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「はぁ……、それは良いけど。何で俺。」ため息をついて、カウンターにあごを載せる。ついでに姉さんの顔をジト目で睨んでやる。「そんなこと言われても、私が指名した訳じゃないのよ?」呆れた顔でこっちを見てくる。まぁ当然か。「で、一体何人攫われたの?その不確定名称スライムに。」ちょっとまってねー、と依頼の紙を漁る姉さん。「あー、あったあった。えっと……ミアさん……フィールさん……御影さん……シェイルさん……その他諸々合計10名。」そんなにか……ってちょっとまて。「気のせいか?女の子の名前しかないような気がするんだが……。」「あら、よく気が付いたわね。その通り。」をいをい……なんだそのスライム(仮定)、偏食か?まぁ、スライムに食われても皮膚がちりちりするだけだったりするんだけど……故に捜索兼救出願いが出たりする。気が狂ってなかったりすると良いなぁ……「ん、で?これまでに誰か退治しに行ったの?」でなければ指名など来ないだろう、基本的にここにいないし。「ん~、そうねぇ……2回ほど救出に行ったけど……返り討ちにあったみたいね、しかもパーティーの女の子取り込まれて。」うわぁ……悲惨……「で、そんな奴相手に出来るのか?……なんか自信なくなってきたんだが。」「いいの~?そんなこと言って。」何だか含みのある笑顔でこっちを見てくる。「何かあるのか?」と、姉さんは写真を一枚撮りだした。「これ、だーれだ。」「げっ……鈴風……。」写真は元後輩の鈴風だった、カメラに向かって笑顔で写真に写っているが……場所がここ、セントレイトだってのが問題だ。「あいつこっちに来てたのか……て、その写真どうしたんだよ。」「ん?まぁ、蛇の道は蛇って言うじゃない……。」また、この人は……。「まぁ、それはともかく。こいつがどうしたんですか?」「ん~、被害者。」……今なんて言った。「は?」「だから、被害者。」まじかよ……「はいはいわかりました、引き受けますよ。」「そう?そう言ってくれると思ってたわ。」……えぇ、そうでしょうね。「で?だいたいの目星はついてるんですか?」「うん、まぁね。」「それじゃあ、行ってきますか……スライムかぁやだなぁ……。」と、言うわけで奴がテリトリーとしているらしい森まで来た。……えっと何処にいるのか……精神を集中する。-我が力は誰かのために-呪文を唱える。力を得た理由、自分の思いを忘れぬ為、力を使う前には唱えるようにしている。風が水が木がささやきとして教えてくれる。もと居た世界では曖昧な感覚でしかなかった精霊の言葉がはっきり聞こえる。「見つけた。」目では見えないけれど、わかる。目で見えるところまで近づいてみて驚いた。「10人どころの数じゃないぞこれは……」巨大なゼリー状の固まりの中に20人弱もの人が飲み込まれている。一応生きてはいるみたいだけれど意識は……有るわけ無いか。さて、どうするか……誰も取り込まれてなかったら凍らせてから砕くんだけど……仕方ない……精密な力の使い方は疲れるんだけどなぁ……再び集中する。イメージは氷の針。すっとおろした手のひらに10cmほどの氷の針が生み出される。狙うは核。けど下手に射出したら怪我をさせる可能性があるから遠隔操作。奴に気取られぬよう、ゆっくり、確実に操作する。卑怯かもしれないが下手に真正面からぶつかるよりずっと安全だ。奴の中に入った時点ではまだ針は属性を発現させない。針が核のそばに来たところで、一気に核の周りだけを氷結する。……はぁ。うまくいった。核を失ったスライムの体は組成を維持できなくなりどろどろと溶けて地面に吸い込まれていき、20人近い女の子とスライムの核の氷漬けが残った。「あー、疲れた。」くびをこきこき鳴らしながら近づいていく。氷漬けの核を剣の柄で砕いてから、辺りを見回す。どこもかしこもスライムの体液でどろどろで、気絶した女の子たちが転がっている。「で、どうやって運べば良いんだよ……」と、途方に暮れるのであった。結局、姉さんに連絡して馬車を呼んでもらった。依頼は10人だったがそれ以外の行方不明者からもお礼をもらった。「いいなぁ、一気にお金持ちだ。」「おごらないよ。」きらきらした目で見てくる姉さんを睨んで晩ご飯を食べる。「所で…。」「なに?」「知り合いの女の子はどうだったの。」ぴたっ、二人の間に言いようのない沈黙が流れる。「……忘れてた。」まずい、何がまずいのかよくわからないけどまずい。「忘れてたって……いいのそれで……。」「……まぁ、どうせ嫌でも現れるんだ。それまでは知らん顔してよう。」「いいのかなぁ……。」「妙に絡むな。」「だって後ろにいるもの。」「ぶっ!」ぎりぎりとさび付いたロボットのように後ろを向こうとする。……よりも早く。「せんぱーい?今なんて言ったんですかぁ~~~~~!」後輩の手が俺の首を締め上げていた。「いででででで、く、苦しい。悪かった!悪かったから。」渋々手を話してくれた。なんつうやつだまったく。「先輩が居なくなっちゃったから、こうして追いかけてきたのに……そう言うこと言うんですね。」「……悪かった俺の負けだ。勘弁してくれ。」「じゃあ、先輩が居なくなってからのことを話してくれたら許してあげます。」「めんどくさいなぁ……何から話すか……。」俺は、今までに起こった事を鈴風に話して聞かせた。まぁ、確かにめんどくさい後輩ではあるが大事には違いないし。ちゃんと助けられてよかった、うん。と、いつの間にか居なくなっていたアニーさんはちょっと離れたところから二人をみて。「なかなか面白そうなことになりそうね。」とほくそ笑んでいた。
