演奏がいちばん聴きどころになっているように思う。 全体としてとにかくノリ(グルーヴ、どうやらジャケットのデザインはこの“ノリ”のグルーヴと、レコードの溝のグルーヴを掛け合わせたものらしい)がよく、最初に書いたように理屈抜きに“聴いた感じの楽しさ”を堪能できる。個人的に気に入っている演奏をいくつかピックアップすると、冒頭の1.「オー・ジー!」は全体のテーマ・イントロ的な短い演奏ながら、ボンゴ、コンガを取り入れたラテン風味から始まって、管楽器二人の圧倒的勢い、さらにはオルガンを取り入れた部分まで、この盤のイメージを最初から植えつけてくれる好演。これとほぼ同じ感覚は5.「ツイスト・シティ」にも表れていて、聴き逃せない演奏となっている。 上記1.のほか2.、4.、5.、7.、8.とマシュー・ジー自身の曲が多く含まれているけれども、彼のオリジナル曲以外でもこの同じノリはちゃんと継続している。その意味で注目したいのは3.「アット・サンダウン」。ウォルター・ドナルドソンによる1920年代の古いスタンダードだけれど、トロンボーンとサックスの組み合わせ(間にハンク・ジョーンズのピアノソロもあり)で軽快かつグル―ヴィーに演奏が進んでいく。 もちろん全編を通じて一本調子のまま終わってしまうというわけでもない。アクセントの効いている演奏の例としては、4.「スウィンガーズ・ゲット・ザ・ブルース・トゥー」が挙げられる。妙に重厚なイントロが1分間ほど続き、この後どうなるのだろうという雰囲気を出した後で、イン・テンポになるとマイナー調でありながら一気にこれまでのノリを継続させる。 アルバム終盤にかけては、グル―ヴィーな部分はそのままながらややゆったりした曲調が耳につくようになる。最後3曲の6.「プア・バタフライ」、7.「ムード・フォー・クライン」、8.「レネー」と続く流れは、上記の通り、スタンダード曲(6.)でも、アーロン・ベルによるモード曲(7.)でも、はたまたマシュー・ジーのオリジナル曲(8.)でも、アルバムとしての演奏コンセプトが途切れることなく続いていることを示している。聴き手の中で“切れてしまう”ことなく、複数の曲の流れで楽しめるというのは、特に“体感”で楽しむタイプのアルバムには必要不可欠といったところだろうか。[収録曲]1. Oh Gee2. Here3. At Sundown4. The Swingers Get the Blues, Too5. Twist City6. Poor Butterfly7. Mood for Cryin'8. Renee[パーソネル・録音]Johnny Griffin (ts)Matthew Gee (tb)“Big” John Patton (org.: 1., 5., 8.)Hank Jones (p, org: 2., 3., 4., 6., 7.)Aaron Bell (b, tuba)Art Taylor (ds)Carlos “Patato” Valdes (bongo, conga)1963年5月13・14日録音。 【送料無料】JAZZ BEST コレクション 1000::ソウル・グルーヴ [ ジョニー・グリフィン&マシュー・ジー ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2013年10月05日
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リー・モーガン初期の代表盤の真価 ジャズ・トランペット奏者、リー・モーガンの代表作はと言うと、ジャズ・アルバムとしては異例のヒットを記録した『ザ・サイドワインダー』のほか、もう少し初期のいくつかの盤が挙げられることも多い。「クリフォードの想い出」を含む『リー・モーガンVol. 3』と並んで、よく代表盤に挙げられる若い頃の盤が、この『キャンディ(Candy)』である。 本盤『キャンディ』の特徴は、次の二点に集約される。まず第一に、リー・モーガンのトランペットのワン・ホーン演奏であること。そして、二つめは、バックの演奏の質である。 一つめの、リズム・セクション(ピアノ、ベース、ドラム)にトランペットのみという組み合わせは、それまでのリー・モーガン盤が別の管楽器を含んでいたのに対し、この時点で初めての全編ワン・ホーンという試みということになる。デビュー盤となる最初の2枚のうちの1枚(過去記事参照)はサヴォイ・レーベルだったが、残りはここまでずっとブルーノートに吹き込みをしており、制作者側としては“ここらで一つ、ワン・ホーン盤を”といったところだろう。実際、演奏された曲は、ワン・ホーン盤として、彼の魅力を存分に伝え得る楽曲群だと言える。 そうは言っても、リー・モーガンの演奏だけに心を奪われていては、本盤のよさは十分にわからないいんじゃないだろうか、とも思わされる。ベースの、ピアノの、そしてドラムの、リーダーを意識して抑えを聴かせながらも、いずれも本領発揮なレベルの高い演奏が、このアルバムを魅力ある作品にしていることは間違いがないと思う。目立った部分では、ソニー・クラークのピアノのセンスと品のよさ。アート・テイラーのドラムが全体に安定感を与えているのは言うまでもない。けれども、全編を通じて考えた時、ベースのダグ・ワトキンスあってのこの盤だろうという気にさせられる。 とうわけで、インパクトある1.「キャンディ」でワン・ホーンを楽しむのもよし、4.「オール・ザ・ウェイ」でトランペットだけでなく、秀逸なピアノとベースの安定した技(2:30頃から延々と続く)を堪能するのもよし。そんな具合に、リズム・セクションに関しても楽しみながら聴きたい1枚というのが筆者の感想だったりする。[収録曲]1. Candy2. Since I Fell for You3. C.T.A.4. All the Way5. Who Do You Love, I Hope6. Personality[パーソネル、録音]Lee Morgan (tp)Sonny Clark (p)Doug Watkins (b)Art Taylor (ds)1957年11月18日(2.と6.)、1958年2月2日(1.、3.、4.、5.)Blue Note 1590 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】キャンディ+1/リー・モーガン[CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年09月01日
