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大植&大フィルのマーラー3番、二日目です。今日の僕の席は前から3列目、ほぼセンターのかぶりつきです。大植さんの演奏スタイルは昨日と同じです。冒頭の「謎のギアダウン」をはじめとし、短いテンポ変化が頻繁に行われます。しかしそれに今日のオケはしっかりとついていきます。昨日とまったく違います。昨日の演奏後、今日の本番までに何があったのでしょうか。ゲネプロ前に、オケの中核メンバーが非常集合して自主練したのだろうか、などと妄想が浮かぶほど、昨日とは全く違うパフォーマンスです。第1楽章、第3楽章、昨日散見された大事故箇所はことごとくきっちりとクリア。一方第3楽章のポストホルンは今日も好調に、素敵な歌を奏でてくれます。ただ第2楽章も、第3楽章も、テンポがやはり速めで、自然の息吹というか、柔らかさというか、大植さんのマーラーの最大の魅力と僕が思っている生命を肯定するあたたかな歌が、今ひとつ不足気味と感じてしまいます。そして迎えた第4楽章は、聴きものでした。僕がシュトゥッツマンさんの3番の歌を聴くのは2回目です。最初に聴いたのは、2002年にシャイー&コンセルトヘボウが演奏したとき、予定されていたデ・ヤングさんが体調不良で来日できず、そのときの代役として歌ったときでした。このときの3番は終楽章をはじめとして大感動の演奏でしたが、第4楽章のことは特に記憶に残っていません。第4楽章はもちろん好きでしたが、当時はまだこの楽章の深みを僕はあまり理解していませんでした。そういう僕を第4楽章に開眼させてくれたのが、2005年の大植&大フィルの3番でした。このとき、大植さんと寄り添うようにして歌われたアルトの坂本朱さんの歌が、僕の胸にしみわたり、涙があふれて仕方がありませんでした。それまで幾度となく聴いてきた3番で、こういう第4楽章の体験は初めてのことでした。その後、2010年のヤンソンス&ラーソンさん、2011年の佐渡&デ・ヤングさん、2013年のアルミンク&藤村さん、つい先日のノット&藤村さんなどが、特に忘れがたい名唱として心に刻まれてきました。この日も深い歌が聴けました。シュトゥッツマンさんの歌はもちろんのこと、楽章の半ばすぎから入ってくるコンマス田野倉さんのソロが、素晴らしかったです。田野倉さんはすごい気合で、ときどき腰を浮かしながら、シュトゥッツマンさんと絶妙に絡みます。この部分で、大植さん、シュトゥッツマンさん、田野倉さんの3人の絡みをかぶりつきで味わえたのは、贅沢すぎる極上のひとときでした。夜の深みがじっくりと心に沁みました。あとここはホルンの絡みも重要ですが、今日はホルンもきっちりと決めてくれて、素晴らしい第4楽章が成就しました。そして最終楽章。オケの頑張りは見事だったです。管は充実し、かぶりつきで迫ってくる弦セクションの張り詰めた緊張感は凄かったです。コンマスの田野倉さんはもちろん、セカンドトップの田中美奈さんも眼光するどく、気合が入って素晴らしかったです。ヴィオラトップはかつての小野さんから代わった竹内さんという方で、この方もこの演奏会で大フィルを退団するということを後になって大フィルのツイッターで知りました。時はどんどん流れていくのですね。そして特筆すべきはチェロのトップの近藤浩志さん、この方の熱い演奏にはいつも感動させられます。今回の大植さんは、初日の記事に書いたように、主要主題のBメロをテンポを落としてじっくりと歌い上げるやり方でしたので、Bメロの聞かせどころの多いチェロで近藤さんが大活躍していました。近藤さん健在で良かった。終楽章の途中(多分練習番号6の半ば、第64小節)で、ホルンのソロの開始部分の1小節が抜け落ちてしまいましたが、これはご愛敬ですね。ここ以外は全曲通して目立つ傷は皆無で、十分に健闘したホルン隊でした。最後の和音の余韻が消えたあと、今日もまた完全な静寂がひとしきりホールを支配し、大植さんがタクトをおろしてから、大拍手が始まりました。そして今日はオケの皆様の表情がまったく違います!昨日の演奏を乗り越えての今日だけに、皆様の喜びはひとしおでしょう。そして田野倉さんの素敵な笑顔!シュトゥッツマンさんと満足げに握手を交わされてました。今日の第四楽章のソロは、田野倉さんご自身も会心の演奏だったと思います。やがて田野倉さんを筆頭にオケが盛大に足踏みして大植さんを称えます。昨日はなかった場面です。これがあって本当に良かった!やがて長い拍手がついに引き、大植さんが引っこみ、オケが退場し、続いて合唱団が退くときに、大植さんが舞台左奥に再びひょっこりと出てきて、退場する合唱団員と次々にハイタッチをしていました。なお本日も譜面台が置かれ、上には昨日も置かれていた黄色い表紙のスコアが置かれていましたが、この日は一度も表紙をめくることなく、ただそこに置かれているだけでした。大フィルのブログによると、なんと師バーンスタインの使っていたスコアだそうです。大植さんの要求にこたえ、そのドライブにしっかりと反応し、燃えた大フィル。大植さんと大フィルの絆の強さを再認識した二日目で、感動しましたし、非常にうれしい体験でした。ただ、今の大植さんが目指しているマーラー3番の世界は、今の僕の求める3番世界とはいささか異なるということを、確認することにもなった二日目でした。特に最終楽章の個性的で斬新なテンポ設定は、現在の僕には違和感が大きいです。かなり速いテンポ設定の上で、主要主題のBメロ部分だけを、ぐっとテンポを落としてじっくりと歌いこむ大植さん。Bメロの歌いこみ部分だけを取り出せば素晴らしいですけれど、全体としてのテンポ変化が大きすぎます。二日目は初日よりもさらにテンポ変化の振り幅が大きいように感じました。しかもこのテンポ変化の振り幅が、楽章の後の方になればなるほど巨大化していく感じがしました。終楽章の後の方のAメロ部分で今回の大植さんのとったテンポは、そもそも物理的にもかなり速いのですが、Bメロ部分が遅いだけに、余計に聴感上速く感じられてしまいます。特に最後近くの一連の音楽は、その傾向が著しかったです。極めつけは練習番号26~27の金管コラール以後です。ここの金管コラール(Aメロ)をあっさりと速く過ぎたあと、練習番号28からのBメロ部分をゆっくりじっくりと歌います。そのあと練習番号29からの主要主題Aメロの最後の高らかな歌の、速いこと速いこと。二日目にこの部分を聴いていて、かつて聴いたチョンミョンフン&N響の3番(2011年)の終楽章の同じ部分を、ふと思い出してしまいました。チョンさんはそのとき終楽章で、非常に個性的なテンポ変化を採用していました。詳しくはその記事に書いたとおりですが、終楽章の3ヵ所(第212小節、第282小節、第292~第295小節)を、突然ほぼ倍位にテンポアップしたのです。いずれもごく短い部分で、そのあとすぐテンポを戻しました。このうち3ヵ所目の第292~第295小節は、練習番号の29の後半です。まさに主要主題のAメロの最後の高らかな歌い上げの途中です。チョンさんは、練習番号29のうち、上記の4小節だけを速くしました。今回の大植さんは、練習番号29を全部速く通しました。チョンさんの方法とは、狙いも、やっていることも全く異なっているのですが、結果的に、その4小節(第292~第295小節)はテンポが速い、それもかなり速い、ということが共通したわけです。それでふと、そこを聴いていてチョンさんの演奏が頭に思い出されてしまった次第です。チョンさんの演奏を聴いたとき、その恣意的なテンポ変化に非常な違和感を覚えました。