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アリアガはラバの上で、でっぷりと太った体を反らして体勢を整えた。
そして、この肥沃な3万平方キロの土地の代官であることに、改めて黒い腹の中でほくそえむ。
しかし、その反面、今宵は、それら道端の木々や畑から、何やら不気味な怨念めいたものが放たれているような気がして、どうにも落ち着かない。
アリアガは、憎々しげに前方を見やった。
今夜、あの生意気なインディオに会ったせいに相違ない。
人気のない夜道を進みながら、アリアガの脳裏にあのトゥパク・アマルの姿がよぎる。
背筋に嫌悪と憎悪の虫唾が走った。
あの増長したインディオを、このまま放置しておくわけにはいかぬ。
これ以上増長させる前に、何かひどい目に合わせてやらねばいかん。
アリアガは傲然と胸を反らせ、ラバに鞭をくれようとした。
その瞬間だった。
インディオの一群が草むらの中から、ばらばらと飛び出した。
反射的にギョッと身を固め、狼狽した眼を見開くアリアガの手から、ラバの鞭がこぼれ落ちる。
手綱を引き締める間も無く、矢のごとく飛んできた投げ縄に、その首が巻かれた。
次の瞬間には、アリアガは、そのまま縄ごと鞍から地に引き摺り下ろされていた。
首に縄が巻きついたまま地に伏し、驚愕して血走った眼で見上げるアリアガの前に、黒服に身を包んだ一人のインディオが進み出た。
アリアガの顔面が崩れるように歪む。
「おまえは…!」
だが、恐怖のためか、喉がひきつって声が出ない。
アリアガの全身がガクガクと震え出す。
トゥパク・アマルは、ただ無言でアリアガを見下ろしていた。
投げ縄の先端を握る大男のディエゴが、この強欲な代官の首に巻きついた縄をたぐりよせるようにして、そのままアリアガを固く縛り上げた。
その間に、棍棒を手にしたアンドレスとビルカパサが、アリアガの複数の護衛官たちをあっさりと倒し、無傷のまま縛り上げる。
アリアガに付き従っていた2人の黒人奴隷たちは、もはや抵抗する気力もなく、フランシスコに大人しく縛られるままになっていた。
すべては音も無く、しかも、瞬時のうちに行われた。
そのままトゥパク・アマル一味と捕虜たちは、道端の草の中に素早く身を潜めた。
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