2005/04/05
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テーマ: 社交ダンス(8418)
カテゴリ: 下町人情物語
「ほら、またあの子が来たよ。」

父は子供の頃、得意の民謡を大声で歌いながら、おばあちゃんの家に遊びに行っていました。その歌声が遠くから近づいてくると、何かおやつを用意して、おばあちゃんは縁側で待っていてくれたのです。

私も父のまねをして、2歳の頃から、民謡を歌っていました。お風呂に入ると、歌がこだましてとても上手に聞こえるので、父と一緒に延々と民謡メドレーの合唱。

ソーラン節~八戸小唄~会津磐梯山~大漁節~花笠音頭~相馬盆歌~真室川音頭~東京音頭~コキリコ節~おてもやん~黒田節~

北は北海道から南は九州まで。大人になって、私は、新人歓迎会で花笠音頭を歌い、この昔取った杵柄は活かされました。

そんな歌の上手だった父が、喉頭ガンに冒されてしまいました。ロングサイズのたばこを一日2箱、何十年も吸っていたのですから、決して不思議ではありません。父はマスコミ関係の仕事をしていました。

幸い、早期発見だったことと、他に転移が見られなかったので、手術の必要はなく、放射線治療だけですみました。しかし、風邪をひいただけでも痛いのどを、放射線で焼くのですから、唾を飲んでも涙が出るほど痛いそうです。父は、艶のある声を失いました。私も、洋楽に入れ込んでいたので、もう、この家の民謡の灯は、完全に消えてしまったのでした。

それから数年が経って、夕食後に母とミカンをほお張りながら、テレビを見ていたときのことです。突然、テレビの音とは違うメロディが、耳に飛び込んできました。

「めでたあ、めでたあ~の、若松さあまあよ~」



「歌ってる!」

この家に、また、民謡が響く日が来るなんて、信じられないような驚きでした。私は、だれに感謝したらいいのか、この喜びをどう表現したらいいのか、分からずに、ただ、ボロボロ涙を流しながら、「歌ってる、歌ってる。」と何度も繰り返して、母と手を取りあって泣きました。

いまでもこのときのことを思い出すと、感動の涙がにじんでくるのです。生きているって、本当に素晴らしい。

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Last updated  2005/04/05 12:16:43 AM
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