小細工というと言い過ぎかもしれませんが、そのような作為により、大河のようにとうとうと流れていき悠々と広がるはずの音楽世界が、ぶつぶつと分断され矮小化してしまうように感じたからです。今回の大植さんのテンポ変化は、チョンさんのものとは元々の発想も、実際にやっていることも全く異なるものです。しかし特に楽章最後近くのこのあたりのテンポ変化が非常に大きくて、僕としては、折角のマーラーの音楽の悠然とした流れを妨げてしまうように感じてなりませんでした。とは言っても、たとえばマーラー自身の指揮した終楽章は、案外こういう大植さんスタイルに近かったのかもしれません。大植さんは時代の最先端を行っていて、僕がそれにまったく追いつけていないのかもしれません。実際、2012年に僕が大きな違和感を感じた第一楽章冒頭ホルン主題のギアダウンは、その後アルミンクやノットなど他の指揮者も同じようなことをやっているわけだし、それを聴く僕の違和感も、かなり減ってきています。いつか、僕の聴き方も変化(進化?)し、今回の3番の意味をそのときになって理解できるのかもしれません。そうなりたいものです。実存に根差すゆえにこそ、常に変化し続けていく大植さんのマーラー世界。このところの2014年の6番、今年の3番を聴くと、現在の僕の求めるマーラー世界とは、距離がだんだんと広がって来ている感じがします。しかし、2005年の3番、2009年の5番、同9番(ハノーファー北ドイツ放送フィル)、2011年の大地の歌、2012年の9番、2013年の2番と、数々の素晴らしいマーラー体験を与えてくれた大植さんですし、その影響で僕の求めるマーラー世界も変わってきていると思います。大植さんには引き続き新たなるマーラー世界を開拓していっていただきたいし、今後もそれを体験し、いろいろな刺激を受けとめていきたいと思います。ぐすたふさんと飲んだ初日の「やけ酒」の味、さらにヒロノミンさんも交えて歓談した二日目の「美酒」の味、どちらも格別でした。ありがとうございました。また、大植さんのマーラー世界を一緒に体験しましょう!2005年の3番の感想を、当時の「招き猫」に書きました。細かいところは全然覚えていないけれど、最後に「また数年とか10年後くらいに、大植さんの3番を聴きたいと思います。」と書いたことは良く覚えています。2012年の3番のブログ記事にも、「また10年後くらいに聴かせてください」と書きました。今回もまた同じ言葉で締めくくりたいと思います。大植さん、また数~10年後くらいに、大植さんの3番を聴かせてください。
2015.09.21
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大植英次指揮大フィルによる、マーラー3番を聴きました。指揮:大植英次アルト:ナタリー・シュトゥッツマン児童合唱:大阪すみよし少年少女合唱団女声合唱:大阪フィルハーモニー合唱団管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団コンサートマスター:田野倉雅秋マーラー作曲 交響曲第3番9月17日、18日フェスティバルホール前の週の、ノット&東響の3番の直後という、空前の3番高密度週間になってしまいました。もう少し間隔があいてくれれば良かったんですけど、もしもこれが同じ週で、木・金が大フィル、土・日が東響だったら、4日連続になってしまうところだったので、それが避けられただけでも良かったです。大植さんと大フィルのマーラー3番を聴くのは、2005年大阪、2012年兵庫についで3度目です。2005年の3番は大植さんの生命肯定する前向きな明るさに強く心打たれました。2012年兵庫の3番は、詳しく記事に書いたとおり、全体として僕には疑問のある演奏でした。ともかく演奏のたびごとに大きな変化を見せる大植さん、今を生きる実存の有り様が如実に音楽に現れてしまう大植さんのマーラーですから、今回も予断を許しません。それから、大植&大フィルの大地の歌(2011年)で急に出演ができなくなったシュトゥッツマンさんが歌うのにも期待したいところです。まず初日です。本日の僕の席は1階前方、左寄りの席です。オケの入場前に、合唱団の入場が始まりました。女性と児童の全合唱団が入場してきます。そして舞台の後ろの雛壇に、前よりの2列に児童合唱、後ろよりの2列に女声合唱が並びました。それぞれの人数は、ざっとしか数えませんでしたが女声合唱の70人ほどに対して児童合唱が40人ほど。鐘は、舞台左奥。普通の配置です。オケの配置は、対抗配置ではなく、普通に左から1stVn,2nd Vn, Vc,Va,Cbでした。ハープは左側に2台。やがて大植さんが入場し、演奏が始まりました。20012年兵庫では、冒頭ホルン主題の大きなギアダウンがありました。今回も、ギアダウンしました。第5小節の上行音型ラーシードレミーーのところをものすごく遅くしました。そして続く第6小節のダン、ダンはすぐにスピードを速めてもとのテンポに戻しました。その速いままで、レミファーー、レミファーー、レミファーミーレードー♭シーラーソーまで速くとおりすぎ、そのあと第11小節あたりのファソミーーーから再び遅くする、というやり方でした。このギアダウンは、ダン、ダンを重く強調するアルミンクやノットとは全く異なるだけでなく、2012年の大植さんご自身のギアダウンともまた違っていました。2012年のギアダウンについては、「マーラー3番と両親(大植&大フィルのマーラー3番:その3)」の記事で詳しく書きましたので、そちらをご参照していただきたいのですが、2012年も2015年も基本「急、緩、急、緩」というテンポ変化なのは一緒です。しかし、2012年では最初の「緩」の部分が第5~8小節までの4小節でした。この4小節を遅くするという方法は、上向音型部分を遅くする、という特徴があり、そこに僕は父性性の強調という意味を見出したつもりでした。これに対して、今回の最初の「緩」は、第5小節の1小節だけに短縮されていました。前回とは全く異なることになります。ところで、大植さんは今までは3番を暗譜で振っていたのに、今回は譜面台が置いてあり、これにもいささか驚きました(これまでのマーラーは、4番で譜面を見ていた以外には、僕の知る限りすべて暗譜でした。)ただ、置いてはあるがほとんど見ないで振っていて、ときどき思い出したように指揮をしながら何ページもめくっていく、という様子でした。そして第一楽章の後半にはスコアを閉じてしまい、その後はほとんど見ることはなかったです。それにしてもこの第1楽章、オケが乱調です。大太鼓が落ちるし、アンサンブルはそこかしこ乱れます。やがて楽章後半、ホルン主題が再現される前の小太鼓部分にきました。この小太鼓が今回、舞台裏でなく、舞台上でそのまま普通に叩かれました。このような舞台上小太鼓の演奏会には、たまに遭遇することがありますが、まさか大植さんの演奏会で見ることになるとは思いませんでした。いささかショックです。人手不足のためか、練習不足のためか、その両方のためなのか。。。(大フィル公式ブログによると、3日間の練習をめいっぱいやったようですが。)今日の仕上がり具合から想像すると、リスキーなことをやる余裕がないという判断で、舞台裏小太鼓を避けたのかもしれません。そのようなショックな小太鼓に導かれて始まったホルン主題の再現ですが、そこにもさらに驚きがありました。ここでは、冒頭部分の第5小節に相当する部分でのギアダウンを行わず、そのまま速いままでスルーしていきました!何故に冒頭部分だけギアダウンして、ここではやらないのでしょうか?