2011/05/14
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テーマ: 社交ダンス(8417)
カテゴリ: 下町人情物語
『だれか好きな人いるの?』

バケツを挟んで愛の告白は続いていました。


『いるよ。』

『だれ?教えてよ。ボクも言ったんだからさ。』


そのときすんなり私も言えばばよかったんですよね。1年の時からハンサム君が好きだったんです。

でもタイミングを逸しました。まじめ君が来ちゃったんです。




『なに話してんの?』


間の悪い男っていますよね。


『あのね、好きな子だれか教えてくれるんだって。』





『だれだれ?』


私は『あとで』と言って帰り支度を始めました。

だって告白って皆に言うもんじゃないでしょ。家が逆方向だから、帰るとなったら今日は見逃してくれるかなと思ったんです。

ところがですよ。




掃除が終わるのを待っててくれた近所の チエちゃん と一緒に学校を出てからも、みんなゾロゾロついてくるじゃありませんか。

ハンサム君だけじゃなく、まじめ君も虫博士まで。

なんでおまけみたいのもいっぱいついて来ちゃうかな。

とうとう家に帰るまで言えず、そのまま近所の空き地で戦争ごっこなんかして遊んで日が暮れそうになってみんな帰りました。





学校から家まで1キロくらいあるんですが、その日から彼らはよくこっちまで遊びに来るようになりましたね。

目医者に通っていた ので毎日という訳ではありません。



数日後、遊んでる時に小雨が降り出して、急いで隠れた土管の中でハンサム君と二人になったので、私も意を決して告白しました。

だからどうなる訳でもなく、それからも敵になったり味方になったりしながら戦いは続き、お誕生日会にはそれぞれの家でおよばれしたり、自転車に乗れるようになってからは土手で競争したり、今で言うグループ交際でしょうね。

私が 入院したとき は、お母さんと一緒にお見舞いにきてくれて、アンクルとムの小屋の本をくれました。



一つだけ忘れられない事件がありました。



リカちゃんが私のところに来てこう言ったんです。

『最近ハンサム君がうちに遊びにこなくなったのよね。そっちで遊んでるんだって?』

ちょっとビビリました。小2でもこんな大人の恋愛ドラマみたいな展開があるもんなんですね。

幼稚園の時からつきあってたリカちゃんは、ハンサム君にフラれて新しい女と思われる私にヤキ入れに来た訳です。

『戦争ごっことかしてるんだけど、リカちゃんも来る?』



リカちゃんはきれいな服でバイオリン弾いてるようなお嬢様ですから多分戦争ごっこには加わらないと思いましたけど、なんと仲間と数人で様子を見に来たんですよ。

私たちはホントに土管を渡りながら石投げ合ったりして危険な遊びしてたので、それを確認するとさっさと帰っちゃいましたけどね。

グループ交際は小3の終わりまで続きました。

みんなで秋の明治神宮に行って落ち葉やドングリを拾った写真が残っています。

その時も虫博士は一人で虫集めてたな。



4年になってクラス替えすると、みんなそれぞれまた新しい友達が出来て自然と会わなくなってしまいましたが、ハンサム君のことはいつも心のどこかにありました。

このころって、そろそろ男女が分かれて遊ぶようになっていたし、別のクラスっていうだけで遠距離感があったんですね。

同じ学校でもほとんど顔を合わせませんでした。

最後に会ったのは4年生の秋ごろだったと思います。私がクラスの女の子達とわいわい言いながら学校の階段降りてきた時に、反対から上ってきた彼とすれ違ったんです。

ちょっと視線が合って、お互いに『あっ』って思ったんですよね。

彼が不登校になって転校したという噂に心を痛めたのは5年生のときでした。

(おわり)







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Last updated  2011/05/14 12:16:07 PM
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