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2004.09.15
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カテゴリ: カテゴリ未分類


いつもの席にすわり、いつもの場所に出張鞄を置く。

外から見た時に入り口付近は空いていたのだが、見渡すと奥は込んでいた。
カウンター内の調理場に店長の姿しか見つからない。
「よわったな、また一人でやってるのかなぁ、混んでるのに・・・・・・」
バイトのホール係りが休みの時は、少々むくれながらも店長一人で走り回る店だ。
お客の私が気を使うのはおかしいのだが、そんな時はついつい遠慮がちになってしまう。

「まぁ良いか、そんなにお腹空いてるわけじゃないから・・・・・・」
煙草でも吸っていようと思ったら、灰皿が無かった。
「この席に座っていた客が前にいたってことか・・・・・・」
カウンターの隣の席にも灰皿は無い。
私は歩いて灰皿を取りに行った。
バイトはいつも、お客が帰ればテーブルを拭いて新しい灰皿を置いていく。
「やっぱり店長一人か」
そう思ったとき、奥の方にエプロンをかけた、見た事の無いおばさんを見つけた。

「いたじゃんか、新人か? よく店長が雇ったな・・・・・・」
ゆっくりゆっくり歩いてくるおばさん。
「こちらのお客さん、飲み物聞いて、早く」
やっぱり店長に言われた。
「それにしても優しいじゃんか」
いつもの店長はもっと怖い。
お客がいても、どんどんバイトの女の子を叱る・・・おかしい・・・。

おばさんがゆっくりゆっくりやって来て、オシボリを置いた。
「ホッピー下さい、氷要りません」
新人とお年寄りには私は優しい。
聞かれる前に丁寧に伝えてあげた。
「・・・・・」
返事が無い。
そう言えばオシボリ置いたときにも「いらっしゃいませ」は無かった。

「ホッピーね」
そう言って店長が作りに行って、カウンター越しに渡してくれた。
「おつまみ何にしますか?」
「・・・・・・厚揚げとから揚げください」
「はいよ」
機嫌は悪そうではない。
それでも私は手間のかからないものを頼んでいた。
やはり小心者だ。

何が食べたいわけではなかった。
ただ、少しだけアルコールが欲しかっただけだ。
前回も同じだった。
何にしますか?と聞かれて
「焼き鳥と鳥カラ」
と言っていた。
何も考えずに言っていた。
「焼き鳥に鳥カラ?」
店長が不思議そうに私に聞き返した。
考えてみれば、鳥だらけだった。
私のオーダーはいつもそんなものだ。


ホール内でおばさんはウロウロしている。
一応洗い物をしたり、料理を運んではいる。
運んではいるが、声が聞こえてこない。
「ハイよ」
威勢の良い店長の声がして、私のから揚げがカウンターの正面に置かれた。
受け取ったおばさんが運んでくる。
ほんの少しだけ遠慮がちに頭を下げて、うやうやしく両手で私のテーブルに置いてさがって行った。
言葉は無い。

考えることがあった。
店長の奥さんは外国人だと聞いていた。
限りなく日本人の顔立ちをした、おばさんは店長の奥さんなのかもしれない・・・・・・。
緊急の助っ人に頼んだのだろうか?
それにしても、大きい子供もいるようだし、日本暮らしも永いはずだし、日常会話が出来ないことは考えられないよな・・・・・・違うのかな・・・・・・。
以前も中国の方とかバイトで使ってたけど、そこそこ日本語は話せたし・・・・・・。
入れ替わり立ち代り何人ものバイトを知っているが、皆若かったよな・・・・・・。
やっぱり奥さんかな?
それとも、不慣れで言葉が出てこないだけかしら・・・・・・。

あれこれ考えていると、おばさんが厚揚げを運んできた。
やはり言葉は無かった。
ホッピーがカラになって、お代わりを頼みたくなっていた私に店長が声をかける。
「お代わりですか?」
「赤梅ください」
普段はこんなことは聞かない、気を回さない。
カバーしているのがはっきり分かった。
そう言えば、怒らない。

私はおばさんの素性を奥さんだと決めた。
決めると別の心配が出てくる。
「そこに座ってるおっさん、不必要な会話をおばさんにするんじゃないよ」
「間違っても国籍なんて聞いちゃいけないよ」
「遅い、なんておばさんいじめちゃいけないよ」
「髪の毛さわるな、なんて言っちゃだめだぜ」

私の心配をよそに、おばさんはウロウロしていた。
ウロウロしながら、癖のように髪の毛をさわる。
1分間に1度の割合で、長くはない前髪と横の方を右手でなでる。
おばさんは自分では気づいていないのだろうが、私はずっと気になっていた。
赤梅ハイを運んできたときも、指先は飲み口に近かった。
「もっと下を持った方がいいよ」
と私は言いそうになった。

2杯目の赤梅ハイを頼んだ時も同じだった。
「いやだな・・・・・・」
それほど神経質ではないが、つぶやいた。
気にして飲んでいては不健康そのものだ。
タイミングを見て店長にお勘定をしてもらい、店を出た。
「悪いおばさんじゃないけど、この店ものんびりいられる所じゃなくなるのかな・・・・・・どこか他に探さなくちゃならないか」
怖いもの見たさではないが、もう一度は行ってみようと思っている。
おばさんがまだいるか? いたとすると成長しているか?
見届けに行ってみるつもりだ。





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Last updated  2004.09.15 19:37:11 コメントを書く


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