エマニュエル米大使の攻撃的政治手法、日本の迅速な対ロ制裁に一役Isabel Reynolds2022年3月25日 19:11 JST:ブルームバーグ 「ランボー」の異名、保守的な日本への大使としては珍しい人選 日米関係の現代化と強化に「またとない機会」-エマニュエル氏 1月にオンライン形式で開催された日米首脳会談の際、バイデン大統領は岸田文雄首相に、次期駐日米大使には気を付けた方がいいと冗談を飛ばした。 攻撃的な性格から「ランボー」の異名を持つラーム・ エマニュエル氏(62)の駐日大使への起用は、変化のペースが遅いとされる保守的な日本にふさわしいとは言い難いようだった。ただ、バイデン大統領は岸田首相に、エマニュエル氏には全幅の信頼を寄せているとも語っていたと、首脳会談に詳しい当局者は述べていた。 U.S. ambassador to Japan Rahm Emanuel Interview
これまでのところ、前シカゴ市長のエマニュエル氏の周辺では、8年間務めた市長時代よりも摩擦が生じているような感じはない。ウクライナに侵攻したロシアに対し日本が示した驚くほど強硬な姿勢は、同氏の実践的なアプローチが少なくとも影響していると在日外交官や日本政府当局者はみている。 エマニュエル氏は3月17日に都内で行ったインタビューで、「信じられないほど遅く、苦痛を伴うプロセスになるだろうと誰もが言った」と述べた。「間違いなく壁にぶつかるだろう。ただ、これまでのところそのようなことはなかった」と言う。 日本の対ロシア制裁は、台湾問題を巡る中国へのメッセージを含め、日本の国益に基づくものだが、迅速な措置は2014年のロシアによるクリミア併合の際の消極的な動きとは対照的だ。日本政府が最恵国待遇の打ち切りや資産の凍結を行っただけでなく、大半の日本企業がロシア国内での事業を停止した。 在日外交官らによれば、オバマ政権で大統領首席補佐官を務めたエマニュエル氏には、米大使としてここ数十年見られなかった政治手腕がある。 ジャン・アダムズ駐日オーストラリア大使は、「米国やG7(主要7カ国)の対ロシア制裁に完全に同調した日本のスピード感は、エマニュエル大使がお膳立てした効果的なコミュニケーションが少なくとも一因としてあったに違いない」と指摘。「大統領やホワイトハウス、民主党、議会に極めて近い人物の政治任用のたまものだ」と語った。 U.S. Ambassador To Japan Rahm Emanuel Visits Navel Base 改札を通過するエマニュエル氏(神奈川県横須賀市、2月17日)Source: Bloomberg エマニュエル氏の起用は、身内である民主党の一部からの反対を経て昨年12月に確定し、同盟国である日本の2年半にわたる米大使不在が解消された。オバマ政権下ではキャロライン・ケネディ氏が駐日大使として活躍したが、エマニュエル氏ほどの政治経験や人脈を持つ人物が選ばれるのは珍しい。 岸田首相の側近である木原誠二官房副長官と、匿名を条件に語った米大使館の上級外交官によると、エマニュエル氏は1月の日本着任前から影響を与え始めていた。日米首脳会談の取りまとめに加え、日米関係を悪化させる恐れがあった在日米軍基地での新型コロナウイルス感染拡大を巡る問題の解決にも手腕を発揮したという。 トランプ政権下で導入された鉄鋼への追加関税措置の一部撤廃に日米両政府が合意した際も、エマニュエル氏は重要な役割を果たした。 木原氏はエマニュエル氏について、「日本という地にあって、アメリカのリーダーシップを示している」と評価。ウクライナ情勢を巡りG7や欧州諸国の在京大使らを集めてイベントや会合を開くなど、米国を軸としたネットワークを構築しているという。