2005.03.31
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澄み切った青空の下、ぼんやりと考える。特に確たる意志もなく作った世界。すでに、自分自身は管理者ではなく、創造主でしかない世界。それでも、いまとなっては様々な人種あふれるこの世界はかけがえのない物で。そして今もこうして世界を渡り歩きながら自分が作った世界を思い出す。あの世界は自分にとっての第2の故郷。この世界を流れている風は、あの世界までながれていきはしないけれど。でもなぜかこの風は続いているような気がした。「さて、馬鹿なこと考えてないで次に行くかな。」彼の名はラキス、もしくは輝(あきら)。隔離世界『夢想世界』の創造者にしてゲートの最終権限を持つゲートキーパー、彼の役目は自身及び管理者の端末が選んだ適格者を『夢想世界』に誘うこと。彼がそう言った直後にその姿はかき消えた。夕暮れの歩道橋の上、おそらくは部活帰りの少年が空を見上げていた。風縒学園高校2年、御影真夜。最近、物思いにふけることが多くなったように思う。考えるのは夢のこと。小学生の頃、魔法が使えるようになりたいと思っていた、魔法が使えたら本の中の不幸も自分が何とかしてあげられると思って。中学に入り、そんな夢見たいな事はないと思いながらもその夢をあきらめられなかった。高校に入り、未だにあきらめられないで居る。なぜならば……一陣の風が吹く、思わず目をつむると隣に人の気配と風の流れが、かがんで避けると先ほどまで頭のあったところを学生鞄がうなりをあげて通り過ぎていった。俺はため息をついて。「あのな、鈴風。俺を殺す気か?」「大丈夫です、先輩。鞄の中には何も入っていませんので、ちょおっとばかし歩道橋でのたうち回るくらいで済みます。」物騒なことをにこやかに言う奴だ。「あのなぁ……今のところ避けられてるが、もし当たったらどうするんだ。」「ちゃんと手当とか看病してあげますよ?」一瞬でもいいかもとか思った自分が悲しいな。「それはさておき、いい加減にあきらめたらどうだ。」これ見よがしにため息をつき、がっくりと肩を降ろしながら言う。この、目の前でにこやかに俺の隙をうかがっているのは後輩の鈴風春香(すずかぜはるか)。同じ戦技部(戦闘技能部の略らしいよくこんな部が認められた物だと感心する)の後輩だ。戦技部というのは名のごとく戦闘技能を磨くところで、武器の扱いに長けた創立者の部長の指導の元、部員は様々な武器を扱う技能を養うという風縒町らしいといえば風縒町らしい部活ではある。「いやですよ。先輩にかすってでも当てるのが今の私の目標なんですから。」いや、だからそう言うことをにこやかに言わない。そんなだからうちの部は暗殺者育成部とか言われるんだ。「それは良いが、そう言うことは部活中にしてくれ。」おれが、ため息をつきながら言うと、「はーい。」と、ちょっと残念そうにうなずいた。暗殺者に狙われる要人の気分が何となくわかった気がする。正直疲れた。がっくりとうなだれて手すりにもたれかかる。「はぁ……疲れた。」「大丈夫ですか?」「誰の所為だと。」じろっと睨んでみる。「ま、まぁ私の所為なんですけど、あはは…」笑ってごまかすなよ……「こほん、それにしても何で当たらないんでしょう?」「何の話だ?」「部活の話です。」戦技部において、俺はそんなに強いわけではない。どっちかというと弱いほうだ、まぁ異能者だらけの部活で強かったらそれはそれですごいが。それはともかく、異能者である鈴風にここまでつきまとわれたりするのには理由があったりする。別に私は異能者の子供でも夢想世界に行ってきたわけでもないが、一つだけ特技がある。風が詠める。別にこの風はまったりしているとかそう言う感じではないんだけれど風を感じてそこから何か情報を得ることが出来る。雨が降りそうだとか、そういう感じで。その所為か、風を使った能力ならばほぼ100%見切ってかわすことが出来る。もちろん自分の運動能力の範囲内でだけれど……異能力、というのはやや微妙で、けれど確かにあるこの感覚。それのおかげで今めでたく後輩に暗殺されかかっていたりするわけです。彼女の能力は“風になる”こと、精神力の続く間自分自身と身につけている物を風にすることが出来る。故に俺の感覚にははっきりと鈴風の存在を感知でき、本来ならば不意打ちである攻撃も不意打ちではなく頑張れば避けられるものになってしまうのである。それはもうひょいひょいと避けたので(痛いのは嫌だし)ムキになって木刀を振り回してきたり、さっきみたいな奇襲があったりしたわけです。ちなみに、このことはみんなには内緒にしています。何となく、中途半端で恥ずかしかったりするので。「さぁ?勘だよ勘。」とか言ってごまかしております。「ぜったい、何かあると思うんだけどなぁ……先輩、何か隠してません?」そりゃあ、怪しいと思うよなぁ……「隠してないって。それより、用がないなら俺は帰るぞ。」「あぁ、ちょっと待ってくださいよー、家近くじゃないですかー。」さっさと行こうとする俺に慌てて付いてくる鈴風。「はいはい、わかったから大きな声で騒ぐな。」後輩に歩幅を合わせ、家路につく。帰る途中鈴風がうれしそうだったが何か良いことでもあったんだろうか。
2005.03.06
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