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「ったく、アンドレス、おまえなぁ…!
今は、相手があのフロレスだから良かったが、違ったら、その辺の草むらに、敵方の斥候がウヨウヨだぞ。
そんな大声だしたら、敵に何もかも筒抜けだろうが」
「すいません…!」
アンドレスは、まだ口を押さえたまま、さらに身を竦(すく)めた。
そんなアンドレスを眺めやりながら、アパサは声を低める。
「俺も驚いたが、あの書状は、間違いなくトゥパク・アマルの筆跡だった。
妻子まで連れて脱獄だなんて、無茶な真似を……!
おまえにもそうだが、昔から、あいつには、ヤキモキさせられることばっかりだ」
そう言いつつも、大きく瞳を輝かせるアパサの野性的で精悍な面差しには、強い恍惚が滲んでいる。
そのアパサの横顔に、アンドレスの胸は、ぐっと熱くなった。
このアパサが、トゥパク・アマルの捕縛をどれほど悔やみ、案じ、救出できぬ無力感に苛まれてきたか――決して表には出さなくとも、つきあいの長いアンドレスには痛いほど分かっていた。
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪アンドレス≫
トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。
若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。
スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。
現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。
≪アパサ≫
「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。
「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。
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