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100万アクセス記念 いま聴きたい名曲~拡大版(ジャズ編:その3) 先のソニー・ロリンズ(「セント・トーマス」)に続き、さらにもう一つ超有名曲を取り上げてみようと思います。中身だけでなくジャケットも有名なソニー・クラーク(Sonny Clark)の『クール・ストラッティン』に収録の表題曲「クール・ストラッティン(Cool Struttin’)」です。 よく言われることですが、この盤は日本で異様に人気が高い一方で、米国ではさほど記憶にとどめられている作品ではありません。ソニー・クラークの没後20年以上を経て(彼は1963年に31歳で亡くなっています)、1986年に日本で第1回マウント・フジ・ジャズ・フェスティバルが行われました。この場でジャッキー・マクリーンをフロントに据えたトリビュート・バンドがこの曲を演奏しています(ちなみにピアノはセダー・ウォルトンです)。 演っているミュージシャンが驚いてしまうほどの、この異様なまでの聴衆の盛り上がり。会場にいたら、この映像で見るよりもさらにすごかったのだろうと思います。[収録アルバム]Sonny Clark / Cool Struttin’(1958年録音) 【楽天ブックスならいつでも送料無料】クール・ストラッティン+2 [ ソニー・クラーク ] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2016年02月17日
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100万アクセス記念 いま聴きたい名曲~拡大版(ジャズ編:その2) さて、第2回は一転してスロー・バラード、しかもトロンボーンのワンホーンによるこのナンバーです。カーティス・フラー(Curtis Fuller)の『ジ・オープナー』に収録されている「素敵な夜を(A Lovely Way To Spend An Evening)」。フロント楽器としてのトロンボーンの魅力がよく伝わってくる演奏です。 表題は日本語では「素敵な夜を」となっていますが、原題では“イブニング”ですので、正確には “宵”あるいは“夕宵”といったところでしょうか。つまりは、夜更かしして過ごす“夜”というよりは、日暮れ頃から普通に就寝するまでの“夜”の時間ですので、この曲を聴いたからといって、深酒などなきように(笑)。 さて、もう少し新しい吹込みによるこの曲の演奏もあげておきたいと思います。2009年に亡くなったエディ・ヒギンズ(Eddie Higgins)の晩年のスタンダードの吹込みにおけるこの曲をお聴きください。 日本語の表題は「恋に過ごせし宵」となっていて、同名アルバムの表題曲として収録されています。[収録アルバム]Curtis Fuller / The Opener(1957年録音)Eddie Higgins Trio / A Lovely Way To Spend An Evening(2006年録音) 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ジ・オープナー [ カーティス・フラー ] 恋に過ごせし宵/エディ・ヒギンズ・トリオ[CD][紙ジャケット]【返品種別A】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2016年02月16日
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100万アクセス記念 いま聴きたい名曲~拡大版(ジャズ編:その1) さて、ここからは100万アクセス記念の第二弾として、ジャズ編(全10回)をお届けします。どんな曲を取り上げるかは進めながらその時の気分で考えることにしますが、今まで曲単位で取り上げる機会のなかった有名曲もなるべく取り込んでいきたいなどと考えています。 そんなわけで、第1回はソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)の「セント・トーマス(St. Thomas)」です。このサックス奏者のみならず、ジャズという音楽そのものの代表盤とされることも多い『サキソフォン・コロッサス』所収の名演です。 いまさらこれを評するのも野暮と言われそうですが、冒頭のテーマ(1分程)の後、“ブブッ”あるいは“バブッ”という意味不明音が聞こえてきます。間合いをはかりながらタイミングがあったところで一気にアドリブが展開していくのが聴きどころの一つです。それから、何と言っても中盤のドラムソロ後のサックスが入る瞬間の爽快感! 上の動画では3分53秒にその瞬間が訪れます。 これだけ素晴らしい演奏をされては、後進たちには試練の曲になるんじゃないか、そう思った人もいるかもしれません。楽器が異なるとはいえ、何とも爽快なピアノのこんな演奏があったりしますので、ついでにもう1本動画をご覧ください。1980年代に登場し、“超技巧”で鳴らしたピアニスト、ミシェル・カミーロ(ミッシェル・カミロ、参考過去記事(1) ・(2) ・(3) )の解釈による「セント・トーマス」です。 [収録アルバム]Sonny Rollins / Saxophone Colossus(1956年録音)Michel Camilo / Thru My Eyes(1996年録音) 【楽天ブックスならいつでも送料無料】サキソフォン・コロッサス [ ソニー・ロリンズ ] 【送料無料】 Michel Camilo マイケルカミロ / Thru My Eyes 輸入盤 【CD】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2016年02月16日
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歌心満開の“お手本”的アルトの愉しさ ジャンルを問わず、表題を見て“何だこれは?”的なアルバムに出会うことがある。本盤の表題の“37分48秒”っていうのも、下手すると何かのスポーツのタイムかと思わされてしまう。例えば、プロレスで“37分48秒、フォール勝ち”とか…(笑)。 と言うのは半ば冗談であるが、表題の通り、ソニー・スティット(Sonny Stitt)のアルト演奏が37分48秒にわたって繰り広げられるというのが、本盤『37ミニッツ・アンド・48セカンズ(37 Minutes and 48 seconds with Sonny Stitt)』。作った当時はレコードというフォーマットが将来変わるとは思わなかったろうからやむを得ないのだろうけれど、CD化されたら収録時間が微妙にずれてしまった(もはや苦笑するしかない)。結果、筆者の手持ちにあるCDの収録時間は39分2秒。やはり安直な表題は止めておくべきだったというべきか…(笑)。 それはともかく、このアルバムは、ソニー・スティットのキャリアの中で特によかったと評されることの多い1950年代後半のアルトのワンホーン盤の一つである。一言で印象を述べるならば、スティットは爽快に“歌っている”。たとえば、自作曲の3.「ウィンディ・ライド」なんかはその典型例の一つだろう。表題の如く、風に乗って軽快に“歌”を奏でている。安定したトリオ(特にドロ・コッカーのこの軽快に流れるような感じを作り出せるところが筆者的は好み)をバックに実に気持ちよく吹いている。 このような観点に立つともはや捨て曲なしの好演奏が並ぶ、これぞ“お手本”的なアルト演奏だと言っていいように思う。なので上の3.も含めて特定の曲がどうこうというのも何なのだけれど、やはりこれはという曲いくつかには一応触れておきたい。1.「ビコーズ・オブ・ユー」は冒頭にふさわしい、落ち着きを持ちつつも軽やかさが如実に出た演奏。4.「バット・ノット・フォー・ミー」の余裕いっぱいの軽快さも、7.「スウィート・ジョージア・ブラウン」のテンポにのったスピードある軽快さも、通底するのは上で述べたような歌心。最後を締めくくる曲がチャーリー・パーカーの9.「スクラップル・フロム・ジ・アップル」というのもなかなか気が利いている。[収録曲]1. Because of You2. Blue Moon3. Windy Ride4. But Not for Me5. What Is This Thing Called Love?6. Harlem Nocturne7. Sweet Georgia Brown8. Blues For Yard9. Scrapple from the Apple[パーソネル・録音]Sonny Stitt (as)Dolo Coker (p)Edgar Willis (b)Kenny Dennis (ds)1956年末(1957年1月?)録音。 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2015年12月29日
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表題曲の“漲るパワー” ジョン・コルトレーン(John Coltrane, 1926-1967)が第一線で活動したのは10年余りだったが、ハード・バップから脱却し、独自の音楽性を模索していったいわゆる中期(1959~61年)の作品の一つがこの『アフリカ/ブラス』である。この時期、コルトレーンは当初はアトランティック・レーベルに籍を置き、『ジャイアント・ステップス』や『マイ・フェイヴァリット・シングス』などを吹き込んでいるが、1961年にはインパルスへと移籍する。その移籍後第1弾となったのが本作だった。 リラックスして聴けない(ある意味、聴くには気合と体力が必要)なのは、近い時期の他の盤と共通しているのだけれど、本盤の聴きどころは何よりも“漲るパワー”にある。表題曲の1.「アフリカ」が何よりもそうなのだけれど、“ブラス”と言われて一般に人が想像するもの(ビッグ・バンド的なイメージ)とはまったく異なる。ブラスが全体を支配するのではなく、出るべきところだけ出てくる感じなのである。そうして出てきたブラスの上をコルトレーンがモーダルに吹きまくる。そうしたパートのかっこよさは何物にも代えられない。 おすすめ曲は(といってもそもそも収録されているのは3曲だけれど)、断然、上記の1.「アフリカ」。余談ながら、近頃のネットでの音楽配信(楽曲購入)は曲単位で売られるわけだけれど、“1曲いくら”という発想でジャズ・アルバムも販売が進んでいくのであれば、これほどお得なものはないということになるだろう。16分以上続き(よって冒頭で述べたように、聴くのも一苦労)、しかも中身が濃い(否、濃すぎるぐらい)。そもそもLPのA面全部なわけだから当たり前か…。[収録曲]1. Africa2. Greensleeves3. Blues Minor[パーソネル、録音]John Coltrane (ss, ts)Pat Patrick (bs) Freddie Hubbard (tp-2.), Booker Little (tp) Britt Woodman (tb-1.& 3.) Julian Priester (euphonium-2.), Charles Greenlee (euphonium-2.), Carl Bowman (euphonium-1.& 3.)Bill Barber (tuba) Garvin Bushell (piccolo, woodwinds-2.)Julius Watkins (french horn), Jim Buffington (french horn-2.), Bob Northern(french horn), Donald Corrado (french horn), Robert Swisshelm (french horn)Eric Dolphy (as, bass cl, fl)McCoy Tyner (p)Reggie Workman (b-2.& 3.), Art Davis (b-1.&3.)Elvin Jones (ds)1961年5月23日(2.)、6月7日(1.& 3.)録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【まとめ買いでポイント最大10倍】アフリカ~ブラス [ ジョン・コルトレーン ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2015年12月13日
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楽しませることを忘れない、本領発揮のピアノ・トリオ盤 ドン・ランディ(Don Randi)は1937年ニューヨーク生まれのピアノ奏者。1960年代にリーダーとして代表的な吹き込みを残しているが、そのうち最も知られているのは『枯葉(原題:Where Do We Go From Here?)』だろう。そして、同盤と同じ年に同じくヴァ―ヴに吹き込まれたライヴ演奏盤がこの『ラスト・ナイト(Last Night)』である。 編成は上記『枯葉』と同じくピアノ・トリオでの演奏。ただしメンバーは入れ替わっている(ベースはノーム・マッケイ、ドラムはエディ・ルビン)。録音日が2日間にわたっているが、ロサンゼルスのクラブ「シェリーズ」での実況録音で、2日間のライヴ演奏からピックアップされたものである。そのせいもあるのか、聴き手を楽しませるために陽気な演奏から技術的に難しいもの、さらにはちょっと気を利かせたナンバーまで、選曲の幅が広い。だから散漫というよりは、聴いてて飽きない、というのが本盤の特徴になっているように思う。 聴きどころはいろいろと挙げられそうだけれど、ひとまずここでは個人的に気に入った部分を挙げてみたい。娘の名から表題を採ったオリジナル曲の1.「ロリ・エレン」の小気味よく、なおかつテクニックのいりそうな演奏。聴き手を楽しませるよう意図しながら技術を織り込んだ演奏を繰り広げるというのは、店名に引っ掛けたと思われるタイトルの4.「シェリー・ブルー」なんかにも顕著に出ていると思う。他には6.「ハニー・サックル・ローズ」もスピード感いっぱいの右手が、技術の披露と観客を楽しませることを同時にやっているようで、聴いていて面白い。 上で挙げた以外の側面で楽しめる部分もいくつか挙げてみたい。自作曲の3.「タヒチアン・ララバイ」は、妻の出身地がタヒチとのことだが、なるほどリゾート気分をうまく奏でている。この“間延び感覚”はライヴの抑揚を考えてのことなのかと思える。同様に、7.「サーフ・ソング」のゆったりとしながら、ピアノトリオの一体感を次第に盛り上げていく展開というのも、同じくライヴらしさを意図したことから来た演奏だろうかと想像する。最後に、もう一点だけ付け加えておくと、9.「ゴッド・レスト・イエ・メリー・ジェントルマン」はクリスマス・ソング。録音が12月だったということもあるのだろうけれど、こんなところにも聴衆を楽しませようとする意図が見える。[収録曲]1.Lori Ellen2.Raisins and Almonds 3.Tahitian Lullaby 4.Sherry Blue5.Softly As In A Morning Sunrise 6.Honeysuckle Rose 7.Surf Song 8.Makin' Whopee9.God Rest Ye Merry, Gentlemen10.Dyyanu[パーソネル、録音]Don Randi (p)Norm McKay (b)Eddie Rubin (ds)1962年12月14・15日録音。下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年11月23日
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1958年吹き込みのオリジナル・クインテット盤 1955年にシーンに登場したキャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)は、レギュラーのクインテットを形成し、演奏や吹込みを重ねていったが、本盤『シャープシューターズ(Cannonball’s Sharpshooters)』は、初期クインテットでの録音盤。日付の近さからいくと、これらセッションの数日後の『サムシン・エルス』がある。けれども、内容的には、前年の『ソフィスティケイテッド・スウィング』や、それに続く『キャノンボール・アンルート』の流れの中にある作品で、実際、これら3作は少しずつ音源が重なっている。 過去にも書いたように、もう少し後の、“ファンキー”という言葉がついて回る演奏に人気が集まるきらいもあるけれども、これら初期のキャノンボールの演奏を筆者は気に入っている。スタンダードを伸びやかに演奏するところが何よりも心地いい。本盤はスタンダードとバップ・ナンバーとが組み合わされたような選曲で構成されている。 スタンダードでの伸びやかな気持ちよさの典型例としては、3.「ホワッツ・ニュー」が挙げられる。さらに、CD追加曲の同じくスタンダード曲の「四月の思い出」も加えてもよい。他に同様の心地よさを特に感じる演奏としては、5.「イフ・アイ・ラヴ・アゲイン」が個人的には外せない。 さらに、この当時の彼らしい演奏という点では、「フラー・バップ・マン」も楽しめる。本テイクの8.は4分足らずで終わってしまい拍子抜けするが、CDボーナストラックで追加された7.の方は9分近くの演奏時間である。よくあるさほど意味のない追加曲(同じような演奏の別テイクをCDに入るからといって追加しても、実際には一部のマニアにしか聴かれない)と違って、こういうのこそLPに収録時間がもっとあったら入っていたであろうというテイク。奔放で伸びのあるキャノンボールの演奏がやはり気持ちいい。ちなみに、“フラー”といっても、作曲者はカーティス・フラーではないので間違いなきよう。ギル・フラー(ウォルター・ギルバート・フラー、1930~40年代に特に活躍したジャズ作曲家・アレンジャー)の作品である。[収録曲]1. Our Delight2. Jubilation3. What's New?4. Straight, No Chaser5. If I Love Again6. I’ll Remember April *CD追加曲7. Fuller Bop Man-別テイク- *CD追加曲8. Fuller Bop Man9. Stay on It[パーソネル、録音]Julian 'Cannonball' Adderley (as)Nat Adderley (cor)Junior Mance (p)Sam Jones (b)Jimmy Cobb (ds) 1958年3月4日(1.~4.)、6日(5.~9.)録音。 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2015年11月18日
