2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
全3件 (3件中 1-3件目)
1
今日のまとめ 1. 米国の量的緩和政策の拡大は将来のインフレの種を蒔く 2. コモディティー価格が底入れすれば新興国通貨は俄然確りしてくる 3. 中欧を除けば新興国の借入れは健全な水準である ■輪転機をフル回転させる連邦準備制度 先週の米国の連邦公開市場委員会(FOMC)を受けて連邦準備制度(FRB)は3000億ドルにのぼる財務省証券を買い入れると発表しました。加えて住宅ローン証券の購入計画も大幅に拡大されています。 現在、既に2兆ドルを超えている連邦準備制度のバランスシートは上の発表により、さらに最大で1.15兆ドル、つまり50%近くも膨張すると見られています。これは実質的に連邦準備制度が輪転機を回してお金を印刷していることに他なりません。 これだけ大きな金額になるとなかなか実感しにくいのですが、今回発表された「追加分」が若し全て実施されれば六本木ヒルズ380個分(総工費2700億円として概算)の建設費用に相当します。 別の喩えで言えば今回の「追加分」は2008年度の中国の国家予算の1.34倍(*)に相当します。 ■バーナンキ議長の懸念 先々週末にベン・バーナンキFRB議長がCBSの報道番組、『60 minutes』に出演しました。これはよりオープンな対話を目指すバーナンキ議長の姿勢を示していると一般には理解されていますが、あながちそれだけが出演の理由ではありません。 実際、バーナンキ議長がFRB議長に就任した直後に出演要請をしたときにはCBSは言下に断られているのです。 なぜバーナンキ議長が一度は断った出演要請を今頃になって受け、直接国民に語りかけたのか?これは少し考えてみる価値のある問題です。インタビューの中で「いま、夜も寝られない気にかかっていることがあるとすれば、それは何ですか?」という質問に対し、バーナンキ議長は沈痛な表情で「それは銀行の救済に対する政治的な意思統一(political will)が出来上がっていない点だ」と答えています。 これはわかりやすい言葉に言い直せば、財務省が色んな施策を出そうと思っても、議会をはじめ関係各所からの同意がとても得られそうにないムードなので、何も出来ないという意味です。 ■孤立無援のバーナンキ議長 それはとりもなおさずバーナンキ議長が孤立無援で大不況に立ち向かわないといけないことを意味しています。折からのAIGのデリバティブ部門の社員への賞与の問題で国民の側には救済に対する「厭戦ムード」が蔓延しています。 一方、金融機関の側では政府の介入を最低限に抑えないと「箸の上げ下ろしにすら文句を付けられる」と警戒感を強めています。つまり金融機関の側では政府と共同して不良債権を買い上げるプランなどからは心が離れてしまっているわけです。 これまでなかなかエンジンがかからず、試行錯誤を繰り返してきた財務省による金融機関救済策の雲行きはいよいよ絶望的に悪くなりました。これがバーナンキ議長の輪転機フル回転作戦の背景です。 ■将来のインフレの種が蒔かれている なお、バーナンキ議長自身はかねてから銀行システムの流動性不全の問題は個々に問題個所を直してゆく方法が好ましく、輪転機をフル回転するような雑なやり方はインフレを招くので好ましくないと主張してきました。つまり今回のことは仕方なくイヤイヤやっていることなのです。 連邦公開市場委員会(FOMC)後、市場が受け止めたメッセージは明快です。それはドルの減価(デバリュエーション)やむなしということです。それはとりもなおさず、いますぐではないにせよ、いずれインフレのリスクが高まることを意味しています。 事実、これまではゴールドだけが上昇していたのですがここへきて原油(WTI)も心理的な節目である50ドルを回復していますし、銅や大豆なども上昇し始めています。 ■底入れする新興国通貨 さて、新興国の通貨は去年、先進国の景気後退が鮮明になりはじめたあたりから、こっぴどく売られました。