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May 18, 2010
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カテゴリ: ミステリ(海外)

アイルランドの柩
エリン・ハート
ランダムハウス講談社 文庫
☆☆☆☆☆
 原題は"Haunted Ground"。正直、この邦題がベストかどうかよく分からないし、本文中も普通名詞に~たちとつけていて、読んでいてなんだかなーと思ってしまった。だが、他は特に訳文に不満があったわけではない。
 泥炭堀りをしていた農夫がそこで女性の頭部を発見する。泥炭層からは昔の遺物がほとんど腐敗することなく発見されることがあるのだが、2000年くらい前の人間の不精髭がそのまま保存されていたりするほどらしい。この女性の頭部はいつのものかすらすぐには分からないので、ダブリンから考古学者、コーマックとアメリカ人の解剖学者ノーラが呼ばれる。そして、この発見された女性は若い女性だが、末期に苦悶の表情を浮かべているのだ。しかもこの地域では、2年半ほど前、子連れの女性が失踪している。まもなく、この女性は「赤毛の娘」を意味する「カリーン・ルア」と呼ばれ、17世紀頃の女性と推定される。さらに、この地方の名士の失踪した妻子の行方にも絡んでストーリーは展開する。
 ノーラやコーマック、そして捜査にあたっているデヴァニー全員がなんらかのわだかまりのある人々で、作中それが顔をのぞかせる。特にノーラの過去は彼女がこの調査に関わる姿勢に大きな影響を与える。さらに、現在の地域開発と17世紀半ばのオリバー・クロムウェルの征服時代、カトリックが迫害され、プロテスタントの支配を受けていた時代からの様子もストーリーに関わり、それらが絡み合って最後には全ての謎が解決される。
 現在の謎と17世紀半ばに生きた「カリーン・ルア」、また荒涼として、古城や崩れかけた塔、修道院跡など、アイルランドの風景が浮かびそうな場面にパブでアイリッシュミュージックを奏でる人々、(コーマックもデヴァニーも、さらにノーラも音楽に参加する場面があるのだ)また口承の古い歌をコーマックが聴きに行く場面もあり、謎解きとともに楽しめた。
 作者はエリン(アイルランドの古名)という名のアメリカ人。何度もアイルランドを訪れるうちに、アイリッシュミュージシャンの夫とアイルランドで暮らしているそうだ。全編、私たち外国人が持つアイルランドのイメージが小説の上に現れているような感じがするのも、作者のアイルランドに対する愛着ゆえだろう。映像化しても見ごたえがありそうだ。





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Last updated  May 19, 2010 03:44:15 AM
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