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“幻のトランペット奏者”の第1作 ルイ・スミス(Louis Smith,ルイス・スミス)は、1931年テネシー州メンフィス出身のジャズ・トランペット奏者(84歳の現在も存命中)。1958年から2004年に至るまで10数枚のアルバムを吹き込んでいるが、キャリア当初はすぐにいったん身を引いたため、その録音は少なく、1950年代には2枚のリーダー作をブルーノートに残しているに過ぎない(その後は1970年代に2枚、1990年代~2000年代に残りのアルバム作品を発表)。 本盤『ヒア・カムズ・ルイ・スミス(Here Comes Louis Smith)』は、ブルーノートで最初に出された彼の作品であるが、厳密にはブルーノートで制作された作品ではない。プロデューサーとしてトランジションなるレーベルを設立したトム・ウィルソン(このプロデューサーは後にボブ・ディランのプロデュースなどを手掛けることになる)が吹き込んだものであった。つまりは、同レーベルの倒産によって宙に浮いた音源をブルーノートのオーナーのアルフレッド・ライオンが買い取り、レコード化したものであった。 デビュー盤と言っても完成度は高い。ダグ・ワトキンス(ベース)のほか、アート・テイラー(ドラム)とトミー・フラナガン(3., 4., 6.のピアノ)ならびにデューク・ジョーダン(1., 2., 5.のピアノ)が演奏をぐいぐいと牽引する。バックショット・ラ・ファンク(Buckshot La Funke)なるクレジット名のアルト・サックス奏者(4.を除く)も登場するが、これはキャノンボール・アダレイその人。当時すでにエマーシーと契約していたキャノンボールが変名で登場しているという訳である。 ルイ・スミスのトランペットは、ブラウニーのような天才的な響きとは違って、勢いと温かみの両方を備えている。筆者のおすすめは、1.「ブラウニーに捧ぐ(トリビュート・トゥ・ブラウニー)」の勢いに乗った演奏と、有名バラード曲の4.「スターダスト」での美しく温かみのあるトランペット演奏。また、2.,3.,5.,6.と計4曲の自作曲が収録されているが、これらの中では、スローテンポのブルースである2.「ブリルズ・ブルース」と、妻の名をとった3.「アンデ」が個人的には気に入っている。[収録曲]1. Tribute to Brownie2. Brill's Blues3. Ande4. Stardust5. South Side6. Val's Blues[パーソネル・録音]Louis Smith (tp)Buckshot La Funke [Cannonball Adderley](as: 1.~3., 5., 6.)Tommy Flanagan (p: 3., 4., 6.)Duke Jordan (p: 1., 2., 5.)Doug Watkins (b)Art Taylor (ds)1., 2., 5.: 1958年2月4日録音。3., 4., 6.: 1958年2月9日録音。 [期間限定][限定盤]ヒア・カムズ・ルイ・スミス/ルイ・スミス[CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年11月15日
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初めて聴く人にもおすすめのコニッツ盤 リー・コニッツ(Lee Konitz)は、1927年シカゴ出身で、現在(2015年)も88歳で存命中のジャズ・サックス奏者。1950年代から2000年代までコンスタントに作品を発表しており(2010年代に入っても新しい作品が出ている)、比較的新しい(年配になってからの)作品は聴きやすいが、若い頃のコニッツは難解だなどと評されることもある。 でも、初期コニッツを聴かないのはもったいないと思う。本盤『インサイド・ハイ・ファイ(Inside Hi-Fi)』は、1956年録音でそうした“とっつきにくい”時代のコニッツ盤であるものの、比較的とっつきやすいんじゃないかと個人的には思っている作品なのである。 何よりもまず、コニッツの演奏は“くねくね”している。“真っ直ぐな感じではない”と言い換えてもいいかもしれない。具体的に言うと、テーマなのかアドリブなのかよく分からなかったり、メロディになっているのかなっていないのか微妙な境界線を彷徨うようなフレーズが現れる。ジャズ・サックスの世界ではチャーリー・パーカーの影響から免れなかった奏者はほぼ皆無ではないかと思われるけれど、このリー・コニッツのサックスは本当に我が道を行く感じで、アドリブの可能性を試すのにパーカーとは全然違う方向を向いていたんだろうと思う。 クール・ジャズの理知的なイメージはあるものの、それが美しいアドリブやさらりときまったフレーズになって体現されているかというと、あまりそうとは言えない。“くねくね”とした音の連なりがメロディとして成立していく瞬間みたいなものがコニッツの真骨頂という気がする(したがってどこまでがテーマかアドリブかよく分からない雰囲気で演奏が展開されていったりする)。本作品ではアルトとテナー・サックスおおむね半々というの注目点だが、どちらを手にしても、上記の特徴は一貫している。 前半(1.~4.)は、ピアノレスであることとギター(ビリー・バウアー)の存在とがいい効果を上げている。サックスとギターが二管のユニゾンのように響くのが何ともスリリング。個人的には、この前半では、特に1.「ケアリーズ・トランス」がお気に入りである。後半(5.~8.)はピアノを加えたよりスタンダードな編成だが、コニッツのテナーの演奏が聴かれる。賛否が分かれるところかもしれないが、ふだんアルトで聴きなれた例の“くねくね感”(もしくは“ひらりはらり”のメロディ)をよりふくよかさのあるテナーの音で聴くのは、個人的にはなかなか心地よいと思っている。[収録曲]1. Kary's Trance2. Everything Happens To Me3. Sweet And Lovely4. Cork 'N' Bib5. All Of MeKary's Trance6. Star Eyes7. Nesuhi's Instant8. Indiana[パーソネル、録音]1.~4.:Lee Konitz (as) Billy Bauer (g) Arnold Fishkind (b) Dick Scott (ds) 1956年10月16日録音。 5.~8.:Lee Konitz (ts) Sal Mosca (p), Peter Ind (b) , Dick Scott (ds) 1956年9月26日録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【まとめ買いでポイント最大10倍】JAZZ BEST COLLECTION 1000::インサイド・ハイ・ファイ [ リー・コニッツ ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2015年11月12日
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晩年作のライヴ録音盤 コールマン・ホーキンス(Coleman Hawkins)は、1904年生まれ(1969年没)のテナー奏者。1920年代からという長いキャリアの中で、本盤は彼の晩年作と言えるものである。この人の特徴は時代の流れとともに新しいスタイルに対応していった点であると言われたりもする。確かに、この盤でも、トミー・フラナガン(この頃は彼とのカルテットで活動していた)ら若い世代のミュージシャンと違和感なく演奏を繰り広げている。 本盤『ジェリコの戦い(原題:Hawkins Alive! At the Village Gate)』は、原題の通りのライヴ録音盤である。邦訳タイトルはライヴ録音であることがわかりにくい表題ではあるものの、あながちはずれではなく、本盤最大の聴きどころである2.「ジェリコの戦い」をそのままタイトルにしている。 邦訳の表題曲になっている2.「ジェリコの戦い(ジョシュア・フィット・ザ・バトル・オブ・ジェリコ)」は、元は19世紀前半の奴隷社会から派生したとされる黒人霊歌で、気迫のこもったホーキンスのソロは、彼のベストプレイの一つとも言えるんじゃないだろうか。もちろん、それを支えるリズム・セクションのよさもこの曲では特に際立っている。 他に本盤で気に入っているのは、1.「オール・ザ・シングズ・ユー・アー」。ホーキンスは、テンポを上げての軽快さの余韻を漂わせながらこのバラードを滑らかに展開していく。それから、彼らしいバラード曲の4.「町の噂(イッツ・ザ・トーク・オブ・ザ・タウン)」。“らしさ”が発揮された、期待を裏切らない抒情的な演奏がいい。[収録曲]1. All the Things You Are2. Joshua Fit the Battle of Jericho3. Mack the Knife4. It’s the Talk of the Town~以下、CD追加曲~5. Bean and the Boys6. If I Had You[パーソネル、録音]Coleman Hawkins (ts), Tommy Flanagan (p), Major Holley (b), Ed Locke (ds)1962年8月13日・15日、ニューヨーク“ヴィレッジ・ゲイト”でのライヴ録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【まとめ買いでポイント最大10倍】ジェリコの戦い +2 [ コールマン・ホーキンス ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年11月08日
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西海岸ジャズの名作~“踊り子”と“お風呂”(後編) さて、前編に続き、西海岸ジャズを代表する一人であるマーティ・ペイチ(Marty Paich)の代表作のもう一枚について見ていきたい。前回の“踊り子”こと『ブロードウェイ・ビット』の姉妹編とされるのが、本作『ア・ゲット・ア・ブート・アウト・オブ・ユー(I Get A Boot Out Of You)』という作品である。本アルバムは、ジャケット写真に入浴中の女性の写真が使われていることから、通称“お風呂”と呼ばれる。 『ブロードウェイ~』と本作は、ワーナー・ブラザーズのレーベルから2枚だけ出された彼のリーダー作であり、ジャケットのできもよく、かつては希少盤として知られた2作品である。多くのメンバーが共通していて、録音時期は1ヶ月半ほどの間隔しか空いておらず、姉妹盤としてセットで語られるのはそのためである(とはいえ、近い時期の同じような編成としては、マーティ・ペイチ名義ではない『アート・ペッパー・プラス・イレヴン』などの盤も存在するのだけれど)。 さて、前編で見た『ブロードウェイ~』がブロードウェイ・ミュージカルのスタンダード選であったのに対し、本盤『アイ・ゲット・ア・ブート~』の方は、ジャズのスタンダード曲を中心とする選曲(うち4曲はデューク・エリントンのナンバー)でまとめられている。大きな編成の指揮者ぶりが冴えているのは、先の作品同様だけれど、こちらの盤の方が、各ソロなどでの個人の存在感がやや大きい印象で、全体のアンサンブルの中で短い個人プレイが随所に光るといった風の曲が多い。 聴きどころと個人的に思うものをいくつか挙げておこう。冒頭の1.「スウィングしなけりゃ意味ないね」は、上で述べたような短いソロを含む全体のアレンジが際立ったナンバー。一人がじっくり聴かせることもない代わりに、立ち代わり入れ替わりの愉しさがある。3.「ラヴ・フォー・セール」は全体の勢いとアレンジの勝利。4.「モーニン」は本盤のコンセプトからすると難しかったのでは二かと想像するけれども、アルバム全体の雰囲気に馴染んでいるのは、結局のところ、編曲者(そして全体の統率者)としてのマーティ・ペイチの力量ではないだろうか。メドレーになっている6.「ホワット・アイ・アム・ヒア・フォー/コットンテイル」の軽快なアレンジも心地よい。大人数だけれども仰々しくない、かといって、個別演奏者のソロをじっくり聴かせる仕立てでもない。この微妙なバランスが、今回の2枚の盤のキモということだろうか。 ところで、今回の2枚はジャケットのデザイン(写真)がコレクターに重宝されるかつての“希少盤”でもあった。美女系ジャケットに魅力を覚えるか否かは、経験上、意見の分かれるところ(ただしジャズ愛好者には賛成派が多い)と思うのだけれど、これをお読みの皆さんの意見はいかがだろうか。ちなみに筆者はと言われれば…、悪くはないけど、血眼になるほどでもない、という微妙な立場なのだけれど。[収録曲]1. It Don't Mean A Thing2. No More3. Love For Sale4. Moanin'5. Violets For Your Furs6. What Am I Here For / Cotton Tail7. Warm Valley8. Things Ain't What They Used To Be[パーソネル、録音]Marty Paich (p, arr), Jack Sheldon (tp), Al Porcino (tp), Conte Candoli (tp), Bob Enevoldsen (v-tb), George Roberts (b-tb), Vince DeRosa (fhr), Art Pepper (as), Bill Perkins (ts), Bill Hood (bs), Vic Feldman (vib), Russ Freeman (p), Joe Mondragon (b), Mel Lewis (ds)1959年6月30日、7月2日、7月7日録音。 [枚数限定][限定盤]アイ・ゲット・ア・ブート・アウト・オブ・ユー/マーティ・ペイチ[CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年10月28日
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西海岸ジャズの名作~“踊り子”と“お風呂”(前編) マーティ・ペイチ(Marty Paich)は、ピアニストであると同時に、偉大な編作曲家であり、そして偉大なプロデューサーだったという風にも言えるだろう。音楽全般の“指揮者”と言い換えてもいいかもしれない。1950年代、西海岸(ウェスト・コースト)ジャズの隆盛に寄与し、1960年代以降は多ジャンルな音楽に関わった(後年には自身の息子デヴィッド・ペイチを含むTOTOや、マイケル・ジャクソンなどにも関わった)後、1995年に70歳で亡くなっている。 そのようなわけで、ある人は、西海岸ジャズというキーワード(場合によっては、アート・ペッパーという人気サックス奏者経由)から、またある人は、TOTOの中心メンバーの父親という繋がりから、いろんなルートでこのマーティ・ペイチにたどり着くのではないだろうか。そして、マーティ・ペイチに行き着いた聴き手の目をしばしば引くことになる有名盤が、今回の連載で取り上げる2枚、通称“踊り子”と“お風呂”なわけである。 本盤『ブロードウェイ・ビット(The Broadway Bit)』は、ジャケット写真(楽屋の踊り子の写真)から、ファンの間では“踊り子”という名で親しまれている。内容も、表題およびジャケ写が示すように、ブロードウェイ関係のスタンダードを取り上げている。ペイチ自身を含めて12人からなる編成で、ちょっとしたビッグ・バンド的サウンドが特徴となっている。この編成からわかるように、本盤は、特定奏者の演奏で聴くタイプの盤とは、ある意味、対極にあるように思う。確かに、演奏に参加しているアート・ペッパーやスコット・ラファロを目当てで聴く人もいるのだろうけれど、一義的には、“個人を聴く盤”というよりもやはり“総体として楽しむ盤”なのだろうと感じる。 私見で聴きどころと言えそうな曲をいくつかピックアップしてみたい。1.「私は御満足(イッツ・オールライト・ウィズ・ミー)」は、アンサンブル向けの編成を生かして軽快なテンポと独自の編曲による展開が何とも爽快にして痛快で、本盤の特徴をよく表している1曲。こうした特徴のうち大きな編成を生かして軽快にという点では、3.「アイヴ・ネヴァー・ビーン・イン・ラヴ・ビフォー」や5.「トゥー・クローズ・フォー・コンフォート」もその典型例として挙げられるだろう。他方の編曲の妙と各種の楽器のうまいまとめ上げ方は、4.「アイ・ラヴ・パリ」や7.「イフ・アイ・ワー・ア・ベル」なんかで生かされている。あと個人的な好みをもう一つ付け加えておくと、フレンチホルンのゆったりとした音色が印象的な8.「レイジー・アフタヌーン」。メインになる曲というよりは“間に挟まれている曲”ではあるのだが、“もう一度”とかいいつつつい繰り返して聴きたくなってしまう。(後編へつづく)[収録曲]1. It's All Right With Me2. I've Grown Accustomed To Her Face3. I've Never Been In Love Before4. I Love Paris5. Too Close For Comfort6. Younger Than Springtime / The Surrey With The Fringe On Top7. If I Were A Bell8. Lazy Afternoon9. Just In Time[パーソネル、録音]Marty Paich (p, arr), Frank Beach (tp), Stu Williamson (tp, v-tb), George Roberts (tb), Bob Enevoldsen (v-tb, ts), Vince DeRosa (fhr), Art Pepper (as), Bill Perkins (ts), Jimmy Giuffre (bs, cl), Victor Feldman (vib, perc), Scott LaFaro (b), Mel Lewis (ds)1959年5月13日録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】JAZZ BEST COLLECTION 1000::ブロードウェイ・ビット [ マーティ・ペイチ ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年10月26日
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一見怖い(?)ジャケットに惑わされず楽しもう ウォルター・デイヴィス・Jr.(Walter Davis Jr.)は、1932年、ヴァージニア州リッチモンド生まれのジャズ・ピアノ奏者。1950年代に頭角を現すも、一旦は引退してテイラーやデザイナーの仕事をした後で1970年代に復帰。1980年代にも活躍した後、1990年に57歳で他界している。 写真(例えばウィキペディアにはこんなのが掲載されている)を見ると、何とも野性的な風貌で、無骨な演奏を身上とする人かと錯覚すらしてしまうかもしれない。本盤のジャケットも同様で、お世辞にも“上品な感じ”や“いい人っぽい感じ”のジャケットとは言い難い。 ところがこの人は、何ともすぐれた作曲家であり、興味深い演奏者なのである。ドナルド・バードとの知古によってブルーノートの吹込みに参加するようになる。最初はジャッキー・マクリーンの『ニュー・ソイル』に参加し、その後はドナルド・バードの『バード・イン・ハンド』(ただし発売の順は後となる)、そして自身のリーダー作を吹き込んだ。それがこの『デイヴィス・カップ(Davis Cup)』ということになる。 ブルーノートでの初にして唯一のレコーディングには、全曲が書下ろしのオリジナルで占められている。タイトルの『デイヴィス・カップ』というのは、この人の姓とテニスの国際大会名(デビスカップ)をひっかけたもの(といっても演奏内容は国別対抗戦でも何でもないのだけれど)。上に触れたマクリーンのアルトとバードのトランペットを含むクインテット編成での演奏盤である。 収録された各曲を見ると、何よりの特徴はウォルター・ディヴィスJr.自身の作曲の個性と言えるかもしれない。1.の「スメイク・イット」もそうだけれど、何といっても4.「ルンバ・ヌンバ」。好みは分かれるかもしれないが、“他の人にもできるかもしれない作編曲”と“絶対にこの人にしかできない作編曲”みたいな分け方をするならば、圧倒的に後者の典型例なのだろうと思う。 もう一つの特徴は、全体の明るさと勢い。彼のピアノは愉しさに溢れていて、音だけを聴いていても演奏している本人の楽しそうな顔が想像できてしまう。それでいて、全体を引っ張っていくスウインギーさがあり、それがあってこそのジャッキー・マクリーンとドナルド・バードの演奏と言うことになるのだろう。バードも好調だけれど、本盤のマクリーンは特に好演を繰り広げていて、筆者のお気に入りでもある。[収録曲]1. 'S Make It2. Loodle-Lot3. Sweetness4. Rhumba Nhumba5. Minor Mind6. Millie's Delight[パーソネル・録音]Walter Davis Jr. (p)Donald Byrd (tp)Jackie McLean (as)Sam Jones (b)Art Taylor (ds)1959年8月2日録音。Blue Note 4018 【CD】デイヴィス・カップ/ウォルター・デイヴィスJr. [TOCJ-8560] ウオルター・デイビス・ジユニア 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2015年10月24日