これは世界がリセッションに陥った場合、コモディティーの価格が下落し輸出も不振となり、それらに依存する新興国の景気も悪くなると投資家が判断したからに他なりません。 殆どの新興国の通貨は未だ底値圏に近い水準にあり、世界的なデフレを織り込んだ水準にあります。 しかし幾つかの要因が新興国通貨にとってプラスに働きはじめています。 ひとつは先進国では景気テコ入れのための財政出動で財政の健全性が損なわれている点です。 これと対照的に新興国の国家財政レベルでの借入構造には今回の景気後退局面でも大幅な変化は見られません。むしろ新興国の財政の方が保守的に映るくらいです。 別の言い方をすれば新興国のソブリン(=国の発行する債券)の需給関係は比較感ではたいへん良好に見えるわけです。 さらにブラジル、ロシアをはじめとする、過去に経済危機を経験済みの各国はその学習効果から今回は景気の悪化に対する準備もよく出来ていました。 今後、インフレに対する懸念が高まり、商品価格が上昇しはじめると新興国の景気は底入れし、国家の税収は回復し、ソブリンの信用は上がることも考えられます。また新興国通貨は強含むことも考えられます。 折からの先進国の超低金利で新興国の高金利はとりわけ魅力ある水準になっていると言えるでしょう。 これらの事を総合すると新興国の債券、とりわけ国債を組み込んだ投資信託は検討に値する局面にさしかかっていると言えるでしょう。その場合、コモディティーを輸出している資源国を中心に研究されると良いでしょう。ブラジル(鉄鉱石、大豆)、メキシコ(石油)、アルゼンチン(農産物)、ベネズエラ(石油)、ペルー(銅、金)、ロシア(天然ガス、石油)などはいずれも資源国です。これらの国の国債を主に組み入れている投信を探して下さい。(*)=歳入(revenue)の部
2009年03月23日

今日のまとめ 1. 中国政府は景気下支えのために必要な方策をとっている 2. しかし経済統計はその効果が限定的であることを示唆している 3. 景気刺激策は建設プロジェクトに重点を置いている ■中国は景気対策をやっている 世界経済が極端な信用の緊縮を経験する中で中国政府は景気下支えのために十分な流動性を銀行システムに供給しています。また、先に開催された全人代でも4兆人民元にのぼる景気刺激予算が再確認されました。 今回の不況が始まって以来、これまでに発表された世界各国の財政支出の拡大と金利引き下げ幅をグラフにしてみると下のようになります。GDPに対する財政支出が大きければ大きいほど(つまりグラフのY軸が上に行けば行くほど)政府が大胆な撒布を行っていることになります。 またインフレ率を差し引いた実質金利(X軸)が左の方へ行けば行くほど利下げ幅が大きいことを示します。これを見ると財政的に裁量の余地が限られているインドの場合、主に金利操作によって景気のテコ入れを試みており、去年インフレに悩まされた中国の場合、財政撒布を中心に景気対策をおこなっていることがわかります。中国の財政事情は他の先進国に比べると余裕があります。このため今後も追加予算が発表される可能性を残しています。 ■経済統計を見る限り効果は余り出ていない しかし、これまでのところこうした一連の不況対策は中国経済のパフォーマンスには余り貢献していません。実際、2月の貿易統計は輸出が▼25.7%、輸入が▼24.1%とそれぞれ急減しています。 また消費者物価ならびに生産者物価の急減はデフレ・プレッシャーが存在することを示唆しています。さらに1・2月の工業生産は前年比+3.8%成長にとどまりました。1・2月の小売売上高は+15%と、12月の19%からさらに鈍化しています。 ■建設関係が重点的に恩恵を受ける つまり結論的には確かに中国は世界の他の国々より景気対策をどんどん繰り出しやすい、有利な立場にあることは間違いないけれども、そうした大型景気対策の恩恵は中国経済の隅々までゆきわたっていないということです。 そうであれば投資家として心掛けることは景気対策で集中的に恩恵を蒙るセクターがどこかを考えることではないでしょうか? 先日の全人代で微調整、再確認された4兆人民元の景気刺激予算の使途は次のグラフのようになっています。 このグラフから言えることは「交通・発電・インフラ」と「震災復興」を足すと全体の63%に達するということです。つまり建設工事に密接に関係する支出項目が圧倒的に多いのです。中国政府がこの分野に注力する理由は非熟練工の余剰労働力の吸収に際して建設工事が有効であるからに他なりません。
