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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「絵本」でしょうか♪<市立図書館>・『戦場のメリークリスマス』知られざる真実・おいしい水・オオカミ県<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【『戦場のメリークリスマス』知られざる真実】 WOWOW「ノンフィクションW」取材班×吉村 栄一著、東京ニュース通信社、2021年刊<「BOOK」データベース>より1980年代、男が最も美しかった世界、男が最も哀しかった時代。オーシマ、ボウイ、サカモト、タケシ。二度と現れない、しかし、三度も四度も味わいたい、脅威の「創造」力、結集の秘密と奇跡。貴重な発掘資料と関係者へのインタビューで、伝説の映画の知られざる真実を掘り起こす。ピーター・バラカン、大島新への新規インタビューなども加えた「完全保存版」。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten『戦場のメリークリスマス』知られざる真実【おいしい水】 原田マハ著、岩波書店、2008年刊<「BOOK」データベース>よりあの頃、誰かを好きになると、世界が、変わる。-若い恋の“決定的瞬間”をたどったラブストーリー。<読む前の大使寸評>追って記入rakutenおいしい水【オオカミ県】多和田葉子×溝上幾久子著、論創社、2021年刊<「BOOK」データベース>より都会の白兎は何を食って生きているのかー。不思議さ、可笑しさ、不気味さをはらむ物語を美しく細密な銅版画絵で彩るアート絵本です。10代から大人まで楽しめます。<読む前の大使寸評>多和田葉子著の絵本ということでチョイスしたのだが・・・言ってることはよくわからないけど、絵がいいのです。rakutenオオカミ県
2024.01.08
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、副本1、予約55)現在14位・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在301位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在206位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在101位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在84位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在287位・南海トラフ地震の真実(10/20予約、副本?、予約44)現在32位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在21位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在11位・満州国グランドホテル(12/20予約、副本?、予約3)現在2位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・菊間晴子「犠牲の森で」・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:第165回芥川賞受賞作(21年)・ひさうちみちお『パースペクティブキッド』・松里公孝『ウクライナ動乱』・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・じい散歩 妻の反乱・養老孟司『形を読む』<予約分受取:10/21以降> ・小川哲『地図と拳』(2/01予約、10/21受取)・有川ひろ『旅猫リポート』(10/27予約、10/28受取)・ジンセイハ、オンガクデアル(2/10予約、11/15受取)・ブレイディみかこ『リスペクト』(9/05予約、11/23受取予定)・『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』(5/23予約、11/28受取)・村山由佳『命とられるわけじゃない』(11/21予約、11/28受取)・多和田葉子『白鶴亮翅』(8/2予約、12/05受取)・村上龍『ユーチューバー』(5/20予約、12/11受取)・斎藤環『社会的ひきこもり』(12/25予約、12/27受取)**********************************************************************【台湾漫遊鉄道のふたり】楊双子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より昭和十三年、五月の台湾。作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴と台湾縦貫鉄道に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。ただ、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子の焦燥感は募り…国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差。あらゆる壁に阻まれ、近づいては離れるふたりの旅の終点はー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/23予約、副本1、予約55)>rakuten台湾漫遊鉄道のふたり【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【満州国グランドホテル】平山周吉著、芸術新聞社、2022年刊<「BOOK」データベース>より「二キ三スケ」(東条英機、星野直樹、松岡洋右、岸信介、鮎川義介)だけで満洲は語れない。「一ヒコ一サク」(甘粕正彦、河本大作)が隠然たる影響力を行使する。再チャレンジ、前歴ロンダリングも許される自由の天地。「五族協和」の理想を信じた人たちの生と死。既存の満洲国イメージをくつがえす、満洲の土を踏んだ日本人の奇妙にして、真剣なる「昭和史」物語。<読む前の大使寸評>著者・平山周吉さんの「小津安二郎」が大佛次郎賞を受賞したが、この際同氏の「満州国グランドホテル」が気になるので図書館予約したのです。<図書館予約:(12/20予約、副本?、予約3)>rakuten満州国グランドホテル【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.01.07
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図書館に予約していた『社会的ひきこもり』という新書を待つこと2日でゲットしたのです。やや硬い内容の新書のせいか予約ゼロだったので、予約してみたら超速でゲットできました。【社会的ひきこもり】斎藤環著、PHP研究所、2020年刊<「BOOK」データベース>より仕事に就かず、外出もせず、時に何年も自分の部屋に閉じこもったまま過ごす「ひきこもり」の数は、年齢を問わず全国で増加している。精神科医として現場で「ひきこもり」の治療に携わってきた著者は、いわゆる正論やお説教では決してこの問題を解決することはできない、という。「ひきこもり」を単なる「個人の病理」でなく、個人・家族・社会という3つのシステムの関わりの障害による「システムの病理」とする捉え方から、正しい知識と対処の仕方を解説。ロングセラー『社会的ひきこもり 終わらない思春期』に最新情報を加筆・修正した待望の復刊。<読む前の大使寸評>やや硬い内容の新書のせいか予約ゼロだったので、予約してみたら超速でゲットできました。<図書館予約:(12/25予約、12/27受取)>rakuten社会的ひきこもり第2部「社会的ひきこもり」とどう向き合うか 実践編の一部を、見てみましょう。p226~229<「見通しの共有」> 私は、この節目で話し合われるべきこととして、⑴治療の見通し、⑵経済的見通し、⑶社会参加の見通し、の三点を取り上げるべきであると考えています。 ⑴治療の見通しについては、とりあえず、現在の治療方針の見通しと、家族がいつまでも治療に参加できないこと、また⑵の経済的見通しにも関連しますが、通院医療費の公費負担制度や障碍者手帳を交付してもらうべきこと、などを取り上げます。 私はここで、あえて「障害」という言葉をもちいました。これはもちろん、長くひきこもりの状態に苦しんできた人を、おとしめる意図からではありません。ただ私は、十年近くもひきこもり状態が続いている人たちに「あなたは病気じゃないから大丈夫」などと、気楽に請け合うことができません。ひきこもり状態が長期化し、こじれつつある場合に、病気かそうでないかはほとんど問題ではないのです。むしろこういう状況は、ある意味で単純な病気以上に問題の根が深い。 また本人も、自分の状態が一種のハンディを背負った状態であるという自覚に建って、なんらかの軌道修正を迫られます。この点に眼をつぶりながら、それでも「大丈夫」といい続けることは、少なくとも私は臨床家としてできません。専門家として見通しというのはすなわち、これまで通りの対応では、これ以上の改善は望めない、という場合を指しています。この「現実的」認識を、本人、家族がともに共有することで、次のステップに進むことが可能になります。 <家庭の経済状況を説明する> 長期化とともに、両親は定年となって年金生活に入ります。さらに長期化すれば、本人よりも両親が先に亡くなるであろうこともまた、動かしがたい現実です。「節目」を迎えたら、こうした現実にも積極的に眼を向けるべきなのです。 家族の経済状況と今後の見通しについて、つつみかくさず本人に伝えること。それは本人の将来を気遣い、いたわりの気持ちをこめて「遺言」を託すような行為になるでしょう。 まず本人に対して、家庭の資産や借金を含む経済状況を、できるだけ詳細に説明します。定年後、それがどのように変化するか、それについても具体的にふれておきます。万が一両親が亡くなるようなことがあった場合についても同様です。昨今、生前の早い時期に遺言を作成することが奨励されますが、私はそれが治療的な意義を持ちうると考えているのです。(中略)<スタートラインを引き直す> 両親が定年後、年金生活に入り、経済的な見通しが持ちにくい場合は、どのような選択肢があるでしょうか。私はこの場合、本人が働けないままなら世帯分離して、生活保護の受給も考慮することにしています。あるいは精神症状をともなう事例の場合、障害者年金の受給を勧める場合もあります。 障害者年金の受給を受け入れることにも、治療的な意義があります。みずからの状態がすでにハンディを負っているということを、正確に認識する助けになるからです。『社会的ひきこもり』2:「改訂版まえがき」の続き『社会的ひきこもり』1:「改訂版まえがき」の冒頭
2024.01.07
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図書館で『町山智浩・春日太一の日本映画講義』という新書を手にしたのです。町山智浩さんが、戦争・パニック映画を語るってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。【町山智浩・春日太一の日本映画講義】町山智浩×春日太一著、河出書房新社、2019年刊<「BOOK」データベース>より日本の映画語りを牽引する町山智浩と春日太一が必見の作品を精選し、その凄まじさ、面白さ、役者・スタッフたちの想いを語り尽くす映画入門。「時代劇編」では、日本映画に革命を起こした『七人の侍』、三隅研次の美学が極められた『斬る』『剣』『剣鬼』、血しぶきとアクション満載『子連れ狼』シリーズ、アウトローたちの純情に心を寄せた『御用金』『人斬り』などを紹介。映画は知ってから見ると、百倍、面白くなる!<読む前の大使寸評>町山智浩さんが、戦争・パニック映画を語るってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。rakuten町山智浩・春日太一の日本映画講義「第5章 『日本沈没』」の登場人物を、見てみましょう。p198~201■本作の登場人物町山:僕は当時、初日に行きましたよ。日比谷の千代田劇場に見に行ったんですけど、劇場の周りを行列が何周も巻いていました。なぜ見たかったというと、藤岡弘のファンだったから。仮面ライダー本郷猛ですよ。潜水艇わだつみの操縦士、小野寺。やっぱり日本を救うのは藤岡弘ですよ。リメイク版で小野寺役の草薙剛くんじゃ頼りないでしょ。春日:でも、結果は逆でした。町山:ねえ。この二人、正反対ですよね。獣と植物、縄文と弥生。春日:日本の沈没を予期する学者、田所博士が小林桂樹。町山:一種のマッドサイエンティストで、テレビで殴り合いしたりね。たぶんコナン・ドイルの『失われた世界』で恐竜生存説を唱えるチャレンジャー教授をモデルにしてると思います。小林桂樹さんってこんな鬼気迫るキャラじゃないんだよね。真面目で気の弱いサラリーマンが似合う俳優さんで。春日:でも橋本忍脚本の『首』で正木という弁護士をやって、それが完全に田所なんですよ。無実を獲得するためにありとあらゆることをして、狂気の世界に入っている弁護士。町山:そっちのキャラをもってきているんだ。春日:同じプロデューサー、脚本家、監督の作品で小林桂樹をここにもってくるというのは意図的だと思います。町山:そして丹波哲郎。春日:日本国首相です。町山:ここから出世して世界大統領になります。春日:それは『宇宙からのメッセージ』(深作欣二監督)!町山:山本首相の丹波哲郎、いいんですよ。すごいの。泣けるんですよ。春日:演説の素晴らしさ。橋本忍脚本との相性が本当によくて。町山:同じ年に橋本忍の『人間革命』(舛田利雄監督)で、創価学会の始祖、戸田城聖をやってますね。そっちも特撮映画なんですよ。東宝で撮ってて。日本が未曽有の危機にあるのを救うんだという演説をする。春日:この翌年が『砂の器』。どれも橋本脚本で大演説。橋本脚本の重々しい日本語はこの人の大演説がぴったり。町山:丹波さんは演説シーンが大好きですよね。生前お会いした際に言ってましたけど、演説はカンペ読めるから楽だって。台詞覚えるの嫌いだから。春日:そして夏八木勲。町山:小野寺の相棒、結城達也。春日:バディものなんですね、これ。町山:ただのバディじゃないでしょ。小野寺に「どうして俺を放っておくんだよ」って駄々をこねたり殴ったり、どう見ても友情以上の感情を抱いてるんだけど本人が気づいてない。『戦国自衛隊』(斎藤光正監督)のキャラと同じですね。春日:夏八木勲がやるとその感じが出ます。町山:藤岡弘にはね、いしだあゆみという超美人の彼女がいるんです。会ったその日に、葉山の海岸で「抱いて」って言うんですよ。出会って四分くらいで合体みたいな。ところが寸前で火山が爆発しておあずけになってしまう。あの火山、藤岡弘の性欲のメタファーかと思いました。春日:ドカーンって。『町山智浩・春日太一の日本映画講義』2:『兵隊やくざ』続き『町山智浩・春日太一の日本映画講義』1:『兵隊やくざ』
2024.01.06
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図書館で『世界の知性が語る「特別な日本」』という新書を手にしたのです。著者は共同通信社の論説委員長もこなしたジャーナリストであるが・・・この本で取り上げた世界の知性がええわけです。【世界の知性が語る「特別な日本」】会田弘継著、新潮社、2021年刊<「BOOK」データベース>より近代日本は世界にとって如何なる存在だったのか。欧米列強を打ち負かした国であり、アジアを侵略した国であり、敗戦後に驚異的な復興を遂げた国。日本が歩んだ曲折の道のりは、他国の人々の精神にも大きな影響を与えてきた。リー・クアンユー、李登輝、ブトロス・ガリ、アンジェイ・ワイダ、オルハン・パムクら世界の政治家や知識人にインタビューし、それぞれの国が抱えた近代の葛藤と日本への特別な思いに迫る。<読む前の大使寸評>著者は共同通信社の論説委員長もこなしたジャーナリストであるが・・・この本で取り上げた世界の知性がええわけです。rakuten世界の知性が語る「特別な日本」「第5章」で緒方貞子や北斎が述べられているので、見てみましょう。p100~104<第5章 ドイツ占領下で、北斎の衝撃>■欧州の血の匂い 欧州の曇り空には、どこか血の匂いがつきまとう。このワルシャワ訪問以前からそう思えてしかたがなかった。こんな経験もあった。 1990年代半ば、スイスのジュネーブに赴任してしばらく経ったあるとき、石畳の道を車で走っていて、ふと異様な感覚に襲われた。晩秋のどんよりとした朝である。石畳から血の匂いが立ち上がるのをかいだ。密閉された社内だ。ホンモノの血であるわけがない。一種の幻覚であった。 いまでも、時折その時の感覚がよみがえることがあり、あれはいったい何だったのかと考えてみる。土地に刻みこまれた「歴史」を感覚的に捉えたのだろうと思っている。 ジュネーブは平和の象徴のようにいわれる街だ。ここで血を流す戦いが最後にあったのは、関ケ原の合戦のころだ。しかし、駐在していた当時でさえ、800キロほど東方の血続きの場所で民族紛争の嵐が吹き荒れ、カティンの森のような事件が繰り返されていた。旧ユーゴスラビア紛争でのおびただしい流血である。国連難民高等弁務官の緒方貞子は、そこで戦火から逃げ惑う大量の国内避難民たちの救済・支援に苦慮していた。 スイスは、たまたまある時期から台風の目のごとく静かになっただけである。周囲では常にといえるほど流血が続いていた。それが欧州の歴史だ。第二次世界大戦中も、ジュネーブから血続きで北東千キロのところにあるアウスヴィッツでユダヤ人たちが日々ガス室に送り込まれていた。 スイス国境にやっとたどりついたユダヤ人たちもナチス・ドイツに気兼ねするスイス官僚によって、追い払われた。それが永世中立の平和だった。 そんな不条理すべてに納得できないという思いが、「血の匂い」という感覚になって、あの朝、迫ってきたのだろうと思う。そうした歴史の不条理を、痛切なまでに映像表現にしたのが、ワイダだ。■日本絵画との出会い 映画『カティンの森』もさることながら、ワルシャワのスタジオで会ったワイダには、その「日本好き」の理由を確かめてみたかった。クロサワ(黒澤明)やオヅ(小津安二郎)を通じて、日本に高い関心を持つ世界的映画人は多い。能や歌舞伎も映画人を引きつける。ワイダも例外ではなかった。だが、聞いてみるとワイダの日本への関心の原点は、第二次世界大戦中の「カティンの森事件」の時代にさかのぼった。 「日本の画家たちは、その課題をどうやって克服していたのか、どうしても知りたくなった」。遠い昔を思い出しながら、ワイダは語った。「危険だとは承知で、その展覧会をのぞきに行くことにした」 開戦直後から父ヤクプは行方知れずのままだったところ、1943年、ソ連に侵攻していたドイツ軍がカティンの森の土中からポーランド軍将校と見られるおびただしい数の遺体を掘り出した。ポーランドの新聞に載ったドイツ政府発表の志望者名簿には、「ワイダ」の姓を持つ将校も含まれていた。だが、それが父ヤクプなのか確かめることもできないまま、母は父の生存に望みを託し、帰還を待ちわび続けていた。 そのころ17歳のワイダは、ドイツ占領下のポーランドで鉄道の設計事務所の見習い製図工として働きながら、美術学校を目指していた。他方で密かに、地下抵抗組織の連絡要員の任務についていた。 翌1944年、敗色濃くなってきたなかで、ポーランド南部の古都クラクフに本部を置いていたドイツ占領当局が旧市街の「織物会館」を使って、日本美術展を開いた。ワイダが危険を冒してまでのぞきに行ったのは、この展覧会である。 当時、ワイダは父の故郷であるクラクフの伯父夫婦の家に身を寄せていた。地下抵抗組織にかかわっており、外で動き回れば予期できない事態に遭遇する恐れがあった。「必要な書類を持っていなかった。捕まって、強制収容所送りになっていたかもしれなかった」(中略) 画家を目指していたワイダが危険を冒してまでそれを見たかったのは、作画上のある課題を抱えていたからだった。「当時、絵を描き始めていたが、自然の荒々しい現象を描きだすときに、どのようにして筆を抑えるのか悩みながら、必死で学ぼうとしていた。日本の画かたちはどうしていたのか、ぜひこの目で観てみたいという要求に駆られた」。 こわごわとのぞいた展覧会で、ワイダに衝撃を与えたのが葛飾北斎の浮世絵「富岳三六景」のひとつ「神奈川沖浪裏」だった。巨大な、うねる波。翻弄される小舟三艘。怪しげに立ち上がる積乱雲。波のはるかむこうに小さくのぞく冠雪の富士。「強い感銘を受けた。北斎の鍛錬されつくしたような表現力に驚嘆した」『世界の知性が語る「特別な日本」』2:緒方貞子の凄さ『世界の知性が語る「特別な日本」』1:李登輝さんの想い
2024.01.05
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図書館で『樺太地上戦』という本を手にしたのです。樺太では、終戦後も7日間も地上戦があったという史実をNHK取材班が伝えているようです。【樺太地上戦】 NHKスペシャル取材班著、KADOKAWA、2019年刊<「BOOK」データベース>より北海道の北に広がる大地、サハリン。かつて樺太と呼ばれ、約40万人の日本人が暮らしていた。この地で、終戦後も7日間にわたって戦闘が続き、住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が行われていたことを私たちは忘れてはいけないー。最前線に立たされた住民たちー。犠牲者は5000人とも6000人とも言われる住民を巻き込んだ悲惨な地上戦。知られざる戦い、悲劇の全貌に迫る。重い沈黙を破る貴重な証言。国内外の発掘資料初公開!<読む前の大使寸評>樺太では、終戦後も7日間も地上戦があったという史実をNHK取材班が伝えているようです。rakuten樺太地上戦「第7章 樺太最大の地上戦『真岡の悲劇』へ」でソビエト軍の混乱を、見てみましょう。p99~101<その時、ソビエト軍では・・・> ソビエト側の記録を調べると、樺太戦ではソビエト軍も多くの犠牲を出していたことがわかる。ソビエト軍にとって樺太地上戦とはどのような戦いだったのだろうか。今回の取材で、戦闘の最前線に立っていたソビエト軍の兵士の証言を得ることができた。そこからは、日本側の証言からは見えてこなかったソビエト側の困惑と混乱ぶりが見えてくる。■いつ戦争は終わるのか!? とまどうソビエト軍 取材に応じたのはガヴリーロフ・ヴァチェスラフ・ワシリエヴィチ氏、92歳。1943年、18歳で徴兵され、樺太の日ソ国境から60キロメートルの地点にあった連隊に狙撃兵として配属されていた。両軍が最も激しく衝突した国境付近の戦闘に参加した一人である。 なぜ、8月15日のあとも戦闘が続いたのか。 私たちの問いかけに対して帰って来た答えは、彼ら自身もいつ戦争が終わるのかがわからず戸惑っていたというものだった。 「日本側の降伏は5回か6回もあったのですよ。つまり、『降伏したらしい』と言われて、小休止になります。戦闘は中断しました。その後、日本軍がまた始めるのです。彼らが再び戦闘を開始し、銃撃を始めると、我々の司令官のチュルキン連隊長は指令を出し、遠隔戦砲兵部隊は一斉射撃し、これを2~3回やると、再び静かになります。また1日、何も起こらず平穏です、降伏したようだと。しかし、それからまたあの“狂信的なやつら”が出てくるのです。 私たちには、日本が降伏したのかしていなかったのか、よくわかりませんでした。 このような状況が1週間ちょと続きました。戦争なのか、そうでないのか。日本軍は弱体化したのか、それとももう降伏したのか、一体何なのか、何が起こっているいるのか、よくわかりませんでした。そして後になって、15日にあれ(玉音放送)があったと知りました。このことは、私たちは当時知りませんでした。15日の後も樺太では戦闘が起きていました。その攻撃が日本軍による組織的なものかどうかはわかりませんでした」 戦闘の最前線に「終戦」という明確な区切りはなかったというワシリエヴィチ氏の証言。そこからは、結果的に勝利したにもかかわらず、日本軍への恐れさえ感じられる。日本兵のことを「狂信的なやつら」と今でも呼んでしまうのは、その恐ろしさを軍隊で刷り込まれ、実際にそれを体感してきたからだ。 ソビエト軍では日本兵について、「愛国心が強く、戦闘的で決してあきらめず最後まで戦う強力な敵」だと教え込まれていたという。そして、戦場で対峙した敵は事前に聞かされていたとおり、あきらめない兵士たちだった。ヨーロッパ戦線で戦った経験のある仲間は「ドイツ人はこんな状況になったらとっくに降参しているよ」と話していたという。 それほど絶望的な状況でも日本人は士気を高く保ち、8月15日以降も抵抗を続けたという。その姿勢は、ワシリエヴィチ氏にとっては狂信的な愛国心であると映ったのだった。 自衛戦闘を続ける目的として鈴木参謀長が理解していたのは、停戦ラインをできる限り北に置くことで樺太における日本の権益を守ることだった。「南樺太を占領するまで侵攻せよ」と命じられていたソビエト軍が、「自衛戦闘」を続ける日本軍に対して攻撃の手を緩めることは望むべくもなかった。『樺太地上戦』1:樺太地上戦の全体像
2024.01.04