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バランス十分、技術も十分、楽しめる好盤 ソニー・クリス(Sonny Criss,1927-77年)という人のミュージシャン人生は、振り返ってみれば、決して恵まれたものではなかった。生まれ故郷のテネシー州(メンフィス)から15歳でロサンゼルスに移り住み、やがて音楽活動を続けていく中でインペリアル・レコードと契約し、ニューヨークでも録音を開始する。しかし、様々な理由から幅広い大衆的人気を得るには至らず、1950年代を不遇のうちに過ごした彼は60年代に入ってヨーロッパへと渡る。数年の滞在の後、1965年にロスに戻り、やがてプレスティッジなどでいくつもの好作を吹き込むものの、1977年に癌を発症。同年に亡くなっている(一般にはピストル自殺とされる)。 他の名だたるジャズ演奏家たちに比べ、キャリアとしてはぱっとしないが、作品内容は別。以前に他の記事にも何度か書いたように、筆者はソニー・クリスが大のお気に入りなのである。その中でも、本盤は特にひいきの部類に入る。本盤『アット・ザ・クロスローズ(At The Crossroads)』は、1959年シカゴでの録音。演奏旅行でシカゴに赴いた際に、テキサス州ヒューストンを拠点とするピーコックなるレーベルが吹込みを行ったということのようだ。ちなみに、ピーコック・レーベルは、ブルース~R&B~ゴスペルを手掛けていたが、ジャズにも手を伸ばし、この録音を行った。 この時期、ソニー・クリスは不遇の時代を送っていたようだけれども、演奏内容は最初のピーク(1956年頃)の延長線上にあり、かなりおすすめである。30歳を過ぎた彼は、若さに任せて吹くでもなく、情感をうまくコントロールしながら音に表すテクニックに長けていた。したがって、一義的には彼のサックスを楽しむ盤と言える。 収録曲の中で個人的なおすすめをいくつか挙げておきたい。今回のおすすめの基準はソニー・クリス節の炸裂度合によるのだけれど、ベストは1.「スウィート・ロレイン」と4.「シルヴィア」。次いで、5.「朝日の如くさわやかに(ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ)」と7.「インディアナ」。スタンダードを演っても、自作曲を演っても、同じように見事なクリス節というのは、ワンパターンと批判する人もいるかもしれないが、安定感があることの裏返しでもあり、聴いていて素直に心地いい。 無論、バックの演奏のよさも無視できない。一つの注目点は、トロンボーン奏者のオレ・ハンセン(1.と3.を除く各曲で登場)。決してでしゃばらず、でもなければきっと物足りないであろう、的確なプレイが印象に残る。もう一つの注目点は、ピアノの存在感。実は、ピアノのジョー・スコットなる名でクレジットされている人物は、何を隠そうウィントン・ケリー(Wynton Kelly)その人である。当時はリバーサイドと契約があっただろうから、それが理由で変名での参加になったと思われるが、このピアノがまた全体のトーンを見事にまとめている。突っ走るべきところは突っ走り、かといって抑えがしっかり効いていて、完璧なお膳立ての立役者となっている。[収録曲]1. Sweet Lorraine2. You Don't Know What Love Is3. I Got It Bad4. Sylvia5. Softly As In A Morning Sunrise6. Butts Delight7. Indiana (Back Home Again in Indiana)[パーソネル、録音]Sonny Criss (as)Ole(Ola) Hansen (tb: 1.と3.を除く)Joe Scott (p)Bob Cranshaw (b)Walter Perkins (ds)1959年3月録音。下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年09月24日
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賛否両論の代表盤 チック・コリアは1941年生まれのジャズ・ピアニスト。マイルス・デイヴィスのグループの活動などを経て1972年に発表したのがこの『リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return To Forever)』で、彼の代表作として紹介されることも多い。 彼個人の名義で発売されたものの、実質としては、スタンリー・クラーク(ベース)らとともに結成したグループの作品という方がいい(実際、その後は“リターン・トゥ・フォーエヴァー”をバンド名として活動することになる)。大きなセールスを獲得するとともに、従来のジャズ愛好者からは賛否両論が巻き起こったアルバムである。 1970年代初頭のこの段階で、ジャズが大きく転換していたことは確かであろう。一般に本盤は“フュージョン時代の先駆け”などと言われるが、60年代までのジャズの“伝統”を踏まえて、その上での新たな一歩だったというのは確かにそうなのだろう。つまるところ、いきなり聴きやすい音楽をやった、というわけではなく、フリー・ジャズの時代を経て“美しさ”への探求の結果、チック・コリアがたどり着いた一つの境地がこれだった。 上記の“美しさ”と並んで大きな特徴としては、“夜の音楽”としてのジャズがすっかり変容し、本盤の楽曲と演奏は“昼間”のカラーに溢れているという点であろう。朝や日中を思わせる明るさや爽やかさが全体としては支配的である。形式から解き放たれ、予定調和ではない展開を試み、ある種のジャズ・ルネサンスだったという人もいる(個人的にはルネサンスという表現は違うと思うけれど)。 全体を通して聴くことが一義なのだろうけれど、聴き逃せないのは“永遠回帰”を意味する表題曲の1.「リターン・トゥ・フォーエヴァー」。美しさと同時にどこを彷徨うのかわからない感覚の虜にされてしまう。それから外せないのは、4.「サムシング・アゴー~ラ・フィエスタ」。20分越えの長尺だけれど、リラックス感と美しさの調和、そしてこのメドレーを通しての演奏の展開が実に魅力的で、特に後半の「ラ・フィエスタ」は曲調も素晴らしい。 正直、個人的にはフュージョンやクロスオーバーといった括り方をされる音楽は得意ではない。それでもなお、チック・コリアのこの盤はジャンルとしての好き嫌いと関係なく名盤だと思う。スウィングしない、形式を外れたこんなジャズがあってもいい。たまにしか聴かないけれど、その“たま”の時間が案外至福の一時だったりするといった具合なのである。[収録曲]1. Return to Forever2. Crystal Silence3. What Game Shall We Play Today4. Sometime Ago - La Fiesta[パーソネル・録音]Flora Purim (v, perc)Joe Farrell (ss, fl)Chick Corea (el-p, Fender Rhodes)Stanley Clarke (b, el-b)Airto Moreira (ds, perc)1972年2月2~3日録音。 【RCP】[枚数限定][限定盤]リターン・トゥ・フォーエヴァー/チック・コリア[CD]【返品種別A】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2015年09月21日
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フランスの名ピアニスト初期の超名盤 先天性の病気を抱えながらも36歳の人生を全うしたミシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani)。フランス出身のこの人物は、歴史に残るピアニストとして記憶されている。 では、そのペトルチアーニの特徴とは何か。いろいろあると思うのだけれども、その一つとして、ワン・フレーズで聴き手をノックアウトさせられる“美しさ”が挙げられるように思う。ただのリリシズムではなく、身体全体からジャズが滲み出ているというと回りくどいだろうか。要は、その“美しさ”が実に自然体のまま出てくるというのがこの人の特徴でありよさなのだと思う。 いくつかの盤(そしてそれらに収録されたいくつかの楽曲)でそれが顕著に見られるわけだけれど、彼の盤のうちで時に代表盤として取り上げられる『エスターテ(Estate)』はそうした特徴を強く持った作品の一つである。 いくつか注目の曲をピックアップしてみたい。1.「パソリーニ」は冒頭からのリラックス感がたまらなくいい。19歳の若さでこの余裕と自信は実に類い稀としか言いようがないように感じる。ビル・エヴァンスの2.を挟んで続く表題曲の3.「エスターテ」は、彼の奏でる音と“音の空白”のコントラストが美しい。4.と5.はペトルチアーニの自作曲であるが、曲といい演奏といい上述のように“全身からジャズが滲み出る”感覚に満ちている。ラストを飾る7.「預言者のサンバ」は、タイトル通りいかにもブラジル風な曲調だけれども、この流れるようなピアノの美しさ(そこには上に書いたような余裕と自信があってこそなのだろう)に釘づけなってしまう。 そのようなわけで、ミシェル・ペトルチアーニを聴いたことがないという人にはとにかく勧めたい。たとえピアノ・ジャズがあまり得意でなくとも、ジャズを聴いてペトルチアーニを聴かないというのは実にもったいない。そして筆者が最初に勧めるとすれば、本盤『エスターテ』もしくは個人的に最初に聴いた盤である『ミュージック』、この2つが外せないと強く思う次第である。[収録曲]1. Pasolini2. Very Early3. Estate4. Maybe Yes5. I Just Say Hello6. Tone Poem7. Samba des Prophetes[パーソネル・録音]Michel Petrucciani (p)Furio Di Castri (b)Aldo Romano (ds)1982年3月29~30日、4月16日、5月5日録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ESTATE [ ミシェル・ペトルチアーニ ] 『ESTATE』 Michel Petrucciani Trio JAZZ名盤CD:輸入オリジナル盤 インスト【中古】 寺島本「JAZZピアノ・トリオ500」p221掲載 第5章 時代を超えるこの曲この盤~「エスターテ」を弾くペトルチアーニが最高。そういう方向にジャズ鑑賞の在り方をもってゆきたい。DIW 1982下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年09月18日
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“ボレロとブルース”の相性 帯では“夏の夜の盤”扱いされていて、これを書いている今も夏ではあるけれども、個人的な印象としては、必ずしもこれに縛られる必要がないように思う。夏だけでなく、秋冬の夜を彩るのにも相応しい1枚だというのが、最初に聴いた時からの印象なのである。ボブ・キンドレッド(Bob Kindred)を中心とするカルテット演奏の『ボレロとブルースの夜(Nights of Boleros and Blues)』というのが、その盤である。言わずもがな、ボレロとは19世紀キューバ由来の音楽ジャンルで、ラテンアメリカ各国を中心に広く親しまれている音楽である。 演奏者のボブ・キンドレッドは、1940年ミシガン生まれのテナー・サックス奏者。10代の頃から活動を開始し、ハンク・ジョーンズやメル・ルイスなど様々なミュージシャンの演奏に加わってきた。けれども、リーダーとしてのデビューは、21世紀になってからで、60歳を超えてからという“超遅咲き”であった。2005年に『ブルー・ムーン』を発表し、それに続いてヴィーナス・レコードによって吹き込まれたのがこの『ボレロとブルースの夜』だった。 表題の通りに、本盤の主意は“ボレロを題材にブルースを演奏する”と言うところにあるように見える。本人が語っているところによると、レーベル側(ヴィーナス・レコード)と前作のピアニスト(本盤でも演奏のジョン・ディ・マルティーノ)の発案で、キンドレッドのテナーでキューバン・ボレロを演奏してみるという提案があって実現したとのこと。その結果、メキシコやキューバなどのボレロがカルテット演奏で吹き込まれた。 ピアノのジョン・デ・マルティーノは、前作に引き続いての参加。ベースのボリス・コズロフはロシア出身ということで、ラテンの対極のようなイメージがするかもしれないが、キンドレッド自身によると“力強くてダークな感じが欲しかった”とのこと。ドラムスは、キューバ出身のオラシオ・“エル・ネグロ”・エルナンデスが担当している。 おすすめ曲をいくつか挙げておきたい。2.「ケ・テ・ペディ」は、“ラテン・ソウルの女王”として知られる女性シンガー、ラ・ルーペの曲で、いい具合に“歌もの”的なテナー演奏が功を奏している。4.「トダ・ウナ・ビダ」など他にもうまくテナーで歌い上げているナンバーが目立つ。5.「アンヘリートス・ネグロス」も個人的にはなかなかいい。8.「エストレジータ(エストレリータ)」は、ジャズでも取り上げられることの多いナンバーだけあって、いい意味でこなれている。ちなみに、ドラマーのオラシオ・エルナンデスの活躍も見逃せない。ドラムに集中して聴いてみると、やはりキューバの血みたいなものが演奏を引っ張っていっている部分が大きくあるように感じさせられる。[収録曲]1. Dos Gardenias (Two Gardenias)2. Que te pedí (What I Asked You For)3. Taboo4. Toda una vida (All My Life)5. Angelitos negros (Little Black Angels)6. Obsesión7. Alma con alma (Soul To Soul)8. Estrellita (Little Star)9. La Comparsa10. La mentira (Yellow Days)[パーソネル・録音]Bob Kindred (ts)John Di Martino (p)Boris Kozlov (b)Horacio “El Negro” Hernández (ds)2006年8月10日・11日録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ボレロとブルースの夜 [ ボブ・キンドレッド・カルテット ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年08月27日
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魅力的組み合わせによる名演 1927年生まれのジェリー・マリガン(Gerry Mulligan)は、1940年代から活動し、とりわけ1950~60年代にかけて西海岸ジャズの代表的演奏者として様々な吹込みを残したバリトン・サックス奏者である。そんな彼は、“ミーツ”という風なタイトルによる大物奏者との共演盤(セロニアス・モンクとの『マリガン・ミーツ・モンク』、スタン・ゲッツとの『ゲッツ・ミーツ・マリガン・イン・ハイファイ』など)を複数残している。そうした盤の一つが、この『ジェリー・マリガン・ミーツ・ベン・ウェブスター(Gerry Mulligan Meets Ben Webster)』である。 一方、共演者のベン・ウェブスター(Ben Webster)は、1909年生まれだから、この録音(1959年)時には既に円熟の境地に入っていた大テナー奏者。この人もいろんなミュージシャンと共演して吹込みを残しているが、独特で我が道を行くテナー演奏であるにも関わらず、不思議と“他人を押しのけようとしない”演奏でもあるという印象を受ける。この点は、本盤でも同様であるような気がする。つまり、ジェリー・マリガンがおそらくはバランスを考えてうまく演奏をしているのだけれど、演奏をうまく完成させようとするマリガンの意図を汲んで見事に演奏しているのは実はベン・ウェブスターでもあったりするんじゃないか。 真相はともあれ、そんなことを想像させられるほど、この2人の演奏は見事なまでにかみ合っている。その一つの典型例は、1.「チェルシー・ブリッジ」であって、この曲だけでも本盤を聴く価値ありの名演奏。甘く郷愁を誘うウェブスターのテナーに優しく寄り添うマリガンのバリトンのテーマ部分からその後の各ソロにいたるまで、とにかく優しさと美しさに溢れている。 バラードだけが本盤の髄というわけではない。個人的には、日曜の朝のくつろぎの時間に聴くと実にすがすがしい気分になれる3.「サンデイ」。アップテンポでほんわかと始まり、曲の進行とともに適度なタイトさと流れるような勢いが続き、ピアノのソロなどもはさみながら起伏にとんだ演奏が繰り広げられるという、これもなかなかの名演。あと個人的には、6.「ゴー・ホーム」も聴き逃せない。ただ演奏を“かみ合わせ”ていくだけじゃなく、どう重ねたり掛け合ったりするかで、こんなスリリングな演奏にもなる。そんなわけで、一つのトーンにまとまることなく、起伏に富んでいるのもこの盤のよさと言えるように思う。[収録曲]1. Chelsea Bridge2. The Cat Walk3. Sunday4. Who's Got Rhythm5. Tell Me When6. Go Home[パーソネル、録音]Ben Webster (ts)Gerry Mulligan (bs)Jimmy Rowles (p)Leroy Vinnegar (b)Mel Lewis (ds)1959年11月3日~12月2日録音。 【メール便送料無料】ジェリー・マリガンGerry Mulligan / Meets Ben Webster (輸入盤CD) (ジェリー・マリガン)下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年08月25日
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ピアニストとして実力発揮のトリオ盤 マーティ・ペイチ(Marty Paich)は、代表盤とされる『ザ・ブロードウェイ・ビット』(通称“踊り子”)や『アイ・ゲット・ア・ブート・アウト・オブ・ユー』(通称“お風呂”)をはじめいろんな盤を残したほか、60年代以降はジャズ以外の音楽にも積極的に関与した。とはいえ、彼自身はそもそもはジャズ・ピアニストであった。そんな彼のピアニストとしての演奏が全面にわたって繰り広げられているのが、本作『マーティ・ペイチ・トリオ(The Marty Paich Trio)』である。 彼のキャリア上の流れで言うと、1950年代にはウェスト・コースト・ジャズの名アレンジャーとして数々の作品を手掛けていた。1956年録音のアート・ペッパーを迎えた盤(過去記事)なんかはその代表格だし、少し後の1959年のいわゆる『踊り子(ブロードウェイ・ビット』と『お風呂(ア・ゲット・ア・ブート・アウト・オブ・ユー)』は代表盤としてよく知られる。 そんな彼のピアニストとしての神髄はどこにあるのか。数少ない(唯一の?)ピアノ・トリオ作である1957年吹込みの本盤は、そもそもが超マイナーレーベル(Mode)のレア盤で、当時はどれだけ聴かれていたのかもよく分からない(現在では復刻版で容易に入手できる)。 それでもって本盤の内容はというと、“やや暗い”ことは前提にしておいた方がいいかもしれない。決して悪い意味ではないのだけれど、どこか沈んでいく感じがあるのはきっと彼のピアノ演奏の特徴なのだろうと思う。要は、決して明るく心弾むピアノ演奏ではない。ところが、筆者は休日の朝などにこの盤を聴くのが好きである。沈み気味のゆったりした雰囲気の中で演奏が進んでいくのかと思いきや、ある時はドライヴ感や、ある時はハード・バップ感が顔を出す。これぞ出色という感じの曲があるというよりは、全体にわたって押したり引いたり、様々な工夫を散りばめてみたりというあたりは、やはりアレンジャーとしての才能が自身のピアノ演奏にも表れていると言えるのかもしれない。 その点を踏まえたうえで、個人的に注目したいのは、2.「ザ・ファクツ・アバウト・マックス」、6.「エル・ドラド・ブルース」、7.「ホワッツ・ニュー」といったところ。この演奏を支えるメル・ルイスのドラムとレッド・ミッチェルのベースも堅実である。結局は“ウエスト・コースト”のようなイメージで一括りにしにくい演奏スタイルが、地味な本盤の評価を一層わかりづらくしているということだろうか。そのようなわけで、聴けば聴くほどその実力発揮ぶりに唸らせられるマニアックな盤と言うのが本盤の印象。1回聴いただけですぐにぴんと来ないとういのは筆者が鈍感なのか、この盤がマニアックなせいなのか(何度も聴いた今となっては、上記のように楽しめてはいるのだけれど…)。[収録曲]1. I Hadn’t Anyone ’Til You2. The Facts About Max3. Dusk Light4. The New Soft Shoe5. A Dandy Line6. El Dorado Blues7. What’s New8. By The River St. Marie[パーソネル、録音]Marty Paich (p)Red Mitchell (b)Mel Lewis (ds)1957年6月録音。 【メール便送料無料】マーティ・ペイチ・トリオ / マーティ・ペイチ・トリオ[CD]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年08月10日
