2011/05/13
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テーマ: 社交ダンス(8417)
カテゴリ: 下町人情物語
小学校に入学するというのは、人生の中でも大きな節目の一つです。

最初は慣れないのでなんとなく今までの保育園や幼稚園の仲間が集まったりします。

このころはまだ母親が仕事をしている家庭というのは少なくて、保育園に行っていた子は微妙な劣等感があったんです。貧乏だからお母さんも仕事してるんだ、みたいな。

私も保育園派でしたので、近所の子たちがかわいい送迎バスで幼稚園に行くのを憧れを持って眺めていました。



保育園で仲良しだった なおみちゃん、はるえちゃん とクラスが別々になり、新たな交友関係がスタート。

幸い同じクラスのすぐ近くの席に保育園の時からの友達、まじめ君がいました。

彼はちょっと要領が悪いところがあるんですがとっても真面目で優しい子でした。

今では信じられないかもしれませんが、家でお味噌汁の出汁をとるのにいつも鰹節の塊を削っていたんです。それは私の役目でした。



まじめ君は包帯グルグル巻きだった私の面倒をよく見てくれたんで割と好きだったんですが、恋花とまではいきませんでした。



私が同じクラスで密かに思いを寄せていたのはハンサム君。

背が高くてスマートで勉強も出来たので人気者だったんです。

噂によるとお金持ちで家庭教師もいるとのことでした。

私とは住む世界が違う幼稚園派に属していたんです。

もうすでにつきあってる子もいて、リカちゃんという子なんですが、やはり幼稚園派のお金持ちで、家はピアノやバイオリンを教える教室をしていました。

二人は下校時間になると手をつないで帰って行って、今から考えると小学1年生なんだから別に普通なんですけど小さな嫉妬心を燃やした覚えがありますね。



それから1年が経ちました。

2年生になってもクラスはそのまま。

クラスの中に虫が大好きで、虫のことなら何でも知ってる虫博士がいました。

女の子に話しかけられるとすぐ真っ赤になって面白いので時々からかったりしてたんですが、ハンサム君とまじめ君、そしてこの虫博士は仲良しグループでした。





席順で掃除当番が決まっていて、同じグループにハンサム君とまじめ君がいました。

男子はだいたい掃除なんていい加減で遊んでばっかりなんですが、この二人はまじめに掃除してましたね。

机を移動して、ほうきで履いて、そのあと雑巾掛けするんです。

私が廊下でバケツに小さな手を入れて雑巾を洗っていると、ハンサム君がやってきました。

二人で同じバケツに手を入れてるのにちょっとドキドキ。





な・なんなの?

このおもむろな問いかけに、お地蔵さんのように固まっていると、ハンサム君は言いました。

『ぼくはいるよ。』

知ってるよ。リカちゃんでしょ。

ところが彼はまっすぐに私を見たまま小さく親指を私に向けたんです。

え? あたし?



その瞬間、私の周りから重力が消えました。

小学校2年生の春。

初めての告白にボーっとなった私はバラ色の優しい風に包まれてふわふわと空へ舞い上がって行くようでした。

(つづく)







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Last updated  2011/05/13 12:05:55 PM
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