不思議の泉
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連日の冬山デッサンで母のつかう木炭がチビてきているのに気づき、本屋に行くからとわたし一人で出かけて街中にある画材具店に足を運んだ。天候はこの街の二月をあいかわらず灰白色で覆っていたが、ひさしぶりなので賢治ゆかりの材木町通りでちょっと火照ることにした。お昼過ぎのあくびのでる時間帯で人影はまばらだった。(スノーブーツ、買い替えどきかな。)居酒屋のまえでは、踏みしめたクラッシュ酒のような氷塊が (((たーーーーっ))) とペイヴメントのうえを滑り、ヒャッと体をちぢめた。(ったく、アタシは氷り道の若葉マークか。)土産物屋のまえでは、風にむかって (((負けじ))) と傘を傾げマリになってすすんだ。(ここはロマンチック街道、すべての道はどこに通じてるんだろう。。。) (火・鍛冶神) ヴァルカンを熾し、天にふる、はずむ。 (風神) アイロスを起し、空にふる、はずむ。お茶時クッキー分――――。『注文の多い料理店』の初版をだした光原社は今もこの通りにあって、その奥にある可否館からはコーヒーの香りがもの言いたげ。画材具店で受けとったおつりの五百円玉も、賢治のアロマを心に仕入れられればトレジャー・コインというもの。(ということでもない、か…。)≪どっどど≪どどうど≪どどうど≪どどう≪、突風がぬう、彼方から又サブロウが「おかあさーん。」と呼んでいるみたいに…、そうだ、お母さんに、お父さんの好きだった甘納豆、このコインで買って帰ろう。そこを曲れば老舗の和菓子屋さんがあったはず。ガラス張りのお店、たしかバス停のまえ…。道の端 (((りりん))) とよけさせ (((りりん))) アリガトウと会釈する。自転車の学生服は二月のお守りを懐に。 (淨め・二月神) フェブルウスを興し、傘にふる、はずむ。(この音、たしか‥。)子どものころ耳に弾んだお父さんの李白が今ポンポンと傘の上‥‥――――幼稚園のバスから、ひよこの帽子と紅玉のほっぺ――――‥‥ふー、ぬくい、お店のなか。テレビ・・・そっか、もうすぐ、オリンピックだった。う、黒スグリのジャムはずっしり、値段もだけど。(お母さん、すぐに甘納豆と帰るから、ね、三時にはロシアン・ティーだよ。)
2014.05.29
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