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図書館で『樺太地上戦』という本を手にしたのです。樺太では、終戦後も7日間も地上戦があったという史実をNHK取材班が伝えているようです。【樺太地上戦】 NHKスペシャル取材班著、KADOKAWA、2019年刊<「BOOK」データベース>より北海道の北に広がる大地、サハリン。かつて樺太と呼ばれ、約40万人の日本人が暮らしていた。この地で、終戦後も7日間にわたって戦闘が続き、住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が行われていたことを私たちは忘れてはいけないー。最前線に立たされた住民たちー。犠牲者は5000人とも6000人とも言われる住民を巻き込んだ悲惨な地上戦。知られざる戦い、悲劇の全貌に迫る。重い沈黙を破る貴重な証言。国内外の発掘資料初公開!<読む前の大使寸評>樺太では、終戦後も7日間も地上戦があったという史実をNHK取材班が伝えているようです。rakuten樺太地上戦「序章 『樺太地上戦』とは何だったのか」でこの戦いの全体像を、見てみましょう。p14~20<わずか2週間で失われた「宝の島」>■一本のVTRが「樺太地上戦」に光を当てた 今回、私たちが「樺太地上戦」に光を当てるきっかけの一つとなったのが、NHK札幌放送局の地下倉庫に眠っていた一本のVTRである。撮影された場所は南樺太の中心都市・豊原(現在のユジノサハリンスク)。そこには、町の顔ともいえる駅前の広場が激しい爆撃によって一面の焼け野原となった様子が生々しく映し出されていた。 駅前に集まっていたのは大きな荷物を背負った人々。子どもを連れている人も大八車に家財道具を載せて引く人もいる。着のみ着のままで島を脱出しようとしていたのだろう。人々の表情は一様に不安げだ。日本軍の兵士たちの様子も記録されていた。降伏し、武装解除させられた幹部らの中には屈辱を覆い隠すようにうつむいて歩く者もいる。 目がとまったのは、これらの映像が撮影された日付だった。キャプションには「終戦後の8月24日以降」と記されていた。なぜ8月15日から1週間以上もたってから終戦直後のような映像が撮影されたのだろうか。その答えは歴史上の史実にある。樺太でソビエトとの間で停戦協定が成立したのは8月22日だったからだ。これらの映像は終戦直後の8月24日以降に撮影されたものだったのだ。 なぜ、樺太では8月15日の“終戦”後も戦争が終わらなかったのか。 そして、そのことは樺太の住民たちに何をもたらしたのか。 これらの問いを突き詰めていくことは私たちがこれまで知らなかった戦争の現実を浮かび上がらせることにほかならない。そして、そこには国家が国民や領土というものをどのように扱うのかを深く考える手がかりが埋もれていたのである。本章ではまずほとんどの日本人にとってなじみのない「樺太地上戦」の全体像を俯瞰しておこう。<戦いは初めから絶望的だった>■8月9日ソビエト軍侵攻。対峙したのは素人集団 樺太全土の面積は北海道に肩を並べるほど広く、戦場となった南樺太だけでもソビエトとの国境から南端の西能登呂岬(現在のクリリオン岬)までの総距離は1300キロメートル、東京・宮崎間に匹敵する。「そもそも、これほど広い島を防衛することは当時の日本軍には不可能だった」 樺太の地図を前にそう私たちに語ったのは北海道釧路市に住む丸山重さん、92歳(放送当時。いか、他も同じ)。陸軍の二等兵として樺太の守備隊に配属されていた丸山さんはソビエト軍が国境線を越えてきた1945(昭和20)年8月9日以降、「国境エリア」での戦闘に参加した。 当時19歳。病などの理由で徴兵を免れていた丸山さんのような若者たちが1945年になってかき集められソビエトと対峙する国境地帯に立たされていたという。このときの絶望的な状況について語る丸山さんの証言は、樺太地上戦のその後の運命が初めから決定付けられていたようにさえ感じさせる。上官から「ソ連参戦」の一報を知らされたときの様子について、丸山さんは次のように述べている。「通達を受けた後、戦いなど一度も経験したことのない多くのメンバーが小便をしにトイレに駆け込みましたが一切小便が出ない。他の小隊にも同じことが起きていました。3月に入隊してから撃ったことのある銃弾は3発程度。そんな素人集団に一体、何ができるというのか。兵士たちを不安が包み込んでいました」 その後、激戦に身を投じていくことになった丸山さん。ソビエト軍から一方的に銃撃され、仲間が次々と殺されていくのを目の当たりにする。中でも忘れられないのが、仲の良かった友人が銃撃を受け、瀕死の状態で倒れている姿だ。友人の顔はザクロのようにぱっくりと割れている。その変わり果てた顔を丸山さんのほうに向けると自らの心臓を指差した。「殺してほしい」という最後の訴えだと丸山さんにはわかった。涙を流しながら心臓めがけて短刀を突き立てた。
2024.01.04
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図書館で『町山智浩・春日太一の日本映画講義』という新書を手にしたのです。町山智浩さんが、戦争・パニック映画を語るってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。【町山智浩・春日太一の日本映画講義】町山智浩×春日太一著、河出書房新社、2019年刊<「BOOK」データベース>より日本の映画語りを牽引する町山智浩と春日太一が必見の作品を精選し、その凄まじさ、面白さ、役者・スタッフたちの想いを語り尽くす映画入門。「時代劇編」では、日本映画に革命を起こした『七人の侍』、三隅研次の美学が極められた『斬る』『剣』『剣鬼』、血しぶきとアクション満載『子連れ狼』シリーズ、アウトローたちの純情に心を寄せた『御用金』『人斬り』などを紹介。映画は知ってから見ると、百倍、面白くなる!<読む前の大使寸評>町山智浩さんが、戦争・パニック映画を語るってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。rakuten町山智浩・春日太一の日本映画講義「第2章 『兵隊やくざ』シリーズ ブロークバック日本軍」の続きを、見てみましょう。p69~72■『人間の條件』の裏返し町山:で、『兵隊やくざ』は『人間の條件』によく似た映画です。満州の陸軍内務班で、隊内でのいじめが描かれるわけで。春日:大きな違いは、『人間の條件』の梶は耐えて耐える。それに対して『兵隊やくざ』は最初から反抗していくっていう。町山:なにしろ大宮を演じるのは勝新だから、絶対に負けない。春日:それがある種のファンタジー性であり、また娯楽性でもあり。シリアスな文芸映画である『人間の條件』と違うのは、反抗したり脱走したりっていうのが描かれるとこですね。一方で『人間の條件』と一緒なのは、シリーズを追っていくごとに、戦況が厳しくなっていくところです。『人間の條件』も最後は八路軍との前線での戦闘があり、最終的には戦争が終わって侵攻してきたソ連軍から逃げる。この構成が実は『兵隊やくざ』のシリーズ九作とまったく同じなんです。その中でやってることが違うっていう。町山:勝新がいるかいないかだけ。春日:でもシリーズ後半は本当に似てくるんですよ。町山:影響を受けてるんでしょうね。有田の立場は、『人間の條件』の仲代さんの立場ですよね。インテリでリベラルで、でも一兵卒として軍に入って、いじめや中国人への残虐行為を見て幻滅する。春日:戦争っていうものに疑問を持ちながら、前線で兵士として戦っていく男。町山:ただ、『人間の條件』の梶には何もできなかったんだけど、『兵隊やくざ』には、勝新という飛び道具があるわけですよ。■頑丈な大宮町山:内務班には鉄拳制裁が吹き荒れているわけです。初年兵に「挨拶しなかった」とか「挨拶の仕方が悪い」と因縁をつけては殴る。勝新扮する大宮も殴られるんですけど、殴った方の先輩兵の指が折れちゃう。春日:これがシリーズを追うごとに、キャラクター紹介シーンになっていくんですよね。基地に勝新が入ると、必ず先輩が殴る、でも先輩の方が痛い・・・っていう芝居が全シリーズのお約束になる。この大宮っていう男を特徴づけるのはそれなんですよね。殴ってもびくともしないどころか相手が痛い男ですっていう。町山:いくら殴られても、勝新はペロッて舌を出すだけ。春日:頑丈でやんちゃっていうのが、大宮って男のキャラクターではありますね。町山:あまりにも大宮がびくともしないから、古参兵たちは棒とかで殴り始める。これにはさすがの大宮もやられてしまうんですが、有田上等兵殿がですね、インテリだから「軍規違反である」とかなんとか敵の弱みを見つけて、追い詰めて、「大宮、やれ!」って解き放つんです。春日:「やっていいんですか!」ってそうなると急に戦闘モードになる。そうするとさっきまでボコボコにやられたのが、急にどっかんどっかんやってくっていうね。町山:それが一対一とかじゃなくてね、一〇対一とかね。春日:鉄人28号と正太郎くんのような関係性。町山:公開当時、観客にはまだ、実際に軍隊でいじめにあった人がいっぱいいたと思うんですよね。そういう人たちは『兵隊やくざ』を見て、さぞかしスカッとしたでしょうね。春日:会社組織にいる人たちも同じでしょうね。あの先輩ぶん殴りたい、あの上司ぶん殴りたいっていうのを晴らしてくれますから。『町山智浩・春日太一の日本映画講義』1:『兵隊やくざ』
2024.01.03
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図書館で『町山智浩・春日太一の日本映画講義』という新書を手にしたのです。町山智浩さんが、戦争・パニック映画を語るってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。【町山智浩・春日太一の日本映画講義】町山智浩×春日太一著、河出書房新社、2019年刊<「BOOK」データベース>より日本の映画語りを牽引する町山智浩と春日太一が必見の作品を精選し、その凄まじさ、面白さ、役者・スタッフたちの想いを語り尽くす映画入門。「時代劇編」では、日本映画に革命を起こした『七人の侍』、三隅研次の美学が極められた『斬る』『剣』『剣鬼』、血しぶきとアクション満載『子連れ狼』シリーズ、アウトローたちの純情に心を寄せた『御用金』『人斬り』などを紹介。映画は知ってから見ると、百倍、面白くなる!<読む前の大使寸評>町山智浩さんが、戦争・パニック映画を語るってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。rakuten町山智浩・春日太一の日本映画講義「第2章 『兵隊やくざ』シリーズ ブロークバック日本軍」の冒頭を、見てみましょう。p63~65■田村三兄弟の長兄・田村高廣町山:『兵隊やくざ』シリーズ(‛65~‛72)、子どもの頃、テレビで見ましたね。1972年に大映が倒産して、映画の放映権をいっきにテレビに売ってるんですよ。で、週末の午後三時くらいから、『兵隊やくざ』や『座頭市』をしょっちゅう放送していました。子供だった僕は、特に雨で外に遊びに行けないときなんかは家に居なきゃいけないし、昼間はアニメもやっていないので、しかたなく『兵隊やくざ』を見てました。春日:はははははは! すごい子どもですね。町山:満州が舞台で、日本陸軍の内務班に入ってきた大宮という元やくざの初年兵と、有田というインテリの上等兵のコンビが活躍する軍隊コメディです。で、『人間の条件』のように『兵隊やくざ』の原作は、有馬頼義という直木賞作家がが実際の経験を書いた小説です。映画では有馬が「有田」になっています。有馬頼義はお殿様なんですよ。九州の武家の城主の血を引いている。でも、敢えて一兵卒として、士官学校に行かないで戦場に入った。浅田哲也の師匠にあたる無頼派作家で、睡眠薬中毒で結局亡くなった。お酒が飲めないから睡眠薬にはまったそうです。春日:はぁー。町山:映画で有田を演じるのは田村高廣。当たり役の一つですね。春日:ですよね。器用貧乏なところがある役者さんですから。父親が坂東妻三郎、日本の時代劇の礎をつくった人で、弟には田村正和、田村亮がいる。お父さんに顔が似ているのもあって、最初、坂東妻三郎襲名っていう話もあったくらいで。町山:高廣さんは外連味(けれんみ)があまりない。田村正和さんみたいにエロくない。でも、それがこの作品ではまさしく意味を持っている。春日:ご自身サラリーマン経験が長かった人でもあって、そこから役者になっていったというのもあるかもしれません。お父さんが早くに亡くなっていて、弟たちとも年齢が離れているので、正和、亮にとっては高廣がお父さん代わりだったっていう。町山:あ、そうなんですか?春日:ちゃんと学校まで出してくれたのは高廣なんですよ。で、二人が大学に行くようにはってから、高廣は役者になっています。■勝新のクリクリした眼町山:で、主演は我らが勝新太郎。春日:ただ、このシリーズは彼にとって穴埋め的な存在なんですよ。勝新は1961年に『悪名』に出て、これがスマッシュヒットすることで『悪名』がシリーズになっていく。で、62年の『座頭市物語』以降、これがシリーズを追うごとに当たっていって、二大シリーズができていくわけです。 一方で大映二枚看板スターのもう一人の市川雷蔵の体調がどんどん悪くなっていく。それで、そこまで本数が撮れなくなっていくので、大映としては勝新太郎をかなりヘビー・ローテーションで使わなければいけなくなってくる。『悪名』と『座頭市』だけで年に三本くらい撮ってる時期もあったくらいなんですが、さらにもう一つ何か人気シリーズが必要だなということで始まったのが『兵隊やくざ』だったんです。『町山智浩のアメリカ流れ者』2:オデッセイ
2024.01.03
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元旦の午後4時から9時半頃までNHKの画面は能登半島の地震の報道で持ちきりであった。 私も阪神淡路地震時に震度6を体験したことがあるので、「つなみ!にげて!」という報道スタンスについてやや批判的に思うことがあった。 NHKの報道は「つなみ!にげて!」という警報が第一であったが、輪島の土煙とか火災発生を見れば震度7の揺れであり大災害になることが予測されるわけで・・・山形から兵庫あたりの沿岸部一帯のインフラに与えた重大な損害が徐々に報道されています。・・・阪神淡路地震より規模の大きな地震であることが、だんだんと分かってきます。11時3分、能登地方で震度7の地震が起きたとのこと・・・その後震度3に訂正された。(気象庁ダイジョーブか?) 余震の続く2日目であるが・・・輪島で8人死亡とのニュースが流れています(8人ですむはずはないと思うが)、まだ輪島の火災鎮火の報道は届いていません。 岸田首相の会見が放映されているが、キックバック捜査で窮地に立っている首相にとっては起死回生の地震というべきか?、でも自衛隊のプッシュ型支援など(輸送ルートの確保)を表明していて、ええでぇ。 あ 能登地方で震度5弱の地震が起きたようです。でも全国の津波注意報は10時に解除されたようです。 SNS上では、いいねを目指すフェイクニュースが飛び交っているようだが・・・何を考えているやら(非国民め) 阪神・淡路大震災当時はスマホによる動画撮影はなかったが、今回の地震を一般人が動画撮影することで、初めて地震の実態が見えたわけで・・・恐かったでぇ。 羽田飛行場では、日本航空516便炎上という事故が発生したが・・・乗客、乗員ともに全員脱出したそうでまずは安心した。一方、ぶつけられた海上保安庁機側であるが乗員6人中5名が亡くなったようです。海上保安庁機は能登半島地震の救援業務に向かうところであったとのことで、痛ましいかぎりである。合掌。阪神・淡路大震災については内閣府阪神・淡路大震災の概要がお奨めです。
2024.01.02
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図書館で『世界の知性が語る「特別な日本」』という新書を手にしたのです。著者は共同通信社の論説委員長もこなしたジャーナリストであるが・・・この本で取り上げた世界の知性がええわけです。【世界の知性が語る「特別な日本」】会田弘継著、新潮社、2021年刊<「BOOK」データベース>より近代日本は世界にとって如何なる存在だったのか。欧米列強を打ち負かした国であり、アジアを侵略した国であり、敗戦後に驚異的な復興を遂げた国。日本が歩んだ曲折の道のりは、他国の人々の精神にも大きな影響を与えてきた。リー・クアンユー、李登輝、ブトロス・ガリ、アンジェイ・ワイダ、オルハン・パムクら世界の政治家や知識人にインタビューし、それぞれの国が抱えた近代の葛藤と日本への特別な思いに迫る。<読む前の大使寸評>著者は共同通信社の論説委員長もこなしたジャーナリストであるが・・・この本で取り上げた世界の知性がええわけです。rakuten世界の知性が語る「特別な日本」「第4章」で緒方貞子の凄さが述べられているので、見てみましょう。p76~79<第4章 「東郷神話」と「日本の乙女」> ■緒方貞子の実践的知性 私がジュネーブに駐在していたころ(1993~97、99~2000)、そのUNHCRのトップとして、この大組織を取り仕切っていたのが緒方貞子(1927~2019)であった。当時は湾岸戦争、旧ユーゴスラビア内戦、ルワンダ紛争、コンゴ内戦など難民を大量に生み出す内戦・紛争が引きも切らずに続いた。「身長5フィート(約150センチ)の巨人」と呼ばれた緒方が、時に自ら現地に出向き采配を振るう姿に、世界は感動していた。 緒方の下で報道担当を務めていたアメリカ人の元ジャーナリストは身長190センチほど、体重も百キロは超える巨漢だったが、その彼が「マダム・オガタが怒ると、ほんとうに怖い」と震えるように語るのを聞いた時は、思わず噴き出した。 緒方がジュネーブに赴任した1990年代初め、組織の士気は低かった。それから十年、ユーゴ内戦をはじめとする冷戦後の地域紛争に緒方の指揮下で対処することで、見違えるような変貌を遂げた。 後に緒方の回想は『聞き書 緒方貞子回顧録』(2015年)として出版された。それを読むと、緒方の手腕の源泉は学者時代の研究に会ったことが分かる。満州事変を軸とした政策決定過程の研究が、国連組織での「実務に非常に役に立った」と緒方は打ち明けている。数多くのアクターが織りなす複雑でダイナミックな政策決定過程を分析するのは、学者・緒方には「大きな魅力だった」ようだが、それが国際政治の現場で生きた。「実務と研究を分けて考える」のは「ナンセンス」と言い切っている。 緒方を観察していて、その事がよく分かった。ふとジュネーブから消えたと思うと、ワシントンでCNNテレビの人気キャスターとしゃべっている。すでにクリントン大統領(民主党)と会っているだけでなく、連邦議会を牛耳る共和党のタカ派重鎮とも会談済みだ。アメリカを説得できなければ、国際機関は動かせない。(当時はまだ世界2位の経済大国だった)日本のマネーだけではダメだ。アメリカを動かすには大統領だけでなく、連邦議会を味方に付けなくてはならない。 さらに強面(こわもて)議員でも恐がるのが、票を持つ大衆を動かすメディアだ。常套手段だが、常人ではこれら三つを手玉にとれない。緒方は頻繁にワシントンに飛んでいた。「政策決定過程」のダイナミックスを知っているからだ。傑出した実践的知性だと思った。 普通に記者・取材先の関係で緒方と接していたが、実は少し特別な関係があった。緒方は五・一五事件で暗殺された犬養毅のひ孫である。私の勤め先の共同通信社の当時の社長、犬養康彦は毅の孫だ。それだけでない。康彦の姉で評論家の犬養道子(1921~2017)は、、当時ジュネーブ郊外のフランス側国境地帯にの町に住んでおり、時々わが家に立ち寄ったりすることもあった。あるときは、居間でくつろいでいた道子あてに、突然緒方からわが家に電話が入り、二人が歓談するのを脇で聞いたこともあった。(中略) 話がそれた。 緒方がいかに密接にアメリカと連携していたかをまざまざと知ったこともある。あれはルワンダ紛争の時だったかもしれない。ある夕、UNHCR本部に所用で出向いた。職員の退庁時刻はかなり過ぎており、エレベーターホールは閑散としていた。ひとり中年の女性がエレベーターを待っていた。横に並んで、ふと顔を見ると数年前のワシントン駐在時代に取材でよく会った米外交官だった。次官補(日本外務省なら局長)に昇格していた。「何しているんですか、ここで」と尋ねると、彼女は、部下数人とともにすでに数日にわたってUNHCR本部で仕事をしているという。局長級が長期出張して、緒方とともに紛争対策に当たっている・・・。他の国連安保理有力国に知られたらまずいのではないかと思ったが、おそらく手立ては講じていたのだろう。アメリカが操っているように見えて、実は緒方がアメリカを使っている、という構図に違いなかった。『世界の知性が語る「特別な日本」』1:李登輝さんの想い
2024.01.02
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図書館で『世界の知性が語る「特別な日本」』という新書を手にしたのです。著者は共同通信社の論説委員長もこなしたジャーナリストであるが・・・この本で取り上げた世界の知性がええわけです。【世界の知性が語る「特別な日本」】会田弘継著、新潮社、2021年刊<「BOOK」データベース>より近代日本は世界にとって如何なる存在だったのか。欧米列強を打ち負かした国であり、アジアを侵略した国であり、敗戦後に驚異的な復興を遂げた国。日本が歩んだ曲折の道のりは、他国の人々の精神にも大きな影響を与えてきた。リー・クアンユー、李登輝、ブトロス・ガリ、アンジェイ・ワイダ、オルハン・パムクら世界の政治家や知識人にインタビューし、それぞれの国が抱えた近代の葛藤と日本への特別な思いに迫る。<読む前の大使寸評>著者は共同通信社の論説委員長もこなしたジャーナリストであるが・・・この本で取り上げた世界の知性がええわけです。rakuten世界の知性が語る「特別な日本」「第2章 戦前日本を賛美する胸のうち」で李登輝さんの想いを、見てみましょう。p39~41<第2章 戦前日本を賛美する胸のうち> ■もう一人のリー シンガポールは華人国家だ。多民族化しているが中心は中国系だ。リー・クアンユーも漢字表記すれば李光耀となる。「アジア的価値」にこだわり、権威主義で小さな島シンガポールを大発展させたリーに対し、もう一人のリーはあくまで民主主義、「普遍的価値」にこだわり、やはり島を大発展させた。台湾総統だった李登輝(1923~2020)だ。 英紙『エコノミスト』が「賞賛すべき民主主義」と形容したことがあった。私自身もかつて台湾の民主主義を「アジアの宝石」と表現してみたことがある。香港の自由と民主主義が失われるのを見るにつけ、台湾の大切さを思う。2020年以来の新型コロナ禍への優れた対応を見ても、称賛に値する。 日本が目標に据えながらうまく達成できない、二大政党制による平和裏の政権交代を、台湾は三回もスムーズに果たしている。そんな例は、東アジアには他にない(韓国の政権交代はいつも逮捕劇や自殺などを伴う)。少数民族文化や日本統治時代の歴史も寛容に取り込んで、豊かな文化をかたちづくっているように見える。 台湾には1980年代後半に民主化が始まってから、ジャーナリストとして当然の関心を抱いた。その関心は、かつてNHK教育テレビが候考賢監督の『非情都市』(1989年)を放映したのを見てさらに高まった。 昭和天皇の終戦の玉音放送で日本の統治が終わり、国民党政府支配が始まって間もなく起きた台湾人に対する弾圧「二・二八事件」(1947年)に至る時期を、一商家の家族のドラマを軸にして描き出した傑作である。正直、腰が立たなくなるほど衝撃を受けた。いまでもDVDで繰り返し見る。『非情都市』が上映されるまで、日本人にあまりなじみのなかった二・二八事件だが、私自身は、80年代に出会った台湾老人から聞かされ、彼の残した回想録から事件との具体的な関りも知っていた。それが映像芸術のかたちで描かれているのを見て、当時の台湾社会の姿と事件が手に取るように分かり、はじめてその頃の台湾人の奥底にある哀しみ(非情)が感じられた。 それから十年のち、今度は若手監督、 魏徳聖の『海角七号』(2008年)が台湾映画史上最大のヒットになった。秀作であった。終戦直後と現代の、日本人と台湾人の二つの恋愛物語をつなぐコメディ仕立ての映画に、あらためて台湾と日本の歴史を思い、考え込んだ。 魏徳聖の他作品や他監督の作品を見続け、2016年には、政治思想家の畏友フランシス・フクヤマらが主宰する米論壇誌に 魏徳聖論を寄稿してみたこともあった。 これらの映画を通じてのぞき見ると、台湾は政治・文化・社会の近代化において、日本をはるかに追い抜いたのではないかと思えてくる。『海角七号』で日本語で歌われた「野ばら」より
2024.01.01