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掘り出し物的ライヴ音源 これまで何枚も取り上げている(参考過去記事(1) ・(2) ・(3) など)ソニー・クリス(Sonny Criss)だけれども、今回はあまり話題に上ることのない、少々マイナーな盤を取り上げてみたい。1951年、ロサンゼルスのシュライン・オーデトリアム(スタン・ゲッツの『アット・ザ・シュライン』が録音されたのと同じ場所)での録音盤の『ライヴ・イン・L.A. 1951(Intermission Riff)』がその盤である。 1927年生まれのソニー・クリスは、1977年に50歳で亡くなっている(胃がんを発症し、それを苦にしてのピストル自殺だったとされるが、真相は闇の中)。その死去から10年後の1987年、倉庫の片隅の埃まみれの箱に“JATP/SHRINE/’51”となぐり書きされた録音テープが発見される。これを見つけた記録管理者のエリック・ミラーは、最初の数分を再生し、そのサックスを聴くや否やテープを止めて、息をのんだと言う。そのアルトの主こそが、ソニー・クリスであり、この音源は、翌88年にアルバムとして発売された。 箱に書かれた“JATP”というのは、音楽プロデューサーのノーマン・グランツ(ヴァーヴやパブロのレーベル創設者としても知られる)が企画していた、“ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック”(Jazz at the Philharmonic)のことであった。同コンサートは1944年から1983年まで実施されていたが、ソニー・クリスは1950年前後の時期にこのツアーに呼ばれていた。また、“SHRINE”というのは、上述の通り、ロサンゼルスのシュライン・オーデトリアムのことで、グランツの主催の元、ビリー・エクスタインをメインとするコンサート・ツアーが始まったのは、1951年10月12日のこの場所だったとのことである。ソニー・クリスはこれにメンバーとして参加し、この時のセプテットの演奏が本盤所収の内容といったわけある。 正直、音はあまりよいわけではないし、無論メンバー表にあるような大き目(セプテット)の編成での演奏なのだけれど、1950年代半ば以降にリーダー作で発揮されることになる若きソニー・クリスのアルトは確かに冴えている。個人的におすすめなのは、3.「パーディド」の盛り上がり、5.「ハイ・ジャンプ」の彼らしさの片鱗がうかがわれるサックス演奏といったところだろうか。 まあ究極的には“レア音源”ものなのでやむを得ないが、現在は廃盤扱いになってしまっている模様である。とはいえ、ここ数年の各種廉価盤シリーズ(しかもマニアックなタイトルも結構多い)の発売の流れの中で、そのうち復活することもあるのかもしれないと、ふと思ったりもする。そのようなわけなので、いつかどこかひょっこり見かけたら、お試しいただきたい1枚といったところである。[収録曲]1. Intermission Riff2. How High the Moon3. Perdido4. Body And Soul5. High Jump[パーソネル、録音]Sonny Criss (as)Bennie Green (tb)Joe Newman (tp)Eddie "Lockjaw" Davis (ts)Bobby Tucker (p)Tommy Potter (b)Kenny Clarke (ds)1951年10月12日録音。下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年07月21日
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力強さと緻密さを合わせ持ったキャノンボール・アダレイのクインテット作 以前に紹介した『イン・サンフランシスコ(Cannonball Adderley Quintet in San Francisco)』に続くスタジオ録音盤として吹き込まれたのがこの『ゼム・ダーティ・ブルース(Them Dirty Blues)』。キャノンボール・アダレイが新たに形成したグループ(The Cannonball Adderley Quintet)による『イン・サンフランシスコ』は1959年10月のライヴ録音で、時期的にはこの新たなクインテットの活動開始からわずか1か月ほどの時点のものだった。それに続き、本盤はこのグループでの最初のスタジオ録音作となった作品である。前作が好評を博して成功を収め、ファンにとっても次の作品が期待される場面だった。 本盤を聴いて感じるのは、上記の聴き手の存在(あるいは期待)を、キャノンボール以下、メンバーが十分に意識していたのだろうという点である。例えば、ボビー・ティモンズの作曲による1.「ダット・デア(ザット・ゼア)」(CD化により別テイクも2.として収録されている)は、タイトルからも分かるように、前作に収録の「ディス・ヒア」を明らかに意識した、その続編ともいえるナンバーであり、こんなところからもそのことが窺い知れる。 演奏のレベルと完成度も高い。そのことは全編を通じて言えることだろうけれど、そこに作曲のよさも組み合わされているのは、本盤の特色と言えるかもしれない。オリン・キープニュースのライナーで触れられているように、ベースのサム・ジョーンズの3.「デル・サッセー」は彼の作曲能力の高さを世に知らしめたナンバーである。キャノンボールの実弟のナット・アダレイが書いた6.「ワークソング」もしかり。ちなみに、これについては、本テイクよりも古いテイクがCD追加曲として5.に収められており、完成度を高めようとして取り直していることが窺われる。 好曲・好演奏揃いなので、すべてに触れたいところだが、どうしても外せないのをあと一つ。表題曲の9.「ゼム・ダーティ・ブルース」である。キャノンボール自身の曲で、全体の締まった演奏に作曲者の意図通りのサックス演奏というのがピタリと決まっていて気持ちいい。おそらく、音楽的な緻密さや精度という点では、キャノンボールのアルバムのうち上位に数えられてもよい盤ではないだろうかと思ったりする。[収録曲]1. Dat Dere2. Dat Dere *別テイク3. Del Sasser4. Soon5. Work Song *別テイク6. Work Song7. Jeannine8. Easy Living9. Them Dirty Blues*印の別テイクは、オリジナルには未収録。[パーソネル・録音]Cannonball Adderley (as)Nat Adderley (cor)Barry Harris (p, 1.~4.)Bobby Timmons (p, 5.~9.)Sam Jones (b)Louis Hayes (ds)1960年2月1日(1.~5.)、3月29日(6.~9.)録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ゼム・ダーティ・ブルース(初回生産限定) [ キャノンボール・アダレイ ] 【RCP】[枚数限定][限定盤]ゼム・ダーティ・ブルース/キャノンボール・アダレイ[CD]【返品種別A】 次のブログランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2015年07月18日
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60年代後半、新顔を迎えつつ、相変わらずご機嫌なオルガン入りワンホーン盤 ソニー・スティット(Sonny Stitt)は、ビバップからハードバップ期にわたって活躍したサックス奏者(アルトおよびテナー奏者)である。“一匹狼(ロンリー・ウルフ)”とも形容され、数多くの吹き込みを残している。さほど長生きはしなかった(1982年に58歳で死去)ものの、ミュージシャンのキャリアとしては、長く活動し、ある段階からオルガンとの組み合わせも積極的に取り組んだ。 本盤『デューシズ・ワイルド(Deuces Wild)』もオルガンをフィーチャーした1枚で、人気を博していたオルガン奏者ドン・パターソンを迎え、他のサックス奏者もゲスト参加したもの。演奏内容としてはブルース中心の選曲だが、ドン・パターソンとの相性の良さ(実際、過去記事の他の盤も含めパターソンとの吹込みが多い)、さらには、ソニー・スティット自身の余裕のあるプレイが印象的な1枚と言えそう。 1.「デューシズ・ワイルド」と4.「シッティン・イン・ウィズ・スティット」は、ともにスティットの自作曲で、かつ本人がテナーに持ち替えての演奏(他はアルト・サックスを演奏)。同じく自作の3.「ブルース・アヘッド」を合わせると、即興のブルース演奏を基本とした本作の核心部分と言える。5.「イン・ザ・バッグ」と6.「ミー・ン・ユー」はそれぞれアルトとソプラノで参加している新顔のロビン・ケニヤッタの作で、オルガン入りの編成を生かして少々実験的に演奏を展開してみたといったところか。なお、いっそう変わったところでは、7.「パイピン・ザ・ブルース」がある。R・ハーレイとスティットの共作で、成功か失敗か微妙なところだが、曲名そのまんまに、ハーレイによるバグパイプを取り込んだ演奏(ついでにこの人はテナーも演奏)なので、試しに一度は聴いてみるのもいいかも(ほとんど“怖いもの聞きたさ”かもしれないけれど…)。[収録曲]1. Deuces Wild2. My Foolish Heart3. Blues Ahead4. Sittin' In With Stitt5. In The Bag6. Me 'N' You7. Pipin' The Blues[録音・パーソネル]Sonny Stitt (as, ts)Robin Kenyatta (as, ss)Rufus Harley (ts, bagpipes)Wilmer Mosby (org)Billy James (ds)1966年9月11日録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】JAZZ BEST COLLECTION 1000::デューシズ・ワイルド [ ソニー・スティット ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年07月16日
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スマートにしてハイレベルな代表作 ジャズ奏者の中には、若くして亡くなったことでそれ以降の演奏が聴けなくなったことが悔やまれるプレイヤーもいる。一方、長生きしたにもかかわらず、作品を残さなかったという理由でその音楽が聴けないというケースもある。後者の典型の一人と言えそうなのが、ハル・マクーシック(Hal McKusick,マクシックまたはマキュージックなどと表記される)である。2012年に87才で亡くなっているが、彼が演奏を後世に残したのは限られた期間にすぎなかった。 そんな彼は、1940年代から演奏活動を始め、1950年代後半にいくつかのリーダー作を残している。その後、60年代初頭にはいくつかのセッションにサイドマンとして参加しているものの、いつしか引退してしまったようだ。彼の作品は10指に届かぬ程度の枚数みたいだけれど、その中でよく名が挙げられる作品といえば、このプレスティジ盤『トリプル・エクスポージャー(Triple Exposure)』である。 ところで、唐突ではあるが、動物園には二種類ある。一つはサファリパーク型で、動物が“放し飼い”されていて、人間がバスや車に乗ってその中へ入っていく。もう一つは従来型の動物園で、この場合、人間が自由に動くことができて動物たちは檻や囲いの中にいる。音楽もこれと同様に、サファリ動物園型と通常動物園型の二種類がある。前者はライヴ体験(疑似体験含む)として楽しめるもので、後者は離れた場所からスタジオを見つめるかのごとく聴くタイプのもの。別にこの盤に限ったことではないのだけれど、本盤は確実に後者に属する部類だと思う。 そのようなわけで、本盤の最大の特徴は、室内楽として静かに鑑賞するのに向いているという点である。同じ西海岸的ジャズでも、アート・ペッパーを聴いていたらしばしば“サファリ型”を求めたくなるのとは不思議と異なっている。中に入って聴いて感動するのではなく、スタジオで演奏する姿を想像しつつ離れたところからスピーカー経由で届く演奏を楽しむ、そんなイメージである。 さらに、もう一つ本盤の特徴を付け加えるならば、楽器のヴァリエーションだろう。マクーシック自身がアルトサックス以外にテナーサックス、クラリネットも演奏しており、さらに演奏メンバーにはトロンボーン奏者も含まれている。なお、このトロンボーンのビリー・バイヤーズがなかなかいいサポートをしているほか、ピアノのエディ・コスタも要所要所でおもわず耳が釘づけにされる好演奏を披露している。結果、本盤の演奏はスマートかつハイレベルで、完成度の高い室内楽的盤にしあがっていると思う。[収録曲]1. Interim *2. Saturday Night3. Don't Worry 'bout Me *4. Con Alma *5. Something New6. Blues Half-Smiling7. A Touch of Spring8. The Settlers and the Indians9. I'm Glad There Is You*1., 3., 4.はCD追加曲。[パーソネル、録音]Hal McKusick (as, ts, cl)Billy Byers (tb)Eddie Costa (p)Paul Chambers (b)Charlie Persip (ds) 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2015年07月09日
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病みつきになるオルガン・バックのテナーのワン・ホーン盤 ソニー・スティット(Sonny Stitt)は、なかなか正当な評価がなされないけれども、いろんな作品を聴くにつけ、本当に安定感のあるサックス奏者だと感じる。彼の数多い吹き込みの中でも、本盤『マイ・マザーズ・アイズ(My Mother’s Eyes)』はオルガンをバックにテナーのワン・ホーンを全編にわたって聴かせるというもの。 スティットはいろんなレーベルに録音を残しているが、本作はちょっと変わっていて、パシフィック・ジャズというレーベルでの吹き込み。このレーベルの作品としては、過去に本ブログで取り上げた中から拾い上げてみても、こんな盤や、チェット・ベイカー盤、ジェリー・マリガン盤なんかがあったりして、“西海岸+白人奏者”なイメージが強い。けれども、少し後には白人系やクール・ジャズ系のみではないラインナップがあったりする。本盤がこのレーベルで吹き込まれたのは、たまたまスティットが西海岸を訪れた折にセッションが設けられて録音が行われ、結果、パシフィックにおける唯一のスティット盤となる本作が残されたということらしい。 さて、そのスティットであるが、60年代に入ったころから編成にオルガンも加えるようになり、ドン・パターソン(参考過去記事)やジャック・マクダフなんかとの録音も残すことになる。本盤では、スティットは全編テナーを吹いている。チャールズ・カイナード(Charles Kynard)という、当時カンザスシティからロスに出てきて間もなかった人物がオルガンを担当していて、これが初レコーディングだったとのこと。これにギター(アーマッド・ジャマルのトリオに参加経験のあるレイ・クロフォード)、ドラム(ジョニー・グリフィンやブルー・ミッチェルの盤に加わったことのあるダグ・サイズ)を加えた4人編成となっている。 そのようなわけで、全体にわたってオルガントリオをバックに安定した好調なテナー演奏を聴かせるという趣き。スティットの演奏で私的な好みは、1.「サマー・スペシャル」、5.「マイ・マザーズ・アイズ」(B面1曲目に収録された別テイクの方)、6.「S.O.P.ブルース」、7.「ドント・ゴー・トゥ・ストレンジャーズ」といったところか。編成ゆえのよさが前面に出ている演奏も随所に見られ、オルガンの工夫、ギターのソロがテナー演奏とうまく組み合わされている(この点では、3.「スティット・イン・タイム」も個人的にはお気に入りである)。 余談ながら、表題曲の「マイ・マザーズ・アイズ」は、スティットのお気に入りだったのか、他の音源にも録音があるほか、本盤では2.と5.のまったく異なるヴァージョンが含まれている。2.では、オルガンがより前面に出ていて、テンポは遅めで全体的に暗めのムードを醸し出す。他方、5.はサックスから始まり、より明るい演奏に仕上がっている。どちらか選ぶのなら、筆者はトータルには5.の方がいいかなといったところだが、皆さんはどちらがお好みだろうか。[収録曲]1. Summer Special2. My Mother’s Eyes3. Stitt in Time4. Blue Skies5. My Mother’s Eyes (別テイク)6. S.O.P. Blues7. Don’t Go to Strangers8. Red Top[パーソネル、録音]Sonny Stitt (ts)Charles Kynard (org)Ray Crawford (g)Doug Sides (ds)1963年5月録音。下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年07月05日
