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May 9, 2011
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カテゴリ: 日本の小説

【送料無料】テンペスト 下(花風の巻)

【送料無料】テンペスト 下(花風の巻)
価格:1,680円(税込、送料別)


池上永一
角川書店 四六上製
☆☆☆☆☆◎
 上下巻とも本文二段組、ページ数420ページあまりの大作。でも、一度読み始めてしまうと、一日で300ページは読んでいた。明治維新直前の琉球王朝が舞台。男装の麗人、孫寧温(男名)真鶴(女名)が周囲の本当のジェンダーを隠して宦官と己を偽ったまま、琉球の科挙にあたり、超難問の科試をパスして年若くして高級官吏となるものの、薩摩の役人に一目ぼれしたり、流刑になったり、琉球王の側室になったりと、これでもかこれでもかと波乱の生涯を送る。とにかく展開が速いジェットコースタードラマのようだ。琉球王朝版ベルサイユのばら(プラスとりかへばや風味少々)といえなくもないが、少女漫画よりはるかに込み入った内容になっている。そして何にもまして、著者の琉球への愛情と誇りが溢れている。薩摩と清国の狭間で小国の琉球が生き延びるには武器を捨て、頭脳と芸術で強かに生きていくしかなかった。それが洗練された外交術(だから科試が恐ろしく難しい)と芸術を生み出したのだ。この琉球の国情は現在の日本やシンガポールを連想させる。
 当時の世界は産業革命を成し遂げたイギリスに斜陽の清国は敗北し、アメリカが日本の開国を狙って琉球にも現れる。やがて浦賀に現れた黒船が一足先に沖縄に現れていたのだ。このときのアメリカとの交渉もアメリカの要求を巧みに日本に誘導した見事なものだと思うが、それを行ったのが寧温という設定だ。また、絢爛たる王宮文化も時に大奥ばりの女同士のドロドロの人間模様を織り交ぜて読んでいて飽きない。女性禁制の王宮では美少年が女官のような役割を果たしたとか、聞得大君の権力などなど。一年ほど前に旅行した首里城の様子を思い出しながら読んだ。ドロドロの人間模様にはふさわしい強烈な登場人物も多く、二重のジェンダーを持つ寧温がかなりおとなしく感じた。妖怪としか書きようのない清国の本物の宦官徐丁垓、逞しい大勢頭部二人、少女漫画のヒーローのような薩摩の侍で示現流の達人、浅倉雅博。強いていえば、この著者の小説には付物だった逞しいおばぁの登場がないのが少々物足りなくはあったが。
 しかし、 結末は日本に併合されて、琉球王朝は解体され王が東京に向うところで終わり、民はそれでも逞しく生きていき、主人公も晴れて積年の想いが叶って希望が見えるように感じる。 それでも琉球賛美でハッピーエンドの小説ではないと思う。作中、 「日本に併合されたことを五十年後、百年後の民が心から喜べるように琉球を愛します」「日本は琉球を解体した以上幸せにする義務がある」という 最後の方に出てくる文に頷くことはできない。ただ、こんなに華やかな文化が栄えたバックボーンがあるからこそ、今、沖縄出身の芸能人が多いのかもしれない。この小説の登場人物も美男美女と個性的な人物が多い。お芝居という三次元で見てみたいような気もする。まだ上演してるのかな?
 恥ずかしいことに、沖縄本島と八重山諸島との位置関係も私はよく分かっていない。けれど、この本によると、沖縄本島と八重山諸島でまた少し文化や言葉がこの時代は違ったのだそうだ。もう少し沖縄や島に関した本を読んでみたい。そういえば、この本にはいたるところに琉歌が出てくる。日本語の五七調とはかなり違うようだが、これ、節をつけて三線と一緒に唄ったら素敵だろうなぁ。また近いうちに沖縄や石垣島に行きたいな。





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Last updated  May 11, 2011 01:42:17 AM
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