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図書館で『科学する心』という本を手にしたのです。物理学を専攻した池澤さんが説く科学的エッセイってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。【科学する心】池澤夏樹著、集英社インターナショナル、2019年刊<「BOOK」データベース>より大学で物理学科に籍を置いたこともある著者は、これまでも折に触れ、自らの作品に科学的題材を織り込んできた。いわば「科学する心」とでも呼ぶべきものを持ち続けた作家が、最先端の人工知能から、進化論、永遠と無限、失われつつある日常の科学などを、「文学的まなざし」を保ちつつ考察する科学エッセイ<読む前の大使寸評>物理学を専攻した池澤さんが説く科学的エッセイってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。rakuten科学する心「第2章 日時計と冪とプランク時代」でドイツの科学博物館を、見てみましょう。p33~35<第2章 日時計と冪とプランク時代>■テクノロジーの殿堂、ドイツ博物館 しばらく前、ミュンヘンに行った時、前々から気になっていたドイツ博物館という施設に行ってみた。気になっていた理由は、なにしろ名前が大きいし、基本的性格は科学博物館であると聞いていたからだ。 実際には科学技術博物館という印象が強かった。偉大なるドイツをつくったテクノロジーの殿堂。とりわけ航空機の部門が充実していて、実物がたくさん展示してあり、その威容はワシントンDCのスミソニアン国立航空宇宙博物館に比肩できるほどだった。 戦前・戦中のものも多いのを不思議と思ったのは、同じ敗戦国でありながら日本にはこの種の施設が皆無であるからだ。軍用機はみな進駐軍に破壊され、その後も航空産業が封じられたためだろうが、どこがドイツと違ったのだろう。メッサーシュミットMe 262という双発のジェット(!)戦闘機を見ながら、ゼロ戦ばかり誇ってもいられまいと思った。 技術の展示はともかく、科学の部門もなかなかおもしろい。ここからは一円玉の話の延長なのだが、度量衡の部屋に自記式の体重計があった。乗ると中でメカが動く(前面がガラス張りになっていて見える)。 そこで一ユーロ貨を入れると更にごとごとと動きがあって、数秒後に体重をプリントしたカードがポンと出てくる。昔の日本の鉄道の硬券と同じサイズ同じ厚みで、表に体重、裏に日付けが刻印してある。体重の単位は半キロ。 大事なのはこれがIT技術はおろか電機も使わない完全機械式であることだ。人が乗るとその体重の分だけ重りが動き、それがカムとリンクを経て数字を刻んだ印字リングを回して数字がカードに印刷される。フィリップ・マテウス・ハーンなる人物が1769年に発明した、と説明にあった。 このサイズに収まっているいるのだから、基本のところはバネ秤なのだろう。重りとカムとリンクは体重によるバネの伸びを拡大して印字機構に表示させるための仕掛け。動力は体重。 しかし、自動式の天秤秤が作れないわけではない。こういうのはどうだろう・・・まず天井から吊った大きな滑車がある。ロープが掛かっていて、一方は人の乗る台に結ばれ、他方は重い鎖に繋がっているが、鎖の下の方は床の上にとぐろを巻いている。台に人が乗ると体重でロープは下に引かれ、それが滑車を介して反対側の鎖を引き上げる。 鎖の重さと人の体重が釣り合ったところで安定。動いたロープの長さを滑車の回転角で検出して自動印字する(このメカを夜中に思いついて、はっと興奮、目が冴えてしまった)。 近年の電子式の秤はストレイン・ゲージなどのセンサーを用いる。加わった力による歪みをホイートストン・ブリッジを用いて計測してアナログ表示していた。最近のデジタル式について詳しいことは知らないがそう違ってはいないだろう。『科学する心』3:パタゴニア紀行『科学する心』2:科学的な第一歩「料理」『科学する心』1:原子力、あるいは事象の一回性
2023.12.31
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図書館に予約していた『社会的ひきこもり』という新書を待つこと2日でゲットしたのです。やや硬い内容の新書のせいか予約ゼロだったので、予約してみたら超速でゲットできました。【社会的ひきこもり】斎藤環著、PHP研究所、2020年刊<「BOOK」データベース>より仕事に就かず、外出もせず、時に何年も自分の部屋に閉じこもったまま過ごす「ひきこもり」の数は、年齢を問わず全国で増加している。精神科医として現場で「ひきこもり」の治療に携わってきた著者は、いわゆる正論やお説教では決してこの問題を解決することはできない、という。「ひきこもり」を単なる「個人の病理」でなく、個人・家族・社会という3つのシステムの関わりの障害による「システムの病理」とする捉え方から、正しい知識と対処の仕方を解説。ロングセラー『社会的ひきこもり 終わらない思春期』に最新情報を加筆・修正した待望の復刊。<読む前の大使寸評>やや硬い内容の新書のせいか予約ゼロだったので、予約してみたら超速でゲットできました。<図書館予約:(12/25予約、12/27受取)>rakuten社会的ひきこもり「改訂版まえがき」の続きを、見てみましょう。p6~9<改訂版まえがき> 2012年に私とファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんが共著で出した『ひきこもりのライフプラン』(岩波書店)は、経済的な「ライフプラン」という視点から、ひきこもりのサバイバル方法を解説した最初の試みとなりました。『社会的ひきこもり 終わらない思春期』が出版されて2年後の2000年に、柏崎少女監禁事件と西鉄バスジャック事件が起こり、これをきっかけとして「ひきこもり」という言葉は一気に広がりました。こうした状況を受けて、2003年に厚労省が最初のひきこもりに関するガイドラインを出しましたが、十分なものとは言えませんでした。2007年から厚労省の研究班(私もメンバーの1人でした)が3年越しの調査研究に基づいてまとめた「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」は、医療寄りではありますが、具体的な対応に踏み込んだ内容となっています。 ほかにも厚生労働省は、2009年度から「ひきこもり対策推進事業」を創設し、すべての都道府県と政令指定都市に「ひきこもり地域支援センター」を設置しており、現在はここが最初に相談する窓口として機能しています。また、「ひきこもり対策推進事業」は「生活困窮者自立支援制度」と連携してひきこもり当事者を支援することが推奨されており、当事者の自立に向けた包括的な支援を行っています。 一般的な出口としては就労支援がありますが、こちらの窓口も20年間でかなり進歩がありました。中でも利用しやすいのは「ひきこもり対策推進事業地域若者サポートステーション」でしょう。利用者の年齢制限(39歳まで)はありますが、障害の有無を問わず、就労に自信のない若者ならば誰でも利用できます。障碍者枠での就労としては、「就労継続支援」や「就労移行支援」があります。 こちらは年齢制限が実質ありませんので、シニア世代のひきこもりの方も、以前よりははるかに就労しやすくなりました。以上は、数少ないポジティブな変化です。問題は、支援体制が整備されるよりもはるかに急速に、ひきこもりの高齢化や増加が進んでいることです。(中略) ちょっと弁解しておくと、当時の私は、「ひきこもったままでいい」などと無責任に放言する「有識者」の人々に、かなり強いいらだちを感じていました。不登校やひきこもりに治療的に関わることが人道上の罪であるかのような批判にも怒りを感じていました。放置して解決するならそうしたいのはやまやまですが、そういう態度が現在の「8050問題」につながっていることを思うなら、せめてニーズに応えられるよう準備はしておきたい。 とはいえ、誰にでも一律に支援を押し売りをするつもりはありません。私から見れば、ひきこもりは「病気の人」というよりは「困難な状況にあるまともな人」です。だからこそ、ひきこもり当事者のニーズは多様です。支援を求めないひきこもり、支援を求めるひきこもり、本人は必要としていないが親が支援を求めているひきこもり、など、さまざまな人がいます。 ならば「ニーズがないひきこもり」は放っておくべきなのか。それも違うと思います。今はかたくなに拒否していても、家族関係が修復されることで、そうしたニーズが生まれてくることがあるからです。だからこそ、機会あるごとにアプローチを試み、チャンスがあればニーズを尋ね、断れればまた次の機会をうかがっていきたい。 ちょっとお節介に見えるかもしれません。ただ、このような「マイルドなお節介」という支援のあり方は、近年、依存症業界などでも推奨されつつあるようです。当事者に対して決して押しつけや強制をしないという条件で、なんとか許してもらいたいというのが、今の私の願いです。ウーム なんかこの問題の難しさが、より際立ってきたみたいやで(汗)『社会的ひきこもり』1:「改訂版まえがき」の冒頭
2023.12.31
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図書館に予約していた『社会的ひきこもり』という新書を待つこと2日でゲットしたのです。やや硬い内容の新書のせいか予約ゼロだったので、予約してみたら超速でゲットできました。【社会的ひきこもり】斎藤環著、PHP研究所、2020年刊<「BOOK」データベース>より仕事に就かず、外出もせず、時に何年も自分の部屋に閉じこもったまま過ごす「ひきこもり」の数は、年齢を問わず全国で増加している。精神科医として現場で「ひきこもり」の治療に携わってきた著者は、いわゆる正論やお説教では決してこの問題を解決することはできない、という。「ひきこもり」を単なる「個人の病理」でなく、個人・家族・社会という3つのシステムの関わりの障害による「システムの病理」とする捉え方から、正しい知識と対処の仕方を解説。ロングセラー『社会的ひきこもり 終わらない思春期』に最新情報を加筆・修正した待望の復刊。<読む前の大使寸評>やや硬い内容の新書のせいか予約ゼロだったので、予約してみたら超速でゲットできました。<図書館予約:(12/25予約、12/27受取)>rakuten社会的ひきこもりまず「改訂版まえがき」の冒頭を、見てみましょう。p3~5<改訂版まえがき>『社会的ひきこもり 終わらない思春期』(1998年)は私にとって、ことのほか思い入れの深い本です。私の単著デビューは、この本に数ヶ月先立って出版された『文脈病』(青土社)でしたが、この本は私が一般向けに書いたはじめての本であり、また私の著書のなかではいまだ唯一の「ベストセラー」でもあるからです。 さすがに20年ほど前の本ということもあって、今回の改訂版を出すにあたって一通り読み返してみたのですが、意外なほど内容が古びていないので安心しました。もちろん細かいところで状況が変わったり、考え方を変えたりしたところはあります。しかし対応の基本方針は、現在もそれほど変わっていません。これは私の進歩がないせいなのか、あるいは弱冠30代にしてすでに卓越した精神科医だったためなのか、後者と思いたいのは山々ですが、そのあたりの判断は読者に委ねたいと思います。 せっかくこの改訂版を手にとってくださった方のために、本書の変更点について簡単に述べておきたいと思います。 まず、ひきこもりの定義です。「6ヶ月以上社会参加をしていない」と「ほかの精神障害がその第一の原因とは考えにくい」の二つは、その後も厚生労働省や内閣府の定義として使われており、変更はありません。 ただ最初の定義にあった「20代後半までに問題化する」の部分は、現代ではもう通用しないため削除しました。30代、40代からひきこもる人が急増しつつあり、そのこともあってひきこもりの高齢化が急速に進行しつつあるからです。 元の本では、ひきこもり人口を「数十万人」と推定している箇所がありました。また、当時受けた雑誌のインタビューでは100万人とも述べており、この数字は本書の帯にも使われていました。当時はまだ国や自治体の長さなどはなされていませんでしたから、この推定は体感的なものでしかなかったのですが、それほど「外れ」ではなかったことが最近の調査でわかってきたのです。 2016年には内閣府は、15~39歳を対象にした「ひきこもり」実態調査の結果を公表しましたが、それによると日本全体でのひきこもり人口は推計約54万1000人でした。 また2019年にも内閣府は、40~64歳のシニア層を対象とした「ひきこもり」調査結果を公表していますが、こちらでは全国で推計61万3000人でした。単純に加算することはできませんが、それでも100万人以上がひきこもっているという現状がはじめて明らかになったのです。 同時に、これまで「若者問題」と思われてきたひきこもりが、すでに全世代の問題になりつつあることもわかり、社会に大きな衝撃を与えました。いまやひきこもりは、どこでも、誰でも、何歳からでも起こりうると考えるべきなのです。 引きこもり人口の増加とともに、現在問題になっているのは、先にも述べたひきこもりの高齢化です。「8050問題」という言葉があります。文字通り、80代の親が50代のひきこもりの子の世話をしている家庭を意味する言葉ですが、こうした状況がまれなものではなくなりつつあります。 私は2014年に「社団法人 青少年健康センター」が主宰する家族会の参加者にアンケート調査を行いましたが、この時点で当事者の平均年齢は34.4歳、親の平均年齢は65.5歳、平均ひきこもり期間は12年11ヶ月と、深刻な高齢化傾向、長期化傾向があきらかになりました。わが子のけあ疲弊した家族の多くが、うつ状態の高いリスクを抱えていることもわかりました。
2023.12.30
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図書館で『科学する心』という本を手にしたのです。物理学を専攻した池澤さんが説く科学的エッセイってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。【科学する心】池澤夏樹著、集英社インターナショナル、2019年刊<「BOOK」データベース>より大学で物理学科に籍を置いたこともある著者は、これまでも折に触れ、自らの作品に科学的題材を織り込んできた。いわば「科学する心」とでも呼ぶべきものを持ち続けた作家が、最先端の人工知能から、進化論、永遠と無限、失われつつある日常の科学などを、「文学的まなざし」を保ちつつ考察する科学エッセイ<読む前の大使寸評>物理学を専攻した池澤さんが説く科学的エッセイってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。rakuten科学する心「第11章 パタゴニア紀行」で池澤さんの旅を、見てみましょう。p217~221<第11章 パタゴニア紀行> 2017年の年末から年始にかけて南米大陸の南端パタゴニア地方を旅した。ほぼ南緯40度から南、アルゼンチンとチリにまたがる地域である。 ずいぶん前から行きたいと思っていてようやく実現したのだが、このあたりをまったく知らなかったわけではない。 2009年の2月に南極半島へのクルーズに参加してウスワイアまで戻った後、ビーグル海峡を渡ってチリ領のナバリノ島へ入り、プエルト・トロという世界最南端の村に行った。もっと南には荒れ狂うホーン岬と難船の記録がひしめくドレイク海峡があって、その千キロほど先に南極大陸がある。 ウスワイアはフェゴ島の南岸に位置している。広い意味ではパタゴニアに属するけれど、この時は端っこをかすめたにすぎなかった。 今回は本気で踏破を目指した。具体的に言えば、12月の26日にブエノスアイレスに入り、翌日の飛行機でリオ・ガジェゴスに到着。ここからがパタゴニアである。 以下は地名の羅列になるので地図を見ていただきたい。 リオ・ガジェゴスから南に向かって、モンテ・アイモンド国境でチリに入り、その先でマジェラン海峡を見た。大西洋から太平洋までおよそ600キロ。幅は最も狭いところで3キロ、対岸がフェゴ島である。 海峡を左に見て西に進み、その先で南下してプンタ・アレナスに至る。チリはこの港町を世界最南端の都会と誇る。アルゼンチンに属するウスアイアはここより南だが人口は半分以下。都会とは呼べないとチリは言いたいのだろう。この二国はなにかといがみあう。アルゼンチンが無謀にもイギリスと戦争をした時(1982年のフォークランド戦争、アルゼンチン側の呼称ではマルビナス戦争)、チリはけっこう意地悪くアルゼンチンの足を引っ張った。 近代兵器の見本市のようなこの小さな戦争はイギリスの勝利に終わった。しかし戦意においてはアルゼンチンも負けていなかったことを証するために、リオ・ガジェゴスには「マルビナス戦争博物館」がある。大きめの民家くらいの建物に飛行機や艦船の模型が並び、その他さまざまな遺物や軍人を顕彰する展示がある。靖国神社の遊就館のミニチュア版のよう。『科学する心』2:科学的な第一歩「料理」『科学する心』1:原子力、あるいは事象の一回性
2023.12.29
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図書館で『科学する心』という本を手にしたのです。物理学を専攻した池澤さんが説く科学的エッセイってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。【科学する心】池澤夏樹著、集英社インターナショナル、2019年刊<「BOOK」データベース>より大学で物理学科に籍を置いたこともある著者は、これまでも折に触れ、自らの作品に科学的題材を織り込んできた。いわば「科学する心」とでも呼ぶべきものを持ち続けた作家が、最先端の人工知能から、進化論、永遠と無限、失われつつある日常の科学などを、「文学的まなざし」を保ちつつ考察する科学エッセイ<読む前の大使寸評>物理学を専攻した池澤さんが説く科学的エッセイってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。rakuten科学する心「第6章 体験の物理、日常の科学」から科学的な第一歩「料理」を、見てみましょう。p131~133<第6章 体験の物理、日常の科学>■料理は身体感覚を用いる科学の第一歩 料理の現場に立ってみよう。身体感覚を用いる科学の第一歩。ブラック・ボックスに対抗する仕事。 最も単純な加熱だけの料理としてローストビーフを考える。牛肉の塊を中心部分が55度くらいになるまでゆっくり加熱する。それだけ。 事前の準備はいくつかある。冷蔵庫にあったのなら外に出してしばらく放置、常温に戻す。塩と胡椒をすり込み、形を保つために紐で縛る。表面をフライパンで焼いて固める。適当な温度(例えば120度)に設定したオーブンに入れて、中心部が55度になるまで熱を加え続ける。今は素材の中に差し込むタイプのデジタル温度計があるから、それを使えば間違いなくその温度にできる。そうでなくてもプロは何回となく繰り返して完璧な方法を体得している(素人料理のハンディキャップは毎日違うものを作らされることだ。我ながら偉いと思う)。 要は熱伝導の応用問題だ。外側からゆっくり中へ熱が伝わり、中心に向かって温度勾配ができる。 熱の伝わりかたには他に放射と対流がある。カレーうどんはとろみのために対流が起こらない。なかなか冷めないから急ぐ時は本当に困る。 万事を科学的に説明すればだいたいこんなことになるが、しかしたいていの料理を人は勘でやっている。ぼく自身のことで言えば素材は計量しても調味料は量らない。大雑把に入れていってまず間違えない。素材そのものが塩を含む時はその分だけ加減する。この「加減」という言葉がたぶん料理の神髄だ。事態に応じて加えるか減らすか。 素材ごとに火の通りかた、味の染みかたは異なる。大根はいくら煮ても崩れないが蕪はすぐに柔らかくなる。蒟蒻(こんにゃく)は頑丈だが豆腐は煮すぎるとスが入る。男爵とメークインとインカのめざめは用途が違う(余談ながらぼくは「馬鈴薯」という言葉が好きだ。馬の鈴、あんな形だった)。 蕎麦を茹でる時、昔はびっくり水を用意した。沸騰しすぎないよう途中で差し水をする。それはカマドなど火が加減できなかったための知恵で、ガスや電気になってからは不要になった。 茹で上がったら冷水にさらす。大きなボウルに水を用意しておいて、蕎麦をそこに放ち、流水の中で揉む。柔らかかった蕎麦がみるみるきりっとするのが指先でわかる。 今ぼくは札幌に暮らしているが、この寒冷の地の利点は夏でも水道の水が冷たいこと。蕎麦もうどんも引き締まる。その一方、世間ではバカな蕎麦屋が氷水で冷やしたざる蕎麦を出してくる。冷たすぎて風味も何もあったものではない。 こういうこと、身体感覚なのだが、その一方で個人単位の科学でもある。 オムレツを焼く。卵の蛋白質が熱変性を起こす過程を頭の中でシミュレートしつつ熱を加え、目で観察しながらフライパンを降って形を整え、最適のところで皿に移す。熱源から離してそれ以上は変性が進まないようにする。前段階のバターと塩、胡椒、具などのことは省略。『科学する心』1:原子力、あるいは事象の一回性
2023.12.29
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図書館で『科学する心』という本を手にしたのです。物理学を専攻した池澤さんが説く科学的エッセイってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。【科学する心】池澤夏樹著、集英社インターナショナル、2019年刊<「BOOK」データベース>より大学で物理学科に籍を置いたこともある著者は、これまでも折に触れ、自らの作品に科学的題材を織り込んできた。いわば「科学する心」とでも呼ぶべきものを持ち続けた作家が、最先端の人工知能から、進化論、永遠と無限、失われつつある日常の科学などを、「文学的まなざし」を保ちつつ考察する科学エッセイ<読む前の大使寸評>物理学を専攻した池澤さんが説く科学的エッセイってか・・・興味深いのでチョイスしたのです。rakuten科学する心「第5章 原子力、あるいは事象の一回性」の冒頭を、見てみましょう。p97~101<第5章 原子力、あるいは事象の一回性> 2019年3月で東日本大震災から8年が過ぎた。 地震ならびに津波の被害とフクシマの被害はまったくその性格が異なる。原子力あるいは核エネルギーについて改めてここで考えてみたい。自分の人生とこのケクノロジーの歩みを追って。 1945年7月16日、ぼくが生まれて十日目に世界で初めて原爆の実験が行われた。それから1ヶ月もたたないうちに広島と長崎で実戦に使用された。高熱と爆風と放射線。数日のうちに約二十万人が死亡し、それからの5年間まで含めると総計34万に及ぶ人々が亡くなった。 ここで犠牲と言う言葉を使っていいものかとためらう。牛篇でわかるとおり、犠牲というのは何かの目的のために神の祭壇で殺される動物のことである。無辜の人々の難死にそんな意味を与えることが許されるのか。ユダヤ教の燔祭(ホロコースト)ということばをジェノサイドの意味で使うのもどこか違う気がする。正しき神はそんなものは受けつけないはずではないか。 1953年12月8日、ぼくが8歳の時、就任したばかりのアメリカ大統領ドワイト・D・アイゼンハワーは国連総会で「平和のための原子力」という演説を行い、核エネルギーは戦争のためだけでなく平和目的にも利用できると主張した。原爆の開発に手を貸した科学者たちはこれで少し良心の呵責を緩めることができると思った。しかし本当にそうだったのだろうか。 翌年の3月、ビキニ環礁での水爆の実験で第5福竜丸の船員が被曝し、その半年後に久保山愛吉さんが亡くなった。 1979年3月28日午前4時、ぼくが33歳の時、アメリカのペンシルベニア州スリーマイル島の原子力発電所二号炉の制御室で警報音が鳴り響き、百を超える警告灯が点灯した。冷却系の故障が次々に波及して、運転員は何が起こっているのか把握できなくなった。原因はパイロット操作逃がし弁(PORV)が閉じなくなる「開固着」だったが、多くの事象がたてつづきに起こる混乱の中でこれは見逃された。炉の中の冷却水が失われ(LOCAと呼ばれるタイプの事故)、燃料集合体の半分以上が露出してメルトダウンが始まった。 核燃料のペレットはジルコニウムで被覆されている。冷却水喪失で高温になったジルコニウムは、水蒸気と直に接触すると二酸化ジルコニウムに変わり、水素が発生する。水素は空気中の酸素と混じって容易に爆発する。格納容器が破壊され、大気中に放射性物質が撒き散らされる。 この時は半径24キロ圏内の20万人が避難した。 最終的に水素爆発は起こらず、事態はやがて沈静化した。この二号炉は廃炉になり、無傷だった隣の一号炉も世論の反対で数年先まで再稼働されなかった。■オッペンハイマーは「われは死なり」と呟いた 1982年、37歳の時にぼくは『ヒロシマを壊滅させた男 オッペンハイマー』(白水社)という、イギリスBBCのジャーナリストが書いた本の翻訳を出した。 話は1945年、ぼくの誕生の時に戻る。 原子爆弾開発の主役だったオッペンハイマーはインテリだったから、ニューメキシコ州に作られた実験場にジョン・ダンの詩を引用して「トリニティー(三位一体)」という名をつけた。 実験の前、マンハッタン計画に参加した科学者たちは自分らが開発した原子爆弾の威力について懐疑的だった。威力についてさまざまな数字が飛び交った。最も楽観的なのはエドワード・テラーが出したTNT火薬に換算して四万五千トンというもの。ハンス・ベーテは八千トン、公式の予測は五千トン、オッペンハイマーは指揮する立場なのに悲観的に三百トン。ゼロと言う者もいた。(中略) 7月16日、20億ドルを費やした爆弾はちゃんと爆発した。多くの予測を上回って威力はTNT火薬にして二万トン相当だった。 オッペンハイマーは、ここでインドの古典『バガヴァッド・ギーター』の一節を思い出して「われは死なり。多くの世界の破壊者なり」と呟いた、と後に語っている。戦いを前にしてためらう王子を神クリシュナが激励する言葉だ。オッペンハイマーにはためらいがあったのだろう。 なぜ原爆は完成してしまったのか?