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ミニ・バンド風の四管共演盤 本盤『ストレッチング・アウト(Stretching Out)』は、名義としては、テナー奏者のズート・シムズとトロンボーン奏者のボブ・ブルックマイヤーの双頭盤だが、実態としては、四管がフロントになったオクテット(8人組)での演奏。なかなか豪華メンバーが揃った盤で、女性が横たわった写真のジャケットには、6名の奏者の名前が記されているが、“NAT PIERCE”とあるのは“HANK JONES”の間違いという、何とも言えない適当さ加減だったりする。 この盤の売りは何といっても音の厚みである。上記の人数での演奏だからこそなせる業と言えるだろう。とはいえ、ビッグ・バンドというわけではなく、8人組編成なので、ビッグ・バンドが苦手であってもそう違和感はないかもしれない。ただし、雰囲気そのものは、ビッグ・バンドもどきの“ミニ・バンド”といった感じ(実際、カウント・ベイシー楽団のようなノリが随所に現れる)。演奏そのものは、スウィンギーにノリで聴かせるといった調子がメインだが、トランペット、サックス、トロンボーンがバランスよくソロを聴かせながら、楽しく聴かせてくれる。 フロントの4人のうち、双頭のズート・シムズとボブ・ブルックマイヤーの演奏が特に印象的。ズートは、この人お得意の、思わず体が揺れるスウィンギーな演奏が全体の雰囲気に欠かせない役割を担っている。バルブ・トロンボーンの名手、ブルックマイヤーの方は、この楽器の特性を出しながら、うまく全体に音の厚みを与えている。 もちろん、その他も豪華なメンバーなので、それぞれの活躍を楽しめるのだけれど、聴きどころろとなるポイントは二つあるように思う。一つは、フロント4人のアンサンブル。上記の2人にハリー・エディソン(トランペット)、さらにはズートとの名コンビでも有名なアル・コーン(テナー/バリトン・サックス)が加わった厚みのある音がびしっと決まった瞬間は何とも言えない爽快感がある。その一方で、もう一つ、合間に入るソロフレーズの魅力というのもあるように感じる。今まで聴いているところでは、フレディ・グリーンのギターやエディソンのトランペットにそれが目立つ。 余談かつ体験的な話になってしまうが、本盤はあまり夜に聴かない方がよい。自然と体が動く、というのはよく言われるセリフだが、本盤はなぜか“自然と心躍る”という言い方の方がぴったりくるように思う。そう、心が盛り上がってしまうと容易に寝つけなくなってしまうのでご注意を(笑)。[収録曲]1. Stretching Out2. Now Will You Be Good3. Pennies from Heaven4. King Porter Stomp5. Ain't Misbehavin'6. Bee Kay[パーソネル、録音]Harry Edison (tp)Zoot Sims (ts)Al Cohn (ts, bs)Bob Brookmeyer (vtb)Freddie Green (g)Hank Jones (p)Eddie Jones (b)Charlie Persip (ds)1958年12月27日録音。 ストレッチング・アウト/ズート・シムズ[CD]【返品種別A】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2013年08月25日
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“車の街”に育まれたミュージシャンたちの共演 表題のモーター・シティというのは、そのまま訳せば“車の街”。つまりは、フォードをはじめとする自動車産業で繁栄を極めたミシガン州デトロイトの別名である。アメリカ合衆国の中西部、五大湖に囲まれた地域に位置し、東はカナダと接する街。そんなデトロイトは、数々のジャズ奏者を輩出し、概ね彼らはミシガン州からだと東側に位置するニューヨークへと進出していった。 本盤の参加メンバーを見ると、ドナルド・バード(トランペット)をはじめとして、ケニー・バレル(ギター)、トミー・フラナガン(ピアノ)、ルイス・ヘイズ(ドラム)の4人が生粋のデトロイト生まれ。なお、ルイス・ヘイズは、“ヘイ”ルイスなる変名でクレジットされている。残る2人、ペッパー・アダムス(バリトン・サックス)とポール・チェンバース(ベース)は、デトロイト生まれではないものの、前者は同市を活動拠点としたミュージシャンで、後者も生まれは異なるもののデトロイトで育っている。 デトロイトと言えば、ソウルやR&Bの大レーベル、モータウン(その由来もまたモーター・タウンからきている)が有名だが、本盤の吹き込みを行ったのは、いくつものすぐれたジャズ盤を制作したベツレヘム・レーベル。詳しい録音データはわからないが、1960年の吹き込みで、場所はニューヨークでの録音とのこと。ベツレヘムは株のディーラーをやっていたスイス出身のガス・ウィルディなる人物が1953年に立ち上げたレーベルで、翌年からジャズ盤制作に取り掛かり、1961年まで稼働した。ニューヨークに拠点を置きながら西海岸にもオフィスを出すという、当時の西と東に分離していた業界としては珍しい試みをしたレコード会社だった(ベツレヘムの有名盤についてはこちらやこちらの過去記事を参照)。 