2009年03月13日

今日のまとめ 1. 原油価格はボトムを形成しつつある 2. 新興国の石油株の株価評価はペトロブラスを除いてかなり下がった ■ボトムを形成する原油価格去年の夏以来一本調子で下げてきた原油価格がここへきて横ばいに転じています。(出典:ストックチャーツ・ドットコム) 原油の需要は世界経済の動向に左右されます。今のところ世界経済を巡るニュースは圧倒的に暗いです。従って原油価格も今後すぐに上昇トレンドに入るという風には考えにくいです。しかし一部には原油価格にとって良い材料もあります。たとえば中国はこの市況の安い時を利用して備蓄を増やす意向を持っています。また世界各国が金融緩和に踏み切った為、潜在的なインフレ・プレッシャーが蓄積されつつあります。供給の側を見ると石油の生産は今後減少すると思われますし、探索活動も鈍化しました。これらの事は中・長期的には原油の需給バランスが改善することを意味します。 ■確認埋蔵量 石油株を分析するにあたって出発点となるのは確認埋蔵量です。下のグラフは世界の上場石油会社の確認埋蔵量を比較したものです。 これを見るとエクソン(XOM)、ロスネフチ、ペトロチャイナ(PTR)、ルクオイルあたりがほぼ横一線で並んでいることがわかります。(*) 次に現在の株式市場の時価総額を確認埋蔵量で割り算して、投資家が1BOE(=バレル・オブ・オイル・イクイバレント)当たり幾らの株価を支払っているかを求めたものが下のグラフです。 このグラフは数字が大きければ大きいほど株価が割高であると言えます。ロスネフチとルクオイルの二社の株価評価が極めて低いことに注目してください。 もともとロシアの石油会社の株価評価は去年の前半のような市況の良い時でも低かったです。その一因はロシアのミネラル・タックス(=地下資源に対して課せられる税金)が市況の上昇とともに累進して高くなり、企業の手元に残る利益が目減りすることに対して世界の機関投資家が嫌気したことが一因です。いまロシア政府は税制を改革し企業や投資家へのインセンティブを増す方向で検討しています。 ロスネフチはユコスを買収した際に巨額の借入をしました。このところのロシアの金融不安で借り換えが心配されていたのですが、中国政府が融資の大部分を肩代わりするとともに長期に渡って安定的な原油の供給を受けることで契約を結びました。このためロスネフチの資金計画に関する不安は除去されたと言って良いでしょう。ペトロチャイナの評価も随分落ちました。今の水準では割安であると言えます。 このように新興国の石油会社の株価評価が軒並み低迷する中でペトロブラス(PBR)だけは依然比較的割高に取引されています。これはリオデジャネイロ沖での超深海油田の発見を投資家が高く評価していることのあらわれだと思います。ただ、現在の原油価格ではそれらの超深海油田は採算ベースには乗らないし、極めて大きな事業リスクがあります。なおこの超深海油田の開発に当たっては中国政府が巨額の融資をすると発表しています。 エクソンは昔から極めて株主利益重視の経営をしてきたことから常に割高に買われる傾向があります。 シェルは近年原油生産量成長率(下のグラフ参照)の面でも冴えませんし、確認埋蔵量の数字も大幅な下方修正が入るなど投資家にとっては嬉しくないニュースが続いたのですが、その割にはまだ割高に買われています。(*)但しペトロチャイナとペトロブラスに関してはSPE(ソサエティー・オブ・ペトロリウム・エンジニアーズ)基準の数字が見当たらなかったのでSEC基準の数字を使っています。
2009年03月09日
全3件 (3件中 1-3件目)
1


![]()