大植さんの意図が謎です。天才的直観によるものなのか、それとも何らかの深謀遠慮によるものなのでしょうか。このような驚きが続いたのでシンバルの人数をすっかり見落としてしまいましたが、二日目に確認したところ、冒頭では一人だけ、再現部分でも一人だけという、打楽器奏者最小限節約スタイルでした。。。やはり人手不足?なお夏の行進での弦半分のところは、各プルトのオモテ奏者のみ弾くというやり方でした。結局今一つ調子が出ないままで、長大な第1楽章が終わりました。今日の大植さんは、冒頭のギアダウンを筆頭として、ところどころで急にテンポを落とし、また戻すというテンポ変化を頻繁に行うスタイルです。こういうミクロ単位というか、短いスパンでのテンポ変化は、6番(2014年)のときに強く感じた傾向で、今回はそれがますます顕著になった感じです。このテンポ変化についていくのはオケとしては確かに大変なことだろうと思いますが、それだけでなく、指揮とオケの呼吸が今ひとつ噛み合わない感じです。ここでオケのチューニングでもしたら良いと思ったのですが、それもなく、そのまま第2楽章が始まりました。大植さんらしい温かくしなやかな歌がもう一つ聴こえてきません。そして第3楽章。ポストホルンは舞台左手奥のドアをあけて、その外で吹いていました。このホールのようにあまり残響が豊かでない会場だと、どうしても開けられたドアのあたりから聞こえて来てしまうということになりますが、これは仕方ないことだと思います。ポストホルンそのものは安定した良い演奏でしたが、ともかくテンポが速くて、あっさりと過ぎてしまい、大植さんらしい明るい歌がここでも不足していたのが、残念でした。第3楽章が終わって、シュトゥッツマンさんの入場です。ここで、はっきりとした拍手が起こりました。大植さんも、指揮者の左前に置かれた椅子に着席するシュトゥッツマンさんの左手をとり、くちづけして迎えます。僕としてはここでは静寂のままの方がずっと好きなのですが、大植さんは以前からこのタイミングでの拍手は良しとしていて、大植さん流というか、独唱者を紳士的に迎えるスタイルをとられます。これはこれで、独唱者のひとつの迎え方と思います。さて着席したシュトゥッツマンさんが第4楽章を歌うためにあらためて立ち上がると、それとともに全合唱団が起立しました。このように全合唱団を第4楽章開始時にあらかじめ立たせる方法は、シャイーがとっていた方式で、第4楽章から第5楽章へのアタッカをスムーズに実現するためにもっとも良い方法と僕は思います。大植さんは2005年、2012年の両者ともに同じ方式で起立させていました。今回もこの方式で、良かったです。そして第4楽章。さすがにシュトゥッツマンさんの歌は聴きごたえがありますが、オケがやはりやや精彩を欠いていました。この第4楽章と第5楽章は、舞台後ろ上部に字幕が出ました。この曲で字幕が使われることはめったにありませんが、意味がわかりやすく、とても良かったです。シュトゥッツマンさんの着席のタイミングは、第5楽章の終わりの一番最後のビンーという長い音が静かに伸びているうちに、静かにゆっくりと着席しました。ついでに合唱団の座るタイミングは、第6楽章が始まってすこししてから大植さんが指示を出し、それに従って合唱団が座るという方法でした。そして終楽章。大植さんの独自のテンポ設定が個性的です。まず楽章冒頭の主要主題の始まりの8小節(いわば主要主題のAメロといえる部分)は、早めにあっさりと演奏されました。しかしそれに続く練習番号1からのチェロのメロディー(いわばBメロ)のところからいきなりぐっとテンポを落とし、メロディーをじっくりと歌い上げます。そして練習番号2で主要主題のAメロが再び出るところからはまた速いテンポに戻ります。こういう具合に、基本テンポはかなり速めに設定され、ところどころに出てくる主要主題のBメロの部分で、ものすごく遅く粘って歌う箇所が挿入されるのでした。練習番号でいうと、たとえば上述の1とか、9とかです。他の、オーボエで始まるやや憂いを帯びた副主題の部分は基本テンポのまま速いし、ところどころに出てくるホルンの強奏部分は、激しいアッチェレランドがかかります。唯一、Bメロ関連部分だけが遅いのです。このテンポの対比はかなり極端です。この対比は、音楽が進むにつれても変わらず、むしろますます顕著になっていくようです。たとえば練習番号11のフルート、クラリネット、オーボエの3人のユニゾン(Aメロ)は速いです。また練習番号26~27の金管コラール(Aメロ)も速い。しかしそれに続く練習番号28から(Bメロ)は極端に遅く、じっくりと歌われます。ここまでテンポ変化が大きいと、悠々とした音楽の流れがさえぎられてしまうように、僕には感じられます。あまり音楽に入り込めないでいるうちに、音楽が終わってしまいました。それでも今日の聴衆は素晴らしく、大植さんのタクトが上がっている間は誰も拍手せず、完全な沈黙がホール内を支配しました。これはなんとも嬉しいことです。大植さんと大フィルがかつて積み重ねた黄金の日々を称え、感謝する聴衆の敬意が根底にあるからこそ実現した静寂だと思います。(ちなみに2012年の兵庫公演のときにはこのような静寂はなく、すぐに拍手やブラボーが始まってしまいました。)拍手が続き、途中で出てきたのは、小さなポストホルンを持った秋月さんでした。過去の3番のポストホルンは、2005年は秋月さん、2012年は篠崎さん、そして今回は秋月さんと交代で吹いてきたことになります。秋月さんの安定した実力が健在でうれしく思いました。(帰りがけにホールの入り口に立たれていた秋月さんに使用楽器をお尋ねしたら、ヤマハのポストホルンということでした。秋月さんありがとうございました。)それから健在と言えば、2005年のこの曲のクラリネットが素晴らしかったことを覚えています、そのとき吹いていたのが確か金井信之さんと記憶しています。今回も、金井さんが味のあるクラリネットを吹いていて、健在ぶりが嬉しかったです。しかし全体として、拍手を浴びるオケの皆様の表情は、非常に硬いです。特にコンマス田野倉さんの表情は硬く、凍り付いたようです。今夜の出来に自ら強い不満を抱えていたのではないかと思います。大植さんはそれを察してか、最後に去るときに、自分の胸ポケットの赤いハンカチを出して、田野倉さんの胸ポケットの赤いハンカチと、無理やり交換しました!エール交換という意味をこめたのでしょうか。思わず田野倉さんの表情にもかすかな笑みが浮かびました。今夜の演奏は、オケ全体としてのまとまりの悪さと、大植さんのユニークすぎるテンポ変化が、僕の中で負のスパイラルを生じてしまい、正直、残念な結果でした。明日の演奏はどうなるのだろうか、ここからリカバリーできるのだろうか、そんな不安というか、悲しみに似た想いを抱いてしまった初日でした。
2015.09.21