アルバムはドナルド・バードがゆったりかつじっくりとワンホーンで聴かせる1.「スターダスト」で幕を開ける。冒頭のこのトランペットの名演だけでも本盤を手にする価値はある。あと全編にわたって活躍しているのはトミー・フラナガン。スピードに乗った3.「トリオ」のピアノ・ソロが個人的には特にお気に入り。他にペッパー・アダムスの参加曲のなかでは、4.「リベッチオ」のスリリングな演奏がなかなかよい。品性に欠けると評する向きもあるかもしれないが、ルイス・ヘイズのドラムが、案外、本盤でのトーンを決めていて、筆者としてはこれはこれでなかなか功を奏しているように思う。 というわけで、本盤を聴いていく着く先は、やはり当時のデトロイトという町への憧れ。今でこそ、“大ピンチの破産都市”として報道され、治安の悪化なんかが懸念されているが、この当時のデトロイトというのは本当に繁栄し、こういう文化的繁栄を見ていたのかと想像するだけで、何だか胸がわくわくするような気持ちにさせられる。[収録曲]1. Stardust2. Philson3. Trio4. Libeccio5. Bitty Ditty[パーソネル、録音]Donald Byrd (tp)Pepper Adams (bs)Kenny Burrell (g)Tommy Flanagan (p)“Hey” Lewis (ds)Paul Chambers (b)1960年録音。 【総額2500円以上送料無料】モーター・シティ・シーン/ドナルド・バード&ペッパー・アダムス下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年08月24日
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大人向きで涼風なMJQ盤 この暑さを吹き飛ばす盤が何かないかということで、これをお届けしたいと思いつき、今回はMJQ盤の話にお付き合いいただきたい。 MJQことモダン・ジャズ・カルテット(The Modern Jazz Quartet, 当初はミルト・ジャクソン・カルテット、どちらも略称はMJQ)は1950年代初頭に結成された。メンバーはミルト・ジャクソン(ヴィブラフォン)、ジョン・ルイス(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、ケニー・クラーク(ドラム、1955年からはコニー・ケイ)。20年以上活動をつづけた後、彼らは1974年に解散した。その解散直前の1973年の作品がこの『ブルーズ・オン・バッハ(Blues on Bach)』という作品。内容としては、前年のカーネギーでのコンサートで披露された内容のスタジオ録音盤である。ちなみに、MJQはこの解散後、1981年に再結成され、活動を再開した後、1993年に最後の作品を残したが、現在では既にメンバー全員が鬼籍に入っている。 モダン・ジャズ・カルテットは、リーダーのジョン・ルイスの精緻でクラシック寄りの趣向と、ヴィブラフォン担当のミルト・ジャクソンのブルージーさとの絶妙なバランス具合の上に成り立っていた。実際、MJQとしてではなくミルト・ジャクソンがリーダーを務めた際の演奏と、MJQの枠内での演奏では、明らかに本人がその違いをつけている(参考過去記事(1) ・(2) )。 そもそもヴィブラフォンという楽器の音は涼しげで、納涼にもぴったりということが多い。本盤ではバッハに敬意を表するジョン・ルイスのアイデアと、ブルースを得意とするミルト・ジャクソンの個性をうまく生かし、奇数曲と偶数曲の間で工夫された構成に仕上がっている。奇数曲(1., 3., 5., 7., 9.)はバッハのアレンジで、ジャズ盤としてはおとなしい(おとなしすぎる?)出来上がり。これらの曲ではジョン・ルイスのハープシコードが納涼感をいっそう増す心地よさがいい。これに対して偶数曲(2., 4., 6., 8.)はオリジナルのブルース曲で、ミルト・ジャクソンがより前面に出ている。とくに6.「Cマイナーのブルース」の繊細さ、8.「H(B)のブルース」のブルージーさはミルト・ジャクソンの本領が発揮されているが、これらがバッハ曲の解釈にはさまれているという巧妙な構成が本盤のミソなのだろう。 べったりブルージーになることもなく、だからといってクラシック(バッハ)に偏りすぎることもなく、という絶妙のバランス。純粋ジャズ主義な人には拒否反応を起こさせかねない盤であるというのも確かかもしれないが、地味な隠れた名盤の一つと言っていいように思う。[収録曲]1. Regret?2. Blues In B Flat3. Rise Up In The Morning4. Blues In A Minor5. Precious Joy6. Blues In C Minor7. Don't Stop This Train8. Blues In H (B)9. Tears From The Children[パーソネル・録音]Milt Jackson (vib)John Lewis (p, harpsichord)Percy Heath (b)Connie Kay (ds. per)1973年11月26・27日録音。 【送料無料】JAZZ BEST COLLECTION 1000::ブルース・オン・バッハ [ ザ・モダン・ジャズ・カルテット ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2013年07月14日