2023.12.28
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今回借りた5冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「日本」でしょうか♪<市立図書館>・科学する心・社会的ひきこもり・樺太地上戦・町山智浩・春日太一の日本映画講義・世界の知性が語る「特別な日本」<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)なお、今回は年越しということで、やや多めの5冊をチョイスしています。***********************************************************【科学する心】池澤夏樹著、集英社インターナショナル、2019年刊<「BOOK」データベース>より大学で物理学科に籍を置いたこともある著者は、これまでも折に触れ、自らの作品に科学的題材を織り込んできた。いわば「科学する心」とでも呼ぶべきものを持ち続けた作家が、最先端の人工知能から、進化論、永遠と無限、失われつつある日常の科学などを、「文学的まなざし」を保ちつつ考察する科学エッセイ<読む前の大使寸評>追って記入rakuten科学する心【社会的ひきこもり】斎藤環著、PHP研究所、2020年刊<「BOOK」データベース>より仕事に就かず、外出もせず、時に何年も自分の部屋に閉じこもったまま過ごす「ひきこもり」の数は、年齢を問わず全国で増加している。精神科医として現場で「ひきこもり」の治療に携わってきた著者は、いわゆる正論やお説教では決してこの問題を解決することはできない、という。「ひきこもり」を単なる「個人の病理」でなく、個人・家族・社会という3つのシステムの関わりの障害による「システムの病理」とする捉え方から、正しい知識と対処の仕方を解説。ロングセラー『社会的ひきこもり 終わらない思春期』に最新情報を加筆・修正した待望の復刊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(12/25予約、副本?、予約0)>rakuten社会的ひきこもり【樺太地上戦】 NHKスペシャル取材班著、KADOKAWA、2019年刊<「BOOK」データベース>より北海道の北に広がる大地、サハリン。かつて樺太と呼ばれ、約40万人の日本人が暮らしていた。この地で、終戦後も7日間にわたって戦闘が続き、住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が行われていたことを私たちは忘れてはいけないー。最前線に立たされた住民たちー。犠牲者は5000人とも6000人とも言われる住民を巻き込んだ悲惨な地上戦。知られざる戦い、悲劇の全貌に迫る。重い沈黙を破る貴重な証言。国内外の発掘資料初公開!<読む前の大使寸評>追って記入rakuten樺太地上戦【町山智浩・春日太一の日本映画講義】町山智浩×春日太一著、河出書房新社、2019年刊<「BOOK」データベース>より日本の映画語りを牽引する町山智浩と春日太一が必見の作品を精選し、その凄まじさ、面白さ、役者・スタッフたちの想いを語り尽くす映画入門。「時代劇編」では、日本映画に革命を起こした『七人の侍』、三隅研次の美学が極められた『斬る』『剣』『剣鬼』、血しぶきとアクション満載『子連れ狼』シリーズ、アウトローたちの純情に心を寄せた『御用金』『人斬り』などを紹介。映画は知ってから見ると、百倍、面白くなる!<読む前の大使寸評>追って記入rakuten町山智浩・春日太一の日本映画講義【世界の知性が語る「特別な日本」】会田弘継著、新潮社、2021年刊<「BOOK」データベース>より近代日本は世界にとって如何なる存在だったのか。欧米列強を打ち負かした国であり、アジアを侵略した国であり、敗戦後に驚異的な復興を遂げた国。日本が歩んだ曲折の道のりは、他国の人々の精神にも大きな影響を与えてきた。リー・クアンユー、李登輝、ブトロス・ガリ、アンジェイ・ワイダ、オルハン・パムクら世界の政治家や知識人にインタビューし、それぞれの国が抱えた近代の葛藤と日本への特別な思いに迫る。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten世界の知性が語る「特別な日本」
2023.12.28
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、副本1、予約55)現在15位・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在305位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在211位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在102位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在87位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在292位・南海トラフ地震の真実(10/20予約、副本?、予約44)現在33位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在21位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在11位・満州国グランドホテル(12/20予約、副本?、予約3)現在2位・斎藤環『社会的ひきこもり』(12/25予約、副本?、予約0)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・養老孟司『形を読む』・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・菊間晴子「犠牲の森で」・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:第165回芥川賞受賞作(21年)・ひさうちみちお『パースペクティブキッド』・松里公孝『ウクライナ動乱』・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・じい散歩 妻の反乱<予約分受取:10/14以降> ・タルディ『塹壕の戦争1914-1918』(10/08予約、10/14受取)・小川哲『地図と拳』(2/01予約、10/21受取)・有川ひろ『旅猫リポート』(10/27予約、10/28受取)・ジンセイハ、オンガクデアル(2/10予約、11/15受取)・ブレイディみかこ『リスペクト』(9/05予約、11/23受取予定)・『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』(5/23予約、11/28受取)・村山由佳『命とられるわけじゃない』(11/21予約、11/28受取)・多和田葉子『白鶴亮翅』(8/2予約、12/05受取)・村上龍『ユーチューバー』(5/20予約、12/11受取)・斎藤環『社会的ひきこもり』(12/25予約、12/27受取予定)**********************************************************************【台湾漫遊鉄道のふたり】楊双子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より昭和十三年、五月の台湾。作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴と台湾縦貫鉄道に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。ただ、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子の焦燥感は募り…国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差。あらゆる壁に阻まれ、近づいては離れるふたりの旅の終点はー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/23予約、副本1、予約55)>rakuten台湾漫遊鉄道のふたり【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【満州国グランドホテル】平山周吉著、芸術新聞社、2022年刊<「BOOK」データベース>より「二キ三スケ」(東条英機、星野直樹、松岡洋右、岸信介、鮎川義介)だけで満洲は語れない。「一ヒコ一サク」(甘粕正彦、河本大作)が隠然たる影響力を行使する。再チャレンジ、前歴ロンダリングも許される自由の天地。「五族協和」の理想を信じた人たちの生と死。既存の満洲国イメージをくつがえす、満洲の土を踏んだ日本人の奇妙にして、真剣なる「昭和史」物語。<読む前の大使寸評>著者・平山周吉さんの「小津安二郎」が大佛次郎賞を受賞したが、この際同氏の「満州国グランドホテル」が気になるので図書館予約したのです。<図書館予約:(12/20予約、副本?、予約3)>rakuten満州国グランドホテル【社会的ひきこもり】斎藤環著、PHP研究所、2020年刊<「BOOK」データベース>より仕事に就かず、外出もせず、時に何年も自分の部屋に閉じこもったまま過ごす「ひきこもり」の数は、年齢を問わず全国で増加している。精神科医として現場で「ひきこもり」の治療に携わってきた著者は、いわゆる正論やお説教では決してこの問題を解決することはできない、という。「ひきこもり」を単なる「個人の病理」でなく、個人・家族・社会という3つのシステムの関わりの障害による「システムの病理」とする捉え方から、正しい知識と対処の仕方を解説。ロングセラー『社会的ひきこもり 終わらない思春期』に最新情報を加筆・修正した待望の復刊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(12/25予約、副本?、予約0)>rakuten社会的ひきこもり【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2023.12.27
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図書館で『台湾のことがマンガで3時間でわかる本』という本を手にしたのです。台湾といえば・・・中国、韓国と違って、哈日族が生まれるたりするように日本が好きな連中が多いし、私も台湾が好きなわけです。【台湾のことがマンガで3時間でわかる本】西川靖章×横山憲夫著、明日香出版社、2015年刊<「BOOK」データベース>より世界で一番「好日」な人々。日本の文化と人々がこよなく好まれすでに多くの日系企業が進出し中国本土と太いビジネスのパイプがつながり中国にはない「好日」「自由」「先進国文化」がある。出るなら今!中国、アジア進出の第一歩は安心安全な台湾に決まり!<読む前の大使寸評>台湾といえば・・・中国、韓国と違って、哈日族が生まれるたりするように日本が好きな連中が多いし、私も台湾が好きなわけです。rakuten台湾のことがマンガで3時間でわかる本台湾のネット環境を、見てみましょう。p80~81<主要産業とメジャー企業>■ネットワーク大国台湾 IT競争力ランキングで世界144ヵ国中、10位にランクインした台湾では、8割半の世帯がインターネットを利用し、9割の世帯がパソコンを持ち、9割のネット世帯が高速度のブロードバンドを利用していると言われています。 IT製品市場では、10を超える製品が世界シェアトップを誇り、台湾はITソフト・ハードウェアとサービスに関する理想的な環境とインフラを備えていると言えます。 台湾政府も、優れたITインフラを生かし、政府、民間企業、顧客をつなぐ市場取引と情報・通信ネットワークを構築していく方針を継続するようです。■通信業界 台湾では大手3社の電気通信業者が95%のシェアを占めており、上から順に中華電信38%、台湾大カ大(Taiwan Mobile)29%、遠傳(FarÈasTon)28%です。また台北市内には数多くのFree WIFIスポットがあり、インターネットにアクセスする環境が整っています。■台湾でのスマートフォンは、アンドロイド 台湾でもスマホがなくては生活ができないくらい普及しています。チャットやゲームのほか、カフェで朝からタブレット端末で動画を視聴している人も少なくありません。携帯電話の普及率は120%超、スマホの普及率も約50%と非常に高く、SNSやゲームの普及する土台は出来上がっていると言えます。■SNSと若者文化 2012年10月時点での台湾のSNS利用者数は1290万人で普及率は56%。最も多く使われているのはFacebookで、アカウント数は1500万以上というデータもあります。 LINEも人気が高く、月間アクティブユーザーは、日本を含むアジアの中でトップ3の中に含まれています。『台湾のことがマンガで3時間でわかる本』2:台湾の主要産業『台湾のことがマンガで3時間でわかる本』1:台湾の食事
2023.12.27
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図書館で『「スパコン富岳」後の日本』という本を手にしたのです。スパコンといえば・・・かつて神戸のポートアイランドの理化学研究所計算科学研究センターまでスパコン京を見に行ったように、物見高いのであった。【「スパコン富岳」後の日本】 小林雅一著、中央公論新社、2021年刊<「BOOK」データベース>より世界一に輝いた国産スーパーコンピュータ「富岳」。新型コロナウイルス対応で注目の的だが、真の実力は如何に?「電子立国・日本」は復活するのか?新技術はどんな未来社会をもたらすのか?莫大な国費投入に見合う成果を出せるのか?開発責任者や、最前線の研究者(創薬、がんゲノム医療、宇宙など)、注目AI企業などに取材を重ね、米中ハイテク覇権競争下における日本の戦略や、スパコンをしのぐ量子コンピュータ開発のゆくえを展望する。<読む前の大使寸評>スパコンといえば・・・かつて神戸のポートアイランドの理化学研究所計算科学研究センターまでスパコン京を見に行ったように、物見高いのであった。rakuten「スパコン富岳」後の日本第4章で米中ハイテク覇権争いを、見てみましょう。p179~181<米国の制裁で停滞する中国の半導体産業> 米国政府による厳しい技術禁輸措置を受け、中国のメーカーや研究機関などは次世代スパコンに搭載されるプロセッサなどの自主開発を加速すると見られている。しかし彼らが仮に、エクサ級のCPUを自主開発(設計)できるレベルに達したとしても、それを「製造」することができない。なぜなら中国には、台湾TSMCや韓国サムスン電子に匹敵する最先端の製造工場が存在しないからだ。 確かに中国国内には、2000年に設立された国策企業「中芯国際集成電炉製造(SMIC)」というファウンドリが存在する。同社は中国最大の半導体メーカーにして、CPUなどロジックLSIの受注額では世界5位だが、台湾TSMCなど先頭グループに匹敵する最先端のチップ製造技術は未だ有していない。 TSMCは早々と自社工場の製造ラインに、最先端となる5~7ナノ・メートルのプロセス技術を導入することに成功している。富岳のCPU・A64FXは、それらのうち7ナノ・メートルの技術で製造された。おそらくエクサ・スケールのスパコンに搭載される次世代のCPUも5~7ナノ・メートル、あるいはさらにミクロの微細加工技術が必要とされるだろう。 これに対し、SMICが現時点で半導体製品を量産できる段階にあるプロセス技術は12~14ナノ・メートル。これではエクサ級のCPUを製造することは到底不可能だ。 SMICは2020年中には、7ナノ・メートルのプロセス技術を自社工場に導入する計画と見られていた。しかし同年12月、米国防総省が「共産主義中国の軍事企業」というブラックリストにSMICを追加した。国防総省は声明の中で「今回、リストに加えられたSMICなど4社は、表向きは中国の民間会社だが、実際は中国人民解放軍に先端テクノロジーを提供する軍事支援企業だ」と断じた。 これに対し、SMICは「我々は民間向けの製品やサービスしか提供しておらず、中国軍との取引は皆無だ」と反論しているが、米国政府は聞く耳を持たない。 今回、米国防総省のブラックリストに加えられても、SMICが即座に米国から制裁を科せられることはない。しかし米国の投資家による株式購入の禁止対象になると共に、米国内外の企業がSMICとの取引を控えるように求められる。 この国防総省に続き、同じく20年12月、今度は米商務省がSMICをはじめとする中国企業数十社をエンティティ・リストに追加した。 前述の国防総省のブラックリストなども併せて考えると、SMICは5~7ナノ・メートルのプロセス技術導入に必要となる米国製ないしは米国の技術を使った半導体製造装置や「EDA(Èlectronic Design Àutomation)」と呼ばれる設計ツールなどを輸入することがきわめて難しくなったと言わざるを得ない。 これら米国政府による一連の制裁措置により、SMICなど中国の半導体産業は停滞し、中には武漢市のHSMC(武漢弘芯半導体製造)のように深刻な経営難に陥るファウンドリも出てきた。『「スパコン富岳」後の日本』1:はじめに
2023.12.26
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図書館で『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』という本を手にしたのです。強引に総取りするアメリカ人と違って、イギリス人はわりと好きなのでこの本をチョイスしたのです。【イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」】デービッド・アトキンソン著、講談社、2015年刊<「BOOK」データベース>より日本は「足し算」文化。日本人に「解決能力」はあるか?「面倒くさい」が日本流。強すぎる個人主義が日本の特徴。効率の悪さを「伸びしろ」にする…日本の成長を約束する提言集!「日本人論」大ベストセラー第二弾!<読む前の大使寸評>強引に総取りするアメリカ人と違って、イギリス人はわりと好きなのでこの本をチョイスしたのです。rakutenイギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」「第1章」で日本の戦後復興が述べられているので、見てみましょう。p33~37<経済力が強くて、住みやすい国である>■戦後復興は奇跡ではない では、日本の人口と技術力と経済成長の因果関係を明らかにしたいと思います。 成長神話について振り返るとき、いまの日本経済の繁栄は、日本人労働者がもたらした戦後復興の奇跡によるものだった、という話になりがちです。 とはいえ、社会学、経済学的に考えても、戦後日本がの辿った道は、そのように単純なものであるはずがなく、複雑で、因果関係を見極めるのが難しいものでしょう。人間社会とは曖昧さと矛盾に満ちていると認めざるをえないのです。 まどろっこしい話をしましたが、そのようにシニカルな視点から、この戦後の復興をくわしく見てみましょう。 これまで、エコノミストたちは日本経済が世界2位にまで成長した理由として、技術力や勤勉さなど、日本の労働者の優秀な特徴をもって説明することを基本としてきました。 成長がピークに達したバブル経済の時代では、そうした「優秀な日本人論」がメディアでもさかんに取り上げられて、手先が器用、勤勉な労働者という日本の底力をベースにしている日本経済が、アメリカ経済を抜いて1位になるのは時間の問題だ、と指摘していた本もとても多かった印象があります。 日本人の国民性とアメリカ人の国民性だけを、日本側の視点から比較すれば、そうした楽観的な結論が導かれるのも自然だったかもしれません。しかし以下の分析を見ていただければ、いかにそれが非現実的な議論だったかということがわかるかと思います。 表3(人口の増減とGDPの比較)をご覧ください。 これはOECDのドル基準における実質GDPの購買力平価換算を、1939年の上位7カ国について、その後の変かも含めて一覧にしたものです。 これを見ると、じつは日本は1939年に、すでに世界第6位だということがわかります。その後、戦争によって経済規模が大きく減少していきますが、1945年から2013年までを比較すると、GDPは49.7倍に増えています。 一方、ドイツを見ると、18.7倍にしか増えていません。 このデータを取り上げた報道を見ると、世界一の技術大国ドイツの経済を日本が抜いた、やはり日本の技術力のほうが凄い、などの日本を誇るコメントが多いです。 しかし、ここで注意が必要です。たしかに経済規模の総額だけをみると、日本経済はドイツ経済を追い抜かしたという結論になります。ただ、「ドイツ経済を日本が抜いた」というロジックを成り立たせるために、総額だけを見て「日本が勝った」と決めてしまうのは早計に過ぎます。 前出表1(GDP総額順)の一人当たりのGDPを見てください。 日本が3万6375ドルに対して、ドイツは4万7693ドルと、明らかにドイツのほうが高い。つまりドイツ国民のほうが生産性という意味では高いのです。 一人当たりの生産性が低い国が、一人当たりの生産性が高い国をGDPで量がする。 この相反する二つの事実を説明する結論はひとつしかありません。 それは人口です。 日本はドイツよりも圧倒的に人口が増えているのです。1945年、終戦を迎えた時点でおよそ7200万人の人口がいた日本ですが、そこから戦後のベビーブームを経て爆発的に人口が増えていきます。 このように人口が急激に増えたことにくわえ、戦争で空襲を受けて、大都市が軒並み焼け野原になったということも、経済成長には関係があります。「復興」という目的のために、建築物やインフラ整備ということで、ビジネスが続々と生み出されていきました。 それに、もともとの先進国としての経済力の基礎もある。一度は戦争で壊滅的なダメージを受けた産業も、どんどん復興をしていく。そして、なによりも人口の右肩上がりで増えていくわけです。『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』1:はじめに
2023.12.25
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図書館で『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』という本を手にしたのです。強引に総取りするアメリカ人と違って、イギリス人はわりと好きなのでこの本をチョイスしたのです。【イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」】デービッド・アトキンソン著、講談社、2015年刊<「BOOK」データベース>より日本は「足し算」文化。日本人に「解決能力」はあるか?「面倒くさい」が日本流。強すぎる個人主義が日本の特徴。効率の悪さを「伸びしろ」にする…日本の成長を約束する提言集!「日本人論」大ベストセラー第二弾!<読む前の大使寸評>強引に総取りするアメリカ人と違って、イギリス人はわりと好きなのでこの本をチョイスしたのです。rakutenイギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」まず「はじめに」を、見てみましょう。p3~5<はじめに>■日本礼賛の風潮 最近、新聞、テレビ、雑誌などのメディアで、海外と日本の文化や風習を比較するようなものが多いような気がしています。 たとえば、レギュラー放送されているテレビ番組では、さまざまなテーマで世界各国をランクづけし、日本がどのあたりのポジションにいるのかを紹介する「なんでもワールドランキング ネプ&イモトの世界番付」(日本テレビ系列)。日本の技術などを外国人が視察し、自国との違いなどを指摘する「世界が驚いた→ニッポン→スゴ~イデスネ‼‼視察団」(テレビ朝日系列)、日本にやってきた外国人に密着する「Youは何しに日本へ?」(テレビ東京系列)など。ほかにも「世界行ってみたらホントはこんなトコだった!?」(フジテレビ系列)、「CoolJapan発掘!かっこいいニッポン」(NHK)、「所サンノニッポンの出番」(TBS系列)、特番などを含めると似たようなテーマが非常に増えている印象です。 自分たちとは異なる文化を見たい、知りたいという要求は普遍的なものでしょうし、以前からこのような番組もたしかに存在していました。 しかし、やたらと目につくようになったというのはやはり近年、外国人観光客が増加していることにくわえ、2020年の東京五輪開催が決定してさらに多くの外国人がやってくることが予想されているという背景とは無関係ではないでしょう。 少し前には日本文化を世界に発信するというクールジャパン政策があり、オリンピック誘致のために滝川クリステルさんがおこなった「おもてなし」のスピーチも記憶に新しいところです。安倍晋三内閣の成長戦略のなかにも「観光立国」というのが重要な柱のひとつとして位置づけられようとしています。 このような機運が追い風になっているということは容易に想像できます。■強引な「日本の強み」論 こうした日本と海外の風習・文化を比較するようなテーマになると当然、日本人だけではなくさまざまな国の外国人も登場して、自国のことを紹介したり、日本社会や日本文化に対する率直な感想などの意見を表明したりしています。 私自身もイギリスから来日して25年間、日本で暮らしてきた外国人のひとりですから、さまざまな国からやってきた在日外国人の発言にスポットがあたり、有意義な話がなされていること自体は非常に良いことだと思いますので、このようなテーマがもっと増えていくことを願わずにはいられません。 ただ、これらの動きのなかで、ひとつだけ気になることがあります。 それは海外の文化や風習などと日本の文化や風習を比較した後で、結局はランキング、すなわち、優劣をつけて「やっぱり日本はすごい」と自画自賛するという結論になっていることが非常に多い印象なのです。この本も「愛すべきイギリス人」に収めておくものにします。
2023.12.24