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9月13日、ノット&東響によるマーラー3番の2日目です。今日の会場は東響の本拠地ミューザ川崎シンフォニーホール。僕の席は2階センターブロック前方部(2CAブロック)の右寄りです。このホールの2階センターブロックは前方の2CAと後方の2CBがあり、どちらも良い位置ですが、特に2CAブロックはステージとの距離がかなり近く、視覚的にも音響的にも僕のとても好きなブロックです。席に座って後ろを振り返って鐘がどこに置いてあるか客席内を見渡しましたが、見える範囲にはありませんでした。(演奏終了後に振り返ってみたところ3階センターブロック(3C)あるいは3階右ブロック(3RB)の最後方あたりで歌ったようでした。)ご参考までにミューザ川崎の座席表はこちらです。 昨日と同じに、女声合唱82名がPブロック(座席表の2P)に入場し、引き続いてオケが入場。昨日見えなかった金管の配置が良くわかりました。ホルンは中央から左側に横一列にアシストを含めて9人が並び、1番ホルンはジョナサン・ハミルさんでした。 音楽が始まりました。ホルン主題のギアダウンはもちろん昨日と同じでした。ところでホルン主題部分で僕がちょっとばかり気にしている点は、シンバルの人数です。冒頭のホルン主題呈示部と、楽章後半のホルン主題の再現部(練習番号55) で、シンバルがそれぞれ1回ずつバシャーンと叩かれますね。このシンバルは、スコアでは、冒頭部分は二人で ff 、再現部分は「何人かで」かつ fff と指示されています。何人かでというのはニュアンス的に、「3人以上で」という意味合いだろうと思います。しかしこのシンバルの人数をきっちりスコアの指示通りにやる演奏は、かなり少数派です。ほとんどの演奏で、最初一人、次二人とか、あるいは最初も次も二人、場合によっては最初も次も一人、などと手抜きで済まされてしまいます。ちなみにこのホルン主題の再現部の直前には、舞台裏で小太鼓が叩かれます。そこで、マーラーの指示通りに再現部のシンバル奏者を3人以上で実施しようとすると、通常とられる方法は、この舞台裏の小太鼓が鳴り終わって舞台上のホルンが主題を吹き始めたときに、小太鼓を叩き終わった打楽器奏者が一人あるいは二人、すかさず舞台裏から駆け込むように急ぎ足で舞台上に戻ってきて、シンバルを急いで準備し、そして舞台上のシンバル奏者と一緒に、何人かでバシャーンと叩く、というやり方になります。ここは時間的に余裕がほとんどないので、見ているだけでもハラハラしますし、演奏する方はかなりの神経を使うと思います。しかもそれでいて、実際に3人以上と3人未満とで音響的に大きな違いがあるかというと、正直言って、ものすごく大きく違うということはありません(^^;)。ただそれでも、そのような効率が悪いというか労多くして実り少ないマーラーの細かな指示を、どれほど忠実にこだわって実践しようとするかどうか、そこにその指揮者のマーラーへのこだわりの強さが現れて、僕が興味ある点の一つです。僕の記憶しているなかで特筆すべき素晴らしさだったのは、浅野亮介さんという方が指揮したアマオケのアンサンブル・フリーによる尼崎の演奏会(2012年)で、冒頭部分はふたり、そして再現部ではなんと盛大に4人と、スコアの指示を忠実に実行していました。この徹底したこだわりには敬意を表します。あともう一つ、横浜のアマオケみなとみらい21交響楽団も2014年に、再現部で派手な複数シンバル(よく覚えていませんが多分4~6人位でした)の演奏をやっていましたが、これはそもそも直前の舞台裏の小太鼓を、舞台裏でなくP席で大音量でやってしまうという、マーラーの距離感の指定を無視した、僕にとっては疑問符の付く方法でした。説明が長くなりました。今回のノットさんは、呈示部ではメインのシンバリスト一人でしたが、再現部は、この「駆け込み打楽器奏者」二人がさらに加わって、計3人で叩かせていました。肝心の音楽です。第1楽章は昨日と同じく、柔にして剛の、すばらしいものでした。第1楽章終了後、 今日もオケがもう一度チューニングして、美しい第2楽章が歌われました。そして第2楽章が終わって、ノットさんが少し間合いを取っているときに、藤村さんが昨日と同じようにしずしずと目立たないように舞台に入場して、指揮者の左横の椅子に静かに座りました。指揮者も知らんぷりしています。藤村さんとノットさんのあうんの呼吸で、拍手は今日も起こりませんでした。実は、ここまでの演奏中の聴衆のノイズが昨日よりも多く、ややざわついた雰囲気だったので、きっと今日は藤村さんの入場時に拍手が起こってしまうだろうなぁと観念していたのですが、忍びの術を心得ているかのような、気配を殺しきった入場でした(^^)。この聴衆を相手になかなかすごい、技ありの入場です。決して自分が目立とうとせず、音楽に奉仕するという姿勢が徹底している藤村さんならではのことと思います。ここまでも十分に素晴らしいのですが、ここからが、昨日よりさらに素晴らしさを増した演奏になりました。第3楽章のポストホルンは、2階の僕の席で聴いても、昨日と同じように、やや右前方の高いところから、しかしどこから聞こえて来るのかはよくわからないようなふわーっとした響きで、聞こえてきました。見える範囲では、2階席のドアは開いていないようだったので、おそらく3階席の右側の客席のドア(座席表の3-R4とか3-R5等)を2-3 ヵ所開けて、客席の外の通路で吹いたのではないかと想像します。適度な距離感で、豊かな響きでした。ポストホルンの調子も昨日よりさらに好調で、出だしの1~2小節の音程がごくわずかに低めだった以外には、完璧な音程、暖かく豊かな音色、歌いまわしの美しさ、どれをとっても極上のポストホルンでした。しかもこれが、超絶的に遅いテンポでたっぷりと歌われたのです。もしかしたら昨日よりさらに遅いテンポだったかもしれないです。このテンポで、楽器もポストホルンを使って、ここまで美しい歌を吹かれるとは、佐藤友紀さんに心からブラボーを捧げます。第4楽章も昨日同様、かなりの遅いテンポで、藤村さんの名唱が聴けました。藤村さんは、ノットさんがバンベルク響を振ったマーラー3番のCD(2010年ライブ)でも歌っているし、2人の信頼関係は相当厚いだろうと思われます。なお初日にはこの楽章でかすかにもたついたホルンも、今日は完璧でした。第5楽章は、僕の席では昨日と全く同じように、ほぼ真後ろの高い方向から児童合唱と鐘が聞こえてきました。僕の今日の席は昨日と比べて、女声合唱とは少し遠くなり、児童合唱とは少し近くなったので、音量バランス的に昨日より児童合唱がしっかり聴けて、とても良いバランスで聴けました。この児童合唱は本当にきれいな、澄んだ鐘のイメージにぴったりの、素晴らしい発声・響きでした。そして第6楽章。きのうと同じ、最初から最後までゆるぎなく一貫した遅さです。いや昨日よりも、さらにゆったりとした歩みのような気がします。ホルンが強奏する部分も、昨日よりもさらに超越的な存在感をもって響いてくるように感じます。そして最後近くの金管コラールも、昨日と同様に本当にゆったりと深々と美しいです。このコラール、昨日の僕の席ではトランペットが音量バランス的にやや埋もれ気味になりましたが、今日の席はこのコラールのトランペットを良いバランスでたっぷりと味わえて、最高です。このあと、だんだんと盛り上がって主題が歌われ、テインパニーの大いなる歩みになり、そして曲が終わります。すべて一貫した遅さ。このあたりの音楽は、初日よりもさらにまとまりが良く充実していたと思います。偉大な演奏です。そして最後の和音が鳴り響き、その余韻がホールから消えていきました。そのあとです。昨日のサントリーでは実現しなかった、演奏終了後の静寂が、今日は実現したのです。ノットさんの両手が高く上げられている間、誰一人拍手しませんでした。(ひとり、がさがさと音を立てる不届き者がいましたが、幸いにも拍手は起こりませんでした。)長い完全な静寂のあとノットさんの両手がゆっくりと下げられていき、下がり終えると、そこから初めて拍手が沸き起こりました。 二日とも名演でした。二日間を強いて比べるとしたら、第一楽章は初日の緊張度がまさっていたように思います。第三楽章以降は、二日目の演奏がより深みを増したように思います。特に二日目の終楽章は、奇跡的な音楽になっていました。だからこそ、聴衆の拍手もまったく起こらない、完璧な静寂が実現したのだと思います。東響は本当にいい演奏をしていました。特にホルン隊は、そのパワーの充実と、音色パレットの多彩さが、光っていました。あとポストホルン(おそらく首席トランペット奏者の佐藤さん)と、1番トランペット(おそらくもう一人の首席奏者の澤田真人さん)も、素晴らしかったです。ともかくもオケの皆々様に感謝です。あと一つ、触れておきたいことがあります。公演プログラムに、ノットさんと岩下眞好さんの「マーラー:交響曲第3番を語る」という対談が掲載されています。ノットさんの意外な3番感が語られていて興味深いので、これについてはまた近いうちに別記事で書こうと思います。なおノットさんは2014年度から東響の音楽監督をしています。このたびその契約を延長したことが発表されましたが、それがなんと10年間、2025/2026シーズンまでということです!お互いがよほど良い関係にあるのでしょう。今後の10年間のノット時代、東響にとって大充実の時代になるのではないでしょうか。
