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だが、既にこの頃には、トゥパク・アマルの数年間に渡る周到な反乱準備によって手を結んできた各地の同盟者たちが、一斉に立ち上がりはじめていた。
さらに、トゥパク・アマルの派遣した側近ディエゴの分遣隊はそれらの一斉蜂起をよく援護し、反乱の火の手はますます勢いを増しつつあった。
一方、トゥパク・アマル率いるインカ軍本隊は、各地に転戦してその勢力を拡大しながら、植民地支配を瓦解せしむためには必ずや奪還せねばならぬ、かつてのインカ帝国の旧都クスコ目指して軍団を進めていた。
そして、その道程にある各郡を統治下へ治めるべく、対抗勢力との闘争を重ねていた。
流血の事態は、トゥパク・アマルとて決して望むものではない。
しかしながら、牙城クスコ奪還に向けて、クスコ周辺の主要な郡を統治下に治め、代官の職能を廃絶し、民衆を解放し、且つまた、兵力を増強するために、各郡の抵抗部隊――それは、スペイン側の抵抗部隊であるが――との戦闘は避けられぬものであった。
そして、その日も、クスコへの道程にあるクシパタ郡への進軍を予定していた。
クシパタ郡はコルディエラ山脈の谷間にある山岳地帯の郡で、長大なビルカマユ川がその郡の輪郭に沿うように悠然と流れている。
かくして、この郡には既にクスコの戦時委員会から派遣されたスペイン人から成る援軍が銃器を携え、厳しい警護の目を光らせていた。
また、当地の代官お抱えの部隊も、小銃を携え、且つ、よく訓練されていた。
まともに正面から戦闘をしかけても、勝機は無い。
トゥパク・アマル及び参謀オルティゴーサを中心に、アンドレスを含む各連隊長たちは、事前に慎重な戦略を練っていた。
まずはその地形を詳細に吟味し、戦闘場所を絞り込む。
そして、クシパタ郡の入り口付近にある街道沿いの低地にその場を定めた。
そこは、コルディエラ山脈とビルカマユ川とにちょうど挟まれた山岳部の街道の一部で、敵がインカ軍の侵攻を食い止めるための進軍途上で、必ずや通るはずの場所だった。
クシパタ郡の哨兵の目を逃れるため、深夜、その街道に密かに侵入したインカ軍の兵たちは、敵方の進路にあたるその街道の一角に、その進路を塞ぐがごとく石や木で巨大な障害物を構築した。
土地勘に優れたビルカパサ率いる連隊が、主にこの障害物建造を担当した。
この時は、武器を持たずとも参戦できたため、コイユールも障害物造りに参加した。
そして、オルティゴーサやアンドレスら率いる複数の連隊からなるインカ軍本隊は、総指揮官トゥパク・アマルのもと街道に面した山の上に身を潜めた。
街道の向こう側は、ビルカマユの川が流れ、自然の要害を成している。
オルティゴーザ率いる連隊は、これまでの戦果として入手した小銃で武装し、アンドレス率いる連隊は主にサーベル、棍棒、斧などで武装していた。
◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆
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