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図書館で『台湾のことがマンガで3時間でわかる本』という本を手にしたのです。台湾といえば・・・中国、韓国と違って、哈日族が生まれるたりするように日本が好きな連中が多いし、私も台湾が好きなわけです。【台湾のことがマンガで3時間でわかる本】西川靖章×横山憲夫著、明日香出版社、2015年刊<「BOOK」データベース>より世界で一番「好日」な人々。日本の文化と人々がこよなく好まれすでに多くの日系企業が進出し中国本土と太いビジネスのパイプがつながり中国にはない「好日」「自由」「先進国文化」がある。出るなら今!中国、アジア進出の第一歩は安心安全な台湾に決まり!<読む前の大使寸評>台湾といえば・・・中国、韓国と違って、哈日族が生まれるたりするように日本が好きな連中が多いし、私も台湾が好きなわけです。rakuten台湾のことがマンガで3時間でわかる本台湾の主要産業を、見てみましょう。p76~77<主要産業とメジャー企業>台湾の主要産業は、電気・電子、鉄鋼、精密機械そして自転車産業が挙げられます。特に製造業はGDPの約30%を占めており、最大産業と言えます。■半導体産業 1990年代後半、台湾は「シリコンアイランド」と呼ばれ、世界中の半導体関連企業が台湾で部品を調達していました。現在でも、世界の半導体プレーヤーの中心は台湾企業が占めており、約70%のシェアを持っています。特にTSMC(台湾積體電路製造)やUMC(聯華電子)など、世界を代表する半導体のファウンドリ(半導体チップの製造会社)は台湾企業が占めています。 台湾国家も半導体産業の保護を進めており、中国大陸への投資については、簡単に許可が下りません。■液晶産業 半導体とならぶ主要産業に液晶パネルがあります。日経産業新聞によると、台湾企業2社で液相パネルの世界市場の28.9%を占めるに至っています。 2000年代前半に、台南科学園区や台中地域において液晶工場の建設が活発になりました。この時期に多くの日系企業も台湾に進出し、台湾の液晶パネル産業の発展に大きく寄与しました。■IT産業 IT、特にパソコンやゲーム機などのOEMは、台湾の産業全体にとって非常に大きな要素です。特に有名な企業は鴻海精密工業ですが、この企業と取引している企業数も非常に多く、台湾のGDPほ大部分を占めるに至っていることでしょう。ただし、実際の製造拠点は中国大陸に多いため、正確な数字は把握できません。『台湾のことがマンガで3時間でわかる本』1:台湾の食事
2023.12.23
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図書館で『台湾のことがマンガで3時間でわかる本』という本を手にしたのです。台湾といえば・・・中国、韓国と違って、哈日族が生まれるたりするように日本が好きな連中が多いし、私も台湾が好きなわけです。【台湾のことがマンガで3時間でわかる本】西川靖章×横山憲夫著、明日香出版社、2015年刊<「BOOK」データベース>より世界で一番「好日」な人々。日本の文化と人々がこよなく好まれすでに多くの日系企業が進出し中国本土と太いビジネスのパイプがつながり中国にはない「好日」「自由」「先進国文化」がある。出るなら今!中国、アジア進出の第一歩は安心安全な台湾に決まり!<読む前の大使寸評>台湾といえば・・・中国、韓国と違って、哈日族が生まれるたりするように日本が好きな連中が多いし、私も台湾が好きなわけです。rakuten台湾のことがマンガで3時間でわかる本まず台湾料理にふれたあたりから、見てみましょう。p202~203<台湾の食事>■外食・中食が一般的 台湾は共働き家庭が多いため、外食・中食文化が発達しています。1日3食がすべて外食という家庭も珍しくありません。1日3食すべて外食という家庭も珍しくありません。朝、街には朝食専門の屋台が出てサンドイッチ・ネギ餅などを手ごろな価格で売り、人気の豆乳店には長蛇の列ができていることもしばしばです。 出勤・登校中に昼食を買い、昼は職場近くか学校の食堂で食べ、夜は帰り道にあるショッピングモールのフードコート等ですませるようなライフスタイルが一般的なので、週末以外、家族が皆別々の時間に別々の場所で食事することも珍しくありません。 家で食べる場合も、外で買ってくる人が多いので、多くのレストランで、まず店に寄ると「店内で食べるのか持ち帰りなのか」聞かれるほど、持ち帰りも一般的です。高級レストランでも、食べきれなかった食事を持ち帰りすること(打包)ができます。■キッチンは観賞用 自炊の必要がないので単身者向けにはキッチンが装備されていない部屋も多く、ファミリータイプも部屋でも、キッチンはモデルルームのようにピカピカで生活感が全くないのを目にすることがあります。台湾人にとってキッチンは、客人に豪華な設備を見せびらかす場所という側面もあるのです。 ■日本食も人気 台湾では日本食の人気も高く、定食屋を始めとして寿司屋、懐石、ラーメン、焼き肉と数多くの日系外食店が進出しています。特にラーメン店は近年人気が高く、連日行列ができる店もあります。以前は日本のラーメンはしょっぱすぎると言う台湾人が多かったのですが、10代~20代の若者を中心に日本のラーメンの味が受け入れられつつあります。 ただ、どの形態も日本より高級路線で台湾の物価水準から見ると高めの設定で日本の価格とほぼ変わらないか少し高いくらいの価格で販売されています。この本も台湾あれこれに収めておくものとします。
2023.12.23
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図書館で『「スパコン富岳」後の日本』という本を手にしたのです。スパコンといえば・・・かつて神戸のポートアイランドの理化学研究所計算科学研究センターまでスパコン京を見に行ったように、私は物見高いのであった。【「スパコン富岳」後の日本】 小林雅一著、中央公論新社、2021年刊<「BOOK」データベース>より世界一に輝いた国産スーパーコンピュータ「富岳」。新型コロナウイルス対応で注目の的だが、真の実力は如何に?「電子立国・日本」は復活するのか?新技術はどんな未来社会をもたらすのか?莫大な国費投入に見合う成果を出せるのか?開発責任者や、最前線の研究者(創薬、がんゲノム医療、宇宙など)、注目AI企業などに取材を重ね、米中ハイテク覇権競争下における日本の戦略や、スパコンをしのぐ量子コンピュータ開発のゆくえを展望する。<読む前の大使寸評>スパコンといえば・・・かつて神戸のポートアイランドの理化学研究所計算科学研究センターまでスパコン京を見に行ったように、物見高いのであった。rakuten「スパコン富岳」後の日本「はじまり」から、見てみましょう。p3~5<はじまり> 国際社会における日本の競争力低下が取り沙汰されてひさしい。中でも科学技術力の弱体化はしばしば指摘されるところで、確かに日本の論文発表数や世界大学ランキングの順位などは近年停滞、ないしは下落傾向にある。加速する少子高齢化や人口減少なども相まって、今後日本が衰退の道を辿るのは必至と見る向きも多いが、それは本当だろうか。 そうした悲観論者に問いたい。ではなぜそのような国が今、世界ナンバーワンのスーパーコンピュータ(以下、スパコン)を創り出すことができたのだろうか? 日本の理化学研究所(以下、理研)と富士通が共同開発した「富岳」は2020年、スパコンの計算速度などを競う世界ランキングで2期連続の王座に就いた。巨額の開発資金、そして大規模な設計チームの並み外れた頭脳と集中力が求められるスパコン・プロジェクトは、その国の経済力や科学技術力など国力を反映すると言われる。 実際、過去四半世紀以上に及ぶ世界ランキングで首位に認定されたのは日本と米国、そして中国のスパコンだけ。しかも直近では日本の富岳が1位である。これを見る限り、日本の科学技術力は今なお健在で、世界でもトップクラアスに位置していると見るのが妥当ではないか。確かに往年の勢いはないが、だからと言って今後も衰退の一途を辿ると決めつけることもできまい。 問題は競争力の低下に歯止めをかけ、再び上昇に転じさせるには、どうすればいいかということだ。単に人口が減少するという理由だけで、それができないと断じるのは早計に過ぎるだろう。 本書は富岳のようなスパコンの中核をなす「半導体」、そしてその活用対象として今、最も期待されている「AI(人工知能)」という2つの分野に焦点を当て、日本が再び科学技術立国として歩み出すための道を探る。 半導体は古くて新しい分野だ。 かつて1980年代、日本は「DRAM(Dynamic Random Àccess Memory)」と呼ばれる記憶用部品を中心に世界の半導体市場を席巻した。半導体は「産業の米」と言われ、この分野を完全に掌握した日本はソニー「ウォークマン」に代表される便利で洒落た電気製品を世界市場に出荷して巨額の貿易黒字を稼ぎ出した。当時、日本は「ハイテク・ジャパン」や「電子立国」などと世界から称賛された。 しかし、その後の日米半導体協定などを境に「日の丸」半導体、ひいては日本のエレクトロニクス産業は競争力を失っていった。その後、90年代のインターネット・ブームを境に、世界のハイテク産業を支配したのはGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表される米国の巨大IT企業だった。 今、その彼らがあらためて半導体技術に力を注いでいる。折からのAIブームに乗って、「ディープラーニング」と呼ばれる機械学習を拘束にこなすAIチップの自主開発に乗り出したのだ。その理由は、AIを使った製品やサービスを生み出すソフトウェア開発競争が飽和し、今後はむしろ半導体のようなハードウェア技術がこの分野における競争力の源泉になると見られるからだ。 ここに日本の勝機が生まれようとしている。日本の半導体産業には底力があり、その卓越した設計能力は今なお健在だ。理研と富士通が自主開発し、富岳に搭載した超高速プロセッサ「A64FX」はAI処理も特異とする。これは世界的にも高い評価を受け、米国の主要パソコン・メーカー「HPEクレイ」も今後このプロセッサを自社製のマシンに搭載することを決めた。 À64FXには、80年代から日本のエレクトロニクス・メカーが技を磨き、その後も脈々と受け継いできたベクトル型プロセッサ、あるいは「SIMD」と呼ばれる技術が活かされている。こうした日本の伝統的技術が今、AI時代に装いも新たに蘇ろうとしているのだ。 それは単にスパコン開発に止まらない。AIチップのような最近の半導体製品は「ARM(アーム)」と呼ばれる標準アーキテクチャ(基本設計)に従って、スマホやタブレットなどモバイル端末からウェアラブル端末、あるいはデータセンターに設置されるクラウド・サーバーや今後の自動運転車などIoT(モノのインターネット)製品までさまざまな分野に用途を広げている。神戸市スーパーコンピュータ「富岳」
2023.12.22
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図書館に予約していた『ユーチューバー』という本を、待つこと半年ほどでゲットしたのです。村上龍の最新の小説やないか・・・これは期待できそうである♪【ユーチューバー】村上龍著、幻冬舎、2023年刊<出版社>より20代半ばにしてデビューをした作家・矢崎健介、70歳になった。「世界一もてない男」を自称するユーチューバーが、矢崎をユーチューブに誘う。承諾した矢崎が語り出したのは、自由である人間について。自由な人間は滅多にいないのだと言った。自由であるということは、唯一の希望を生む。<読む前の大使寸評>村上龍の最新の小説やないか・・・これは期待できそうである♪<図書館予約:(5/20予約、入荷待ち)>rakutenユーチューバー冒頭の語り口を、見てみましょう。p3~10■1 赤い車がホテルの玄関先に駐まっているのを見た。わたしは車に詳しくないが、とてもきれいな赤だと思う。ポルシェとかそういう車かも知れない。彼はホテルにいるのだ。季節は秋で、時間は夕方の5時ごろだった。 彼は、70歳になったばかりの有名な作家だ。わたしは、一度だけいっしょに、彼の部屋でワインを飲んだことがある。その前に、ホテルのプールでいっしょになったことがあり、わたしは自分のことを「世界一もてない男」だと自己紹介したのだが、彼はそのことを覚えていた。あなたは、確か、日本一だったか、世界一だったか忘れたけど、もてない男でしたね、とわたしのことを言った。 彼は、選ばれた人だけが泊るフロアにいる。彼に会うためには、わたしもそのフロアに泊まらなければいけない。私は、決心した。すでに会社も辞めた。さまざまな種類のお茶を売る会社で、わたしは創業者の子孫だったのだが、辞めた。創業者のひ孫ということで、役員をしていたのだが、辞めざるを得なかったのだ。 退職金や一時金の類いもいっさいなく、株をもっていたのでいくばくかの資金はあったが、40前の男が、独立を果たしたのだ。気分は高揚していた。会社に残る連中は哀れな気が下。お茶のネット販売が成功していて、会社は儲かっていたが、男がやる仕事ではないと思った。世界一もてない男だけに、妻子もいないし、彼女もいない。 わたしは、ホテルにチェックインした。特別なフロアに泊まる。今夜は絶対に彼に会う必要があるのだ。■2 夜、製氷室のある階で彼を待った。だいたい10時過ぎに現れる。ただの製氷室なのだが、特別なエレベーターでしかアプローチできない場所なので、椅子が用意してある。豪華な椅子ではないが、センスがいいように思う。 わたしはその椅子に座り、彼を待つのが好きだった。製氷室に現れないことも多かった。だが彼と何となくつながっているような気がして、待った。「あ、こんばんは」 エレベーターが開き、彼が姿を見せたので、声をかけた。「また会いましたね」 彼は、そう言ったが何となく元気がなかった。そう言えば、いつもいっしょにいる30代か40台か50代の女性がいない。今日はお一人なんですね、と言おうかと思って止めた。そういうことは言わないほうがいいような気がしたのだ。 アイスペールに氷を詰め、彼はエレベーターのボタンを押そうとしたが、あの、ぼくがユーチューバーになるって話を前回したかと思うんですが、と意を決して、わたしは言った。「そう言えば、ゼレンスキーの話をしてから、そういう話をしたね」 彼は、よく覚えていた。ウクライナのゼレンスキーがいかにインチキかの話をしていたから、ユーチューバーのことを言った。彼は、わたしが世界一もてない男だとプールで言ったことも覚えていたし、記憶力がすごいと思った。「わたしがなりたいユーチューバーというのは、その辺にいる連中とかと違うんです」 わたしはそう言った。彼はアイスペールを持ったままだったが、聞いてくれた。「ユーチューブも年寄りのものになりつつあります。FB、つまりフェイスブックやインスタグラムはもう完全に年寄りのものです。だからチャンスなんです。年寄りのものになりつつあるってことを自覚しているユーチューバーはいませんから」「よくわからないな、ちょっと部屋に来る?」やや唐突になるけど、個人的に好きなYouTubeを紹介します。・ノモンハン 責任なき戦い NHKスペシャル・La Boheme・Nina Hagen Du hast den Farbfilm vergessen 1974・Der Stern von Afrika
2023.12.20
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図書館に予約していた『白鶴亮翅』という本を、待つこと4ヶ月ほどでゲットしたのです。おお 多和田葉子の最新小説ではないか♪・・・ということで予約していた本です。【白鶴亮翅】多和田葉子著、朝日新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>よりベルリンで一人暮らしをする美砂は、隣人Mさんに誘われて太極拳学校へ。さまざまな文化的背景の人びととの出会い、第二次大戦前後のドイツと日本の歴史に引き込まれ、名作を女性の視点で読み直す。<読む前の大使寸評>おお 多和田葉子の最新小説ではないか♪・・・ということで予約していた本です。<図書館予約:(8/2予約、副本?、予約57)>rakuten白鶴亮翅冒頭の語り口を、見てみましょう。p3~5 ある日のこと、外に出ようと家のドアをあけるとそこにⅯさんが立っていた。Ⅿさんはちょうど呼び鈴を鳴らそうとして片手をあげたところで、急にドアが開いたので目をまるくして棒立ちになっている。幸いドイツのドアは内側に開く。そうでなかったらドアを勢いよく開けたわたしはⅯさんの鼻を傷つけてしまっていたかもしれない。「あ、こんにちは。お元気ですか」 わたしはとりあえず、そんな挨拶をしてその場を繕ったが、Ⅿさんはヤー(はい)ともナイン(いいえ)とも答えないので、手近にあった話題をよく考えもせずにつかんで沈黙を埋めた。「このドア、きしむんです。蝶番にオイルをさせといいとインターネットに書いてあったんですが、うちにはサラダオイルしかなくて、でもサラダオイルをさしたら蟻が舐めにくるんじゃないかと心配で」 Ⅿさんは瞬きもせずにわたしの話を聞いているが、自分からは何も言わない。仕方なくわたしは直球を投げた。「何かご用ですか。今あいにく急いででかけなければならないんですが」「実は一つお願いしたいことがあるんです。全く急がないわなので今度また」 そう答えるⅯさんの顔にははにかむような、同時に悪戯をたくらむ少年のような表情が浮かんでいた。「それではお電話ください。すみませんね。今は約束の時間に遅れそうなので」 そう言い残して、わたしはバス停に急いだ。いつもはゆっくり歩くのが好きなわたしだが、この日は無理に速く歩こうとして何度か躓いた。わたしは転びやすい。おそらく足をあまり上げずに前屈みで歩くのがよくないのだろう。 急いでいるというのは言い訳ではなかった。15分ほど前に友達のパウラから電話があってすぐに来てほしいと頼まれた。パウラの家の前に生えている大木のかなり上の方にある枝に70歳くらいの女性が足をぶらぶらさせて平然と腰かけているのだそうだ。危ないから降りた方がいいとパウラが声をかけても反応しないのは、ドイツ語が通じないか、耳が聞こえないかどちらかだろう。顔立ちから判断すると日本人のようなので、わたしにすぐ来てほしいと言う。 顔だけで日本人だと断言できるのかとわたしが訊き返すと、絣(かすり)の着物のような模様のブラウスを着て、ピカチュウのプリントされたポシェットをたすき掛けにしているから絶対に日本人だと言う。警察にはもう電話したそうで、救助の人がハシゴを持って助けに来てくれるからそれまで動かずにじっとしているように、と日本語で説得してほしい、とわたしに頼むのだった。 パウラは大学に通っていた頃できた友達で、困っている人を見かけると放っておけない性格だった。困っていない人についても世話を焼きたがる傾向がある。高い木の枝に腰かけているドイツ語の理解できない70代の日本人女性というのはどうも想像しにくかったが、ベルリンで暮らすようになってからは世の中にはかなり突飛なことも起こりうると思うようになっていた。 外気は予想外に冷たかった。天気予報はあまり見ない方なので、戸外に出て初めて前日と比べて拡大に気温が下がっているのに気づいて驚くことがよくある。室内の温度は常に20度に保たれ、二重窓を通して外を見ると晴天の日にはつい外も暖かいのではないかと誤解してしまう。わたしたちはすでに濡れた落ち葉に覆われた秋に足を踏み込んでいて、秋は急な坂道のように冬に向かって傾斜している。 ぶるっと身震いし、ジャケットの襟に亀のように首をひこめたが、コートを取りに家に戻る余裕はなかった。脇目もふらずにバス停をめざして速足に歩き、停車中のバスが目に入ったので小走りで駆け寄って飛び乗った。一番前の席に腰をおろし、ほっと一息ついて窓の外をぼんやり眺めながら、Ⅿさんの頼み事って一体何だろう、とあらためて思った。この本も多和田葉子アンソロジーに収めるものとします。
2023.12.20
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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「日本の強み」でしょうか♪<市立図書館>・「スパコン富岳」後の日本・イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」・台湾のことがマンガで3時間でわかる本<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【「スパコン富岳」後の日本】 小林雅一著、中央公論新社、2021年刊<「BOOK」データベース>より世界一に輝いた国産スーパーコンピュータ「富岳」。新型コロナウイルス対応で注目の的だが、真の実力は如何に?「電子立国・日本」は復活するのか?新技術はどんな未来社会をもたらすのか?莫大な国費投入に見合う成果を出せるのか?開発責任者や、最前線の研究者(創薬、がんゲノム医療、宇宙など)、注目AI企業などに取材を重ね、米中ハイテク覇権競争下における日本の戦略や、スパコンをしのぐ量子コンピュータ開発のゆくえを展望する。<読む前の大使寸評>スパコンといえば・・・かつて神戸のポートアイランドの理化学研究所計算科学研究センターまでスパコン京を見に行ったように、物見高いのであった。rakuten「スパコン富岳」後の日本【イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」】デービッド・アトキンソン著、講談社、2015年刊<「BOOK」データベース>より日本は「足し算」文化。日本人に「解決能力」はあるか?「面倒くさい」が日本流。強すぎる個人主義が日本の特徴。効率の悪さを「伸びしろ」にする…日本の成長を約束する提言集!「日本人論」大ベストセラー第二弾!<読む前の大使寸評>追って記入tokumaイギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」【台湾のことがマンガで3時間でわかる本】西川靖章×横山憲夫著、明日香出版社、2015年刊<「BOOK」データベース>より世界で一番「好日」な人々。日本の文化と人々がこよなく好まれすでに多くの日系企業が進出し中国本土と太いビジネスのパイプがつながり中国にはない「好日」「自由」「先進国文化」がある。出るなら今!中国、アジア進出の第一歩は安心安全な台湾に決まり!<読む前の大使寸評>追って記入rakuten台湾のことがマンガで3時間でわかる本
2023.12.19
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、副本1、予約55)現在17位・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在319位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在219位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在105位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在89位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在301位・南海トラフ地震の真実(10/20予約、副本?、予約44)現在35位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在21位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在11位・満州国グランドホテル(12/20予約、副本?、予約3)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・養老孟司『形を読む』・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・菊間晴子「犠牲の森で」・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:第165回芥川賞受賞作(21年)・斎藤環『社会的ひきこもり』・ひさうちみちお『パースペクティブキッド』・松里公孝『ウクライナ動乱』・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』<予約分受取:10/14以降> ・タルディ『塹壕の戦争1914-1918』(10/08予約、10/14受取)・小川哲『地図と拳』(2/01予約、10/21受取)・有川ひろ『旅猫リポート』(10/27予約、10/28受取)・ジンセイハ、オンガクデアル(2/10予約、11/15受取)・ブレイディみかこ『リスペクト』(9/05予約、11/23受取予定)・『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』(5/23予約、11/28受取)・村山由佳『命とられるわけじゃない』(11/21予約、11/28受取)・多和田葉子『白鶴亮翅』(8/2予約、12/05受取)・村上龍『ユーチューバー』(5/20予約、12/11受取)**********************************************************************【台湾漫遊鉄道のふたり】楊双子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より昭和十三年、五月の台湾。作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴と台湾縦貫鉄道に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。ただ、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子の焦燥感は募り…国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差。あらゆる壁に阻まれ、近づいては離れるふたりの旅の終点はー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/23予約、副本1、予約55)>rakuten台湾漫遊鉄道のふたり【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【満州国グランドホテル】平山周吉著、芸術新聞社、2022年刊<「BOOK」データベース>より「二キ三スケ」(東条英機、星野直樹、松岡洋右、岸信介、鮎川義介)だけで満洲は語れない。「一ヒコ一サク」(甘粕正彦、河本大作)が隠然たる影響力を行使する。再チャレンジ、前歴ロンダリングも許される自由の天地。「五族協和」の理想を信じた人たちの生と死。既存の満洲国イメージをくつがえす、満洲の土を踏んだ日本人の奇妙にして、真剣なる「昭和史」物語。<読む前の大使寸評>著者・平山周吉さんの「小津安二郎」が大佛次郎賞を受賞したが、この際同氏の「満州国グランドホテル」が気になるので図書館予約したのです。<図書館予約:(12/20予約、副本?、予約3)>rakuten満州国グランドホテル【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2023.12.19