2015.09.20
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(この記事は、一つ前の記事「ノット&東響によるマーラー3番 初日(その1)」の続きです。)第3楽章が終わって、ここでも児童合唱がP席に入場することはなく、やがて藤村さんがおもむろに立ち上がり、第四楽章が始まりました。この曲は第4楽章、第5楽章、第6楽章はアタッカで演奏されるよう指示されています。それが守られない演奏が時々ありますが、今回のノットさんの、スコアの指示をきちんと守っているこのようなすばらしい演奏で、アタッカの指示を守らないはずはありません。そうすると、すでに児童合唱は、ホール内の客席のどこかに入場しているに違いなく、そしてそこに鐘も一緒に置いてあるに違いない、と確信しました。そしてこの第4楽章もゆっくりとしたテンポで、藤村さんの歌が心に沁みました。藤村さんの3番の歌を聴くのは、メータ(ベジャールのバレーの生伴奏による第4,5,6楽章、2010年)、チョン・ミョンフン&N響(2011年)、アルミンク&新日フィル(2013年)についで4回目です。最初のメータのときには表現が劇的すぎるかと思いましたが、前回のアルミンクのときと、今回の演奏は、深みがあり、素晴らしい歌唱でした。アルミンクのときもテンポが遅かったと思いますが、今夜のノットさんとの演奏も徹底して遅いテンポであり、最初の静謐さと、途中のやや劇的になるところの歌いわけが明確で、とても聴きごたえがありました。そして音楽はアタッカで第5楽章へ。ちょうど僕の席では真後ろあたりから、鐘と児童合唱の歌が始まりました。やはりいつの間にか、ホールに入場していたのでした。(演奏終了後に振り向いて確認したところ、RCブロックとRDブロックの間の通路で歌ったようでした。)そして女声合唱が、多分そのすぐあとに起立。(初日は児童合唱に気を取られ起立のタイミングを確認しそこないましたが、二日目に確認したところ、まず児童合唱と鐘が始まり、ついで第4小節、オケがはいってきたところで女声合唱団が立ち上がり、第7小節から歌い始めましたので、おそらく初日も同じタイミングであろうと想像します。)楽章間では女声合唱団を立たせず、楽章が始まってから立たせるというこの方法は、アタッカの静寂を重視した、実に賢明な方法です。(シャィー&コンセルトヘボウはさらに徹底していて、第4楽章の始まる前、独唱者が立つときに、一緒に全合唱団をあらかじめ立たせておくという、すごく気合のはいった方法でした。)ところで僕の席はかなり舞台近くでしたので、舞台上の女声合唱との距離はわりと近く、対して児童合唱との距離は比較的遠かったので、どうしても音量バランス的に児童合唱が弱く聞こえるのは仕方ありませんでしたが、児童合唱の質自体は、かなり洗練されたハイレベルのものでした。第5楽章のなかばで藤村さんの出番が終わり、そのあと藤村さんは微動だにせず直立したままでいます。まれに、自分の出番が終わった途端にどっこらしょと座り、気持ちの弛緩があからさまに現れてしまう独唱者がいて幻滅しますが、それと対照的な藤村さんのこうした凛とした態度は、音楽に奉仕する姿勢が強く感じられ、すばらしいと思います。第5楽章が終わり、ノットさんは指揮棒を上にあげたまま、ゆっくりと第一ヴァイオリンの方に向きを変えていき、そして第6楽章が静かに開始されました。間合いの静寂は数秒間あったでしょうか。緊張感の張り詰めた、すばらしいアタッカでした。終楽章がはじまって、しばらく藤村さんと女声合唱は起立したままでした。多分練習番号2の途中あたりだったと思います、まず藤村さんが非常にゆっくりと静かに座り始めると、それを合図に女声合唱も静かに静かに座り始めました。藤村さんは、アルミンクとの演奏のときも、音楽を邪魔しないように非常に神経をつかった座り方だったことを思い出しました。なお児童合唱の入場、起立、着席のタイミングはまったく不明ですが、おそらく入場は曲の開始前あるいは第2楽章と第3楽章の間と思われます。起立は不明。着席も良くわかりませんが、第5楽章と第6楽章のアタッカの静寂のときか、第6楽章が始まった後、藤村さんの着席に合わせて、非常に静かに座ったのであろう、と推測します。終楽章も、終始一貫ゆったりとしたテンポで進みます。やや陰りを帯びた第2主題部分も遅いままなのはもちろん、ときおり登場するホルンの厳かな強奏部分(練習番号7、19、22~23)も、まったくアッチェレランドせず、徹底して遅いままです。このホルンの強奏部分は、ほとんどの演奏で多かれ少なかれアッチェレランドしますが、ノットさんは徹底して遅いままです。何か超越的な存在が圧倒的に現れるような深い印象が喚起されます。最後近くの金管コラール(練習番号26~27)も遅いままでした。トランペットはこのテンポで吹くのはかなり大変だと思いますが、きっちり美しく吹ききっていました。そのまま曲はもりあがって、最後のティンパニーの大いなる歩みの部分も、そのまま遅いままでした。アルミンク&新日フィル(2013年)の第6楽章も非常な名演でしたが、最後のこの部分でアルミンクがややテンポを速めていたのが、僕の理想とは異なるところでした。今回のノットさんは最後まで遅いままで、ここまで徹底して一貫して遅いテンポの演奏は超貴重です。最後の長い主和音は音量的にはかなり控えめな方でした。そして最後の余韻がホールから消えた直後、まだノットさんの両手は高くあげられたままだったのに、惜しくも拍手が始まってしまいました。その拍手はほどなく一旦おさまり、静かになりましたが、ノットさんはそのあとは比較的すぐに両手をおろし、そこから改めて盛大な拍手が始まりました。充実した演奏だっただけに、指揮者が手をおろすまで完全な静寂が保たれなかったのは、残念でした。終演後に、RAブロックで聴いていた友人から聞いたところによると、最初の拍手が始まってしまった瞬間、ノットさんはがっかりしたように頭を落とし、コンミスの大谷さんと顔を見合わせたということでした。物理的な残響は消えても、指揮者のタクトが降りきるまでは、拍手は是非控えてもらいたいものです。それから大きな拍手が続きました。拍手しながらホールの後方を振り返ると、児童合唱団が、2階RCブロックとRDブロックの間の通路に並んで立っているのがわかりました。子供たちも大きな拍手を浴びました。やがて子供たちはホール外へ一度退場し、少ししてから舞台の右手奥にあらためて登場しました。全部で20人ちょっとでした。女声合唱の82名と比べて、少人数で大変だったと思いますが、とても良い歌唱でした。拍手は続き、やがてポストホルンを持った奏者が登場しました。バルブ付きの小さめのポストホルンです。このポストホルンを吹いたのでしょうか。あの遅いテンポで、すばらしい演奏です!あとでオケのホームページの写真で確認したところ、おそらく首席奏者の佐藤友紀さんと思われます。見事な吹きっぷりでした。昔にくらべ、日本の金管奏者のレベルアップはものすごいと思います。今回の演奏、オケは、管楽器の多少のほつれはありましたが、全体に大健闘でした。コンミスの大谷さんのソロも良く、チェロをはじめ弦の音色も美しかったです。藤村さんの歌は真に感動的でしたし、そして何よりノットさんの指揮。これほどのスケールと深みを持った3番を体験できるとは思いませんでした。明日の二日目は、ミューザ川崎です。とても楽しみにしながら、帰路につきました。