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リラックスして楽しむ、ブルージーな演奏 ジミー・スミス(Jimmy Smith, 1925年生まれ、2005年没)はジャズ・オルガン奏者として、ブルーノートやヴァ―ヴに多くの吹き込みを残した。売れっ子奏者だっただけに、作品の数も多く、どれも変わらないんじゃないかという懐疑的な声もあるかもしれない(実際にはアーシーな感じなのとコッテリな感じなのとにその作品は大別される)。けれども、深みにはまればはまるほどさらに作品を聴きたくなるという点において、案外、“金太郎飴”などと揶揄されるピアノ奏者のレッド・ガーランド(参考過去記事(1)・(2))に似た中毒性があるのではないかと個人的には思っていたりする。 さて、本盤『ホーム・クッキン(Home Cookin’)』は、1958年7月から翌59年の6月にかけて、実に1年近い歳月をかけて3回にわたってレコーディングされた内容が収められたブルーノート盤である。基本は、同じブルーノートの人気ギタリストであったケニー・バレル、さらにはドラムのドナルド・ベイリーを従えたトリオ編成。さらに曲によってはパーシー・フランスなるテナー・サックス奏者が加わっていて、テナー入りのリーダー作はスミスにとってこれが初めての試みだった(その後、この試みはスタンリー・タレンタインと組んだ『ミッドナイト・スペシャル』や『バック・アット・ザ・チキン・シャック』の成功にもつながることになる)。ちなみに、このパーシー・フランスというサックス奏者はあまり活躍しなかったらしく詳しいことはよく分からないが、本盤を聴く限り、音色は無難ながらも、哀愁あるいいフレーズを吹いている。 思うに、本盤の最大の特徴は、“気負いなきブルース”。実際にはブルース形式ではない曲もあるものの、とにかくブルース(あるいはブルージーな曲)を、落ち着いてリラックスした雰囲気でやっている。録音日は、シングル盤制作を念頭に置いていたためか、1年近い期間に分散している。しかし、結果的に“家庭料理”なるタイトルのアルバムとして、見事にまとまった内容に仕上がっていて、ブルース(もしくはブルージーな曲)を、力むことなく見事に“料理”している。ちなみに、ジャケットは、ニューヨークはハーレムのアポロ・シアター近くにある店の写真。実際にミュージシャンたちが演奏の合間や終了後に行っていた店で、“ケイトのホーム・クッキング”の文字とともにジミー・スミスが写真に写り込んでいる。 全体としてのまとまりで聴く盤とは思うものの、個人的にお気に入りの演奏をいくつか挙げておこう。テンポを落としてまったりとした1.「シー・シー・ライダー」は、このアルバム全体のトーンをよく表現している。全体のブルージーな雰囲気の盛り立て役として欠かせないのはギターのケニー・バレルだが、そのバレルとスミスの掛け合いが前面に出ているのが3.「アイ・ガッタ・ウーマン」。さらに、4曲(ボーナストラックを入れると5曲)で参加のパーシー・フランスの活躍が特に目立つのは、5.「グレイシー」で、この哀愁いっぱいのフレージングもなかなかいい(この人の演奏を聴いていると、この後でジミー・スミスがスタンリー・タレンタインと録音を行った理由というか動機がなんとなくわかる気がする)。 まあ、こってりした“いかにもオルガン・ジャズ”風なものを期待するとがっかりする人もいるかもしれないが、上に掲げた通り、“リラックスかつブルージー”というのが身上のアルバム。これにはまり始めると、ジミー・スミスから抜けられなくなるアルバムという形容が意外に本盤にはあうかもしれない。 [収録曲]1. See See Rider2. Sugar Hill3. I Got a Woman4. Messin' Around5. Gracie6. Come on Baby7. Motorin' Along~以下、CDでの追加トラック~8. Since I Fell for You9. Apostrophe10. Groanin11. Motorin' Along -alternate take-12. Since I Fell for You -alternate take-[パーソネル、録音]Jimmy Smith (org)Percy France (ts, 1., 4., 5., 6., 9.のみ)Kenny Burrell (g)Donald Bailey (ds)1958年7月15日(7., 8., 11., 12.)1959年5月24日(3., 10.)1959年6月16日(1., 2., 4., 5., 6., 9.) ホーム・クッキン+5/ジミー・スミス[CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年07月10日
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暑い日に涼しい1枚を スタン・ゲッツ(Stan Getz)は白人テナーを代表するジャズ奏者(1991年没)。クール・ジャズの旗手として活躍する一方、欧州生活を経た後の1962年にブラジル音楽を取り入れたアルバム『ジャズ・サンバ』(チャーリー・バードとの録音)で成功を収める。この成功がなければ、翌63年の本盤『ゲッツ/ジルベルト(Getz/Gilberto)』も生まれなかったかもしれない。 ブラジル側からは、ジョアン・ジルベルト(ヴォーカル、ギター)、アストラッド・ジルベルト(ヴォーカル、当時はジョアンの妻だったが後に離婚)、アントニオ・カルロス・ジョビン(ピアノ)が参加。特にアストラッドは、本盤でのヴォーカルが歌手として初めての吹き込みだった。 ボサ・ノヴァは1950年代末にブラジルで誕生した、いわば“ローカルな”音楽ジャンルだった。それが60年代に入ってアメリカでブレークし、より洗練されたものへと姿を変えていく。実際、本盤のレコーディング中にも、ボサ・ノヴァの解釈が違うとジョアンが怒り出す場面があったらしいし、本盤でスタン・ゲッツが演じているのは、本来のボサ・ノヴァではないとの批判もある。