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cozycoach @ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…
2022.10.29
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 人の三井とは、三井には個性的で有能な人物が集まったことと、その個性と技量を発揮できる場があったことを意味しています。

 ”三野村利左衛門と益田孝 三井財閥の礎を築いた人びと”(2011年11月 山川出版社刊 森田 貴子著)を読みました。

 幕末から明治期の三井中興の時代に、三野村利左衛門と益田孝はどのようにして、三井発展の基礎を築いていったのかを述べています。

 人の三井という言葉がありますが、いつごろからいわれるようになったかは定かではありません。

 1925年の高橋義雄さんによる”三井中興事情”には、三井発展の理由の一つが記載されています。

 その中で、明治維新期に「主人と番頭とが其人を得て能く難局を切り抜け」、1891年ごろからは「思慮ある主人と手腕ある重役」がいたためと述べています。

 三野村利左衛門は、三井の経営方針の中心を官金取扱いと考え、そのためには、三井家と三井の事業の分離が必要であると考えていました。

 その最大の改革が大元方の組織改革でした。

 益田孝は、創業期の三井物産において、三池炭礦の払下げを受け、三井物産の事業を拡大し、三井合名会社を設立し、三井を財閥へと組織しました。

 森田貴子さんは東京都生まれ、東京大学文学部を卒業し、同大学院人文社会系研究科博士課程を修了しました。

 博士(文学)で専門分野は日本近現代史、特に、土地制度、都市史です。

 2008年から2011年まで早稲田大学文学学術院講師、2007年に高千穂大学商学部准教授、2012年に早稲田大学文学学術院准教授となりました。

 現在、早稲田大学文学学術院教授を務めています。

 三井家の歴史は太政大臣・藤原道長に発し、その後藤原右馬之助信生が近江に移って武士となり、初めて三井の姓を名乗ったという説があります。

 しかし、三井家の先祖は伊勢商人で慶長年間、武士を廃業した三井高俊が伊勢松阪に質屋兼酒屋を開いたのが起源という説もあります。

 三井家はもともと近江の国佐々木氏の家来であり、先祖は藤原道長といっていますが、道長とのつながりは後から系図を作ったのかもしれない、とも言われています。

 三井高俊は質屋を主業に、酒、味噌の類を商いました。

 店は越後殿の酒屋と呼ばれ、これがのちの越後屋の起こりとなりました。

 高俊の四男・三井高利は伊勢から江戸に出て、1673年に越後屋三井呉服店=三越を創業しました。

 同時に、京都の室町通蛸薬師に京呉服店=仕入れ部を創業しました。

 その後、京都や大阪でも両替店を開業し、呉服は訪問販売で一反単位で販売しました。

 代金は売り掛け=ツケ払いという、当時の商法をくつがえす、店前売りと現金安売掛け値なし=定価販売などで庶民の心をとらえ繁盛しました。

 その後、幕府の公金為替にも手を広げ、両替商としても成功し、幕府御用商人となり、屈指の豪商となりました。

 明治維新後、三井家は薩長主導の明治政府の資金要請に応え、政商の基盤を確固たるものにしました。

 三野村利左衛門は、1821年に庄内藩士の子として鶴岡で生まれました。

 1827年に父親が養家を出奔し浪人となり、父親とともに諸国を流浪しました。

 やがて1839年に江戸へ出て、深川の干鰯問屋奉公を経て、旗本・小栗忠高の中間となりました。

 1845年に、菜種油や砂糖を販売していた紀ノ国屋の美野川利八の養子となり、利八の名を継ぎました。

 その後地道に資金を蓄え、1855年に両替株を買い両替商となりました。

 1860年に旧知の小栗忠順からの小判吹替の情報を事前に得て、天保小判を買占め巨利を得ました。

 1866年に三井家から勘定奉行小栗との伝を見込まれ、幕府から命ぜられた御用金50万両の減免交渉を任され、これを成功させました。

 その後、小栗の三井組大番頭斎藤専造に対する要請によって、三井に勤めることとなりました。

 そして、小栗と三井の間のパイプ役として通勤支配=取締役に任命され、三野村利左衛門と改名しました。

 1868年に小栗忠順が失脚し、幕府の命運を察して新政府への資金援助を開始するよう三井組に働きかけました。