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互いの特徴がバランスよく発揮された盤 ベン・ウェブスター(Ben Webster)は、これまで何枚か取り上げているが、1909年生まれのアメリカのテナー・サックス奏者。他方、オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)は、1925年カナダ生まれのジャズ・ピアニスト。 実はこの二人の共演は別にこれが初めてという訳でも、1回きりという訳でもない。『ソウルヴィル』や『コールマン・ホーキンス・ミーツ・ベン・ウェブスター』(ともに1957年録音)といった盤でオスカー・ピーターソン(・トリオ)は共演している。本盤『ベン・ウェブスター・ミーツ・オスカー・ピーターソン(Ben Webster Meets Oscar Peterson)』がこれらの盤と異なっているのは、リズムセクションの一員としてというよりも、表題そのままに、オスカー・ピーターソンが前面に出てきているところにある。 冒頭の1.「ザ・タッチ・オブ・ユア・リップス」にしても、5.「イン・ザ・ウィー・スモール・アワーズ・オブ・ザ・モーニング」にしても、曲の始まりを聴いたとたん、ピアノを前面に持ってくるという意図は明らかに見える。さらに、全体を通して聴くと、オスカー・ピーターソン・トリオが全体のムードを作り、そこにベン・ウェブスターが乗っていくという構図も見て取られる。例えば、収録曲の中で個人的おすすめの一つである6.「サンデイ」なんかは、トリオ演奏にうまくサックスが乗せられた感じすらする。 その上で、やっぱりベン・ウェブスターのサックスはいつも通りのよさを発揮し、だからと言ってオスカー・ピーターソンはさらりと好演をやってのけていて決してでしゃばりすぎることがない。前者の側面で好きなのは、1.「ザ・タッチ・オブ・ユア・リップス」や4.「ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン」、あるいは5.「イン・ザ・ウィー・スモール・アワーズ・オブ・ザ・モーニング」。後者の側面でうまく仕上がっていると思うのは、3.「バイ・バイ・ブラックバード」や上述の6.「サンデイ」、さらには7.「ディス・キャント・ビー・ラヴ」。“二人の名前で出ています”的な盤の中には、それら二人のファンが聴いて納得しがたい(つまり、方向性がどちらか一方の奏者の側に偏ったり、どちらか一方が遠慮して少なくともファンが期待する“らしさ”がない、などといった事態が起こる)ということも往々にしてありうるが、本盤に関しては、両者とも幸せになれるんじゃないか、そんな気がする。[収録曲]1. The Touch of Your Lips2. When Your Lover Has Gone3. Bye Bye Blackbird4. How Deep Is the Ocean?5. In the Wee Small Hours of the Morning6. Sunday7. This Can't Be Love[パーソネル、録音]Oscar Peterson (p)Ben Webster (ts)Ray Brown (b)Ed Thigpen (ds)1959年11月6日録音。 【メール便送料無料】ベン・ウェブスターBen Webster & Oscar Peterson / Ben Webster Meets Oscar Peterson (輸入盤CD) (ベン・ウェブスター)↓上記商品リンクに画像がないので、参考までジャケットイメージです(こちらのリンク先商品はLP盤)↓ 【送料無料】LP レコード ベンウェブスターオスカーピーターソン[ 180グラムvinyl ]ベンウェブスタービニールミーツben webster meets oscar peterson [180g vinyl] ben webster vinyl 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2015年07月04日
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AOR第一人者のジャズ・スタンダード・アルバム 「ハート・オブ・マイン」などのヒットで知られるボビー・コールドウェル(Bobby Caldwell)は、AORシンガー・作曲家としてとりわけ日本での人気が高い。そんな彼がジャズ・スタンダードを取り上げて歌っているのが本盤『ブルー・コンディション(Blue Condition)』である。 ふつう、ポップ系の歌手がジャズ・スタンダード集を歌うとなると、緊張して伸び伸びとは歌い切れず、結果的に悪い意味できれいにまとめてしまいそうなものである。けれども、ボビー・コールドウェルの場合は一味も二味も違う。このアルバムは、驚くほど生き生きと、そして伸び伸びと歌い上げているという印象が非常に強い。要するに、“チャレンジしている”というよりは“素のままにやっている”感が強いと言いかえてもいいだろう。 同じAOR系の代表的シンガーにボズ・スキャッグスという人がいる。彼はR&B系のバック・グラウンドが強く、デビュー作(『ボズ・スキャッグス&デュアン・オールマン』)も、ずっと後の原点回帰作(『カム・オン・ホーム』)も、やはり“素のまま”でどこか泥臭さを含んだ熱唱となっている。ボズ・スキャッグスとボビー・コールドウェルは、共にAORで名を馳せた二人だが、それぞれのルーツは違っていたというわけだ(ちなみにボズ・スキャッグスもジャズ歌集を出していて、いい作品ではあるのだが、伸び伸びとした自然さという点ではボビー・コールドウェルの本盤に到底敵わない)。 そのようなわけで、本盤の聴きどころは、特定の曲云々というによりも、この全体のトーンというか、“自然さ”加減そのものにあるとも解釈できそうな気がする。自分のバックグラウンドの一部となっているもの(それも、おそらくは大きな比重を占めるバックグラウンド)を、無理するのではなく、素のまま、ありのままに出す。否、出すのがすごいのではなくて、“出る”(あるいは自然に“出せる”)のがこの人のすごいところなのだろうと感じる。 [収録曲] 1. Street Of Dreams2. You Go To My Head3. Angel Eyes4. Don't Worry 'Bout Me5. Beyond The Sea6. I Concentrate On You7. All The Way8. Stuck On You9. I Get A Kick Out Of You10. Tomorrow11. The Girl I Dream About12. Smile 1996年リリース。 【メール便送料無料】ボビー・コールドウェル / ブルー・コンディション[CD] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2015年06月13日
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ダンディなテナーを… セルダン・パウエル(Seldon Powell)は、1928年ヴァージニア州生まれのテナー・サックス奏者で1997年に亡くなっている。リーダー作は少なく、サイドマンとしての盤が多いが、この『セルダン・パウエル・セクステット(Seldon Powell Sextet)』は、彼が初期にルーストに残した2枚のうちの1つ。初リーダー作の『セルダン・パウエル・プレイズ』もいいのだけれど、今回はもう1枚のこの盤を取り上げてみたい。 スイングするときは軽快かつドライヴ感をもって、バラードを演奏する際にはスウィートな感覚をどこかに残したまま見事に抒情的に。抽象的に言えば、そんな感じなのだけれど、何よりも本番の彼のテナーの特徴はメリハリがあってカッコいい。表題にあるように、これこそダンディと言うのがぴったりだと思う(セルダン・パウエルは“チョコレート・ダンディ”の愛称が付けられている)。 メンバーには、当時売り出し中だったトロンボーン奏者のジミー・クリーヴランド、人気ギター奏者のフレディ・グリーン、ピアノ奏者には“ハック”・ハナとクレジットされているローランド・ハナが含まれており、アルバム表題の通り、セクステット(6人組)の構成。それぞれにソロを聞かせる場面はそれなりにあるが、全体としては主役であるセルダン・パウエルの露出が多い。 収録曲のうちから、上記の“ダンディさ”という点での注目曲を挙げておきたい。まずは、2.「シーズ・ファニー・ザット・ウェイ」どうすればこんなに甘い感じを端正なまま出せるのか、これこそダンディそのまんまと言えそう。似た感覚は、名曲の5.「アイル・クローズ・マイ・アイズ」にも当てはまるように思う。甘そうで甘くならない、紙一重のうまさ。それは、6.、7.、11. なんかに見られる力強くシリアスな演奏の裏付けがあるからなのだろう。最後に、興味深いのが10.「スリーピー・タイム・ダウン・サウス」。一見すると、インタールード的な小品に思えるが、実は本番の中で一番に気迫が込められた演奏ではないだろうかと思えたりする。[収録曲]1. Woodyn' You 2. She's Funny That Way 3. Lolly Gag 4. Missy's Melody 5. I'll Close My Eyes 6. 11th Hour Blues 7. Undecided 8. A Flower Is A Lonesome Thing 9. It's A Crying Shame 10. Sleepy Time Down South 11. Button Nose 12. Biscuit For Duncan[パーソネル、録音]Seldon Powell (ts)Jimmy Cleveland (tb)Freddie Green (g)Aaron Bell (b)“Hac” Hanna (p)Gus Johnson (ds, 3., 6., 10., 12.)Osie Johnson (ds, 上記以外)1956年録音。下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年04月29日
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ちょっと風変わりなマスターピース レニー・トリスターノ(Lennie Tristano)は、1919年シカゴ出身のジャズ・ピアノ奏者、作曲家。イタリア系の家庭に生まれ、幼少期に失明するも、ピアノと音楽理論を身につけ、ビバップを超越する音楽様式を確立しようとした。リー・コニッツをはじめとする“トリスターノ派”のアーティストを生み出し、ジャズ教育者としても知られる。 そんなトリスターノの代表作の一つがこの『鬼才トリスターノ(Lennie Tristano)』というアルバム。“鬼才”という日本語を聞いたとたん、身構えてしまう人もいるかもしれないが、元のタイトルは単なるセルフタイトルなので、それほど怯える(?)必要はない。とはいえ、前半(A面)での演奏内容はかなり実験的なものになっているのも事実と言えるように思う。要は、前半と後半の落差(?)が本番の特色ともいえるかもしれない。 形の上では、トリオ演奏とカルテット演奏の2つのセッションを組み合わせたもの。前者(1.~4.)は日付不明だが1954または55年ニューヨークでの録音。後者は1955年6月11日、同じくニューヨークのとあるレストランでのライヴ録音となっていて、彼の“弟子”のリー・コニッツがアルト・サックスで加わっている。上述の実験性や革新性という点では、2.「レクイエム」(リズム・セクション抜きだが単なるピアノ独奏ではない)や3.「ターキッシュ・マンボ」のオーバーダブ(多重録音)、あるいは、1.「ライン・アップ」や4.「東32丁目」のテープ速度の変調が挙げられる。これら前半の気迫や緊張感を聴く限りにおいては、確かにトリスターノは“鬼才”、もしくは“孤高のピアニスト”というレッテルで語られる人物なのかもしれない。 ところが、後半(LPではB面)のライヴ録音は、“鬼才”の表題から想像するよりは柔らかで、いくぶん“ほんわか”した感じもある。リー・コニッツのサックスがその柔らかさに寄与しているのは明らかで、いわば、仲間が集ったスタンダード曲集のような雰囲気に仕上がっている。つまり、ハードな雰囲気とソフトな雰囲気の組み合わせ。LP時代風に言えば、“A面を聴くか、B面を聴くか”の論争になりそうといったところ。全体のトーンが“鬼才”なのではなく、これらA面とB面の両方をできるところに、トリスターノの“鬼才ぶり”がある、なんて言い方もできるんじゃないだろうか。[収録曲]1. Line Up2. Requiem3. Turkish Mambo4. East Thirty-Second5. These Foolish Things6. You Go to My Head7. If I Had You8. I Don't Stand a Ghost of a Chance With You9. All the Things You Are[パーソネル、録音]1.~4.:Lennie Tristano (p), Peter Ind (b), Jeff Morton (ds)1954~55年、ニューヨークのホームスタジオでの録音。5.~9.:Lennie Tristano (p), Lee Konitz (as), Gene Ramey (b), Art Taylor (ds)1955年6月11日、ニューヨーク、コンフュシャス・レストランでのライヴ録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【まとめ買いでポイント最大10倍】JAZZ BEST COLLECTION 1000::鬼才トリスターノ [ レニー・トリスターノ ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年04月19日
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“西海岸っぽさ”が生かされた好演奏 タイトルの“ウエスト・コースト・サウンド”には定冠詞“ザ(The)”がついていて、“これぞ西海岸”と言わんばかりのタイトルになっているのが、このシェリー・マン(Shelly Manne)のリーダー作。シェリー・マンは、ニューヨークの生まれではあるものの、1950年代初頭に西海岸のLA郊外に移り、いわゆる“西海岸ジャズ”の中心的ドラマーとして活躍した。 とはいっても、何をもって“西海岸”的かというと、あまりはっきりした共通の答えはないのかもしれない。せいぜい共通理解の得られる範囲では“アレンジと軽妙さ”が“ウエスト・コースト”や“クール”といった用語で括られるジャズ音楽にある程度共通するといったところだろうか。仮にそうだとすれば、本盤はそのイメージにうまく合致している。 本盤の特徴は、とにかく豪華な7人編成による、3種類の異なるセッションの記録という点にある。リーダーのシェリー・マン以外に全曲に参加しているのは、ヴァルブ・トロンボーンのボブ・エネヴォルゼン、バリトン・サックスのジミー・ジュフリー。アルト・サックス、テナー・サックスは全曲に編成されているが、セッションごとに面子は異なり、ピアノとベースもちょっとずつ違っている。さらに、ジャケットには作曲・編曲者の名が連ねられており、とにかくいろんなメンバーが参加しているという印象である。目立ったところ(かつ筆者のお気に入り)では、マーティ・ペイチ(p, arr)、ラス・フリーマン(p)、アート・ペッパー(as)、バド・シャンク(as)、カーティス・カウンス(b)などといった具合の豪華メンバーである。 とはいえ、ただ軽妙なアレンジや演奏の曲が居並んでいるというわけでもない。軽いノリを見せたり、いくらか陰鬱な気分を出したり、よく言えば“押したり引いたり”のバランス感覚がいいというのが、この作品の特徴なのかもしれない(そしてそれは異なるセッションを組み合わせたところにも原因があるのかもしれない)。敢えて1曲だけ触れるならば、11.「ユーアー・マイ・スリル」のように、軽妙でありながら、ただそれだけではない演奏が随所で繰り広げられているというのが、個人的にはツボにはまってくる。ちなみに、これらセッションの成果は、少し後の『マイ・フェア・レディ』(1956年録音)にもつながり、アンドレ・プレヴィンとリロイ・ヴィネガーを迎えての同盤は好調な売れ行きを示すこととなった。[収録曲]1. Grasshopper2. La Mucura3. Summer Night4. Afrodesia5. You And The Night And The Music6. Gazelle7. Sweets8. Spring Is Here9. Mallets10. You're Getting To Be A Habit With Me11. You're My Thrill12. Fugue[パーソネル、録音]1., 3., 8., 10.: Shelly Manne (ds), Bob Enevoldsen (vtb), Joe Maini (as), Bill Holman (ts), Jimmy Giuffre (bs), Russ Freeman (p), Ralph Pena (b)1955年9月13日録音。2., 5., 6., 9.: Shelly Manne (ds), Bob Enevoldsen (vtb), Art Pepper (as), Bob Cooper (ts), Jimmy Giuffre (bs), Marty Paich (p), Curtis Counce (b)1953年4月6日録音。4., 7., 11., 12.: Shelly Manne (ds), Bob Enevoldsen (vtb), Bud Shank (as), Bob Cooper (ts), Jimmy Giuffre (bs), Marty Paich (p), Joe Mondragon (b)1953年7月20日録音。作曲、編曲:Bob Enevoldsen, Jimmy Giuffre, Bill Holman, Shelly Manne, Marty Paich, Shorty Rogers, Bill Russo 【楽天ブックスならいつでも送料無料】JAZZ THE BEST 122::ザ・ウエスト・コースト・サウンド [ シェリー・マン ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年04月17日
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1+1=2にあらず、1+1+1=3でもない、足し算を超える名演 ジャズ奏者の組み合わせは単なる足し算ではなく、時に相乗効果や化学反応のようなものがあって、“かけ算”のようなことが起こる。ただ3人の奏者名を並べた本盤『ジェンキンス、ジョーダン、ティモンズ(Jenkins, Jordan and Timmons)』(しかもジャケットに至るまでただ3人の名をデザインしただけ)も、そんな1枚ではないかと思う。 1957年、ニュージャズ・レーベルでの吹き込みで、ジョン・ジェンキンス(アルト)とクリフォード・ジョーダン(テナー)はともにシカゴ出身のサックス奏者である。マクリーンやコルトレーンを始め名だたる奏者たちほどに広く名を知られているとは言えないかもしれないが、決して聴き逃すことのできない存在と言えるように思う。 前者はパーカーの柔らかい側面というのを上手く取り込んだスタイルと言われ、本盤を吹き込んだ1957年にちょうどNYへ出てきて、ブルーノートの1500番台などの吹き込みを始めた時期に相当する。一方、後者のジョーダンの方は、初期ロリンズの影響を受けて、それを独自に深化させた演奏を進めていったと評される。本盤とほぼ同時期(同年8月録音)にケニー・バレルとの共演盤を吹き込んだりしていて、その後も、1962年に事実上引退してしまうまで、様々なミュージシャンとの録音をこなしていくことになる。盤のタイトルに挙がっているもう一人の奏者はボビー・ティモンズ(ピアノ)である。彼はというと、NYに定着し、アート・ブレイキーのバンドに加入前の、チェット・ベイカー、ソニー・スティット、ハンク・モブレーらの吹き込みに参加していた時期だった。 冒頭に書いた通り、サックスの2人、さらにはピアノも加えた3人の演奏が本盤を特徴づけていて、特定の奏者を聴くというよりは、その全体を楽しむというのが個人的には本盤のよさと言えるように思う。テナー単発もよし、アルト単発もよし、さらには適度に登場するアンサンブルがまたよい。加えてティモンズのピアノが最初は控えめに思えるかもしれないが、繰り返し聴いているとツボを押さえていて、しばしば全体のトーンを上手く支配しているようにすら思える。 そのようなわけで、どの曲をピックアップというのではなく、アップテンポあり、静かなバラードありという全体の流れの中で、様々な配分で登場するアルト、テナー、ピアノの各演奏(ソロもアンサンブルも)を楽しむ1枚というのが筆者の印象。その結果は、表題に挙げたように、その結果は単なる“足し算”ではなく、それをはるかに超えた出来栄えに仕上がっている。[収録曲]1. Cliff’s Edge2. Tenderly3. Princess4. Soft Talk5. Blue Jay[パーソネル、録音]Clifford Jordan (ts)John Jenkins (as)Bobby Timmons (p)Wilbur Ware (b)Dannie Richmond (ds)1957年7月26日録音。 【RCP】【送料無料】ジェンキンス、ジョーダン&ティモンズ/ジョン・ジェンキンス,クリフォード・ジョーダン,ボビー・ティモンズ[SHM-CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、ぜひバナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年03月17日