けれども、このアルバムの成功が米国内で、さらにはブラジル以外の諸外国(日本も含め)で、ボサ・ノヴァを広げていく大きなきっかけとなったのは疑いようもない事実として残っている。本盤の冒頭に収録されている1.「イパネマの娘」は、ビートルズ曲を除けば世間でいちばんカバーが多い曲とすら言われるし、アルバム自体も全米で2位というチャート上昇を記録、さらにはアルバムがグラミー賞(最優秀アルバム賞、最優秀エンジニア賞)も受賞した上、4.「デサフィナード」が最優秀インストゥルメンタル・ジャズ・パフォーマンス賞を受賞、上述の1.「イパネマの娘」が最優秀レコード賞を受賞している。 本盤の成功の要因は“もろボサ・ノヴァ”(ボサ・ノヴァそのもの)ではなく“適度にボサ・ノヴァ”だった点にあるのかもしれない。ゲッツのサックスが“本物のボサ・ノヴァ”でない部分が仮にあったとすればその点も、さらには、アストラッドの歌が積極的に英語詞で歌われているのも、広く聴かれたという一点に関しては大成功だったのではないかと思う。“本盤=ボサ・ノヴァそのもの”という安直な解釈への批判はよくわかるし、その通りだと思う部分もあるが、“ボサ・ノヴァらしさ”という意味では、この盤は“らしさ”を存分に発揮している。 そのようなわけで、表題の“暑い夏”だけれども、ここのところの耐え難い暑さのような日には、白ワイン片手に本盤を聴きながら、気分だけでも涼しげに過ごすというのもなかなかいいのではないだろうか。そんな涼しさをいっそう盛り立ててくれる推奨曲は、1.「イパネマの娘」を筆頭に、筆者のお薦めとしては、4.「デサフィナード」、5.「コルコヴァード」、6.「ソ・ダンソ・サンバ」。さらに、ゲッツのテナーは時としてブラジル・サイドと噛み合っていないように聞こえる場面もあるのも確かだが、締めくくり曲の8.「ヴィヴォ・ソニャンド」のような溶け込み具合は、本盤の重要な楽しみどころのように思う。[収録曲]1. The Girl from Ipanema2. Doralice3. Para Machucar Meu Coração4. Desafinado5. Corcovado6. Só Danço Samba7. O Grande Amor8. Vivo Sonhando[パーソネル、録音]Stan Getz (ts)Joan Gilberto (g, vo)Antonio Carlos Jobim (p)Tommy Williams (b)Milton Banana (perc)Astrud Gilberto (vo)1963年3月18日・19日録音。 【送料無料】ゲッツ/ジルベルト [ スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2013年07月08日
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トミー・フラナガンの実質的初リーダー作 2色刷りの猫の写真の、シンプルながらもなかなかよくできた秀逸デザインのジャケット。“猫(cats)”とはジャズメンを形容するのに使われる表現であることから採られたモチーフであり、アルバムのタイトルである。内容はというと、プレスティッジに多くあるジャム・セッション系の演奏(なお本盤はニュー・ジャズとうプレスティッジの傍系レーベルによる制作)。ジャケット右側に記されているように、主要メンバーは、トミー・フラナガン(ピアノ)、ジョン・コルトレーン(テナーサックス)、ケニー・バレル(ギター)、アイドレス・シュリーマン(トランペット)である。 収録された5曲は、ガーシュウィン曲である2.「ハウ・ロング・ハズ・ジズ・ビーン・ゴーイング・オン」(この曲だけは、コルトレーン、シュリーマン、バレルが抜けて、ピアノ・トリオ形式で演奏されている)を除き、いずれもトミー・フラナガンの曲。さらには、メンバー表記の筆頭にピアノ奏者の彼が来ていることからも、セッション盤でありながらも、実質的にはトミー・フラナガン中心の盤に仕上がっており、その意味では彼の初リーダー作というふうに言われるのもよくわかる。 とはいえ、後々の味わい深いフラナガンのイメージに期待を寄せすぎてもいけない。あと、よくある評としては、コルトレーンに期待しすぎてもいけない。やはり基本はジャム・セッション的なので、全体のバランスで聴く盤だと感じる。なんだが言い方は悪いが、フラナガンだけに期待したり、コルトレーンだけに期待すると“はずれ盤”だと感じられるかもしれない。けれども、各楽器がバランスよくソロをとりながら、マイナー曲中心に“いかにもハードバップしてみました”というノリで聴くにはかなりの好盤というのが正直なところ。 個人的に好みなのは、1.「マイナー・ミスハップ」と3.「エクリプソ」(こちらの曲は、『オーヴァーシーズ』でのピアノトリオでの演奏も有名)という、フラナガンの代表作的なナンバー。まさしく絵にかいたようなハードバップのお手本と言ってもいいような演奏。特に好調なのは、アイドレス・シュリーマンのトランペット。加えて、ケニー・バレルのギターも随所でいい味を出しており、ベースのダグ・ワトキンスは本盤の陰の立役者。とはいえ、個人技というよりは、やはりトータルな出来の面で勝る盤。ジャズの世界には、一つあるいはいくつかの特定の楽器(個別の演奏者)で楽しめる盤もあれば、逆に、全体のバランスで聴く盤もあるということが再確認できる。本盤は典型的に後者に傾いた盤と思うのだが、いかがだろうか。[収録曲]1. Minor Mishap2. How Long Has This Been Going On?3. Eclypso4. Solacium5. Tommy's Tune[パーソネル・録音]Tommy Flanagan (p)John Coltrane (ts)Idress Sulieman (tp)Kenny Burrell (g)Doug Watkins (b)Louis Hayes (ds)1957年4月18日録音。 Tommy Flanagan / John Coltrane / Kenny Burrell / Cats 輸入盤 【CD】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年07月07日
