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June 4, 2012
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カテゴリ: ミステリ(日本)

【送料無料】幽女の如き怨むもの
三津田信三
原書房 四六上製
☆☆☆☆☆◎
 今回は戦前・戦中・戦後の遊女の各三人連続での飛び降り事件を刀城言耶が遺された日記や証言をもとに推理する。第一部が遊女の日記、第二部が置屋(?)の女将の証言、第三部がそのルポルタージュを書こうとしていた作家の遺した記録だ。
 第一部は貧しい農村から売られてきた少女が遊女になる過程のなかで、怪異めいたできごとと凄惨な場面が重なり、それが飛び降りを誘発したのではないかと思ってしまう。また、それが結構不気味だ。ただ、その不気味さもさることながら、遊女たちの残酷な暮らしぶりの描写も凄い。その日常が一層不気味さをましている。 ただ、この日記の終わり方は結構後味がいい。そして、この日記が終わるのが日中戦争が始まる前年なのだ。
 第二部は置屋の女将の証言。第二次大戦中の話。ここで、取材にきていてきわどい話題になると照れる言耶のうぶな姿が女将の口を通して描写されるが、結構笑ってしまう。この女将は第一部の日記に少女の頃の姿でも登場している。ここでも戦時中の状況が描写される。このあたりから置屋は遊ぶところではなくなって、もっと直接的な場所へとなっていく。このあたりは世情の重苦しさがたまらなく嫌だった。
 第三部は置屋の持ち主が代わり、連続飛び降り事件を取材に訪れた作家の記録。この第三部がこのシリーズのほかの作品とは時系列的に並行しているのではないかと、私はふと思った。ここでも年増になった第一部の登場人物たちが顔を出す。だが、売春宿もやがて赤線が廃止されるので、なくなってしまい、商売替えになるのだが、そこにいる人たちはあまり変わってないかも。ただ、ここの 最後は不気味だ。
 第四部が言耶の推理。時代はシリーズのほかの作品よりも数年後ではないかと思われる。この探偵によくあるヘボ推理は出てこず、割とすっきりした結末だが、 悲しい結末だ。 ただ、前に出てきた細かい描写と合致していないような気がするところもあるし、最後の調査結果が出てくるところもこの小説にふさわしい余韻の残し方をしているし、その曖昧さが怖さにつながって、とても読み応えがあった。期待通りの読後感が得られたといえる。





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Last updated  June 7, 2012 01:51:30 PM
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