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「フォイエル、目標はわかっているか。」男の声で通信が入る、いつものように私を直接運用している上官だ。「問題ありません。」必要な事以外は何も言わない、いう必要が無い。私は、彼にとってただの道具に過ぎず、私がどう思おうともその事実は変わらないのだから。必要なのは任務を遂行する事、ただそれだけだ。『フォイエル、いつものように楽勝だよね。』そんな冷たいやり取りの中、私のほうにのみ明るい声が聞こえる。偵察、攻撃用端末。名前をスペクトラム。私の不敗を支え、そして唯一対等に話すことが出来る相手でもある。『スピィ、あまり油断していると怪我をしますよ。』彼女は、自分の事を愛称で呼ばせたがり、本名で呼ぶと不機嫌になる。何でも“信頼しあう中なのだから愛称で呼んでほしい”との事だったが理解できない。彼女は私の事を本名で呼ぶにもかかわらず、自分の事は愛称で呼ばせるのはおかしい。その事を言うと決まって“だって、フォイエルって名前かっこいいじゃない”と帰ってくる。それを言うなら、スペクトラムも気品があっていいと思うのだが、彼女は気に入らないらしい。『大丈夫だよ、私は本番に強いんだから。』『それでも、です。なまじ私たちは戦果を上げているのです。真っ先にねらわれる対象である事を忘れないでください。』『わかってるよ。フォイエル。』『ならいいのです、スピィ。』この会話はいつも変わらない。出撃前の決まりごとのようなものだ。これをやった日は無事な日が多く。しなかった日は破損が多い。おそらく、いつもどおりに振舞うことは自覚している以上に安定を与えるものらしい。「時間だ。フォイエル、出撃せよ。勝利をわれらに。」「フォイエル了解、勝利をわれらに。」『無事の帰還を私たちに。』これが私の日常。そのはずだった。あの日、世界が崩壊するほどの“災害”が起こらなければ。「……また、あの夢ですか。」壊れて動けなくなってから夢を良く見る。しかも見るのは決まって同じ、出撃前のいつものやり取り。この夢を見る理由はわかっている。悩んでも、今の体ではどうしようもない事も理解できる。だが、それでも。思わずにはいられない。考えずにはいられない。夢見ずにはいられない。「スピィ……、あなたは今どこにいるのですか。」
2005.07.04
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『なぁ、博士。ひとつ聞いてもいいか。』「何かな?Type-1。」『なんであんたは俺らに心なんてものを付加するんだ?どう見ても戦うのには必要ない。潜入も考慮した戦闘兵器であるマスターはともかく、その端末たる補助兵器につける必要がどこにあるんだ?』彼はキータイプの手を止め、いすごと振り返った。「そんな事はない。君たちにだって心は必要だよ。」『その理由は?』「それは……」『私も聞きたいですわ。』「おやおやType-2も来たのかい。仕方が無い子達だ。」『そんな事はいいから。早く教えてくれ。』「あぁ、わかったよ。」そういうと、彼はコーヒーを入れていすに腰掛けた。「まず、君たちは戦争後にどうなると思う?」『廃棄処分はありえんだろうな。良くて封印、悪くても再配備だ。』封印よりも再配備のほうが悪いと言い切るType-1に苦笑しながら、話を続ける。「そうだね、確かにその可能性が高い。でも、そうでないかもしれない。今はロボットに人権は認められていないけれど、戦争が終わってからなら認められるようになるかもしれない。そのときに心が無かったらもったいないじゃないか。」『そんな不確定な事のために私たちに心を付与したんですの!?』「まあ、そんなのは建前で、君らに心を付与したのは僕なりの抵抗……かな。」『抵抗?軍に対してか?』「あぁ、僕はもともとこんなもの作りたくなかったし、確かにロボットは作りたかったけど、こんな戦闘用じゃなくって、人とともに生きられるようなロボットが作りたかった。」『なんともまぁ、とんでもない理由だな。』「自分ではどうにも出来なかったからね、せめて戦争が終わってからの役に立てられるようにやれる事をやっているだけさ。」『でも、そのおかげで私たちは心を持てたのですから感謝していますわ。』「で、この事を知った君たちに相談があるんだけど……」『なんだ?』「………。」『それは本気ですの?』「本気だ。」『わかんない人だな。ほんとに。』『まったくですわ。でも、その話には感動しました。』「じゃあ。」『えぇ、私は協力いたしますわ。Type-1はどうなんですの?』『そんな事は聞くまでも無いだろう。』『では、きまりですね。』「ありがとう。二人とも。」『さて、では下準備に入りますか。これから忙しくなりますわね。』
2005.07.04
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