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ナチュラルなスウィングを楽しむ、白人バッパーによる快盤 『ライヴ・アット・カフェ・ボヘミア』(1955年)、『ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード』(1956年)のさらに翌年、つまりは1957年に吹き込まれた、ジョージ・ウォーリントン(George Wallington)のリーダー作(ザ・ジョージ・ウォーリントン・クインテット)がこの『ジャズ・アット・ホッチキス(Jazz At Hotchkiss)』である。 ドナルド・バード(トランペット)にフィル・ウッズ(アルト・サックス)という二管は前年の『~キャリッジ・トレード』と同一。その意味では、ベースとドラムが入れ替わってはいる(本盤ではそれぞれノビー・トータとニック・スタビュラス)ものの、『~キャリッジ・トレード』からの延長線上にある作品とも言える。 21世紀の今時、白人・黒人といった区別が相応しくないのは確かだし、別に差別的な(もしくは人種主義的な)意味ではないことをお断りするものの、ドナルド・バードを除き全員が白人系ミュージシャンというのは、本盤のメンバーの一つの特徴と言えるだろう。けれども、イースト・コーストのジャズのエッセンスを、クールに(といっても、無論クール・ジャズという意味ではない)、かつバランスよく示しているというのは、ウォーリントンの個性と湖のメンバーの組み合わせのなせる業なのだろう。エモーショナルで緊張感があるのに、暑苦しくないというのは、ウォーリントンがビバップ時代からジャズ界に身を投じて活動を続けつつも、どこかに彼独自の感性が生き続け、しかもそれがリーダーとしてうまく発揮され続けたということを示している。 さて、本盤の演奏は、ビ・バップ色の強いテーマが印象的な、バド・パウエル作の1.「異教人の踊り」で幕を開ける。2.「ストレンジ・ミュージック」は一転してクラシカルな曲のピアノ・トリオでの演奏。このあたりは聴き手によって好みの分かれるところかもしれないが、ウォーリントンの知性がさらりと披露されるこのタイプの演奏は、個人的には好みだったりする。バラード曲の3.「ビフォー・ドーン」を挟んで、4.「オウ」はふたたびビ・バップ的なD・ガレスピーの曲だが、この演奏こそが本盤の色をよく表しているように感じる。原曲に忠実ないかにもな演奏というのではなく、アレンジも全体の構成についても、上で述べたような“エモーショナルながらも暑苦しくならない”演奏の典型と言えそう。最後はいかにもハードバップな感じの5.「スメイクト」で締めくくりとなるが、冒頭から絶好調な作曲者ドナルド・バードのトランペットが聴きどころ。 以前に別項でも書いたことだけれど、“マクリーン抜きのウォーリントンは面白くない”という声も確かにある。でも、筆者はサックス奏者がフィル・ウッズに替わった後の『~キャリッジ・トレード』も、そして本盤も、結構気に入っているのだ。緊張感や“ハード”バップな部分をクールに知性で包み込んだ演奏と、その結果としての、ナチュラルなスウィング具合。聴き手が吸い込まれて演奏の只中に置かれるというよりは、少し離れた場所からその包み込まれた演奏を鑑賞するという楽しみ方ができそうな雰囲気。好き嫌いはあるかもしれないが、筆者はこちらの方も案外好きだったりする。[収録曲]1. Dance of the Infidels2. Strange Music3. Before Dawn4. Ow5. ’S Make ’T[パーソネル、録音]George Wallington (p)Donald Byrd (tp)Knobby Totah (b)Phil Woods (as)Nick Stabulas (ds)1957年11月14日録音。 【送料無料選択可!】【試聴できます!】ジャズ・アット・ホッチキス / ジョージ・ウォーリントン下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年06月21日
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お宝や希少価値と関係なしに名盤は名盤 アート・ペッパー(Art Pepper)の全盛期は1950年代にあった。このことはおそらく疑いようがない事実だろうと思う。1970年代の復帰後の作品についての個人的好みはさておき、演奏者として、テクニックにおいてもアドリブの閃きにおいても、50年代が絶頂というのは、大方の意見が一致することだろう。その時期の名盤としてとりわけ有名なのは、コンテンポラリー・レーベルに残した『ミーツ・ザ・リズム・セクション』である。この時期のアート・ペッパーは専属契約を結ぶことになったコンテンポラリーで録音をしたわけだが、実際には、これと前後していくつかのマイナーレーベルにも吹き込みを残している。そうした作品の一つがこの『モダン・アート(Modern Art)』というわけである。 イントロというマイナーレーベルの盤だけに、かつては“希少盤”、“幻の名盤”などともてはやされた。筆者自身は別にオリジナル盤がどうこうという聴き方をしているわけでもないし、“希少性”には何の価値も感じない。レアな音源で喜ぶのは、そのアーティストの全音源に触れたいと思うような、特別なファンだけでよいと思う。問題は、ときおりそうした希少性と内容の素晴らしさが合致してしまうことがある。