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図書館で『日・韓・台このままでは中国に呑み込まれる!』という本を手にしたのです。呉善花 ×石平 ×黄文雄というお三方による鼎談ってか・・・単なる嫌中、嫌韓、台湾好きとは一味違っているかも?ということでチョイスしたのです。【日・韓・台このままでは中国に呑み込まれる!】呉善花 ×石平 ×黄文雄著、徳間書店、2020年刊<出版社>よりロングセラー「売国奴」(2007年)から10数年、常に中・韓をウオッチしてきた3人が、なおも悪化し続ける日・中・韓関係について、その根源を抉り出す。呉善花(韓国)石平(中国)がそれぞれの生国について見解を述べ、俯瞰的な立場に立って黄文雄(台湾)が日・中・韓の「三国志」を分析する。この「鼎談」から見える風景は絶望でしかないのか。<読む前の大使寸評>呉善花 ×石平 ×黄文雄というお三方による鼎談ってか・・・単なる嫌中、嫌韓、台湾好きとは一味違っているかも?tokuma日・韓・台このままでは中国に呑み込まれる!第3章で反日民族主義が語られているので、見てみましょう。p112~114<中国はなぜ反日政策を取るようになったのか>呉: 戦後70年近くになりますが、それほど時間が経っているのに、中国と韓国はなぜいまだに反日を止めないのか、一般の人からすると不思議で仕方がないと思います。そんな国は世界のなかで中国と韓国しかない。いったいこれはどういうわけなんでしょうか。 中国の反日が激しくなったのは天安門事件以後ですね。それ以前のことを含めて、中国はなぜ、今にいたる執拗な反日政策を取るようになったのか、石さんにお聞きしたいです。 石: はい、おっしゃるとおり天安門事件が反日政策への転換点になります。 親日的で民主改革に積極的だった総書記の胡耀邦が87年に失脚させられ、89年4月に失意のうちに亡くなります。胡耀邦の死をきっかけとしてその年の6月4日、民主化を求める多数の学生・一般市民が天安門広場に集結しました。そのデモ隊を鎮圧するため、中国人民解放軍は装甲車を出動させ、無差別発砲を展開するなどして多数の死傷者を出しました。これが天安門事件です。胡耀邦は多くの国民から愛された開明的な指導者でした。 この弾圧・虐殺事件によって国家の威信は地に堕ちますが、政府は民主改革派の政治家たちを次々に権力の座から追放していき、93年3月に江沢民が国家主席に就任します。これによって江沢民は、党総書記・国家主席・党中央軍事委員会主席を兼任する初めての中国最高指導者となりました。 これほどの権力一元化が行われたのは、天安門事件で失墜した国家の威信を取り戻すためであり、国民的な求心力を取り戻すためでした。江沢民政権が愛国心を旗印に掲げ、愛国主義の教育を盛り立てていったのはそのためです。 愛国教育をするためには、外敵が必要です。憎むべき民族の敵がいなければ、ナショナリズムは盛り上がりません。それで、愛国教育の重要な柱として、90年代から反日教育を行ってきたわけです。今もその延長線上にありますが、今では愛国主義は共産党を存続させるためのイデオロギーの基盤であり、反日政策は政権存立には欠かすことのできない中心的な位置を占めるようになっています。 ですから中国は、愛国主義をどうしても止められないんです。共産党政権がある限り止めることはできません。愛国主義は、国民の感情を煽り立て、国民の視線を外敵に向けさせるための、最重要の装置になっていますから、中国共産党政権は反日を止めるつもりはまったくありません。(中略) 私の高校時代の教科書には。南京大虐殺があったなんて、まったく書いてありませんでした。朝日新聞社にいた本多勝一は、中国に行って南京大虐殺があったと盛んに焚きつけましたね。彼のように、反日を増長させる日本人がいつでも絶えないんです。これが、中国・韓国の反日に大きな力を与えています。 もし戦後の日本人が一致団結して、中国・韓国の反日攻撃にノーといい続けていたら、いっさい受け付けないという態度を数十年も取り続けていたら、今日のような反日の盛り上がりは中国になかったと思います。『日・韓・台このままでは中国に呑み込まれる!』1:新版まえがきⅠ 4000日間の総括:呉善花
2023.12.17
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図書館で『日・韓・台このままでは中国に呑み込まれる!』という本を手にしたのです。呉善花 ×石平 ×黄文雄というお三方による鼎談ってか・・・単なる嫌中、嫌韓、台湾好きとは一味違っているかも?ということでチョイスしたのです。【日・韓・台このままでは中国に呑み込まれる!】呉善花 ×石平 ×黄文雄著、徳間書店、2020年刊<出版社>よりロングセラー「売国奴」(2007年)から10数年、常に中・韓をウオッチしてきた3人が、なおも悪化し続ける日・中・韓関係について、その根源を抉り出す。呉善花(韓国)石平(中国)がそれぞれの生国について見解を述べ、俯瞰的な立場に立って黄文雄(台湾)が日・中・韓の「三国志」を分析する。この「鼎談」から見える風景は絶望でしかないのか。<読む前の大使寸評>呉善花 ×石平 ×黄文雄というお三方による鼎談ってか・・・単なる嫌中、嫌韓、台湾好きとは一味違っているかも?tokuma日・韓・台このままでは中国に呑み込まれる!この本は日本に移住したお三方による鼎談スタイルになっているのです。そのお三方が「新版まえがき」をそれぞれ述べているので、見てみましょう。p1~4<新版まえがきⅠ 4000日間の総括:呉善花> 日米欧などの近代国民国家は、中国・韓国と付き合うなかで、長らく次の問題になやまされ続けてきた。 中国も韓国も前近代的なままで、容易に変化する様子が見られない、なぜこの両国は近代化できないのだろうか? 日本に定住して久しい私たち、黄文雄(台湾出身)、石平(中国出身)、呉善花(韓国出身)は、これまで10年以上、延べ日数にすれば4000日間にわたって、日中韓関係をめぐる政治的・文化的な諸問題について議論を積み重ねてきた。そこでもっとも深く、もっとも熱心に論じあったのが右の問題だったといえる。 3者による議論の成果は、2005~2015年に7冊の書物として出版されている。本書はそのなかから、「両国はなぜ近代化できないのか」にかかわる主要な議論を抜き出し、今また新たに1冊の本として編纂したものである。 習近平独裁を強固に進めるなど、中国が近代国民国家でないのはいうまでもない。中国には国民主権が確立していないし、議会政治が実現されていないのだ。そうならば、韓国は当然近代国民国家ということになってくる。確かに法制度としてはそうなのだが、実際的な運用面では、韓国は近代国民国家の要件を多々欠いているといわなくてはならない。 まず指摘できるのは、中国でもそうだが、韓国では「法治」が成り立っていないことである。 韓国は憲法で「言論の自由」を掲げている。しかしその一方で、戦前の「日本の韓国統治」を部分的にせよ部分的にせよ肯定的に評価する言論、または肯定へつながると判断される言論が、厳しく断罪すべき「反民族行為」として事実上厳禁されている、という韓国の政治的・社会的な現実がある。 国際法についても同じことがいえる。日韓の請求権問題はすでに両国間で解決していたのに、韓国はそれを覆した。国際条約として締結した国家間の約束事を守らない韓国は、明らかに法治国家とはいえず、近代国民国家としての体をなしていない。 2014年10月8日、韓国ソウル中央地検は朴槿恵大統領とその元秘書室長鄭潤会氏の名誉を毀損したとして、産経新聞前ソウル支局長の加藤達也氏を起訴し、長期間にわたり出国禁止とした。この起訴も出国禁止も、日本をはじめとする「自由、民主主義、基本的人権などの基本的価値」を共有する近代国民国家ではけっして起こり得ない事態だった。 このように、韓国には「法治」を踏み外した「情治」や「人治」の傾向が顕著に見られる。中国の「情治」や「人治」はそれ以上に強固な相を見せているといえるだろう。 韓国と向き合うには、中国だけではなく韓国もまた近代国民国家ではないことを大前提にしなくてはならない。これまでの日本が、韓国に何度も期待し、何度も裏切られてきたのは、日本が韓国を近代国民国家と幻想してきたからにほかならない。 本書ではこの問題について、伝統的な国家観、民族観、歴史認識、反日意識のあり方、中華主義と小中華主義のイデオロギー・・・などの面から、三名それぞれが独自な観点で取り組んでいる。奇しくも最悪の日韓関係と最悪の米中関係が重なり、未来への展望を暗くしている現在、本書が資すること大なるを期待したい。 令和元年12月
2023.12.16
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図書館で『小さい林業で稼ぐコツ』という本を手にしたのです。農水省林野庁の口から出まかせのような政策に振り回されたニッポンの林業ではあるが・・・森林保全に関心があるのでチョイスしたのです。【小さい林業で稼ぐコツ】農文協(編)、農山漁村文化協会、2017年刊<「BOOK」データベース>より「山は儲からない」は思い込み!伐採や搬出を人に任せず自分でやれば、経費がかからない分、まるまる儲けになる。高値がつかない細い木でも、薪にすれば売れるし、木質バイオマス発電の燃料としても売れる。山の手入れを自分でやる「小さい林業」で稼ぐコツを解説。<読む前の大使寸評>農水省林野庁の口から出まかせのような政策に振り回されたニッポンの林業ではあるが・・・森林保全に関心があるのでチョイスしたのです。rakuten小さい林業で稼ぐコツ「Part1 自分で切れば意外とおカネになる編」で自伐型林業の極意を、見てみましょう。p10~11<「シマントモリモリ団」が始めた自伐型林業:宮崎聖> 1990年代後半から注目されている「半農半Ⅹ」は、半自給的な「小さい農業」を営みながら、残りの時間(Ⅹ)は、自分のやりたい仕事に力を入れるという生き方です。林業でも同じような発想ができるのではないでしょうか。 私の場合は、「小さい林業」と観光業の組み合わせ。いま、自伐型林業+Ⅹの「複業」がU・Iターンの定住の可能性を広げています。意外なことに自伐型林業があることで、Ⅹの収入も増えているのです。■4年目で年収1000万円!?・・・「自伐」なら自分でもできそうだ 私は大学を卒業後、16年前にUターン。実家の製材所の知的障碍者福祉工場で木工加工を学びながら、カヌーのガイドや貸しコテージの運営で生計を立ててきました。しかし、、四万十市の観光業は8月の夏休みに集中しているうえ、自然体験施設は天候に左右されるので収入が不安定です。ほかの時間に何かよい仕事はないかと考えていたところ、2011年に参加したフォーラムで、NPO法人土佐の森・救援隊の副業型自伐林業に出会いました。退職してから林業を始めたという親子が、4年目で年収1000万円を超えたという話を聞いて、これなら自分にもできそうだと思いました。 さっそく、土佐の森・救援隊の講座に申し込んで、林業に最低限必要な伐倒・搬出の知識を学び、2013年には地元の自然学校の仲間たち10人と、森林ボランティアグループの「シマントモリモリ団」を結成。東京から移住してきた谷吉梢さん(27歳)や、夫で地元出身の谷吉勇太さん(30歳)らがメンバーに加わりました。 当時、高知県では森林ボランティアの団体に対し、最大50万円まで受精する制度があったので、チェンソーやヘルメットの購入など、初期投資はゼロです(バックホーなど高額の重機はリース)。あとは山さえ持っていれば、すぐに自伐林業を始められたのですが、メンバーに山林所有者はいなかったので、まずは施業をまかせてもらえる山探しから始めました。1年目は叔父が所有する1haの山を間伐。2年目以降は、自宅から車で5分のところにある祖母の山(40年生のヒノキ山7haで、「モリモリ団山」と命名)が活動拠点となり、観光のオフシーズンに作業道づくりや木材の搬出をしています。■薪用のC材が1m3 7000円で売れる 高知県では2.5m以下の作業道づくりを対象に2000円/mの補助金が出ますが、それ以外の山からの収入は、地元製材所に出荷するA材と薪ボイラー用のC材の販売。2014年に地元の公共温泉「山みずき」が薪ボイラーを導入して以来、C材を1mの長さに玉切りして温泉に持ち込むと1m3 7000円で買い取ってくれます。モリモリ団の場合は、軽トラに積んで運んでいますが、年間70m3ほどのC材を供給しています。 燃料用だから造材に失敗しても問題ありません。チェンソーの研修を受ければ誰でもできるし、1m規格で軽トラにも積み込みやすいので、自伐型林業の入り口にピッタリです。 温泉側も重油から薪に切り替えたことで燃料代が3分の1以下になり、温泉のかけ流しも可能になりました。■造材の技を磨きたい 本当におもしろいんは、伐倒・造材など、間伐をくり返しながら木を育てていく山づくりです。特に造材は腕のみせどころ。1本の木をいかに高く売るか、原木市場の相場表を見ながら、材の長さ(3m・4m・6m)や末口径、曲がりを見極めて、一番高くなる造材を考えるからです。たとえヒノキの放置林でも、造材の工夫で高単価のA材をきちんととることができます。 1m3当たり1000円以上単価が上がれば、年間の搬出量によっては数十万円も収入が増えるのです。これが一生だとすごい金額になります。『小さい林業で稼ぐコツ』1:若手自伐林家が語る森林経営
2023.12.15
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図書館で『小さい林業で稼ぐコツ』という本を手にしたのです。農水省林野庁の口から出まかせのような政策に振り回されたニッポンの林業ではあるが・・・森林保全に関心があるのでチョイスしたのです。【小さい林業で稼ぐコツ】農文協(編)、農山漁村文化協会、2017年刊<「BOOK」データベース>より「山は儲からない」は思い込み!伐採や搬出を人に任せず自分でやれば、経費がかからない分、まるまる儲けになる。高値がつかない細い木でも、薪にすれば売れるし、木質バイオマス発電の燃料としても売れる。山の手入れを自分でやる「小さい林業」で稼ぐコツを解説。<読む前の大使寸評>農水省林野庁の口から出まかせのような政策に振り回されたニッポンの林業ではあるが・・・森林保全に関心があるのでチョイスしたのです。rakuten小さい林業で稼ぐコツ「Part1 自分で切れば意外とおカネになる編」で若手自伐林家が語る森林経営を、見てみましょう。p34~35<人に任せると1m3 100円、自分で切れば3100円:菊池俊一郎>「皆さん、口を揃えて『林業は儲からない』といいますが、それはウソです」明快に言ってのけるのは、愛媛県の若手自伐林家・菊池俊一郎さん(42歳)。「だって今の山は、あるものを切って出すだけですもん。うちの場合だって、やまを買ったのは祖父やオヤジ。苗代払って植えたのも、下刈りとかの手入れをしたのも先代たちで、僕の代はもう育ったもんを切って売るだけ、何の投資もなしで、回収するだけですもん。普通に考えたって赤字になりようがない」 今の時代、自伐林家は儲かるようにできているのだという。■「1日3万円」を目安に山に入る 何せ菊池さんは、補助金をいっさいもらわずに経営を成り立たせてきた人だ。説得力がある。 ミカン2haと山28haの農家林家で、売り上げはミカンのほうが多いのだが、気持ちとしては山がメイン。ミカンは両親も一緒に家族でやるが、林業のほうは菊池さん一人でまわす。切るのも出すのも一人作業。 実際に木を切るのはミカンの繁忙期以外の夏~秋が中心だが、「山に入るなら、1日売上げ3万円は確保する」という明確な目標を持って作業に当たる。1日3万円とは、経費を引いた所得でいうと1日1万2000円見当だそうだ。とてつもなく高い目標に思えるが、「そんなことないです。慣れてくれば誰でも可能な額」とのこと。 ポイントはどうやら、「何でも自分でやる」ということと、「造材の枝」の2つのようだ。■何でも自分でやる・・・自伐だから儲けが残る「林業は儲からない」と言う人に対して、菊池さんが自作した図がある。「木を切って市場で売るまでに経費はいくらかかるか?」を見たものだが、人に施業を委託するか自分でやるかで手取りがまるで違ってくることが読み取れる。 スギの場合で見ると、人件費を外に払ってしまうと残る木材代はたった100円/m3。だが自分で切って搬出すれば3100円/m3残るkとになる。 単純なことだ。最大のコストアップは人に頼むことで、逆に最大のコストダウンは何でも自分でやること。林業ではなぜか伐出を人に頼む習慣がついている人が多いのだが、「自分でチェンソー持って、少しずつでもやってみればいいのに」と菊池さんは思う。「そりゃ、オヤジたちの時代みたいに『ヒノキ1m3 5万円』なんてことは今はないけど、自伐なら黒字経営は可能です。材価は下がってますが、やれない金額ではないですもん」 菊池さんは木を切って出すのはもちろん、道も自分でつける。機械のメンテも経理も事務も自分一人で全部こなす。データ分析が好きなので、市場の材価や日々の売り上げを記録して、作業や経営を見直すのもやる。 森林経営計画は立てていないが、施業計画は以前、自分のために自分で立てた。持ち山の状況を把握でき、今後の見通しがたって、ものすごくおもしろかった。おかげで補助金は申請しなくても、やっていけている。 ちなみに補助金は、もらってもいいとは思うのだが、今のところわずらわしい。せっかくゆったり「5年かけて少しずつ間伐しよう」と計画を立てている山に、「1年で3割の間伐をしろ」「一気に10m3搬出しろ」などの条件がつくと台無しだ。急激な変化を山は好まないと思う。 自伐で所得1日1万2000円。これを確保できれば、自分の経営としては十分まわるというのが菊池さんの判断だ。「1万2000円って、ちょっと前の景気がよかったころの森林組合労務班の日当くらいなんですよ。同じような仕事してそのくらいとれないようなら森林組合に勤めたほうがいいことになっちゃうからって、自分で決めた目安の額です」
2023.12.14
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図書館で『日本語は天才である』という本を、手にしたのです。なんか見覚えのある本であるが・・・再読になってもいいではないかと、借りたわけです。帰って調べてみると、8年ほど前に借りて読んでいました(イカン イカン)。で、このUP記事を(その3)とします。【日本語は天才である】柳瀬尚紀著、新潮社、2007年刊<「BOOK」データベース>より回文「まさかさかさま」、敬語は「お」苦が深い、ルビ混川を渡れ!ふるさとの訛なつかし、シチを放逐した犯人は?いろは歌の奇跡。『フィネガンズ・ウェイク』『チョコレート工場の秘密』の訳者が縦横無尽にこと祝ぐ超絶のことば談義。<読む前の大使寸評>なんか既視感のある本であるが、再読するのもええじゃないか・・・ということでチョイスしたのです。rakuten日本語は天才である「第1章」で根室弁が出てくるので、その一部を見てみましょう。(著者は根室出身です)p19~21<箱根の山は天下の剣?> そうそう、これは余談ですが、みなさんは I‛m full. という英語をいつ頃覚えましたか?「おなかいっぱい」という意味ですね。大人でも子供でもよく使う英語です。最近は早くから英語を習わせる時代らしいですから、小学生でも知っているかもしれない。しかしぼくの場合、中学生でも知らなかったように思います。これを覚えたのは、おそらく大学受験時代ではないでしょうか。 いや、もしかすると当時でも、「おなかいっぱい」を英語で言えと言われたら、「マイ・スタマック・イズ・フル(・オヴ・フード)」とか「マイ・スタマック・イズ・サティスファイド」とか、そんな英語を口走ったかもしれない。スタマックstomachは胃ですね。そんな英語を口走って「わが胃を得たり」だったかもしれません。 どうしてこんな恥ずかしいことを話したかと言えば、今、中学生以上の読者を対象にしてこの講演を書き始めながら、中学生、高校生当時の自分が日本語を(もちろん英語も)恐ろしく知らなかったことを思い返さずにはいられないからです。 いやはや、恐ろしく日本語を知らなかった。 たとえば、ええと・・・「~さざれいしのいわおとなりて~」と歌うには歌っていましたが、意味を知ったのはいつだったか。「さざれいし」は石らしいと思って、だから「岩音鳴りて」、岩のぶつかる音が鳴っていると想像していました。「箱根の山は天下のケン~」なんてのも、「天下の剣」だと想像していた。 五十歩百歩というのは二倍違うことだろうと思っていたし、大人がオンノジと言うのを耳にして「恩の字」とはうまい表現だと感心していた。社会経済に疎い頃(今でもそうとう疎いですが)大手という言葉を聞いて、大手という名の会社があるのだと思っていました。 日本国最東端の根室から早稲田大学へ入りましたが、そのとき早稲(わせ)という言葉はまだぼくの語彙になかったはずです。日本語についてはかなりの晩稲(おくて)ですな。早稲田大学へ入った頃、そう多くの人は知らないだろうけれど、ぼくは確実に知っていた日本語をいくつか書き出してみますと・・・「あいてくさい」「あずましい」「あったら」「あめる」「いずい」「えんどまめ」「おばんでした」「おがる」「かっちゃく」「がっと」「がめる」「きもやける」「けったくそわるい」「けっぱる」「こったら」「ごしょいも」「こわい」「しのる」「しばれる」「じょっぱる」「ぜんこ」「そったらこと」「だいずまめ」「ちょす」「つらつけない」「てっくりかえる」「デレッケ」「でんぷんこ」「なんも」「はっちゃき」「ひゃっこい」「べこ」「へらからい」「べんこ」「まかす」「みったくない」「やばちい」「ゆるくない」 まあ、こんな程度でしょうか。 大人になって多少は語彙も増し日本語もましになったつもりですが、しかし明日にも、いや、この講演でも無知をさらけ出すかもしれません。『日本語は天才である』2:まえがきp3~4『日本語は天才である』1:敬語は「お」苦が深いp111~114、他
2023.12.14
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図書館で『日本語は天才である』という本を、手にしたのです。なんか見覚えのある本であるが・・・再読になってもいいではないかと、借りたわけです。帰って調べてみると、8年ほど前に借りて読んでいました(イカン イカン)。で、このUP記事を(その2)とします。【日本語は天才である】柳瀬尚紀著、新潮社、2007年刊<「BOOK」データベース>より回文「まさかさかさま」、敬語は「お」苦が深い、ルビ混川を渡れ!ふるさとの訛なつかし、シチを放逐した犯人は?いろは歌の奇跡。『フィネガンズ・ウェイク』『チョコレート工場の秘密』の訳者が縦横無尽にこと祝ぐ超絶のことば談義。<読む前の大使寸評>なんか既視感のある本であるが、再読するのもええじゃないか・・・ということでチョイスしたのです。rakuten日本語は天才である「まえがき」が面白いので、その一部を見てみましょう。p3~4<まえがき> とにかく芥川は、真っ赤な嘘と銘打って「最大の奇跡は言語である」という真理を述べている。そこが愉快です。 芥川に倣って、ぼくはこう言いたい気持ちになります。 最大の奇跡は日本語である・・・少なくとも、日本人にとって。 もっともぼくは、辞書を引き引きわずかの外国語を読めるにすぎなくて、大多数の外国語にはまったく無知ですから、「最大の奇跡」という言い方にまでまでは踏み切れません。しかし「日本語は天才である」と言い切れる確信はあります。それをこれからお話ししてみようと思います。 ところで、天才とは何でしょうか。どう定義すればいいのでしょうか。 実をいえば、ぼくには天才を定義できません。ただ一つだけ言えることは、天才とは生まれつきのもの・・・それだけです。生まれつきなのですから、それはどうにも説明できない。そして、とにかく世の中に天才は存在する、それだけは確かです。 将棋の羽生善治さんという天才がいます。「ああ、ロミオ、ロミオ!どうしてあなたはロミオなの?」と、シェイクスピアのジュリエットは言いましたね。夫人の理恵さんが「ああ、善治さん、善治さん!どうしてあなたは羽生善治さんなの?」と言ったかどうかは知りませんが、そう言われたって羽生さんは答えようがないはずです。 羽生さんと天才について話したことがあります。ジェイムズ・ジョイスの話になって、ジョイスは理解者が少数なので孤独ではなかったかと羽生さんがおっしゃる。で、ぼくは言いました。「あ、やはり羽生さんも孤独ですか?」 すると、「いえいえ、ぼくは社会ともつつがなくやっています」と言って、にこやかな羽生スマイルで応じられました。実在の天才への問い掛けは宙に浮いたままでした。『日本語は天才である』1:敬語は「お」苦が深いp111~114、他
2023.12.13
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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・ユーチューバー・日・韓・台このままでは中国に呑み込まれる!・日本語は天才である<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【ユーチューバー】村上龍著、幻冬舎、2023年刊<出版社>より20代半ばにしてデビューをした作家・矢崎健介、70歳になった。「世界一もてない男」を自称するユーチューバーが、矢崎をユーチューブに誘う。承諾した矢崎が語り出したのは、自由である人間について。自由な人間は滅多にいないのだと言った。自由であるということは、唯一の希望を生む。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/20予約、入荷待ち)>rakutenユーチューバー【日・韓・台このままでは中国に呑み込まれる!】呉善花 ×石平 ×黄文雄著、徳間書店、2020年刊<出版社>よりロングセラー「売国奴」(2007年)から10数年、常に中・韓をウオッチしてきた3人が、なおも悪化し続ける日・中・韓関係について、その根源を抉り出す。呉善花(韓国)石平(中国)がそれぞれの生国について見解を述べ、俯瞰的な立場に立って黄文雄(台湾)が日・中・韓の「三国志」を分析する。この「鼎談」から見える風景は絶望でしかないのか。<読む前の大使寸評>追って記入tokuma日・韓・台このままでは中国に呑み込まれる!【日本語は天才である】柳瀬尚紀著、新潮社、2007年刊<「BOOK」データベース>より回文「まさかさかさま」、敬語は「お」苦が深い、ルビ混川を渡れ!ふるさとの訛なつかし、シチを放逐した犯人は?いろは歌の奇跡。『フィネガンズ・ウェイク』『チョコレート工場の秘密』の訳者が縦横無尽にこと祝ぐ超絶のことば談義。<読む前の大使寸評>なんか既視感のある本であるが、再読するのもええじゃないか・・・ということでチョイスしたのです。rakuten日本語は天才である
2023.12.13