2015.09.16
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ノット&東響、藤村実穂子さんほかによる、マーラー3番を聴きました。非常に感動したので、まだ頭の中がまとまらないけれど、ともかく記事を書いておきます。指揮:ジョナサン・ノットメゾ・ソプラノ:藤村実穂子児童合唱:東京少年少女合唱隊女声合唱:東響コーラス管弦楽:東京交響楽団コンサートマスター:大谷康子マーラー 交響曲第3番9月12日サントリーホール9月13日ミューザ川崎シンフォニーホールまずは初日、サントリーホールの感想です。今日の僕の席は、1階平土間席のかなり前方、やや右寄りです。席に座って舞台上の楽器配置を眺めると、コントラバスが舞台下手に9台、ハープが上手に2台、両翼配置です。定かな記憶ではありませんが、何回か聴いたノットさんの演奏会はみな両翼配置だったように思います。ノットさんの基本スタイルが両翼配置だとすれば、僕としてはとてもうれしいです。マーラーは、両翼配置で聴くのが断然面白いです。ところで、鐘が舞台上に見当たりません。P席あたりを見回しても、どこにもありません。どこだろうと思っているうちに、開演時刻になり、オケの入場に先立ち、女声合唱がP席に入場して来ました。良くある方法とは異なり、女声合唱はP席の前方3列(2~4列)に座りました。それより後方は空いています。それで児童合唱が女声合唱の後方に座るのだろうと思いました。これは、素晴らしい配置です。児童合唱が高い位置に陣取るからです。以前の記事にも繰り返し書いているように、マーラーはスコアに、児童合唱と鐘を高い位置に置くように指定しています。しかしこの指定が守られることは比較的少ないです。たとえばサントリーであれば、鐘は普通に舞台上に置かれてしまい、P席の前方に児童合唱、P席の後方、一番高いところに女声合唱という配置などが多いです。この、鐘と児童合唱と女声合唱の配置を見るだけで、指揮者がどれだけこの曲にきちんと向かい合っているかが伝わってきます。女声合唱の入場のあと、オケが入場しチューニングです。児童合唱は、まだ入ってこないので、曲の途中で入場するようです。鐘がどこにも見えないので、もしかしたら、尾高&札響の3番(2010年)のように、第5楽章が始まったときに、P席後方のドアをあけて、通路で鐘を鳴らすのかもしれない、と思いました。第一楽章が始まりました。冒頭のホルンのユニゾンの主題から驚きが待っていました。まず第5小節からテンポを落としました。メロディーでいうと、ミラーソラファードッ、ファラーシドシーラーソーミー、このあとです。ラーシードレミーー、のところからテンポを少し落とし、さらに次のダン、ダン(第6小節)のところから、強烈に遅くしたのです。そもそもスコアではこの第5小節に「Nicht eilen」(急がず)と指定されています。マーラーが「速くするな」と言っている部分で、それならばと、逆に遅くし、第6小節で一段とだめを押すように遅くしたのです。このダン、ダンは、すごい重みがありました。ホルンの主題の途中でこのように大きく遅くする方法(以下ギアダウンと呼びましょう)は、かなり珍しいスタイルです。CDではセーゲルスタムがやっています。実演では、大植&大フィルの兵庫での演奏会(2012年)で、このギアダウンに初めて接して、非常にショッキングだったことが忘れられません。次いで、アルミンク&新日フィル(2013年)がそうでした。今回のノットさんは、僕の接した中で3回目のギアダウンになります。最初の大植さんの場合は、第5小節のホルンの上行音型(ラーシードレミーー)のところから大きくギアダウンしていました。アルミンクは、第5小節はややテンポを落とす程度で、続く第6小節のダン、ダンからギアダウンしていました。今回のノットさんは、アルミンクと同じ方法になります。大植さんのときにはこのギアダウンはかなりショッキングな体験でしたが、今回は3回目だったためか、それほどのショッックはなく受け止められました。それにしても、この頃こういう演奏が多いということは、国際マーラー協会の新校訂版は、ここに何かテンポ指示が加わっているのだろうか、とも疑問が生じます。僕の持っているポケットスコアは古い版なので、いずれ新しい版を見てみたいと思います。それで、この第一楽章、すごく良いのです。峻厳としたところはびしっと厳しい音作りだし、打楽器のときどき思いがけない強打が新鮮で、音楽を引き締めます。一方でうきうきと楽しいところは喜ばしく温かさが感じられ、多面的な魅力を存分に伝えてくれます。これはすごいです。たとえば峻厳性でいえばベルティーニ&都響(2001年)、生き生きとした喜びの表現で言えば大植&大フィル(2005年大阪)が、僕にとっての忘れがたい名演奏ですが、その両者の面をともに、これほどたっぷりと伝えてくれる演奏は、そう滅多にないです。テンポ設定はやや遅めで、そしてインテンポというわけではなく、微妙な加速や減速はあるのですが、それが目立たず自然な変化なので、聴いていてそれほどテンポが変わっているような感じがしないのに、気が付くと多少変わっている、そういう感じで、音楽がとてもしなやかです。まさに柔にして剛の3番。なお、トロンボーンのモノローグが終わって、夏の行進が小さく始まってしばらく続くあたりに、しばらく弦の奏者が半分で演奏するところがありますね(練習番号21~25と、その再現部にあたる63~65)。ここは、それぞれの弦パートの前方のプルトが弾くことが多く、あるいは各プルトのオモテないしはウラの一人が弾く場合をたまに見かけます。しかし今回は、それぞれの弦のパートの後方のプルトが演奏していました。この方法は珍しく、僕が接したのは今のところ大野和士&京響(2011年)の演奏くらいです。大野&京響のときは、初めて聴くためか、かつ指揮者にかなり近い席だったためか、音楽が空洞化したような違和感がありました。今回は2回目のせいなのか、音楽がすばらしいせいなのか、あまり違和感はありませんでした。でも、敢えてそうするメリットというのも特には感じませんでしたが。すこぶる充実した第一楽章が終わって、このあとの展開がとても楽しみになりました。オケがもう一度チューニングして、第二楽章。この楽章もチャーミングな美しい演奏でした。第二楽章が終わって、ノットさんはしばし間合いを取りました。その間に、遅れてきた観客が座席に座ります。そのかすかなざわめきの中で、メゾソプラノの藤村さんがいつのまにかしずしずと目立たないように舞台に入場して、指揮者の左横におかれた椅子に静かに座りました。