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組み合わせの試行錯誤と計算された商売魂? トロンボーン奏者のカーティス・フラー(Curtis Fuller)は、ブルーノート1500番台に3枚のリーダー作を残している。最初は『ジ・オープナー』(1567)、次が『ボーン&バリ』(1572)、そして3枚目が本盤『カーティス・フラーVol. 3(Curtis Fuller Vol. 3)』(1583)である。録音時期はいずれも1957年で、順に6月、8月、12月の録音である。 数か月おきに録音が行われ、順番通りに順調に発売されたかというと、この3枚目だけは違っていた。1583というカタログ番号だけは維持したまま、数年間凍結され、結局は1961年になってから発売された。そこには楽器の組み合わせの試行錯誤と、その後の展開によるリリース順という背景もあったように察せられる。 まず、フロントの楽器の組み合わせから見てみたい。『ジ・オープナー』ではテナーサックス、『ボーン&バリ』ではバリトンサックスとの組み合わせだった。本作『Vol. 3』ではトランペットとの組み合わせである。トランペット奏者はアート・ファーマー。ソニー・クラークの盤(『ダイアル・S・フォー・ソニー』)で数か月前に録音していて、その時は、テナー、トランペット、トロンボーンの3管編成だった。ブルーノートからの発売なので、カーティス・フラー名義ではあるのだが、もしかするとこれは、アート・ファーマーとの“双頭版”だったという見方もできるかもしれない。そうだとすれば、後のジャズテットの先駆けという見方もできるか可能だろう。つまりは、ジャズテット成立後にようやく本盤が陽の目を見るという、計算されつくしたリリースだったのではと勘繰りたくもなる。 ともあれ、全体的にはゆったりと落ち着いた演奏が淡々と繰り広げられる。トランペットとトロンボーンという二管の実験室、そう呼べそうな演奏だと感じる。個人的には、2.「クァントレイル」に代表される(しかもこの演奏はラテン風)、どこかしらまったりした感じが本盤の全体的印象につながっている。そうしたまったり感が最高潮になるのは、4.「カーヴォン」と6.「イッツ・トゥー・レイト・ナウ」。テナーやアルトだけでは、はたまたトランペットだけでは出せない独特の感触。言い換えれば、トロンボーンの真髄みたいなものがここにあると言えるのかもしれないという気がする。[収録曲]1. Little Messenger2. Quantrale3. Jeanie4. Carvon5. Two Quarters of a Mile6. It's Too Late Now[パーソネル、録音]Curtis Fuller (tb)Art Farmer (tp)Sonny Clark (p)George Tucker (b)Louis Hayes (ds)1957年12月1日録音。Blue Note 1583 【楽天ブックスならいつでも送料無料】カーティス・フラーVol.3 [ カーティス・フラー ] カーティス・フラー/カーティス・フラーVol.3 【CD】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2015年03月15日
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大物テナーの心温まる共演 以前に取り上げたベン・ウェブスター(Ben Webster)の『ソウルヴィル』と同じ1957年(厳密に言えば同じ年どころかその翌日)に録音されたのが、この『コールマン・ホーキンス・エンカウンターズ・ベン・ウェブスター(Coleman Hawkins Encounters Ben Webster)』という作品。録音日の近さから演奏メンバーやベン・ウェブスターのテナーの調子には似通った部分もあるけれども、大きく違う部分もある。 まずは面子を見てみよう。タイトルから分かる通り、コールマン・ホーキンス(Coleman Hawkins)がベン・ウェブスターと並んでテナー2本の共演になっているところが大きく違う。その他のメンバーはオスカー・ピーターソン(ピアノ)、レイ・ブラウン(ベース)、ハーブ・エリス(ギター)が共通だが、ドラマーのアルヴィン・スト―ラーは『ソウルヴィル』からは入れ替わっている。メンバーのかなりの部分が同じであるせいか、全体に穏やかでメロウな雰囲気は共通していると言える。 その上で、やはり聴きどころは、柔らかでクリアなコールマン・ホーキンスのテナーと、哀愁いっぱいのすすり泣くベン・ウェブスターのテナーの共演ということになるだろう。この2人にレスター・ヤングを加えて“3大テナー”と呼ばれたりもするぐらいだから、この共演をまずは楽しみたい盤だと思う。 その対比がよくわかる演奏としては、4.「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」。それぞれがきっちりソロを披露しているが、その入れ替わりによって、それぞれの味わいの対比が実にはっきり出ている。オスカー・ピーターソンを中心としたリズム隊のよさ(特に彼のピアノ演奏のよさ)もあって、ありがちなスタンダード曲演奏からは程遠い見事に心温まる演奏に仕上がっている。広くジャズ界において、アート・ペッパーによるこのスタンダード曲と並ぶ名演の一つと言ってもよいかもしれないように思う。 他に注目曲を少し上げるならば、3.「ラ・ロシータ」が面白い。下手をするとチープな演奏になりそうな曲ながら、2人の“らしさ”がちゃんと表現されているのが不思議なところ。しっかりソフトでメロウなのだけれど、おそらくは両者の間で相互のリスペクトがあるからこそ、この美しいアンサンブルと個々のメロディのバランスが保たれたのではないか、という気にさせられる。さらには、スローテンポで演奏される6.「タンジェリン」や7.「シャイン・オン・ハーヴェスト・ムーン」もまた、両者のリスペクトの賜物と言えそう。馴れ合いでただ甘くなるのでもなく、だからといって緊張感が聴き手にそのまま伝わるわけでもない。緊張感を程よく保ったまま、これだけ優しく、心温まる演奏を形にできるわけだから、やはり2人の巨匠の技ということになるのかもしれない。[収録曲]1. Blues for Yolande2. It Never Entered My Mind3. La Rosita4. You'd Be So Nice to Come Home To5. Prisoner of Love6. Tangerine7. Shine On, Harvest Moon[パーソネル・録音]Coleman Hawkins (ts), Ben Webster (ts), Oscar Peterson (p), Herb Ellis (g), Ray Brown (b), Alvin Stoller (ds)1957年10月16日録音。 【送料無料】コールマン・ホーキンス&ベン・ウェブスターColeman Hawkins/Ben Webster / Coleman Hawkins Encounters Ben Webster (SACD) (輸入盤CD)【I2014/4/8発売】(コールマン・ホーキンス&ベン・ウェブスター) 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2015年01月19日
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親しみやすさも演奏内容も二重丸の好盤 バド・パウエルは1924年ニューヨーク出身のジャズ・ピアニストで、モダン・ジャズのピアノを確立した人物とされる。そんな彼のベスト演奏盤はと訊いても名が挙がらないであろうが、彼の人気盤はと尋ねれば、間違いなく真っ先に名が挙がりそうなのが、本盤『ザ・シーン・チェンジズ(The Scene Changes)』であろう。 無論、だからといって中身が悪いと言っているわけではない。確かに、よく言われるように、バド・パウエルの演奏がより神がかっていたのは、早い時期のものであって、本盤が録られた後期ではない。けれども、キャッチーな1.「クレオパトラの夢」が優れていてかつ冒頭に収められている点、彼の子ども(当時3歳)が映り込んだジャケット写真など、本盤を“一家に一枚”的なメジャー作にしている理由は十分にある。 では、パウエルの演奏自体はどうだったのか。ほとんどを1テイクで録り終えているとのことだから、この日のパウエルは調子がよかったに違いない。でもって、その調子のよさの理由はというと、やはりトリオを組んでいるメンバー、とりわけアート・テイラーのドラミングにあったのではないかと筆者はみている。ブラシを多用し、全体の流れは作りながらも決して出しゃばらない本作での彼のドラミングは、おそらくはパウエルの希望通りだったのではないだろうか。そして、その上をパウエルは気持ちよく駆け抜けて演奏することができた、というわけである。 注目曲としては、有名な1.「クレオパトラの夢」を第1に挙げることになるだろうが、決して本盤はこれだけではない。個人的に好みなのは1.が終わった後に間髪入れず2.「デュイド・ディード」が始まるところ。この緊張感は何度聴いてもたまらない。どうやら、この日のパウエルには神が降臨してきたようで、6.「クロッシング・ザ・チャンネル」、8.「ゲッティン・ゼア」の疾走感は外せない。少し変わったところでは、5.「ボーダリック」という小品はジャケット写真の息子に捧げたものらしいが、神懸かり的な演奏だけでなく、ふと人間らしさを感じる場面だったりする。 余談ながら、初めてバド・パウエルを聴いてみようという人がいたならば、筆者は迷わずこれを勧めることだろう。ジャズ史的には、『ジ・アメイジング・バド・パウエルVol. 1』がいいというのは分かるけれど、いきなり「ウン・ポコ・ロコ」の三連発を聴かされてはたまったものではない。裏を返せば、曲の配置などアルバム作品としての出来がよいこと、さらにこの日は本人の状態が冴えていたという二点によって、この盤こそが親しみやすい初めてのバド・パウエル盤に相応しいという気がする。[収録曲]1. Cleopatra’s Dream2. Duid Deed3. Down With It4. Danceland5. Borderick6. Crossin’ The Channel7. Comin’ Up8. Getting’ There9. The Scene Changes10. Comin’ Up –alternate take-[パーソネル、録音]Bud Powell (p)Paul Chambers (b)Art Taylor (ds)1958年12月29日録音。 【CD】ザ・シーン・チェンジズ/バド・パウエル [UCCU-99048] バド・パウエル 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2015年01月17日
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バトルではなく、相互補完の関係にあるテナー奏者2人の組み合わせ アル・コーン(Al Cohn)とズート・シムズ(Zoot Sims)の名前がたまたまAとZ(アルファベットの最初と最後の文字)だったところから、『フロム・A・トゥ・Z(From A To Z)』とは、何とも思い付き的につけられた表題を持つのが、1956年録音のこの盤。2人とも1925年生まれの同い年のテナー・サックス奏者で、この時をきっかけにして、後々もアルとズートという共同名義で作品を生み出していくことになった。 本盤はテナー2人にトランペットを加えての6人編成(セクステット)での演奏と、トランペットが抜けてテナー二管がフロントの録音とから成る。そして、全体として何よりの特徴は、2人のサックス奏者のバトルになっていないという点。テナー・サックスという同じ楽器の奏者が2人となれば、その2人が激しく技を競い合うという想像をする人も多いかもしれない。けれども、この二人に関しては、全くそうではない。むしろ、二人のサックスが寄り添うように似てくる(元々スタイルの似た両者のテナーではあるが)という印象すら持つ。 つまるところ、アルとズートの関係は、“相互補完”というべきだろう。お互いが補い、助け合い、音を重ねたりつなげたりしながらこの作品は成り立っている。上で書いたように二人が似ている(実際に聴いていて、どちらがどちらの演奏だかわからなくなってしまうこともある)一方で、それぞそれのソロを聴いていると、その枠内で各々の個性が発揮されているといった印象を受ける。その対比は、より歌うようにより渋くサックスを吹くアル・コーンと、より揺れるようにより楽しくサックスを奏でるズート・シムズ、とでも言えばよいだろうか。 お気に入りを何曲か挙げておきたい。全体的な特徴としては、メロディアスでかつスウィンギーな演奏が本盤の中核を成すと思う。この意味では、1.「メロディオリスティック」、6.「サンディーズ・スウィング」、7.「誰かが私を愛してる」、9.「シャームズ・タームズ」、表題曲の10.「フロム・A・トゥ・Z」、12.「テナー・フォー・トゥー・プリーズ、ジャック」と聴きどころになる曲が多い。それに加えて個人的好みで聴き逃せないのは、二人が寄り添うかのような心温まる演奏が披露されている部分。この点に関しては、2.「クライミア・リヴァー」と11.「太陽の東(月の西)」がお勧め。[収録曲]1. Mediolistic2. Crimea River3. A New Moan4. A Moment's Notice5. My Blues6. Sandy's Swing7. Somebody Loves Me8. More Bread9. Sherm's Terms10. From A to Z11. East Of The Sun (And West of the Moon)12. Tenor For Two Please, Jack~以下、CD追加の未発表テイク~13. My Blues (別テイク)14. More Bread (別テイク)15. Tenor for Two Please, Jack (別テイク)16. Somebody Loves Me (別テイク)[パーソネル、録音]1.~6.、8.~9.、13.~14.:Al Cohn (ts), Zoot Sims (ts), Dick Sherman (tp), Dave McKenna (p), Milt Hinton (b), Osie Johnson (d)7., 10.~12., 15.~16.:Al Cohn (ts), Zoot Sims (ts), Hank Jones (p), Milt Hinton (b), Osie Johnson (d)1956年1月23日(1., 2., 6.)、1月24日(3.~5., 7.~16.)録音。↓そのものが見当たらなかったので、以下は本盤以外の推奨共演盤です↓ 【楽天ブックスならいつでも送料無料】テナー・コンクレイヴ [ アル・コーン/ハンク・モブレー/ジョン・コルトレーン/ズート・シムズ(ts/ts/ts/ts) ] 【RCP】[枚数限定][限定盤]アル・アンド・ズート/アル・コーン&ズート・シムズ[CD]【返品種別A】 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2015年01月14日
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親しみやすさと力強さを兼ね備えた、かつての“幻の名盤” レイ・ブライアント(Ray Bryant)のトリオ演奏の名盤としてよく知られるのが、プレスティジ盤の『レイ・ブライアント・トリオ』。その一方で、シグニチャーというマイナーレーベルに吹き込まれ、かつて“幻の名盤”とされたもう一つの代表的トリオ盤が、この『レイ・ブライアント・プレイズ(Ray Bryant Plays)』という作品である。 レイ・ブライアントは1931年フィラデルフィア生まれで、2011年に79歳で没している。年齢を重ねてからも様々な作品を残したが、本盤は1959年10~11月のセッションを収めたもの。少しさかのぼってみると、1956年に最初のリーダー作(エピック)を吹き込み、その翌年に名盤として知られる『レイ・ブライアント・トリオ』(プレスティジ)、さらにはソロ・ピアノ作(ニュージャズ)を吹き込んでいて、リーダーとしては4作目に当たるのが本盤だった。 ジャケットは決して芸術的に高度な出来栄えとは言い難いが、人の良さそうな本人が写真に写っている。このどこか親しみやすさや愛嬌が感じられるところは、演奏を聴いた時の印象にも当てはまる部分がある。1.「デロネーのジレンマ」の冒頭や、4.「スニーキング・アラウンド」、チャーリー・パーカー曲の5.「ナウズ・ザ・タイム」、11.「A列車で行こう」なんかに見られる、思わず体が揺らされてしまうノリのよさがその例である。 その一方で、聴き手に強烈な印象を与えるのは、ピアノ演奏における一つ一つのタッチの重み。早いテンポで演奏される6.「ホイートレー・ホール」でそれは顕著に感じられるが、もっとゆったりした曲でもその重みは同様だと思う。例えば、2.「ブルー・モンク」や8.「ア・ハンドレッド・ドリームズ・フロム・ナウ」などを聴けば、そのタッチの重みがよく表現されているように感じる。 ところで、上述の“希少盤”だったのには、本作品のレーベルが極めてマイナーで2年ほどしか続かなかった(そして70年代になって日本では“幻の名盤”として喧伝された)という背景があった。時が流れて、もちろん現在は普通にCDが入手可能である。物珍しさに裏打ちされた評判だけが独り歩きするのではなく、皆が聴ける時代に変わったからこそ、皆が実際に聴き、その評価が高くなされるという、決して多くはないタイプの名盤の1枚と言えると思う。[収録曲]1. Delauney's Dilemma2. Blue Monk3. Misty4. Sneaking Around5. Now's The Time6. Wheatleigh Hall7. Doodlin'8. A Hundred Dreams From Now9. Bags Groove10. Walkin'11. Take The A Train12. Whisper Not[パーソネル、録音]Ray Bryant (p)Tommy Bryant (b)Oliver Jackson (ds)1959年10月29日、11月5~6日録音。 【ポイント10倍】レイ・ブライアント・トリオ/RAY BRYANT PLAYS[TLCD-5104]【発売日】2014/11/20【CD】 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2015年01月11日