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、副本1、予約55)現在19位・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在326位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在230位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在109位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在93位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在310位・南海トラフ地震の真実(10/20予約、副本?、予約44)現在37位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在23位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在14位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・養老孟司『形を読む』・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・菊間晴子「犠牲の森で」・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:第165回芥川賞受賞作(21年)・斎藤環『社会的ひきこもり』・ひさうちみちお『パースペクティブキッド』・松里公孝『ウクライナ動乱』・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』<予約分受取:10/14以降> ・タルディ『塹壕の戦争1914-1918』(10/08予約、10/14受取)・小川哲『地図と拳』(2/01予約、10/21受取)・有川ひろ『旅猫リポート』(10/27予約、10/28受取)・ジンセイハ、オンガクデアル(2/10予約、11/15受取)・ブレイディみかこ『リスペクト』(9/05予約、11/23受取予定)・『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』(5/23予約、11/28受取)・村山由佳『命とられるわけじゃない』(11/21予約、11/28受取)・多和田葉子『白鶴亮翅』(8/2予約、12/05受取)・村上龍『ユーチューバー』(5/20予約、12/11受取)**********************************************************************【台湾漫遊鉄道のふたり】楊双子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より昭和十三年、五月の台湾。作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴と台湾縦貫鉄道に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。ただ、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子の焦燥感は募り…国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差。あらゆる壁に阻まれ、近づいては離れるふたりの旅の終点はー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/23予約、副本1、予約55)>rakuten台湾漫遊鉄道のふたり【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2023.12.12
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図書館で『哲学者にならない方法』という本を手にしたのです。著者は週刊文春などメディアにたくさんのユーモアエッセイを連載している著名な学者なので、期待できそうである。【哲学者にならない方法】土屋賢二著、東京書籍、2013年刊<「BOOK」データベース>より寄天烈な寮生たち、麻雀、ジャズ、ドストエフスキー、『存在と時間』…。ツチヤ教授のバカバカしくもどこかせつない青春の1ページ。初の自伝的エッセイ!<読む前の大使寸評>著者は週刊文春などメディアにたくさんのユーモアエッセイを連載している著名な学者なので、期待できそうである。rakuten哲学者にならない方法「第3章 読書」で読書や映画が出てくるので、見てみましょう。p98~100<理解できない> 大学に入って最初に夢中になったのは読書だった。小学校を出てからロクに本も読まなかったの、どんなことを人類は書き、どんなことを感じ、考えてきたのかを知ろうと、片っ端から読んだ。 当時、大学生の必読書とされていたのは、阿部次郎の『三太郎の日記』と倉田百三の『出家とその弟子』だった。大学生になったらどんなレベルを要求されるのかを知ろうとして読んでみたが、どちらの本でも主人公がしきりに悩んでおり、なぜそんなに悩むのかわたしにはどうしても理解できなかった。大学生の必読書が理解できないわたしは、大学生の資格がないのだ。それが入学試験でなくてよかったと思った。 当時は悩みが流行っていたのかもしれない。そのころ評判だったベイルマン監督の映画を見たときも、主人公が深刻に悩んでいりのは分かったが、何に悩んでいるのか皆目分からず、当然ながらなぜ名作とされているのか、理解できなかった。テレビがなかったので、映画はたくさん見たが、わたしには難解すぎる映画が多かった。当時は実験的映画が数多く作られ、大半は理解できなかった。ゴダール監督の映画が大好きだったのが不思議なほどだ。 ベイルマンの映画やフェリーニの映画も難解だったが、難解さにかけては、アラン・レネ監督の映画『去年マリエンバートで』にかなう映画はなかった。現在と過去、現実と夢が混在している映画で、どんなに強引にこじつけようとしても、どんなストーリーで何を言おうとしているのかまったく分からなかった。 映画オンチのわたしも、これほど不可解な思いをしたことはない。それから30年ほどたったころ、深夜にテレビでこの映画をやっているのを見た。もう大人になったのだから分かるだろうと思ったが、結局、当時と同じくらい不可解な思いをしただけだった。最近、この映画の脚本家が気に入っていたというジョークを発見した。それはこうだ。 警官「怪しい男だな。この辺りで窃盗事件が多発しているんだが、お前がやったんじゃないのか?」 男「違いますよ」 警官「本当か?昨日の夜も事件があったんだが、昨日の夜は何をしていた?」 男「昨日の夜は、映画を見ていました。『去年マリエンバートで』って映画です」 警官「嘘じゃないだろうな?本当に見たというなら、どんな話だったか説明してみろ!」 こういうわけの分からない映画がヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞したという事実を知ると、自分には人並みの理解力もないという劣等感がわたしの中でふくらんだ。フェリーニやベイルマンが高く評価されていたのも不可解だった。大学生の必読書といい、評判の映画といい、高く評価されているものはあたしの理解を超えるものばかりだったから、自分には、当たり前の理解力もないことをいやというほど思い知らされた。 その後も理解できない映画を色々見た結果、わたしは「実験的」と銘打った映画は見なくなった。もし薬の場合なら、だれが「実験的」を飲もうとするだろうか。映画でも十分に実験して検証してから見せてほしいものだ。『哲学者にならない方法』2:東大駒場寮にて『哲学者にならない方法』1:土屋家の教育
2023.12.11
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図書館に予約していた『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』という本を待つこと半年ほどで、ゲットしたのです。下手の横好きというか、言語学に興味があるのでつい予約していた本なのです。【千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話】済東鉄腸著、左右社、2023年刊<「BOOK」データベース>より日本どころか千葉の実家の子供部屋からもほとんど出ない引きこもりの映画オタクの下に差し込んだ一筋の光、それはルーマニア語ールーマニア人3000人に友達リクエストをしてルーマニアメタバースを作り猛勉強、現地の文芸誌に短編小説を送りつけ、『BLEACH』の詩へのリスペクトと辞書への愛憎を抱きながらルーマニア語詩に挑戦する。受験コンプレックス、鬱、クローン病。八方塞がりの苦しみから、ルーマニア語が救ってくれた。暑苦しくって切実で、好奇心みなぎるノンフィクションエッセイ。千葉の片隅から、魂の故郷・ルーマニアへの愛を叫ぶー。本、映画、音楽…ルーマニアックのための巻末資料も収録!<読む前の大使寸評>下手の横好きというか、言語学に興味があるのでつい予約していた本なのです。<図書館予約:(5/23予約、副本1、予約26)>rakuten千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話「3章 ルーマニアの人がやってきた」にルーマニア映画のエピソードが出てくるので、見てみましょう。p64~68 <はじめての会話は憧れの監督と> 日本で最も大きな映画祭である東京国際映画祭が六本木で開催されることになる。そこで俺が知ったのは、そのコンペ部門に、何とルーマニアとフランスの共同制作映画が選出されたことだ。アドリアン・シタル監督の『フィクサー』という一作だった。 前に、今、躍進を遂げているルーマニア映画を総称して〇と呼ぶって話したが、これは「ルーマニアの新しい波」を意味している。つまり、あのヌーヴェルヴァーグのルーマニア版ってことなんだ。俺がルーマニア語を勉強しているのは、ある意味でゴダールやトリュフォーに憧れてフランス語を学び始めるってのと、言ってみれば結構似てるかな。 で、アドリアン・シタル監督もそこに属する一人だが、実際にヌーヴェルヴァーグになぞらえるなら、まあ、サスペンス映画を通じて人間の倫理観を見据え続けてるって意味でクロード・シャブロルかな。いや、演出は全く違うから、くれぐれも本気に取りすぎないでほしいが。 俺の視点では、そういう人物が日本に最新作をひっさげてやってくるわけだよ。しかも当時ルーマニア映画はネットですら観るのが難しかったから、実際に彼の作品を映画館で観られるっていうんだから、俺がどれほど興奮したかってことだ。 でもさ、外へ出るってのが俺にはなかなかの難関だったんだ。特にこういう、自分のための楽しみの場合はね。 例えばバイトの場合だと、これは引きこもり脱出に繋がる行為だと思えたし、ある種自分を律して社会へ引き戻す訓練だったから、外に出ることに対して相応の覚悟が持てた。でも映画を観に行くとかそういう純粋な娯楽は、引きこもりなのにそんなことしていいのか?みたいな自罰思考が働くんだよ。親とか近所の人とか周囲の目が特に気になるんだ。部屋にいたり、図書館にいたりするのとは別の罪悪感に襲われて、しかもより重苦しい。引きこもりってのはこんなことにすら葛藤の連続、決断を迫られるんだ。 だけどこの時は、ルーマニア映画を観たい、シタル監督に会いたいって気持ちが勝った。ネットで延々と映画の感想書き散らすだけじゃなくて、俺だって人生、楽しめるなら楽しみたいからね。もう自暴自棄な感じで、飛び出したよ。 会場は六本木だった。俺にはほとほと縁のない高級な都市だ。 だから脇目も振らずにTOHOシネマズ六本木ヒルズに向かったよ。六本木ヒルズのふもとへと階段上ったりエレベーター乗ったり、これだけでもエベレスト登山って気分だった。 それから先、『フィクサー』を観終わるまでのことは、実はあまり覚えてない。映画自体のことは自分のブログに批評を書いたからある程度覚えているけど、映画観るにあたっては自然と脳髄が批評モードになるんで、他のこと遮断しがちなんだ。もしくはこの後に起こったことがあまりにも忘れがたいから、他の記憶を喰ってしまったか、だね。 でも、映画館で、たぶん初めて観たルーマニア映画にはやっぱり感動したよ。むやみやたらに言葉を積み重ねたくないくらいに。『フィクサー』を観た感動とともに、俺はまた入り口に舞い戻った。 東京国際映画祭では上映後に来日した監督や俳優たちと交流できる時間を設けているんだけど、その会場はいつも入り口前だったんだ。開けた空間があってさ、そこで観客たちが列を成してシタル監督と主演俳優のトゥドル・イストドルにサインをもらおうとしていたんだ。俺も急いでその列に加わったよ。 ルーマニア語で何を言おうかというのを、その列でずっと考えていた。前々から考えておけばよかっただろうが、俺は行き当たりばったりな人間なんだよ。「お会いできて光栄です」だろうか?それとも「『フィクサー』めっちゃ面白かったです」か? どれも急ごしらえの言葉だからしっくりこないし、考えも全然まとまらないまま、しかし列は進んでいく。進んでいくごとに緊張が高まって、心臓が爆裂しそうな予感がする。 そして恐ろしいほどあっという間に、その時がやってくる。俺はシタル監督と対面したんだよ。監督、作る映画はかなり厳しくて、時折えげつなかったりするけど、蓄えた口髭がチャーミングで、そのモサモサの向こう側には、菩薩みたいな柔らかな微笑みが浮かんでいた。 この時、俺が何を最初に言ったか、正直あんまり定かじゃない。たぶんBuna ziua(こんにちは)か、Ma numesc Tettyo Saito. Imi pare bine de cunostinta(私の名前は済東鉄腸です。お会いできて嬉しいです)あたりだったと思う。 だがその次に言おうとした言葉は覚えている。Èste extraordinar ca am vazut filmul dimneavoastra(あなたの映画が観れたこと、素晴らしい体験でした)だったね。「イェステ・エクストラオルディナル・カ・アム…」 だがここで止まってしまう。 鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』2:語学オタクへの道『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』1:はじめに
2023.12.11
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図書館で『哲学者にならない方法』という本を手にしたのです。著者は週刊文春などメディアにたくさんのユーモアエッセイを連載している著名な学者なので、期待できそうである。【哲学者にならない方法】土屋賢二著、東京書籍、2013年刊<「BOOK」データベース>より寄天烈な寮生たち、麻雀、ジャズ、ドストエフスキー、『存在と時間』…。ツチヤ教授のバカバカしくもどこかせつない青春の1ページ。初の自伝的エッセイ!<読む前の大使寸評>著者は週刊文春などメディアにたくさんのユーモアエッセイを連載している著名な学者なので、期待できそうである。rakuten哲学者にならない方法「第2章 寮の生活」で東大駒場寮が出てくるので、見てみましょう。p55~57<身だしなみ> 寮生はみんな貧しかった。寮に入る主な審査基準が、実家が遠い、貧乏である、の二点だったから当然だ。だから服装も、おしゃれな人間はいなかった。駒場寮には男しかおらず、おしゃれをしたがる動機もなく、どうすればおしゃれな服装ができるのかも分からず、そもそもおしゃれということ自体に意識が向いたことがなかった。 美術サークルには長野県出身者が多く、彼らは冬になるとどてらを着ていた。その姿を岡山県出身者から見ると、いかにもおしゃれと無縁な田舎者という感じだった。たぶん、長野県出身者の目にはわれわれが田舎者に映っていただろう。 話はそれるが、岡山県出身者はみんな、岡山県は教育県だと聞かされて育っていたが、長野県出身者は、長野県は教育県だと思っていたことが判明した。それを知って、学校がありさえすれば教育権ということになるのかと思ったが、それにしては大阪、兵庫、静岡、高知の自分の県を教育県とは主張しなかったから、別の基準があったのだろう。 履く物はみんな1年中サンダルだった。寮は土足厳禁だったが、サンダルなら、もしとがめられても「上履きです」と言い抜けられるから便利だった。だがとがめる者はだれもいなかった。「土足厳禁」と書いた張り紙を廊下に貼っていた寮委員が下駄を履いていたほどだったから、そんなルールに意味はなかった。冬もソックスなどを履く者は少なかったと思う。 冬の寒空でも同じ格好だったから、他人が見たら、やせこけたホームレスの若者だと思っただろう。一度、渋谷で占いを見てもらったら、「あんたはがんばれば大学に入れていたはずだ。東大にだって入れていた」と言われたことがあるから、とても大学生には見えなかったのだろう。 1年中裸足で、風呂もロクに入らなかったから、足の裏は真っ黒になり、たまに洗うと水が真っ黒になるほどだった。だがいくら洗っても、水は真っ黒になり、足の裏は真っ黒のままだった。『哲学者にならない方法』1:土屋家の教育
2023.12.10
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図書館で『哲学者にならない方法』という本を手にしたのです。著者は週刊文春などメディアにたくさんのユーモアエッセイを連載している著名な学者なので、期待できそうである。【哲学者にならない方法】土屋賢二著、東京書籍、2013年刊<「BOOK」データベース>より寄天烈な寮生たち、麻雀、ジャズ、ドストエフスキー、『存在と時間』…。ツチヤ教授のバカバカしくもどこかせつない青春の1ページ。初の自伝的エッセイ!<読む前の大使寸評>著者は週刊文春などメディアにたくさんのユーモアエッセイを連載している著名な学者なので、期待できそうである。rakuten哲学者にならない方法「第1章 親の教育」で土屋家の特異な内情が出てくるので、見てみましょう。p24~27<好きなことしかやらない> わたしの家のように父1人が家事から子育てから商売からギャンブルから何から何まで獅子奮迅の働きをする家で育つと、子どもはどうなるだろうか。そういう父の姿を見て育ったわたしが身につけた生活態度は、できるだけ仕事もせず、安逸に娯楽に興じるという母の態度だった。父の勤勉さはかけらも受け継がなかった。 わたしが子どもの頃から持ち続けている信念は、「好きなことしかやらない」というものだ。これこそ母の生活態度だった。母は、勉強、努力、労働、奉仕などには完全に背を向け、父の苦労に報いようともせず、好きなことしかやろうとしなかった。母は箏を教えていたが、それも母が箏を弾くのが好きだったからだろう。それ以外には、縦のものを横にもしようとしなかった。父が一生懸命働いているのを目の当たりにしてもその態度は崩さず、申し訳ないと思ったり感謝しているという様子は微塵も見せなかった。 母は威張っているわけではなかった。むしろ、か弱さを全面に出し、「わたしは何にもできない」という態度をアピールしていた。それでいて、明るい性格で裏表がなかった。楽しいことしかしていないのだから明るくしていられるのも当然だったかもしれないが。 楽しいことしかしない生活なら、だれでもしたがるはずだと思われるかもしれないが、どれを選ぶかは本人の考え方次第だという状況が多いが、意外なことに、苦しい面ばかり選び取って苦しい思いをする人が非常に多いのだ。実際、多くの人は自分の長所には一顧だにせず、欠点を気にして苦しんでいるではないか。結婚後10年もたつと、妻は夫の欠点しか見なくなるではないか。 ともあれ、わたしは母と同じ生活態度を身につけて育った。わたしが大学を出て哲学に進み、朝から晩まで論文を読みふけり、長時間研究に励んでいるように見えても、「努力」しているつもりはまったくない。やらないでは気がすまないことを夢中でやっているだけで、勤勉に仕事をしているという感覚をもったことがない。 もちろん食べていくためにはイヤなこともしなくてはならないが、わたしはそれが最小限になるような生活を選ぶことを心がけてきた。だからサラリーマンになる気はまったくなかった。人生の大半の時間を他人が決めたことに費やすのは耐えられず、それぐらいなら貧乏でも拘束時間が少ない仕事をした方がいいと思っていた。結局、大学に職を得てサラリーマンになったが、それは哲学の研究をしながら食べていけるのはこの職業しかなかったからだ。 当時は高度成長期でモーレツ社員が多い時代だったが、私は勤労意欲がかけらもなかった。働くことが尊いとは思えず、好きなことだけをして世の中を渡りたいとムシのいいことしか考えなかった。かりに遺産で食べていけたり、大富豪の娘と結婚して働く必要がなければ、就職もせず、毎日哲学や音楽やギャンブルに明け暮れていただろう。これが母から受け継いだ性質だった。意外なことに、この性質もわたしを哲学に追い込む一因となった。 哲学はともかく、母のように徹底して楽しもうとする生活態度の貴重さに気づいたのは最近になってからだ。それを与えてくれた母にそのことを伝えられなかったことが残念でならない。 働き者の父親をもつと家族は大きい影響を受けるが、それがいい影響なのかどうか分からない。少なくともわたしは働き者にはならなかった。大人になって働き者になるには、父親が怠惰で、子どもが一生懸命働かないと生き延びられないという家庭環境に育つ方がいいのかもしれない。
2023.12.09
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図書館で『本当はブラックな江戸時代』という文庫本を、手にしたのです。【本当はブラックな江戸時代】 永井義男著、朝日新聞出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より江戸は本当に人情味に溢れ、清潔で安全だったのか。遊郭はユートピアだったのか。当時の資料を元に、江戸時代がいかに“ブラック”な時代だったかを徹底検証していく。庶民のリアルな生活を徹底的に紹介し、江戸時代を無邪気に礼賛する風潮に一石を投じる一冊。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten本当はブラックな江戸時代 「第2章 安全ではなかった江戸の町」で警察業務を、見てみましょう。p58~61 <危険な警察業務は庶民がになう> 江戸の町の治安を守るのは、主として町奉行所の役目である。 大雑把にいうと、北町奉行所と南町奉行所のふたつがあったが、地域を分割担当していたわけではなく、隔月交代で業務を行っていた。 南北町奉行所にはそれぞれ与力25人、同心120人がいたが、実際に市中を巡回して犯罪の捜査や逮捕にあたる定町廻り同心や臨時廻り同心は、両奉行所を合わせても24名でしかなかった。百万都市江戸の治安を守るのに、「パトロール警官」はわずか24人だった。 こうした事実を踏まえ、江戸を紹介する多くの本は治安や警察機構について、決まってこんな解説をしている。「30名に足りない人数で百万都市の治安を維持していたのだから、驚異的である。江戸がいかに平和だったか、いかに治安がよかったのかの証拠であろう」 はたして、本当だろうか。 現代で考えてみよう。 ある地域に総合病院がないのを見て、こう判断したらどうだろうか。「病院がないのは、住人がみな健康な証拠」 見当違いもはなはだしい。 病気の人々は本数の少ないバスを乗り継いで、遠くの病院に1日がかりで通院せざるを得ないのが実情である。この勘違いに似ているといえよう。 江戸はけっして平和ではなかった。「警察官」がいないので自分たちで対処するしかなかったのだ。 『藤岡屋日記』に、次のような事件が記されている。 弘化4年(1847)5月5日、幕臣川添家の19歳の息子、兼次郎が酒に酔い、浅草花川戸の通りで刀を抜いて通行人に次々と斬りつけ、4人が負傷した。 騒ぎを知って、自身番に詰めていた者などが捕物道具を持って駆けつけ、みなで取り押さえた。兼次郎を自身番屋に連行すると同時に、医者を呼んで負傷者の手当てをさせた。 兼次郎の身元がわかったことから、川添家から使者が来て協議の上、内済(ないさい)となり、兼次郎の身柄を引き取った。 その結果にはなんとなく釈然としないが、その背景は後述しよう。 たとえば現代、暴漢が刃物を降りまわしていたら、110番すればよい。パトカーが駆けつけ、警察官が暴漢を取り押さえてくれる。 ところが江戸時代、電話はないし、迅速なパトカーもなかった。町奉行所に知らせに走り、役人を呼んで来るなどの悠長なことはしていられないので、住人が協力して取り押さえるしかない。 町内の自身番屋には図のような三道具と呼ばれる突棒、刺叉、袖がらみが備え付けられていた。これらの捕物道具を持ち出してきて、大勢で取り押さえたあと、暴漢を自身番屋に連行し、留置した。自身番屋の奥には板張りの部屋があり、壁に鉄の輪が採りつけられていて、ここに暴漢を縛ってつないだのである。 自身番屋は町役人の詰所であるが、交番や留置所の役目もあったといわれるのは、暴漢の取り押さえや留置までしていたからである。 翌日、定町廻り同心が小者を引き連れて担当地区を巡回の途中、自身番に立ち寄ったとき、事情を報告して、暴漢を引き渡す。それまでは暴漢に食事をさせ、用便に付き添うのも町内の責任だった。 町の自治にまかせていたといえば聞こえがいいが、実態は町の人々が最前線の危険な警察業務をになわされていたのである。 30名に足りない警察官で百万都市の治安が維持できたのは、江戸が平和で、犯罪が少なかったからではない。川添兼次郎の事件のように、町人が決死の覚悟で、抜身を持って暴れる暴漢を取り押さえていたからである。ウーム、テレビ番組で観る「遠山の金さん捕物帳」なんか、あんまり実態を描いていないではないか。特に、江戸を取り締まるパトロール警官がわずか24人だったとは驚くばかりです。『ほんとうはブラックな江戸時代』2:もっともブラックな世界『ほんとうはブラックな江戸時代』1:はじめに
2023.12.08