拍手が起こりにくように配慮された、巧みな入場でした。このタイミングで一緒に児童合唱が入ってくるかと思いましたが、P席には誰も入場しませんでした。それならば第三楽章が終わってから入ってくるのだろうと思いましたが、その予想は良い意味で裏切られることがのちにわかります。第三楽章。ここから一段と音楽が深みを増しました。特にポストホルンの部分が素晴らしかったです。ポストホルンは、僕の席(1階平土間前方左寄り)からは、やや右前方の高いところから、しかしどこから聞こえて来るのかはよくわからないようなふわーっとした感じで、聞こえてきました。吹き始め少しの間こそ、わずかにしんどそうでしたが、しり上がりに調子をあげ、明るくあたたかな音色でゆったりと響いてきました。あとで2階RA席で聴いていた友人に訪ねたところ、RAブロックの2箇所のドアをあけ、客席の外の通路で吹いていたようだ、ということでした。ポストホルンは、しばしば舞台上の横のドアをあけてその外で吹かれます。その場合、音はそのドアのところ1ヵ所を通って出てきますから、席にもよりますが、結局そのドアあたりから聞こえてくることになりがちです。これに比べると、今回のように高いところのドアを、しかも2ヵ所あけるのは、より遠くから聞こえる効果を得やすくて良い方法と思います。もちろん今回の方法でも、開けたドアの近くの席の人は、より直接的に近くから聞こえてしまったと思いますが、ホールの多くの聴衆には、遠くからの十分な距離感を持って響いたことと思います。「どこから聞こえて来るのかはわからないけれど、どこか遠くから聞こえて来る。」これまさにマーラーの目指したポストホルンの響きだと思います。この距離感、絶妙でしたし、響きも豊かで美しかったです。さらに特筆すべきは、このポストホルン部分のテンポです。ものすごく遅く、ゆったりとしていたのです。舞台上で奏でられる音楽もデリカシーがあり、全体として夢のような世界に浸れました。これは本当にすばらしかったです。そしてポストホルンが終わって、にわかに雰囲気が変わり、ハープのグリッサンドに導かれてトロンボーンとホルンの斉奏の楽節(練習番号31)、アドルノが神の顕現と呼んだ重要な部分も、十分な荘厳さがありながら、温かみがある響きで、久々にこの箇所で満足できる演奏を聴くことができました。(長くなりすぎましたので、この続きはすぐ次の記事にわけて書きます。)
2015.09.16
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続いて9月6日放送分の感想です。ようやく世間の流れに追い付いてきました。今回のきらクラDON!の正解はベートーヴェンの悲愴でした。出題をきいてすぐにピンときて、自信たっぷりだったのですが、投稿しませんでした。投稿しなくて良かったです。正解発表をきいてびっくり、間違えていたのです!何の曲と間違えたかは、あまりに恥ずかしいので内緒です(^^;)。放送ではニアピンも紹介されなかったので、皆様正解だったのでしょうか。だとすれば、もしも投稿していたらきっと読み上げられ、悲しいラッパ音を浴びて、悲愴ぶっちぎりになるところでした。あぶなかった。。。ところで僕が今回の放送で一番興味深かった曲は、チェザリーニ作曲「アルプスの詩」です。曲の冒頭、やまびこのように呼応するホルン群とともに、開放的に鳴り響くカウベルの音色がなんとも明るく、気持ちよかったです。カウベルといえば、マーラーファンとしては何といってもマーラー6番(と7番)が、ピンときます。マーラーのカウベルは、アルプスらしさを微塵も感じさせないのに対して、このチェザリーニの曲は晴天のアルプスそのものでした。カウベル達は「この曲で鳴らされる方が、自分達らしくて気持ちいいや、マーラーはどうも、小さく鳴らせだの遠くで鳴らせだの神経質で困ったものだ」と内心思っているのかもしれません。そしてこの曲のエンディング、これはマーラー3番の引用というか、3番の影響が大きいですね!カウベルに始まり3番風に終わる曲ですから、チェザリーニさんはマーラーが大好きとお見受けしました。マーラー3番のエンディングについてはいろいろと書きたいことがあります。いずれ別記事で書こうと思います。今週はきらクラDONの出題も、BGM選手権のお題発表も、ありませんでした。BGM選手権の今度のお題として僕の予想では、来週のそらみみ祭りのために、まりへい師匠による落語ネタが出るであろう、と思っていました。出題そのものがないとは意外でした。となると来週は、レギュラーコーナーはすべてお休みで、そらみみと、おまけの駄洒落クラシックだけがひたすら流されるのでしょうか??空前絶後の放送になりそうです。
2015.09.10
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きらクラ!夏休みのゆるゆるペースに油断していたら、なんともう番組が2回終わってしまいました!昔、学校の2学期が始まって、速いペースに気持ちと体が、なかなかついていかなかったときのようです。今更ながら前々回(8月30日放送)のきらクラ!の感想を書いておきます。きらクラドン!の正解曲、幻想交響曲ですごいお便りがありました。大学オケでこの曲を演奏したときに、教会の鐘のような納得のいく響きを出すために、工学部の学生と協力して自分たちで手作りの鐘を作ったということでした! 研究を重ねた結果、直径20cm、長さ1.5メートルの筒状の鐘を作ったということです。普通のチューブラーベルよりもかなり太いですね。素晴らしいこだわりです。この音聴いてみたかったです。幻想の鐘は音程が二つあるので、長さの違う2本の鐘を作ったのだと思われます。その後このベルは、その大学オケが大事に所有して、今でも幻想や、音程があえば他の曲でも使用しているのでしょうか。それともどなたかが記念に家の中に吊り下げて保存し、ベルリオーズの命日に叩いているのでしょうか、そして家族から迷惑がられているのでしょうか、などといろいろ想像を膨らませて楽しくなりました。以前テレビで、「名曲探偵アマデウス」で幻想をとりあげたときに、なかなか気合の入った鐘の映像を見た記憶がありましたので、今回久しぶりにその録画を見直しました。コバケン&日フィルの演奏会の映像で、教会の鐘楼にあるのと同じような、いわゆる普通の鐘の形をした鐘が、ステージ上に二つ鎮座していて、かなりの存在感があります。それも結構大きくて、ダース・ベイダーのヘルメットを一回りか二回り大きくしたぐらいの大きさでした。それがちゃんと上から吊り下げられていて、それを奏者がハンマー(多分木製)で鐘を外側からコーン、コーンと叩いていました。さらに、もう記憶が定かでないのですが、いつかテレビの映像で、やはり同じような巨大な鐘を吊り下げて、しかも教会の鐘楼の鐘がひもを引っ張られて振り子のように大きく揺れて鳴るのと同じように、何かの方法で大きく揺らせて、鳴らせていたのを見たような記憶がおぼろげにあります。しかしこれはもしかしたら、先ほどのコバケン日フィルの映像の記憶が時間の経過とともに僕の頭の中で妄想的に肥大してしまったのかもしれません。だってこの方法だと鐘を内側からなんらかの物質で叩いて鳴らすことになり、それだと音を発するタイミングの調整がかなり難しいでしょうから。いずれにせよこういう本物のような鐘を鳴らした音で、幻想とか、それからマーラーの復活とか、聴いてみたいと思います。脱線しますがマーラーの復活の鐘でこれまでに僕が聴いたベストの音色は、2007年にインバルがフィルハーモニア管を振って東京芸術劇場でマーラー選集をやったときです。