ジャズのマイナーレーベル作品にそういうケースは多々あるし、ロックやポップスの大レーベルの作品でも、過去作でいいものがひょっこり廃盤になってしまうこともある。そのようなわけで、希少盤云々ということを抜きにして、名盤は名盤。そんなスタンスに立って、この『モダン・アート』の真価はどこにあるのだろうかを考えてみたい。 ひとことで言えば、本盤でのアート・ペッパーの演奏は切れ味が鋭い。“鋭い”といっても、音そのものがとがっている(という風に聞こえる曲もあるけれど)というのではなくて、演奏から感じ取られる雰囲気が“鋭利”だと言っていい。この喩えが適切なのかどうかわからないけれど、普通は柔らかくそして激しく竹刀を振り回すところを、真剣を持って立ち振る舞っているような感じがする。その真剣は相手を切り付けるために動いているのではなく、居合いの演武のように時に静かに時に鋭く動く。 ペッパーが麻薬中毒に悩まされたことはよく知られている。薬による刹那的な快楽と同様、放たれては消えていくアドリブの音もまた刹那的である。その瞬間的閃きや爆発力に魂を込め、精神を集中させている度合の高さが、上に書いた“鋭さ”につながっているのだろう。 演奏自体はピアノを含むカルテット(当時のアート・ペッパーのレギュラー・カルテット)による演奏で、各メンバーの演奏あってのペッパーのワンホーンなわけだが、その雰囲気を特に支えているのは、ベースのベン・タッカー。冒頭の1.「ブルース・イン」と、締めくくりの8.「ブルース・アウト」は、ベースとサックスのデュエット演奏になっていて、静かに曲が進む中で、居合いのごとき気合と緊張感がひしひしと伝わってくる。もう1曲、この流れで外せないのが2.「魅せられて」で、上記1.から続けて聴くと、この2曲で聴き手側はすっかり本盤の世界に引きずり込まれてしまう。 その一方で、スピードを伴った緊張感の代表例は、4.「クール・バニー」。チャック・フローレス(ドラム)による全体のペースと流れの持っていき方、その合間でのラス・フリーマン(ピアノ)のさりげない好演が光る。その他に筆者のお気に入りとしては、3.「君微笑めば」や6.「サヴォイでストンプ」も外せない。上で触れたベースの役割も、ドラムとピアノの持ち味も発揮されているうえに、ペッパーによる精神集中度の高い演奏が冴えている。さらりと流してしまわずに、じっくりとその密度を体感すればするほど、本盤は、希少性などと関係なく、やはり名盤というのがよくわかるように思う。[収録曲]1. Blues In2. Bewitched3. When You're Smiling4. Cool Bunny5. Diane's Dilemma6. Stompin' At The Savoy7. What Is This Thing Called Love8. Blues Out[パーソネル、録音]Art Pepper (as)Russ Freeman (p)Ben Tucker (b)Chuck Flores (ds)1956年12月28日(1., 2., 6., 7., 8.)、1957年1月14日(3., 4., 5.)録音。 Art Pepper アートペッパー / Modern Art 【CD】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年06月18日
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羊頭狗肉ではあるが、ハードバップのエッセンスがまったりと発揮される好盤 ハンク・モブレー(Hank Mobley)という人は、生きている間には十分に評価されず、その死後(1986年没)も正当な評価をなかなか受けなかった、不遇のジャズ・サックス奏者である。同じテナー奏者で喩えるなら、ジョン・コルトレーンのように先鋭的な演奏をするわけでもなく、かといって、スタン・ゲッツのような優しいプレイや世間受けする演奏スタイルを見せるわけでもない。別に悪意があってこのような悪口めいたことを書いているわけではないのだけれど、おまけに本盤のようなややこしいものがあると、つくべきファンもなかなかつかないということになってしまうのだろうか…。 本盤は『ザ・ジャズ・メッセージ・オブ・ハンク・モブレイVol. 1(The Jazz Message of Hank Mobley)』という。このタイトルを見れば、だれだってハンク・モブレーのリーダー作だと思うに違いない。でも、実際には、モブレーは半分(LP時代のA面の4曲)しか演奏していない。全編を通して演奏に加わっているのは、トランペットのドナルド・バード、あとドラムのケニー・クラークだけである。つまりは、何をもって“モブレーのジャズ・メッセージ”なのかよくわからない。 とまあ、そのような訳なので、アルバムの体裁としては“羊頭狗肉”と言われても仕方ないのだけれど、ハードバップのエッセンスがうまくつまった好作であることは間違いない。アルバム表題は半ば無視して、前半はハンク・モブレーとドナルド・バード中心のセッション、後半はドナルド・バードとジョン・ラ・ポータ(アルト・サックス)のセッションとして聴けばいいのだろう。前半4曲のうち最初の2曲(1.「ゼア・ウィル・ネバー・ビー・アナザー・ユー」、2.「キャッティン」)は、これぞハードバップの到達点と言っていい演奏に仕上がっている。対して続く2曲(3.「マドレーヌ」、4.「恋に落ちたら」)はまったりとした緩やかさの中で、モブレーのサックスに加えてドナルド・バードのトランペット演奏が映える。 続く後半は、ジョン・ラ・ポータの参加で良くも悪くももう少し明るい雰囲気になっている。これら3曲はヴァリエーションに富んでいるし、ドナルド・バードも冴えているのだけれど、前半のモブレーのテナーと比較するといくぶんあっさり味な感じがする。