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トゥパク・アマルらの「破門」を唾を飛ばしながら狂ったように叫び続けるモスコーソを、委員会のメンバーたちは完全に気圧された眼で見上げながら、しかし、「もっともなことでございます。モスコーソ司祭様!」と、口々に同意した。
しかしながら、真実は、教会を血で汚したのは、決してトゥパク・アマルではなかったはずだ。
サンガララの合戦冒頭で、教会の出口で小競り合いを引き起こし、死傷者を出したのは、スペイン側の歩兵が逃げ込んだこと、及び、隊長ランダが叱責したことが引き金であり、原因である。
トゥパク・アマルは、むしろ教会を血で汚すことを避けるために、細心の注意を払っていた。
だが、トゥパク・アマルら一味を一掃することに憑かれたモスコーソにとって、真実がいかなるものであるかなど、そのようなことはもはや重要ではなかった。
トゥパク・アマル、及び、インカ軍をいかに追い詰め、破綻に至らしめるか、その目的のための行動が、今やいかなる真実よりも優先された。
モスコーソは「司祭」というその絶大な権限を振るい、トゥパク・アマルとその一党をキリスト教から破門する旨を、国中の信者たちに向けて厳かに謳いあげた。
「ティンタ郡のカシーケ(領主)、トゥパク・アマルは、スペイン王陛下に謀反をいたし、王の権利を剥奪し、泰平を乱したかどによって、これをキリスト教から破門することを天下に通告する!!
トゥパク・アマルを援助し、同情し、付き従った者が、本布告が出された後、あの者となお連絡を保ち、援助をするならば、同様に破門に付す!!
破門を許す権利は、余のみが保有する!!」
モスコーソはその旨を書き記した貼り紙を国中の教会に掲げるよう命を発した後、まだ姿の見えぬトゥパク・アマルをあの舐めるような、しかし、今や炯々と血走った眼で見据えるようにしながら、不気味に笑った。
さすがのトゥパク・アマルも今回こそは決定的な打撃を受けるに相違ないと、この国の民衆心理を読み抜いているモスコーソは確信していた。
「破門」…――実際、その言葉のもつ不吉な響きは、現代の我々には到底、想像の及ばぬほどの強烈なものであったのだ。
◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆
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