 1872年に越後屋呉服店を三井の本流から切り離し、1873年に小野組と共に第一国立銀行を設立しました。

 翌年の小野組の破綻に伴う三井組の危機に際して、三野村は三井組の内部改革のため、大隈重信大蔵卿を通じ明治維新政府との繋がりを強めました。

 そして、三井組内部での権力を確立し、1876年の三井銀行設立に繋げていきました。

 さらに、三井組内の商事組織である三井組国産方と合併させました。

 また、井上馨と益田孝によって設立された商社先収会社の解散を機に、益田に三井物産会社を創設させました。

 1877年に胃癌のため57歳で死去し、三井銀行の経営は婿養子の三野村利助が引き継ぎました。

 幕末・維新期を通して、日本政府は三井との関係無しでは存立がいかない状況となっていました。

 三井の転機は、1881年に明治14年の政変で下野した山陽鉄道社長の中上川彦次郎と益田孝を、三井元方重役に据えた事です。

 益田孝は1848年佐渡国雑太郡相川町に生まれ、父親は箱館奉行を務めた後、江戸に赴任し、ともに江戸に出て、ヘボン塾、現・明治学院大学に学びました。

 麻布善福寺に置かれていたアメリカ公使館に勤務し、ハリスから英語を学びました。

 1863年にフランスに派遣された父親とともに、遣欧使節団に参加し、ヨーロッパを訪れました。

 帰国後、幕府陸軍に入隊し騎兵畑を歩み、1867年に旗本となり、1868年に騎兵頭並に昇進しました。

 明治維新後、1869年から横浜の貿易商館ウォルシュ・ホール商会に事務員として1年間勤務し、多くの商取引を見聞しました。

 のち、自ら中屋徳兵衛と名乗って輸出商を手掛けました。

 仕事仲間から紹介された大蔵大輔の井上馨の勧めで、1872年に大蔵省に入り、造幣権頭となり大阪へ赴任しました。

 旧幕時代の通貨を新貨幣にきりかえる任にあたりましたが、翌年に尾去沢銅山汚職事件で井上が下野し、益田も続いて職を辞しました。

 1874年に、英語に堪能だったこともあって、井上が設立した先収会社の東京本店頭取に就任しました。

 1876年に、日本経済新聞の前身、中外物価新報を創刊し、同年、先収会社を改組して三井物産設立と共に同社の初代総轄に就任しました。

 三井物産では綿糸、綿布、生糸、石炭、米など様々な物品を取扱い、明治後期には取扱高が日本の貿易総額の2割ほどをも占める大商社に育て上げました。

 商業派の益田孝に対し、工業派の中上川彦次郎は三井の工業化政策を多数押し進めました。

 次いで、不良債権問題に立ち至った三井銀行の建て直しをはかり、私鉄経営にも意欲を見せました。

 しかし、学閥を嫌う益田孝と中上川彦次郎の対立が鮮明となり、1909年に5参事の合議制による運営体制に移行しました。

 また、傘下の中核企業を有限会社から株式会社へ移行しました。

 1893年に三井鉱山が設立され、三井銀行、三井物産、三井鉱山の御三家体制となりました。

 第一次世界大戦の好景気で三井財閥は産業が大きく伸張し、三井銀行を起点に信託・生命保険・損害保険等の金融部分の拡充・多様化が進行しました。

 しかし、1927年の昭和恐慌期に端を発した財閥批判が、三井財閥に向けられました。

 財閥攻撃の嵐の中で、三井総両家当主・三井高棟と益田孝が協議し、三井合名理事・池田成彬を筆頭常務理事に指名し総帥に就任させました。

 池田は、11家からなる三井家を説得して財団法人三井報恩会を立ち上げ、大胆な財閥転向施策を実行しました。

 その後、日中戦争の勃発を契機に戦時体制へ移行した事から、財閥批判と攻撃は次第に沈静化しました。

 三井財閥は戦時経済体制の有力な担い手となり、政界にも多くの幹部を送り込みました。

 三野村と益田が活躍した、幕末から明治期の日本は、国内においても対外的にも、政治・経済・社会、すべてにおいて激動の時代でした。

 本書は、幕末の開港から1914年に益田が三井合名会社相談役になるまでの時期を取り上げ、三野村と益田の活動をとおして、三井と日本の社会の歴史を考えています。

「人の三井」/1 幕末の三井/2 三野村利左衛門と三井の改革/3 益田孝と三井物産会社の創立/4 益田孝と三井物産会社の発展/三野村利左衛門と益田孝の業績

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Last updated  2022.10.29 05:13:33 コメントを書く


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