このときは、たった1週間のうちに10番アダージョ、1番、2番、5番、9番などを1回ずつ演奏するという「暴挙」で、その演奏は、全体に荒く雑で、あまり感心しなかったのですが、2番の鐘だけは素晴らしかったです。チューブラーベルで、色は珍しく濃い茶色で、太さは遠目にはよくわかりませんでしたが特別にすごく太いということはなかったです。そして長さが、すごく長かったのです。すごく高い雛壇の上にベルと奏者が乗って、ベルの下端は雛壇の手前にぶら下げて、ずっと下まで長く垂れさがっていました。この鐘の音色は、教会の鐘楼の鐘の音を彷彿させる、深く暖かい音色で、これには感動しました。これフィルハーモニア管の所有する鐘なのだろうと思います。その後このオケが再び来日して別の指揮者(だれか忘れましたが)と復活をやったときに、またあの長い鐘の音が聴ける!と楽しみにして行ったら、このときのベルを使わず、短い(というか普通の長さの)チューブラーベルだったので、がっかりしたこともありました。いつか復活で、教会の鐘楼のような巨大な鐘がガラ~ンゴロ~ンと響き渡る演奏を聴いてみたいと、夢みています。鐘で熱くなってしまいました。えーっと、きらクラの記事でした。続く中トロコーナーでは、お寿司屋さんのカウンターに座ってひたすら中トロを頼むという想像にふかわさんの異常な興奮ぶりが面白かったですね。「ふかわずし」は「こだまずし」には語感上とてもかなわない、とも嘆いていらっしゃいました。もし「ふかがわずし」だったら江戸前のおいしいイメージがわいたのに、ふかわさん残念でした。いずれ中トロ祭りが行われるかもしれないとのことでした。そこでもしスクリャービンがかかれば、「ビントロ」になります。あたまはどーれの正解曲は、チャイコフスキーの1812年でした。この曲のユニークな楽しい演奏に接したことがあります。2011年12月の、スウィングル・シンガーズによるアカペラのコンサートです。このブログに以前書いたので、そこから抜き出しておきます。元記事は、こちらです。------プログラム後半にはチャイコフスキーの1812年をやりました。アカペラでこういう曲をやるというのは「超絶技巧を示すため」みたいな感じがして、あまり進んで聴きたいとは思わないで聴いていましたが、面白かったのは、大砲のところです。オケでやるときは、大砲の打ち鳴らしたときの「ドーン」という発射音になりますよね。それが、この人たちは、発射音ではなくて、発射された大砲の玉が、近くに迫ってきて着弾する「ヒューーーーードーン!」という擬音を出すんです、これが繰り返されるので、聞いていて思わず笑ってしまいました。------そしてBGM選手権。山村暮鳥の「蚊」にマーラ―の交響曲第4番、プロコフィエフのスキタイ組曲、ファリャの「恋は魔術師」、そしてショパンのノクターン嬰ハ短調、遺作。ベストはレニーシカさんのマーラーでした。見事です。鐘やら大砲やらのあと、最後は、夏の終わりのこだまっちセレクトで、コントラバスのゲーリー・カーによる「故郷の人々」でした。しみじみとした味わいで、迫る秋をひしひしと感じたひとときでした。
2015.09.09
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8月後半、ヘルニアの手術を受けた病院の外来を受診しました。ちょうど手術を受けて1年です。病院の敷地に入ると、去年ひと夏をここで過ごしたこと、リハビリとしてバランスボールを初めて体験したこと、病院の中をひたすら歩行訓練したことなどが懐かしく思い出されます。まだまだ現状では右足の力が弱いですが、1年前よりはずいぶん良くなりました。レントゲン写真をとったあと、手術していただいた先生の診察を受けました。レントゲンは特に問題なしで、右足と左足の筋力を診ていただいたところ、弱かった右足首の背屈力が、1段階上がったね、と仰ってもらえて、とても嬉しかったです。家でほぼ毎日バランスボールを使ってリハビリしていることを話したところ、是非それを続けてください、と励まされ、引き続き頑張ろうと思いました。無事診察がおわり、順調なので次の受診は1年後で良いとのことでした!この頃やっている自主リハを、備忘として書いておきます。(6月の時点での記事より少しメニューを増やしました。) まず仰臥位で「宗形ストレッチ」と、バランスボールを使った「股関節ほぐし」をやります。これは結構気持ち良いです。次いで座位あるいは仰臥位で、バランスボールを使った軽い運動メニューとして、バウンス運動、スクワット、腹筋、背筋、肩甲骨のほぐし運動をやります。バランスボールはこれで終わり、その後に立位で、肩甲骨をさらにほぐす運動と、時間と気力体力に余裕があるときは、腕立て伏せを少しと、立位で爪先立ちを繰り返す運動も少しやります。ゆっくりやると全部で40分位です。なるべく朝に全部のメニューをやるように心がけていますが、寝坊したときなどはできるところまででおしまいです。そのときは続きを夜帰ってからやろうと思いますが、夜は疲れてなかなかできないので、朝が勝負です。それから週2回だけですが、ウォーキングマシーンを使って30分歩いています。これは1年かけて、速度を時速2.0Km、2.2Km、2.4Kmとし少しずつ上げて、ここ1か月ほどは2.5Kmとしています。(2.4→2.6Kmとしたらちょっとしんどかったので、2.5Kmにしました。)このときにヘッドホンでいろいろな音楽や録音したきらクラ!とかを聴くのが楽しいひとときです。音楽を聴くから続けられている感じです。僕は昨年に入院するまで、20年以上、とある整体治療に週1回通っていました。骨盤・背骨のゆがみを調整するというもので、これに通っていると腰痛が出なく、これをさぼると腰痛が出る、という状態でずっと経過していたので、長く生活の一部となっていました。しかし昨年の手術後に、主治医から「腰をひねるような整体治療はしばらくやめた方がいい」と言われ、通うのをやめました。自分としてはいずれ腰痛がまた出てしまうだろうから、そのときからまた再開しようかな、と思っていました。しかし幸いにも、今のところは腰痛が起こっていません。バランスボールの効果だと思っています。今回で1年後の診察が無事終わって、ある程度回復していることも確かめられたので、これにプラスアルファを求めて、とある腰痛の整体治療院に先日初めて行ってみました。体の歪みが修正できればさらに元気になるかと思ってです。体の歪みには自信(?)がありましたけれど、その先生の診たてでは、「背骨や骨盤の歪みはわりと少なく、悪くない。問題は右足の力が弱くて、左右のバランスが悪く、それをかばっているために右足の筋肉の何箇所かが硬くなっている。ここをほぐすと右足の力も出てくるようになります」、とのことでした。それで左右非対称のポーズで足の力を入れて脱力する、という手技を受けました。軽い運動なのですが、情けなくもこれをやっている途中に右ふくらはぎがつってしまいました。先生がすかさずほぐしてくれて、その手技の続きを受けました。次いで、足のこわばりをほぐすオイルというのを両下腿に塗っていただき、(このとき右足首のあたりにすごく痛い圧痛点があり、ここがほぐれると良い、とのことでした。)これで終わりでした。昨年まで長い間受けてきた整体治療とはまた違った視点、手技によるアプローチです。効果の有無はわかりませんが、これをしばらく受けてみようと思っています。
2015.09.02
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