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孤高でありながら、どこかリラックスを感じさせるソロ演奏盤 セロニアス・モンク(Thelonious Monk)は個性的なジャズ・ピアノ奏者にして、数多くのスタンダードの作曲者。彼のアルバムについては、初期の『ジーニアス・オブ・モダン・ミュージックVol. 1』や、初めての人にも聴きやすい『セロニアス・モンク・トリオ』、さらには代表盤としてよく言及される『ブリリアント・コーナーズ』、さらにはピアノ・ソロ演奏の『ソロ・オン・ヴォーグ』なんかをこれまで取り上げてきた。今回ピックアップするのは、やはりピアノ独奏盤。といっても、よく代表作に挙げられる『セロニアス・ヒムセルフ』ではなく、ここはひとつ、隠れた好盤の『アローン・イン・サンフランシスコ(Thelonious Alone in San Francisco)』の方を取り上げてみたい。 上述の通り、セロニアス・モンクのピアノ独演盤と言えば、この『アローン・イン・サンフランシスコ』の他に、それ以前に録音された『ソロ・オン・ヴォーグ』、『セロニアス・ヒムセルフ』や後の録音の『ソロ・モンク』といった盤がある。いずれにせよ、ピアノ・ソロ盤なので、一般論としては、モンクを最初に聴くには向いてないし、好みも分かれるところかもしれない(そもそもピアノ・オンリーは眠気を誘うと言う人もいるので)。けれども、本作『アローン~』は、モンクのソロ作のうちでは、どちらかと言えばあまり緊張せずに聴けるタイプの1枚である(とかいって余計に眠くならないことを願う!)。 本盤の録音がなされたのは1959年10月。場所は、表題の通りサン・フランシスコにあるホールでの演奏で、2日分の音源が本作に収められた。50年代後半、モンクの作品をリリースしていたのはリバーサイドであったが、このレーベルでの主要作品は概ね録音が終わっており、一区切りつけたモンクにとっては気分転換のようなライブだったのかもしれない。表題が“ソロ”ではなく“アローン”というのも何とも的確である。東海岸で活動してきた彼にとって見知らぬ地であるサン・フランシスコでの演奏なので、“アローン”と名付けたのだろう。国単位でものを考えると“異国の地”という言い方は一見合わないのだろうけれど、国民国家的幻想をとっぱらって考えれば、同じ国のなかにも“異国の地”はいくらでもあり得る。例えば、東京人が京都や大阪へ行ってそこに住んでみたならば、食べ物からいろんな習慣に至るまで次から次へと“アウェー”なものなのだから(笑)。 思い込みが強すぎると言われるかもしれないけれど、ジャケット写真でサン・フランシスコ名物のケーブルカーに乗って、しかも観光客なんかが張り切って試したがる“立ち乗り” (とかいって、筆者も張り切ってやってみた経験あり)をしているモンクは、やはり“異邦人”な印象すら与える。 本盤のまずもっての特徴は、オリン・キープニュースのライナーにもあるように、“ただホールがあり、録音機器があり、そして1人の高い才能のミュージシャンがいる”状況でのライヴ録音ということになる。個人的なお気に入りは、1.「ブルー・モンク」、展開が読みづらい3.「ラウンド・ミッドナイト」、愛すべき小品の8.「リメンバー」といったところ。さらに、聴いた後でどうも頭から離れづらいのが、情感たっぷりの9.「あなたの眼がこわいの」(CDでは10.として別テイクも収録)。ピアノが単なる楽器なのではなくて、声などと同様、“身体の一部”であって、リラックスした雰囲気と同時に、モンクらしさが存分に本領発揮された演奏なのだと思う。[収録曲]1. Blue Monk2. Ruby, My Dear3. Round Lights4. Everything Happens To Me5. You Took The Words Right Out Of My Heart6. Bluehawk7. Pannonica8. Remember9. There's Danger In Your Eyes, Cherie (take 2)10. There's Danger in Your Eyes, Cherie (take 1) *CD追加曲11. Reflections[パーソネル]Thelonious Monk (p) 1959年10月21~22日録音。 【メール便送料無料】セロニアス・モンクThelonious Monk / Alone In San Francisco (輸入盤CD) (セロニアス・モンク) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方、“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2015年01月09日
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新年を迎えて~気まぐれジャズ・ナンバー(その6) 2015年を迎えての“いま聴きたい”ジャズ曲選ですが、5回の区切りで終わろうと思いつつも、急にこれが聴きたくなったので、さらに追加でもう1曲としたいと思います。その曲とは、トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)のトリオによるヨーロッパでのライヴ演奏盤『オーヴァーシーズ』に収められた「エクリプソ」というナンバーです。以下の音声では連続してしまっていてややこしいのですが、7分20秒あたりからの3曲目をお聴きください。 この「エクリプソ」とういう曲は、フラナガンのお気に入りなのか、他の作品での演奏、例えば、これが表題になった77年のアルバム作品もあります。以下は、同じ年(1957年)に録音された『ザ・キャッツ』に収録のもので、ジョン・コルトレーン(テナー)にケニー・バレル(ギター)が加わっています。 お正月特集は以上で一区切りとし、明日からは通常の更新パターンに戻りたいと思います。あらためまして、本年もよろしくお付き合いのほどお願いいたします。 Tommy Flanagan トミーフラナガン / Overseas 輸入盤 【CD】 【楽天ブックスならいつでも送料無料】THE COMPLETE `OVERSEAS´ +3 ?50th Anniversary Edition? [ トミー・フラナガン(p) ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2015年01月05日
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新年を迎えて~気まぐれジャズ・ナンバー(その5) 昨年(2014年)夏に亡くなったベーシスト、チャーリー・ヘイデンが、キューバ出身のピアノ奏者ゴンサロ・ルバルカバと組んだ『ノクターン』(2000年)から、有名なラテン曲をお聴きください。テナー・サックスはジョー・ロバーノ。彼のサックスもなかなか叙情に溢れた演奏を聴かせてくれます。 この「トレス・パラブラス(Tres Palabras, 英語直訳:Three Words)」は、キューバ出身の作曲家オスバルド・ファレス(Osvaldo Farrés)による曲です。名前を聞いたことがなくても、有名ラテン曲「キサス・キサス・キサス」の作者と言えば、なるほどという方もいらっしゃるかもしれません。 なお、個人的な好みでは、ジャズ界では、ケニー・バレルがコールマン・ホーキンズと共演したこちらの演奏も外せません。アルバムもまだ本ブログでは取り上げていませんし、蛇足となりますが、特にお気に入りということで、挙げておくことにします。 【メール便送料無料】チャーリー・ヘイデン / ノクターン[CD] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2015年01月03日
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新年を迎えて~気まぐれジャズ・ナンバー(その4) テナー奏者のズート・シムズとトロンボーン奏者のボブ・ブルックマイヤーが中心となったオクテット盤『ストレッチング・アウト』の表題曲を行ってみたいと思います。上記二人にアル・コーン(テナー及びバリトン・サックス)、ハリー・エディソン(トランペット)という豪華なフロント陣による盤です。作品全体としては何とも心躍る盤で、夜に聴くと寝つくことができなくなりそうな感じの作品です。 とは言いつつも、この表題曲は、ただ元気が出るとか心が躍るというだけではありません。どこかエロい、いやはや、もう少し上品に言うなら、どこか妖艶さが漂っているのです。女性が寝そべったジャケットがその印象を強めているという側面もあるかもしれませんが、必ずしもそれだけではないのです。この曲調そのものと、とりわけトランペットの決まり具合がその雰囲気を見事に醸し出しているように思います。 そのトランぺッターは、上述の通りハリー・エディソンという人です。レスター・ヤングから“スウィーツ(Sweets)”つまり“甘い(甘美)”というニックネームをつけられた奏者で、カウント・ベイシー楽団のトランぺッターとして活躍した人物です。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤】Stretching Out (Pps) [ Zoot Sims ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2015年01月03日
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新年を迎えて~気まぐれジャズ・ナンバー(その3) 3曲目は、晩年のソニー・クリスによる颯爽としたこの曲を取り上げたいと思います。ワン・ホーンでのびのびとアルトを奏でているのが印象的な盤『アウト・オブ・ノーホエア』の冒頭に収められたナンバーです。 上の画像は、先記のアルバムのジャケットのものです。このジャケット写真の爽快な青空も相まって、どこか爽やかな気分にさせてくれます。 もちろん、それでいて、彼の特徴である揺れとこぶしの入ったアルトの音色が聴きどころになっています。1975年という録音年代には既に時代遅れと見なされたパーカー的なスタイルも頑なに守られています。それと、この盤を取り上げた時にも少し触れたのですが、ドロ・コッカーのピアノが個人的には結構気に入っていたりします。 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2015年01月02日
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新年を迎えて~気まぐれジャズ・ナンバー(その2) ベン・ウェブスターというテナー奏者の一般的印象としては、“甘いサックス吹き”のイメージが強いのではないでしょうか。今回の“いま聴きたい曲”は、あえてその路線上の甘いバラード曲を取り上げてみたいと思います。この人特有の、すすりながら歌い上げるこのナンバーをお聴きいただきたいと思います。 この「テンダリー」という曲の演奏は、1953年の吹き込みである『キング・オブ・ザ・テナーズ』に収められています。甘さいっぱいのジャズ・バラードながら、どこか硬さ(演奏姿勢や緊張感ということではなく、どこか硬質な音という意味です)が保たれているのも、彼らしい部分だと言えるような気がします。そんなわけで、リラックスでき、メロウでありながらも、このいかつい顔(失礼!)に通じる、そうした硬質な部分もまた味わい深い部分だと思ったりしています。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤】King Of Tenors [ Ben Webster ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2015年01月02日
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新年を迎えて~気まぐれジャズ・ナンバー(その1) 2015年が明けました。今年も当ブログをよろしくお願いします。 正月早々ですが、気まぐれに聴きたくなったジャズ曲を何回かにわたって更新していきたいと思います。いつものパターンですが、これまでに取り上げた作品の中から、“いま聴きたい”と感じた曲を動画つきで選曲していこうというものです。 さて、この第1回目は、このナンバー。夜に関わる音楽を選んだのに特に理由はないのですが、たまたま聴きたいと思った今年最初の曲が、この「あなたと夜と音楽と(You and the Night and the Music)」だったというわけです。 1956年、アート・ペッパーと共演したマーティ・ペイチの盤『マーティ・ペイチ・カルテット・フィーチャリング・アート・ペッパー』に収録されています。この作品全体がそうなのですが、そのうちの何曲かは特にアート・ペッパーの華麗なサックスが全開で、この曲もその一つと言えると思います。 重い話題、暗い雰囲気になるニュースや出来事が多いここ数年の日本。一人ひとり、多くの人が、こういう風に、軽やかかつ華麗に舞うことのできる、明るい1年になることを願いたいものです。 【メール便送料無料】マーティ・ペイチ・カルテット / マーティ・ペイチ・カルテット~フィーチャリング・アート・ペッパー[CD] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2015年01月01日
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“勝者”たちの共演の楽しみ方とは? 「ウィナー(勝者)のサークル」なるよくわからぬアルバム名。その実態はと言えば、音楽誌(『ダウンビート』)が1957年に発表した批評家の投票結果を元に選んだメンバーの共演作である。オスカー・ペティフォードは、評価の確立されたプレーヤーとして、ジョン・コルトレーンやケニー・バレル、フィリー・ジョー・ジョーンズやアート・ファーマーは新たなスターの枠で選出され、企画盤としてベツレヘムがこれを録音した。 一見してわかるように(下記のパーソネル参照)、奇数曲と偶数曲でメンバーが異なる。ベースとドラムは共通だけれども、その他はメンバーや楽器編成が違う。例えば、コルトレーンは“偶数組”にのみ参加で、一方の“奇数組”はサックスは入っていなかったりする。そんなせいか、交互に違った編成の曲が現れ、聴き手としては、どうも統一感のなさに面食らうことになる。A面とB面で分けた方がすっきりしたのではないかという気さえしてしまう。 全体としては編曲できれいにまとまった感じがする。レギュラーコンボではないが、腕が保証されたミュージシャンが集まったがために、これまでのまとまりができたのだろう。とはいえ、コルトレーンの名や他のメンバーの名につられて、がっつりハードバップなんてものを期待すると、見事に肩透かしを食らうことになってしまう。 このアルバムにそのような期待を抱いてはいけない。むしろ、室内音楽的に静かに鑑賞するタイプの盤なのだという気がしている。実は筆者も最初は“不完全燃焼盤”みたいなイメージをもっていたのだけれど、このように思って聴き始めた途端、本盤は楽しいということに気がついた。特定の誰かの演奏にじっくりのめり込んで聴くタイプではなく、皆の演奏を少しづつつまみ食いして楽しむタイプの盤だということ。“あっ、コルトレーンが来た”、“このケニー・バレルのフレーズがいいよね”、“エディ・コスタのヴァイブ、いいじゃないか”。さらには、“このアンサンブルいいね”、“おお、このクラリネット(ロルフ・キューン)がはまっている”などと戯言を言いながら聴くのがいいのだと思う。 真面目にジャズを聴かないと不快感を示す愛好者もいるだろう。けれども、筆者はこういう“酒のつまみ”的にジャズ作品を聴ける可能性もあることを教えてくれたこの盤に感謝している。追伸:2014年も終わろうとしています。今年1年、ご覧くださった皆さん、本当にありがとうございました。今後とも引き続きご愛顧ください。[収録曲]1. Lazy Afternoon2. Not So Sleepy3. Seabreeze4. Love and the Weather5. She Didn't Say Yes6. If I'm Lucky (I'll Be the One)7. At Home with the Blues8. Turtle Walk[パーソネル、録音]奇数曲:Art Farmer (tp), Rolf Kühn (cl), Eddie Costa (vib), Kenny Burrell (g), Oscar Pettiford (db), Ed Thigpen (ds)1957年9月録音。偶数曲:Donald Byrd (tp), Frank Rehak (tb), Gene Quill (as, 2.のみ), John Coltrane (ts), Al Cohn (bs), Eddie Costa (p), Freddie Green (g, 2.のみ), Oscar Pettiford (db), Ed Thigpen (ds, 2.を除く), Philie Jo Jones (ds, 2.)1957年10月録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ウィナーズ・サークル [ ジョン・コルトレーン&アザーズ ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年12月31日
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J.J.に続くトロンボーン奏者の第二作 何やら意味不明のタイトルに見えるが、“ボーン”はトロンボーン、“バリ”はバリトン・サックスと言われれば、なるほど納得がいく。『ボーン&バリ(Bone & Bari)』は、トロンボーン奏者のカーティス・フラー(Curtis Fuller)が、初リーダー作の『ジ・オープナー』に続いて吹き込んだ第二作である。 トロンボーンという楽器の性質上、ということかもしれないが、この2枚目の盤では、前作のテナーとは違って、バリトン・サックス奏者、テイト・ヒューストンとの組み合わせが選択されている。さらには、1曲目の「アルゴンキン」は、前作とは異なり、ゆったりしたナンバーではなく、マイナーのブルースでありながら、むしろこのトロンボーンとバリトン・サックスという組み合わせを強調するかのような演奏になっている(これがまたスリリングでカッコいい)。 少しトーンを落とした2.「ニタのワルツ」に続き、表題曲の3.「ボーン&バリ」もまた、とりわけテーマ部分が何ともカッコよく、これらの楽器の組み合わせの妙がよく出ている。なおかつ、それを支えるソニー・クラークのピアノをはじめとするリズム陣の活躍もそれぞれのソロで聴くことができる。 他にお気に入りは、同様に4.「ハート・アンド・ソウル」や6.「ピックアップ」で見られる勢いのよさ。前者はゆったりした曲調ながら、小気味よいトロンボーン演奏がミソ。後者は、文字通り勢いに溢れた緊迫感ある演奏で、さりげなくピアノのソロもなかなかいい感じの出来に仕上がっている。 というわけで、どちらかと言えば“静”の印象が強い1枚目に対し、この2枚目では動的なカーティス・フラーの演奏という色合いがより濃いように思う。前作の“柔らかさ”を引き継ぎながら、バリトンとの共演、よりシリアスなソロ演奏と、その魅力を一層増やしているという風に感じる。[収録曲]1. Algonquin2. Nita's Waltz3. Bone and Bari4. Heart and Soul5. Again6. PickupBlue Note 1572[パーソネル、録音]Curtis Fuller (tb)Tate Houston (bs)Sonny Clark (p)Paul Chambers (b)Art Taylor (ds)1957年8月4日録音。 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2014年12月26日
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代表盤というよりは病みつき盤、飄々としたコルトレーンの調べ ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の名盤の一つとして取り上げられることも多いのだけれども、個人的には少し特異な、つまりは代表盤と呼ぶには憚れるのかなと思うのが、本盤『マイ・フェイバリット・シングス(My Favorite Things)』である。 この盤の特徴は何かと訊かれると、中毒性の強い盤、あるいは“病みつき盤”と呼びたいように思う。40歳で没したという、残念ながら決して長くはない彼のキャリア全体を振り返ってみれば、やはりコルトレーンは第一にテナーの人だと言えると思う。つまり、コルトレーンが本来のテナー・サックスではなく、ソプラノ・サックスを演奏(1.と2.でソプラノを演奏)している点で、“代表盤”とは言い難いように思う(もちろん、代表盤と名盤は同義ではない)。 そのようなわけで、まずもって第一の聴きどころは、表題曲の1.「マイ・フェイヴァリット・シングス」。そもそものソプラノ・サックスの音色というのもあるのだろうけれど、何よりも飄々としたコルトレーンの演奏が聴き手には刻み込まれる。言葉にするのは難しいのだけれど、“抑揚をつけようとしない風に見えて抑揚がついている”といった感じ、とでも言えば、少しはニュアンスが伝わるだろうか。よくコルトレーンは“シーツ・オブ・サウンド”という用語とともに、“たくさんの音”に溢れてるというイメージで語られることもあるけれど、この曲を聴けば、音はただ敷き詰められるだけでなく、必要に応じて空白が設けられていて、演奏者(コルトレーン自身)が必要と感じた時に一気に溢れ出てたたみかけるということ、そして逆に“空白部分”はみごとに空白なのだということも見てとられるように思う。 この傾向はテナーを吹いている3.と4.でも同様で、1.がいちばんの聴きどころであることは別にしても、これら2曲だけでもコルトレーンの真髄がよくわかるような気になる。ちなみに、本盤のセッションでアルバムに収録されなかったものは、後の『夜は千の眼を持つ』にも収録されている。[収録曲]1. My Favorite Things2. Everytime We Say Goodbye3. Summertime4. But Not For Me[パーソネル、録音]John Coltrane (ts, ss)MacCoy Turner (p)Steve Davies (b)Elvin Jones (ds)1960年10月21,24,26日録音。 [枚数限定][限定盤]マイ・フェイヴァリット・シングス(モノラル・ヴァージョン)/ジョン・コルトレーン[CD]【返品種別A】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2014年11月23日