逆に、これがある分、前半4曲でのモブレーの濃さが際立っているとも言えるのかもしれない。冒頭のような表現をしてみたものの、結局のところ、筆者自身はモブレーのこの濃さに魅せられてしまっているということを再確認させられる1枚でもある。[収録曲]1. There Will Never Be Another You2. Cattin’3. Madeline4. When I Fall in Love5. Budo6. I Married an Angel7. The Jazz Message (Freedom for All)[パーソネル、録音]1.-4.: Hank Mobley (ts)Donald Byrd (tp)Ronnie Ball (p)Doug Watkins (b)Kenny Clarke (ds)1956年2月8日録音。5.-7.Donald Byrd (tp)John La Porta (as)Horace Silver (p)Wendell Marshall (b)Kenny Clarke (ds)1956年1月30日録音。 ザ・ジャズ・メッセージ・オブ・ハンク・モブレイ VOL.1/ハンク・モブレイ[CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年06月17日
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キャノンボールらしさ爆発の、白熱ライヴ盤 1928年、フロリダ州タンパ生まれのジュリアン・エドウィン・アダレイ(通称“キャノンボール”・アダレイ)は、1955年にニューヨークに姿を現し、ジャズ・シーンに登場する(その当時の録音に関しては、過去記事(1) や(2) をご覧いただきたい)。その後、キャノンボールは、マイルス・デイヴィスのグループに加わり、『カインド・オブ・ブルー』などのアルバムに参加。同時期には、キャノンボール自身の名義ながら実質的にはマイルスのリーダー作とされる『サムシン・エルス』(関連過去記事)も残している。 そして1959年9月、マイルスの元を離れた彼は自身の新たなレギュラー・クインテットを形成し、活動を展開し始める。アルト奏者である彼自身に加え、実弟のナット・アダレイ(コルネット)、同じフロリダ出身のサム・ジョーンズ(ベース)、A・ブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズの一員だったボビー・ティモンズ(ピアノ)、H・シルヴァーのグループから抜擢されたルイ・ヘイス(ドラム)という5人組。この新グループとしての活動開始後すぐに録音された実況盤がこの『キャノンボール・アダレイ・クインテット・イン・サン・フランシスコ(The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco)』というわけである。 活動開始からわずか1か月ということもあり、発足当初の代表的レパートリー5曲(+CD追加曲1曲)が収められている。キャノンボール・アダレイの評価として、“やっぱファンキーじゃないと”という向きがあるが(といっても、筆者自身はそうでない彼のもう一つの顔も好きなのだが)、本作はその意味ではどんぴしゃりの白熱した演奏盤。美しさや情緒といった要素で聴かせるのではなく、勢いと迫力で聴かせる曲が並んでいる。 他方、ジャズ・ファンの間にある不思議な現象の一つに、“ジャズはライヴで聴かないと”という割に、実際のライヴ盤への評価が必ずしも高いわけではない(作品評価の際にはなぜかスタジオ盤が偏重されがち)という、ある意味で不可解な傾向がある。けれども、上で述べた“やっぱファンキーじゃないと”のノリは、ある意味、ライヴでこそ最大限に発揮されるのだろう。実際、キャノンボールがジャズ・シーンに登場した当初(1955年)の作品はあまり売れなかったが、本盤はセールス的にも成功を収め、ここから始まるリバーサイドでの多くの録音(さらには結果として多数のライヴ録音盤の制作)へと実を結んでいった。 最後に、個人的おすすめのポイントをいくつか挙げておきたい。1.「ジス・ヒア」の安定感とグル―ヴィーさのバランスがいい。単に二管(アダレイ兄弟)が絡むのではなく、そこに加わるピアノのボビー・ティモンズの重要さがよく分かる上、この曲はティモンズの作とういのも納得。同じような安定感とスリリング感の同居は、2.「スポンテニアス・コンバスション」にもよく表れていて、曲調の違い(こちらはキャノンボールのオリジナル)こそあれ、最初の2曲の演奏でこのグループのスタイルが見事に表現されていると感じる。それから聴き逃せないのは、5.「ボヘミア・アフター・ダーク」。完成度という意味では、初期のこちらの演奏の方が断然お気に入りなのだけれど、この勢いと盛り上がりは本盤ならでは。ある意味、この5.の演奏は本盤の特徴を体現しているようにすら思えてくる。[収録曲]1. This Here2. Spontaneous Combustion3. Hi-Fly4. You Got It!5. Bohemia After Dark6. Straight, No Chaser *CD追加曲[パーソネル、録音]Cannonball Adderley (as)Nat Adderley (cor)Bobby Timmons (p)Sam Jones (b)Louis Hayes (ds)1959年10月18・20日(サンフランシスコ、ジャズ・ワークショップでの実況録音)。 【after20130610】[枚数限定]イン・サン・フランシスコ ◇/キャノンボール・アダレイ[CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年06月14日
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