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図書館で『あなたが、いなかった、あなた』という本を、手にしたのです。ぱらぱらと覗いてみると、フランス語が原文で散見されるのでチョイスしたのです。【あなたが、いなかった、あなた】平野啓一郎著、新潮社、2007年刊<「BOOK」データベース>より【目次】やがて光源のない澄んだ乱反射の表で…『TSUNAMI』のための32点の絵のない挿絵/鏡/『フェカンにて』/女の部屋/一枚上手/クロニクル/義足/母と子/異邦人・7-9/モノクロウムの街と四人の女/慈善<読む前の大使寸評>ぱらぱらと覗いてみると、フランス語が原文で散見されるのでチョイスしたのです。rakutenあなたが、いなかった、あなたフランス語の会話が(原文で)見られるあたりを、見てみましょう。p92~95 『フェカンにて』 乗り継ぎの時間は8分間である。からだの伸びをして、念の為に、乗客と共に降りてきた車掌にフェカン行かどうかを確認し、乗り込もうとしていた時、隣に、スーツケイスとバッグとを抱えて立ち往生している老婆がいるのに気が付いて、彼は、「Pourais-je vous aider?(お手伝いしましょうか?)」と声を掛けた。 年齢は、80歳ほどであろうか。白い丸鍔の帽子を被り、白の薄手のブラウスを着ている。 彼女は、一瞬、驚いたような顔をした後に、「Oui oui, merci beaucoup, c‛est gentil.(ええ、ええ、どうもありがとう。ご親切に)」と微笑んで、「Vous parlez francais?(フランス語、お話しになるのかしら?)」と尋ねた。「Oui, un peu.(ええ、少しだけですけど。)」 大野は、自分のバッグを肩に掛け、彼女のスーツケイスを代わりに手に持った。バッグは自分で持てると云う素振りをしながら、彼女は、「Àh, oui? D‛ou venez-vous? Vous etes Japonais?(あら、そう?何処からいらしたのかしら? あなた、日本人?)」とまた興味深そうに問うた。 大野が先に車両に乗り込み、彼女がそれに続き、二人で左右を見渡すと、手近の空いている座席に自然と足を向けた。「Oui, je suis Japonais.(ええ、日本人です。)」振り向き様に返事をすると、彼は、「...euh ...la? Ca va?(ええっと、・・・ここで?。大丈夫ですか?)」とスーツケイスを座席の傍らに置いて確認した。「Oui, bien sur. Merci beaucoup.(ええ、もちろん。どうもありがとう。)」 老婆は頷きながらそう云うと、しっかりと彼の方に顔を向けて笑顔でまた礼を言った。 大野も微笑みながら、「Je vous en prie.(どういたしまして。)」と、自分のバッグを荷棚に上げ、座席に着いた。彼女は覚えず眼でその動きを追い、それから座席の在処を確認しながら腰を卸した。 帽子を取って膝に置き、一息吐くと、彼女は、「Vous etes on Voyage?(ご旅行かしら?)」と問うた。 大野は、「Oui, Mais j‛habite maintenant a Paris.(ええ。でも、今はパリに住んでいるんです。)」と応じたが、その理由を説明する事を何となく避けるように、「Èt vous? Vous etes aussi en voyage?(あなたは? やっぱりご旅行ですか?)」と語を継いだ。「Oui, Je viens de Charleville. Vous connaissez? C‛est en Champagne. ... (ええ。わたしはね、シャルルヴィルから来たの。知ってるかしら? シャンパーニュ地方にあるのよ。)」「Àh, oui. Àrthur Rimbaud y est ne, nest-ce pas?(ああ、ええ。アルテュール・ランボーの故郷ですよね?)」 老婆は目を丸くして、「Èxactment! Vous etudiez la litterature?(その通りよ! あなた、文学のお勉強をしてるの?)」と彼の顔を覗き込んだ。「Èuh,...oui(ああ、・・・ええ。)」「C‛est pour ca que vous etes a Paris?(それでパリにいるのね?)」「...Oui en effet.(ええ、そうですね。)」 大野は、そう曖昧に答えた。「Oui? Vous avez deja lu quelques livres de lui?(そうなの? もう、ランボーの本は幾つか読んだのかしら?)」「Oui "Une saison en enfer", "Les illuminations",et(ええ、『地獄の季節』、『イリュミナスィオン』、それから、・・・)」「Àh, c‛est formidable!(まぁ、すごいじゃない!)」「Mais j‛ai lu la pluspart d‛entre eux en japonais. C‛est pas bien, mais,...(でも、大部分は日本語で読んでいるんですよ。よくないですけど、・・・ええ。)」「C‛est difficile en francais?(フランス語じゃ難しいかしら?)」「Ca depend, mais, ...oui(ものによりますけど、ええ。)」 大野は、首を軽く捻って苦笑した。老婆は、彼を気遣うように、冗談めかして、「Mais pour moi aussi, ses poems sont tres difficiles. Ne vous inquitez pas.(でも、それはわたしも同じよ。ランボーの詩はとっても難しいもの。心配しなくても良いのよ。)」と優しく言った。「Merci. Mais en tout cas, je dois etudier le francais davantage.(ありがとうございます。でも、いずれにせよ、僕はもっとフランス語を勉強する必要がありますけど。)」「Vous paelez bien!(あなた、上手に喋ってるわよ!)」「...Merci(・・・ありがとうございます。)」『あなたが、いなかった、あなた』1:はじめに
2023.12.07
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今回借りた4冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・黒・哲学者にならない方法・小さい林業で稼ぐコツ・白鶴亮翅<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【黒】柳美里著、扶桑社、2007年刊<商品説明>より「黒」は、「en-taxi」にて連載していた連作小説。柳美里氏の三年ぶりの新作「小説」で、柳氏のパートナーでした東由多加氏を主人公とし、彼の死までを東氏の視点で綴った「黒」「白」「緑」の短篇3部作となります。内容としましては、柳氏の代表作でもあります「命」の裏バージョン、東氏の視点から、癌闘病等を綴った「意欲的な」作品です。<読む前の大使寸評>借りたのは表紙も裏表紙も黒1色の1版1刷でした。(ネットにはその画像がなかったけど)rakuten黒【哲学者にならない方法】土屋賢二著、東京書籍、2013年刊<「BOOK」データベース>より寄天烈な寮生たち、麻雀、ジャズ、ドストエフスキー、『存在と時間』…。ツチヤ教授のバカバカしくもどこかせつない青春の1ページ。初の自伝的エッセイ!<読む前の大使寸評>追って記入rakuten哲学者にならない方法【小さい林業で稼ぐコツ】農文協(編)、農山漁村文化協会、2017年刊<「BOOK」データベース>より「山は儲からない」は思い込み!伐採や搬出を人に任せず自分でやれば、経費がかからない分、まるまる儲けになる。高値がつかない細い木でも、薪にすれば売れるし、木質バイオマス発電の燃料としても売れる。山の手入れを自分でやる「小さい林業」で稼ぐコツを解説。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten小さい林業で稼ぐコツ【白鶴亮翅】多和田葉子著、朝日新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>よりベルリンで一人暮らしをする美砂は、隣人Mさんに誘われて太極拳学校へ。さまざまな文化的背景の人びととの出会い、第二次大戦前後のドイツと日本の歴史に引き込まれ、名作を女性の視点で読み直す。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/2予約、副本?、予約57)>rakuten白鶴亮翅
2023.12.07
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図書館に予約していた『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』という本を待つこと半年ほどで、ゲットしたのです。下手の横好きというか、言語学に興味があるのでつい予約していた本なのです。【千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話】済東鉄腸著、左右社、2023年刊<「BOOK」データベース>より日本どころか千葉の実家の子供部屋からもほとんど出ない引きこもりの映画オタクの下に差し込んだ一筋の光、それはルーマニア語ールーマニア人3000人に友達リクエストをしてルーマニアメタバースを作り猛勉強、現地の文芸誌に短編小説を送りつけ、『BLEACH』の詩へのリスペクトと辞書への愛憎を抱きながらルーマニア語詩に挑戦する。受験コンプレックス、鬱、クローン病。八方塞がりの苦しみから、ルーマニア語が救ってくれた。暑苦しくって切実で、好奇心みなぎるノンフィクションエッセイ。千葉の片隅から、魂の故郷・ルーマニアへの愛を叫ぶー。本、映画、音楽…ルーマニアックのための巻末資料も収録!<読む前の大使寸評>下手の横好きというか、言語学に興味があるのでつい予約していた本なのです。<図書館予約:(5/23予約、副本1、予約26)>rakuten千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話「2章 ルーマニア語学習は荊の道」に語学オタク度合いが出てくるので、見てみましょう。p33~40 <語学オタクへの道は、ジョジョへの熱狂から> そもそもの話として、俺は語学好きというか、筋金入りの語学オタクってやつなんだ。 語学は素晴らしき趣味だよな。世間では語学っていうのは外国の人とコミュニケーションをとったり、日本語では学べないことを学んだりという目的のための手段として扱われている。 でも俺にとっては語学こそが目的なんだ。何か別のものに繋がるならそれはそれで面白いけど、俺としては特にそういうのは求めてない。 新しい言語を学ぶことそれ自体が楽しいんだ! 振り返るなら、その萌芽は高校時代に生まれていたって思える。英語は全然ダメだった。体育、数学、理科、そして英語。これが俺にとってのクソ苦手教科の四天王だった。テストは40点が当たり前で、マジで英語は分からなかった。何がどう分からないかすらも分からないって最低のお手上げ状態だったんだ。 そういえば将来の夢について書きましょうなんて授業があった。何を書いたかは完全に忘れたんだけど、その文章のなかでI wantを I wannaって書いたんだよ。「~してぇわあ」って意味になると思うんだけど、まあこの頃はこういう入門編的なスラングを使って背伸びしたくなる年ごろだったんだよ。教師にこれを提出して、次の授業で返ってくるわけだが、戻ってきた紙ではI wannaは無慈悲にもI wantに直されてたよ、切れ痔に輝く鮮血みたいな色の赤ペンで。 すげえガッカリしたのをはっきりと思い出せるよ。そりゃ授業では直されるよなって思うのと同時に、これくらいのスラングなら少し許容してくれてもいいんじゃねえのってさ、思うんだよ。 要は、「学ばされる」って状況が本当に厭だった。そしてこのI wannaの訂正は、せっかく自分から「学んでいく」をしようとしていた俺を「学ばされる」の領域に引き戻すようなものだった。こういう感じだから、学校では一切英語が身につかなかったんだよ。こういう人、案外多いんじゃないかな。 だけど語学っていうのは学校ばかりで学ぶものじゃあない。その外にこそ、語学の楽しさが待っているってことは多い。それを教えてくれたのがジョジョだった。そう、あの『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)なんだよ。漫画ではこれが一番好きなくらいで、学校で漫画本借りてその時までに全巻揃っていた第6部の「」まで全部読んだよ。(中略) で、ジョジョのなかでも第5部の「黄金の風」ってさ、イタリアが舞台だろ、吐き気を催すような邪悪を打ち砕くために、主人公たちがイタリアを横断していきながら死闘を繰り広げるわけだ。これを読むのは正に脳漿が頭蓋骨ブチ突き抜けるほど興奮する体験だったよ。(中略) それで今振り返っても驚きだけど、俺はおこずかいでイタリア語のテキストを買ってたんだ。京藤好男の『文法から学べるイタリア語』(ナツメ社)だ。今も本棚にあるけど、奥付に「2008年7月10日発行」って書いてあった。しかも間に、高校生の俺がケーキを作ってる写真が栞みたいに挟まれてた。なんか色々な意味でジーンときちゃったね。 このテキストを読みながら高校生の俺は、スゲー奇妙な世界を目撃しているような気分になったよ。 例えば、名詞は何故だか男女形に分かれていた。いやいや、言葉に性別があるってどういうことだ? 日本語でも「看護婦」と「看護師」とかそういうの一応あるけど、イタリア語なんかギアッチョのghiaccio(氷)は男性で、ナランチャのarancia(オレンジ)は女性って、一体何を基準に性別なんか決めてるんだ? しかも主語によって動詞が変化するらあしいんだよ。例えば「俺が行く」ならvadoで、「ジョルノ・ジョバーナが行く」ならvaで、「俺とジョルノが行く」ならandiamoって、何がどうなってる?(大幅に中略) とはいえ、この時期は常に精神が崖っぷち状態だったわけだ。映画による治療をやっていても、英語は他でもないトラウマの源だし、これにばっかどっぷり浸かっていると、言語面からもどんどん狂気に追い詰められていく感覚があった。すこしずつ底無し沼に嵌っていくようなものだ。でも突然、空からもたらされたもの、これがルーマニア語だったんだよ。 ここまで読んで俺と同じ言語オタクの人は、俺がルーマニア語に嵌るのは必然だったんではとか思うかもしれないな。というのもルーマニア語もまた、スペイン語やイタリア語と同じくロマンス諸語に属する言語で、二つとかなり似た部分があるからだ。特にイタリア語とは、互いに自分の言語を話すだけでも、日常会話くらいなら意思疎通が可能なくらいに似てるんだよ。だからロマンス諸語の流れでルーマニア語に行き着くのは必然だったと。『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』1:はじめに
2023.12.06
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・村上龍『ユーチューバー』(5/20予約、入荷待ち)現在2位・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、副本1、予約55)現在21位・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在335位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在241位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在114位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在96位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在321位・南海トラフ地震の真実(10/20予約、副本?、予約44)現在39位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在24位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・養老孟司『形を読む』・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・菊間晴子「犠牲の森で」・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:第165回芥川賞受賞作(21年)・斎藤環『社会的ひきこもり』・ひさうちみちお『パースペクティブキッド』・松里公孝『ウクライナ動乱』・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』<予約分受取:10/04以降> ・村上春樹『うずまき猫のみつけかた』(9/26予約、10/04受取)・タルディ『塹壕の戦争1914-1918』(10/08予約、10/14受取)・小川哲『地図と拳』(2/01予約、10/21受取)・有川ひろ『旅猫リポート』(10/27予約、10/28受取)・ジンセイハ、オンガクデアル(2/10予約、11/15受取)・ブレイディみかこ『リスペクト』(9/05予約、11/23受取予定)・『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』(5/23予約、11/28受取)・村山由佳『命とられるわけじゃない』(11/21予約、11/28受取)・多和田葉子『白鶴亮翅』(8/2予約、12/05受取予定)**********************************************************************【ユーチューバー】村上龍著、幻冬舎、2023年刊<出版社>より20代半ばにしてデビューをした作家・矢崎健介、70歳になった。「世界一もてない男」を自称するユーチューバーが、矢崎をユーチューブに誘う。承諾した矢崎が語り出したのは、自由である人間について。自由な人間は滅多にいないのだと言った。自由であるということは、唯一の希望を生む。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/20予約、入荷待ち)>rakutenユーチューバー【台湾漫遊鉄道のふたり】楊双子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より昭和十三年、五月の台湾。作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴と台湾縦貫鉄道に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。ただ、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子の焦燥感は募り…国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差。あらゆる壁に阻まれ、近づいては離れるふたりの旅の終点はー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/23予約、副本1、予約55)>rakuten台湾漫遊鉄道のふたり【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2023.12.05
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図書館で『あなたが、いなかった、あなた』という本を、手にしたのです。ぱらぱらと覗いてみると、フランス語が原文で散見されるのでチョイスしたのです。【あなたが、いなかった、あなた】平野啓一郎著、新潮社、2007年刊<「BOOK」データベース>より【目次】やがて光源のない澄んだ乱反射の表で…『TSUNAMI』のための32点の絵のない挿絵/鏡/『フェカンにて』/女の部屋/一枚上手/クロニクル/義足/母と子/異邦人・7-9/モノクロウムの街と四人の女/慈善<読む前の大使寸評>ぱらぱらと覗いてみると、フランス語が原文で散見されるのでチョイスしたのです。rakutenあなたが、いなかった、あなたフランスでの旅行を、見てみましょう。p47~50 『フェカンにて』 2004年8月9日月曜日、小説家の大野は、1週間分の荷物が詰まった黒いバッグを携えて、サン=ラザール駅の23番ホームで12時40分発ル・アーブル行の特急列車を待っていた。 大野は今、フランスのパリで生活している。これは昨年、文化庁に新しく出来た文化交流事業の第1回目の派遣によるもので、今年の2月末に渡仏し、1年間滞在して、来年2月末に帰国するのである。 彼が今住んでいるのは、オデオンと云う街の真ん中である。そこに、六十平米の二部屋のアパルトマンを借りて、独りで住んでいるのである。 フランスでの活動は、日本文学科のあるパリ第7大学での不定期の講義と、大使館、領事館の手配するストラスブールやエクサン・プロヴァンスと云った地方都市での、これもまた不定期の講義とが中心で、残りの時間は人に会ったり、芝居を観たりと自由である。 毎月の報告の義務はあるが、そう云う事には、元々変に几帳面なので、定められた書式に従って、月の初めにきちんとメイルで提出している。一体、期限の気になる質で、原稿を依頼されても、締切りを守らなかった事は一度もない。引き受けると、その後は一切連絡を取らないので、不安になった編集者がメイルで様子を尋ねると、返事の代わりに原稿が送られてくる。 時には慎重な編集者が、本来の締切りよりも2週間も早く締切期限を打診してくる事がある。そう云う時にも、やはり莫迦正直に、その2週間前の締切の1日2日前に原稿を送るのである。もっとも彼は、大学在学中からこの仕事を始めているので、今でも何処か、締切と云うものを学生のレポートの提出期限のように、融通の利かないものだと思い込んでいる。それで、何かの折に、外のもっとずっと締切にルーズな作家の話を耳にしたりすると、目を丸くするのである。(中略) 8月に這入るとすぐに、スウェーデンのストックホルム市が主催するTokyo Styleと云う大規模な日本文化の紹介イヴェントに参加し、俳句をテーマトスルシンポジウムの特別枠で、現代日本文学についての1時間弱の香煙を行った。これは、シンポジウムの企画者である、彼の最初の二作の小説の翻訳者による招待である。 ストックホルムには三泊し、1日半ほどは市内観光をする時間も得て、パリに戻って来たのが一昨日の事である。昨日は、不在の間に溜まっていた仕事を片づけるのに丸1日を費やした。それから晩に、ポンピドゥー・センターの三階にあるカンディンスキー図書館での撮影の打ち合わせの為に、ルーヴル近くの寿司屋で知人のカメラマンと食事をしたが、二軒目が思いの外深酒となって、今朝は這々の体でベッドを抜け出して来たのであった。 ココア・ブラウンの半袖のカットソーにジーンズと云うラフな格好である。それも手伝ってか、発券窓口では、今日も26歳未満かどうかと割引の確認をされた。フランスでは、大野は何時も、学生のように見られている。その切符をまだ左手に持ったまま、今、漸く到着した電車の二等車両を探して、彼はバッグを肩に掛け直し、歩いているところである。 夏の旅らしく、さほど大きな荷物でもなかったので、何時ものように地下鉄の4番線でオデオン駅からシャトレ駅まで出て、そこから14番線に乗り換えてサン=ラザール駅まで来たのであった。8月のパリは静かで意外と好いものだと、こちらに来てから何人かに聞いていたが、実際に、街を歩いても地下鉄に乗っても閑散としていて、その分普段以上に英語が耳についた。(中略) 電車の車両は、中ほどの仕切で二つに分けられており、自由席はその前方である。客は思いの外多かったが、待ち構えて乗っただけに、座席はまだ十分に空いている。バッグを荷棚に上げて、二人掛けのシートの窓際に腰を卸した。傍らに襷掛けにしていたショルダー・バッグを置くと、やれやれと云う気分で息を吐いた。 彼の目指すのは、フェカンと云うノルマンディ地方西北部の大西洋に面した港町である。ウーム、著者は私より30近くも若いのだが漢字の使い方が、なんか古風である。短編ごとに漢字の扱いや文体を変えて書き分けているようですね。知らんけど。
2023.12.04
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図書館に予約していた『命とられるわけじゃない』という本を待つこと1週間ほどで、ゲットしたのです。村山由佳のネコ本ではないか・・・これは大いに期待できそうである♪【命とられるわけじゃない】 村山由佳著、ホーム社、2021年刊<「BOOK」データベース>より『猫がいなけりゃ息もできない』の愛猫“もみじ”を看取ってから一年後の春。確執の深かった母を亡くした著者は、母の葬儀で一匹の猫と出会う。その小さな猫が、止まっていた時間をふたたび動かして…。<読む前の大使寸評>村山由佳のネコ本ではないか・・・これは大いに期待できそうである♪<図書館予約:(11/21予約、副本11、予約2)>rakuten命とられるわけじゃない「2章 別れが出会いを連れて来る」の冒頭を、見てみましょう。p46~49 <再会> 母の最期の立ち合いから葬儀の段取りに至るまで何もかも兄夫婦に任せっきりだったので、せめて、と朝は私が台所に立った。 トーストは、四枚切りならぬ禁断の三枚切り。分厚いやつに十字の切り込みを入れ、バターをたっぷり塗ってからこんがりと焼く。溶けたバターがしみしみになったところへハムをのせ、目玉焼きをのせ、上からマヨネーズをかければ至福の朝食のできあがりだ。 コーヒーは、私など足もとにも及ばいくらい美味しいのを兄が淹れてくれる。何しろ、「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズにおける喫茶店『風見鶏』のマスターのイメージモデルはこの兄だったくらいだ。 トストとコーヒーのこうばしい香りが入り交じる。もりもり食べながら、母の横たわる布団越しに庭を見やる。大木に育ってしまったゴールドクレストの木陰には、折りたたみ式のガーデンチェアがまだそのまま置かれている。父はいつも、散歩してきた帰りにはそこに腰掛け、日向ぼっこしながら庭木や花を眺めるのが日課だった。 私がまだ旦那さん1号と鴨川に暮らしていた頃、できるだけ近くに住みたいという両親に付き添ってこの土地を探しあてた時、いちばん気に入っていたのは、目の前のよその畑で、当分の間は他の家が建ちそうにないことだった。それから20年、畑は今も畑のままだ。 数年前まで両親が借りて家庭菜園にしていたのがそこだが、二人とも衰えて作業ができなくなってからは持ち主に返し、ここ数年は春から夏になると家畜飼料用のトウモロコシが栽培されている。実りの時期には映画の『フィールド・オブ・ドリーム』みたいになる。私が、ずーっと会っていなかった大阪の従弟(のちの背の君)とここで25年ぶりに再会したのも、丈の高いトウモロコシがびっしりとそろって揺れる真夏のことだった。 が、4月半ばにもならない今は、土に鋤き込むための堆肥がところどころに盛られているだけで何も植わっていない。広がる空は重たげな雲に覆われている。葬儀を明日に控えているのに、どうやら夜半からはまた雨が降るようだ。「おう、何とかせえよ」と、背の君が無茶を言う。「お前いっつも、じぶん〈晴れ女〉や言うて威張っとるやないけ」 たしかに私自身は梅雨時でさえ傘を持って歩いたことがないのが自慢だが、どうにもこうにも、母にとっての一大イベントでその力を発揮してのける自信はない。ちなみに昨日、一昨日と軽井沢にまとまった雪を降らせた母は、〈雪女〉である前にそもそも最強の〈雨女〉だった。 午前中は4人がかりで片付けと掃除に専念した。大きなソファを移動させ、腰の高さの書棚に白いシーツをかけて祭壇にし、その横のパソコン机も布で覆って目立たなくする。にわかづくりの祭壇だけれど、真上の壁に父が彫った例の『最後の晩餐』がかかっているおかげで、なんだか、この時のためにあつらえたかのように荘厳な雰囲気が漂う。 昼過ぎには両親が通っていた館山の教会から神父様がみえて、葬儀屋さんの協力のもと〈納棺の儀〉を執り行ってくださった。母にきれいな死化粧を施して下さったのも、一昨年の父の時と同じ女性スタッフさんだった。 そのあと、お花屋さんが到着し、祭壇の両脇と棺の枕元と足元、そして正面に、山盛りの花が生けられた。何しろ花の好きなひとだったからと、打ち合わせの段階から兄夫婦が花だけはめいっぱい飾ってくれるように言ってあったのだ。(中略) 距離の近い裏手のお宅に挨拶をし、それから、畑の向こう側に建つYさんのお宅へ向かった。道ばたの桜の木から、はらはらと花びらが散っている。 と、その時、はっと気づいた。 Yさん宅の前、道路と畑の境目のところに、白っぽい猫がうずくまっている。むこう向きに香箱を作っているので、茶色い尻尾と耳の先が目立つ。近づいてゆく私の足音にこちらをふり返った顔も同じく、美味しそうなチョコレート色をしていて、瞳は透きとおるようなブルー。やっぱりだ。先週、私と背の君が実家に滞在していた時、ベランダの網戸越しに家の中を覗いていたあの猫だ。『命とられるわけじゃない』2:心の穴ぼこ『命とられるわけじゃない』1:はじめに
2023.12.04
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