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少し趣向を変えた編成でありながら、実はドナルドソンらしさに溢れた一枚 ルー・ドナルドソン(Lou Donaldson)は1952年の初リーダーセッション(参考過去記事)以降、多くの作品をブルーノートに吹き込んだわけだけれど、60年代半ばに数年間、アーゴに移籍し、ブルーノートから距離を置いた時期がある。そして4年ぶりにブルーノートでの復帰作となり、しかもシングルとして表題曲もヒットしたというのが、本盤『アリゲイター・ブーガルー(Alligator Bogaloo)』である。 ヒットしたからといって、これがルー・ドナルドソンの代表盤になるかというと、そこは少し留保が必要だろう。いかにも彼らしいのは、やはりそれ以前のものだという気がする。ちょうど1958~61年あたり(例えばこれもその時期に該当)の作品群の方が、彼の代表作を選ぶにはいいように思う。 他方、本盤の方はと言うと、はオルガンおよびギター入りのメンバー構成。ギター(ジョージ・ベンソン)、オルガン(ロニー・スミス)、ドラム(レオ・モリス=後に改名してアイドリスもしくはイードリス・ムハマド)を土台に、ルー・ドナルドソンのサックス、さらにはメルヴィン・ラスティーのコルネット(6.を除いて全曲に参加)という編成になっている。 そのようなわけで、3.や4.のようにオルガン色の濃い演奏も含まれるが、それ以外に随所でいい味を出しているのが若き日のジョージ・ベンソン。このギタリストがマイルスの作品(『マイルス・イン・ザ・スカイ』)の吹き込みに参加するちょうど前年の演奏が本盤ということになる。 そして、何よりもルー・ドナルドソンの演奏。上記の顔ぶれによって、一聴した感じはそれ以前の諸作と大きく違う印象なのだけれど、落ち着いて彼のプレイを聴くと、実は彼らしいアルトを吹いている。特に表題曲の1.「アリゲイター・ブーガルー」、3.「ザ・サング」、5.「レヴ・モーゼス」あたりが個人的にはお気に入り。軽快でいて、ブルース、R&Bといった背景のある粘り気がうまく同居しているように思う。全体の統一感がやや不十分な気がしないでもないけれど、結論としては、これもまた実は“彼らしい”作品なんだろうと思う。[収録曲]1. Alligator Bogaloo2. One Cylinder3. The Thang4. Aw Shucks!5. Rev. Moses6. I Want a Little Girl[パーソネル、録音]Lou Donaldson (as)Melvin Lastie (cor)Lonnie Smith (org)George Benson (g)Leo Morris (ds)1967年4月7日録音。 【RCP】【Joshinはネット通販部門1位(アフターサービスランキング)日経ビジネス誌2013年版】アリゲイター・ブーガルー/ルー・ドナルドソン[CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年11月01日
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二通りに楽しめる熱い盤 ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)は米国オハイオ州出身のテナーサックス奏者(1937年生まれ、2001年没)。1950年代にはデトロイトで音楽活動を行い、60年代に入ってからニューヨークへ進出。ブルーノートなどにハードバップ~前衛的な傾向の作品を残した。70年代に入って彼はBS&T(ブラス・ロック・バンドのブラッド・スウェット&ティアーズ)と演奏してみたり、サンフランシスコで音楽を教えたりと、80年代以降に“復活”するまでは、ペースを落とした活動期間に入る。 そんな70年代の初頭、日本に来日し、当時の日本の一線のジャズ奏者たちと共演したライヴ演奏盤がこの『ジョー・ヘンダーソン・イン・ジャパン(Joe Henderson In Japan)』である。録音の日は今から40年数年前、1971年の8月4日、録音場所はコンサートホールではなくて、銀座のクラブでの演奏。そのようなわけで、本盤はジョー・ヘンダーソンの盤としても楽しめれば、当時の日本のジャズミュージシャン(市川秀男=エレピ、稲葉国光=ベース、日野元彦=ドラム)が彼と共演した盤として、つまりは、往時の日本のジャズシーンの熱さを体感できる盤としても楽しめるという風に思う。 収録されているのは比較的長尺(短いもので8分半ほど、長いもので15分近く)の4曲。いずれも、ヘンダーソンのサックスをしっかり聴かせながらも、他のメンバーの迫力がビンビンと伝わってくる(特に日野元彦のドラミングは“熱さみなぎる”という形容がぴったりだと思う)。 収録の4曲はなかなか甲乙つけがたいが、1.「ラウンド・ミッドナイト」は冒頭(無伴奏演奏)部分も含め、かなり個性的な出来栄えで、ヘンダーソンの素晴らしさの背景に光るのは稲葉国光のベースだという気がする。「イン・ン・アウト」改め「アウト・ン・イン」となっている2.は、本盤収録曲中ではインパクトが少ないが、最も彼らしい演奏と言えそう。本ブログで過去に取り上げた『ページ・ワン』にも収録されていた3.「ブルー・ボッサ」は、ケニー・ドーハム作のものだが、既に“自分の曲”と化している感じがして、こういうブルージーな感じに迫られると、個人的には思いっきりツボにはまってしまう。4.「ジャンク・ブルース」は、上記の“熱さ”が最高潮になって表現された、アルバムの展開的にはいちばんの聴きどころとなっていて、ヘンダーソンの演奏も最高潮なら、ドラムの迫り具合も、(70年代的と言われようとも)このエレピの勢いのよさも、全てが“熱い”演奏に見事なまでに結実している。 なお、この盤のジャケットは、残念ながら、そうした“熱さ”がまったく伝わらないものとなっているように思う。上半身裸で座ったヘンダーソンの写真の背景には、小さめの文字で“ジョン・ヘンダーソン ジョン・ヘンダーソン…”とひたすらカタカナの文字(これはこれで非日本語圏ではインパクトがあったのかもしれないけれど)。ともあれ、内容を考えると、それこそコルトレーンのヴィレッジ・ヴァンガードの実況録音盤みたいな迫力ある演奏シーンだったらもっと衆目を集められたのではないかという気がしてならない。[収録曲]1. 'Round Midnight2. Out 'N' In3. Blue Bossa4. Junk Blues[パーソネル、録音]Joe Henderson (ts)Hideo Ichikawa (elp)Kunimitsu Inaba (b)Motohiko Hino (ds)1971年8月4日、「ジャンク」にて録音。 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2014年10月30日
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忘却の彼方に置かれた孤高のピアニスト “不遇のミュージシャン”というのは、音楽の世界にはたまに見かけられる。そんな中でもジャズ界においてこの表現で思い浮かぶ最初の一人とも言えそうなのが、このハービー・ニコルス(Herbie Nichols)というピアニストではないだろうか。片手で数えられるほどの枚数の作品しか残すことなく、白血病により44歳で他界した(1919年生まれ、1963年に死去)。 本人はマンハッタン出身だが、両親はセントキッツおよびトリニダー、共にカリブ海の小島の出身。これと関係あるのかもしれないが、ニコルスの演奏を聴くと、ピアノとは“奏でる”ものではなく、“弾く(はじく=ひく)”ものだということがよくわかる。ピアノという楽器の“打楽器的”な要素を示してくれる奏者はと言えば、筆者にとっては、セロニアス・モンクと、そしてこのハービー・ニコルスといったところだったりする。 実際、このニコルスはミュージシャンであると同時に音楽批評家でもあったそうで、セロニアス・モンク論を雑誌に載せていたりもしたらしい。なるほど、モンクの真似では全くないにせよ、ピアノの鍵盤を“叩く”意味についてはモンクから大きな着想を得ていたのかもしれない。どこへ飛んでいくか予想がつかなさそうなアドリブもまた、モンクの影響大と言えそうだが、やはりモンクのコピーではなく、モンクの香りを持った独自性を展開している。 10年近くもブルーノートのアルフレッド・ライオンに自身の録音機会を申し入れ、断られ続けたが、やがてライオンは重い腰を上げて、彼の吹き込みを実現させる。1955年~56年に2枚の10インチ盤と本盤を吹き込むが、なぜかその後は、ブルーノートでの活動は続かなかった。ベツレヘムやサヴォイに若干の吹き込みを残すが、1963年に44歳の生涯を閉じ、その後はやがて再評価の波が押し寄せるまで忘却の彼方へと忘れ去られた。 ニコルスの演奏は上で述べたようなパーカッシブなピアノという特徴を持つけれど、全体としてはドラムスに大きな役割を与え、全体の構成をコンポーザー的に考えているように思う。誤解を恐れず少し大げさに言うと、ドラムが単なるパーカッシブな役割を超えた役割を持ち、ピアノが普通のジャズ奏者のそれに加えてよりパーカッシブになって組み合わされている、とでも言えばいいだろうか。3.「チット・チャッティング」なんかはその典型例のように思う。 収録されているのはほとんどがオリジナル曲で、曲としては流れるように進む(どこかメロディアスだったりする曲も多い)のと同時にリズムとアドリブ展開の先の読めなさが楽しい。そんな観点から特にお気に入りなのは、1.「ザ・ギグ」、4.「ザ・レディ・シングス・ザ・ブルース」、6.「スピニング・ソング」、7.「クェアリー」といった辺り。この辺の“完成された芸”(=捉え方によってはワンパターンといえなくもない)がライオンに限界を感じさせたのかと思わなくもないが、ひとつのトーンで全体としてはうまくまとまり、個々の曲についてはどこへたどり着くのか予想し難い展開の仕方をする、これが本盤の最大の魅力と言えるだろう。[収録曲]1. The Gig2. House Party Starting3. Chit-Chatting4. Lady Sings the Blues5. Terpsichore6. Spinning Song7. Query8. Wildflower9. Hangover Triangle10. Mine[パーソネル、録音]Herbie Nichols (p)Al McKibbon (b: 1.~5.,9.),Teddy Kotick (b: 6.~8.、10.)Max Roach (ds)録音:1955年8月1日(1.~4.,9.)、1955年8月7日(5.)、1956年4月19日(6.~8.、10.)下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年08月29日
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ヘイデン&ルバルカバのボレロ作品集 チャーリー・ヘイデン(Charlie Haden)は、個人的にお気に入りのジャズ・ベーシストの一人だった。1937年生まれで、まもなく(2014年8月6日に)77歳の喜寿を迎えるところだったが、今月(7月)11日に闘病生活の後に逝ってしまった。追悼の意味も込めて、今回はこの『ノクターン(Nocturne)』を取り上げてみたいと思う。 一定世代以上の大物ジャズ奏者が次々鬼籍に入っていく中、時代の流れに思いを馳せたくもなりそうなものだが、本盤録音時点で既に63歳という“老境”でもあった。けれども、ヘイデン自身の言葉を辿ってみれば、この作品のルーツはずっと昔にあったようだ。 そもそも、『リベレーション・ミュージック・オーケストラ』(1969年)に所収の自作曲「ソング・フォー・チェ(Song for Ché,チェ・ゲバラに捧げる曲)」をめぐってキューバ音楽との接触が最初で、そこからキューバ音楽に惹かれるようになったと言う。その後、1986~87年頃にゴンサロ・ルバルカバ(1963年キューバ出身のジャズ・ピアニスト)に出会い、90年代には何度も一緒に演奏することになり、共演はその後も続いた。そうした経緯の中、一緒にボレロを演らないか、とチャーリー・ヘイデンが持ちかけ、やり取りはあったものの、最終的に時間がかかってしまって(ヘイデンいわく“ミュージシャンも忙しいから”)、2000年夏にようやくそのレコーディングがなされたというもの。 結局、キューバとメキシコのボレロを軸に、ヘイデン自作の2曲(4.と9.)、ルバルカバ自作の1曲(7.)を加えた11曲が収録された。トリオ構成を基本にし、必要な楽器(ギター、テナーサックス、バイオリン)の奏者を必要な時に含めた編成になっている。個人的にはバイオリン(フェデリコ・ブリートス・ルイス、1.,5.,8.)の起用が大ヒット。さらにテナーは、メロディを美しく奏でるダビー・サンチェス(1.,4.,7.,11.)と繊細さが光るジョー・ロヴァーノ(6.,10.)が使い分けられている。そして、極めつけは2.のパット・メセニーの参加。パット・メセニーとチャーリー・ヘイデンと言えば、名盤のデュオ作『ミズーリの空高く』があるが、メキシコの名作曲家でシンガーのアグスティン・ララの「ノチェ・デ・ロンダ(ナイト・オブ・ワンダリング)」をメセニー参加で演っているのは、さしずめ「メキシコの空高く」といったところだろうか。 全体的に落ち着いたトーンなので、あまり小さい音量で聴くと繊細なニュアンスが伝わらぬままただのBGMになってしまいがち。酒を片手にBGMも悪くはないかもしれないが、たまには音量を上げてガッツリと聴くのがお勧めと思う。名曲・名演奏揃いだが、特に気に入っているのは、1.「エン・ラ・オリージャ・デル・ムンド」、上記の2.「ノチェ・デ・ロンダ」、5.「ヨ・シン・ティ」、ルバルカバ作の7.「トランスパレンス」、10.「トレス・パラブラス」。Q.E.P.D.[収録曲]1. En la orilla del mundo (At the Edge of the World)2. Noche de ronda (Night of Wandering)3. Nocturnal4. Moonlight (Claro de Luna)5. Yo sin ti (Me Without You)6. No te empeñes más (Don't Try Anymore)7. Transparence8. El ciego (The Blind)9. Nightfall10. Tres palabras (Three Words)11. Contigo en la distancia (With You in the Distance)[パーソネル、録音]Charlie Haden (b)Gonzalo Rubalcaba (p)Ignacio Berroa (ds)David Sánchez (ts, 1., 4., 7., 11.)Joe Lovano (ts, 6., 10.)Pat Metheny (g, 2.)Federico Britos Ruiz (vl, 1., 5., 8.)2000年8月27~31日録音。 【Aポイント+メール便送料無料】 チャーリー・ヘイデン / ノクターン[CD]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年07月14日
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当たり年の1956年末の一風変わった盤 1930年生まれで、もはや数少なくなった存命中のジャズ・ジャイアンツの筆頭(まもなく84歳)、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)。このテナー・サックス奏者の長いキャリアの中でも、1956年というのは、格別の当り年だった。 この年に彼が残した録音としては、超有名盤『サキソフォン・コロッサス』(同年6月録音)があるが、他にも、『プラス・フォー』(3月録音)、『テナー・マッドネス』(5月録音)、『ロリンズ・プレイズ・フォー・バード』(10月)、BN第1作の『ソニー・ロリンズVol. 1』(12月録音)と、リーダー作だけで6枚(未発表曲を含めた編集盤の『ソニー・ボーイ』を含めると7枚)ものリーダー作を残している。もちろん、これ以外にも、前年に復帰に際して加わったブラウン=ローチ・クインテットでの演奏(例えば『アット・ベイズン・ストリート』)もある。翌年にも『ニュークス・タイム』や『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』と名作が続くわけだから、別にこの年だけが“当たって”いたわけではないにせよ、この生産性の高さは、本人のキャリアの中でも、最も多忙でエキサイティングな1年だったに違いない。 さて、本盤『トゥア・デ・フォース(Tour de Force)』の大きな特徴は、悪く言えばそのアンバランスさ、よく言えばその緩急のつき具合にある。3.と5.がヴォーカル・ナンバーとなっていて、普通ならロリンズ自身がサックスで“歌う”のを得意とするところ、アール・コールマンのヴォーカル入りとなっている。このコールマンの起用は、ロリンズ自身の希望だったとのこと。冒頭の1.「イー・アー」にも典型的にみられるように、『サキソフォン・コロッサス』で発揮されているキレと閃きに満ちたインプロヴィゼーション曲が過半を占める中、上記ヴォーカル入りの2曲はしっとりとしたスロー・ナンバーで、コールマンの声にごく自然な感じでロリンズの“バラード吹き”としてのよさが絡む。 曲目の中で気になるかもしれないのが、2.「ビー・クイック」と4.「ビー・スウィフト」。ともに友人の名に因んだオリジナル曲ということらしいのだが、テーマなんて何のそのというひたすらのアドリブで、瞬発力に満ちた演奏を披露する。このあたりは、ロリンズ本来のものと同時に、前年から一緒に活動したブラウン=ローチ・クインテットに刺激された部分もあるのかもしれない。 最後に、CD化によって追加収録された6.「ソニー・ボーイ」にも触れておきたい。もともと録音は同じセッションだったが、当時の本盤には収録されず、別途『ソニー・ボーイ』という盤に収められた曲。同盤は、本盤から3曲(ヴォーカル曲以外)と別のセッション(『プレイズ・フォー・バード』のセッション)の1曲と併せて、この曲を表題曲にして編まれたものだった。CDで収録時間が長くなったためか、現在では同じセッションの曲として『トゥア・デ・フォース』の追加曲に含められており、軽快さとアドリブの心地よい演奏。全編通じて言えることだけれど、この曲においても、同時期のロリンズの録音の多くに関わったマックス・ローチのドラムの存在感が大きい。[収録曲]1. Ee-Ah2. B Quick3. Two Different Worlds4. B Swift5. My Ideal6. Sonny Boy [CD追加曲][パーソネル、録音]Sonny Rollins (ts)Kenny Drew (p)George Morrow (b)Max Roach (ds)Earl Coleman (v, 3.& 5.)1956年12月7日録音。 【当店専用ポイント(楽天ポイントの3倍)+メール便送料無料】SONNY ROLLINS / TOUR DE FORCE (輸入盤CD) 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2014年07月12日
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