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2012年06月20日
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「冬の鷹」吉村昭
1774年(安永3年)8月、 オランダの医学書の訳本「解体新書」が出来上がった。 しかし、この本には後に我々が常識のように知っている前野良沢の名前は無い。前野良沢が訳者に自らの名を出すのを拒否したからである。杉田玄白、中川淳庵、桂川甫周との共同作業の中で1番オランダ語に通じていたのは前野良沢だった。しかし彼は「未完訳稿ともいうべきものを出版すること自体が、私の意に反する」と云う。いや、不完全でも医学の進歩のために早く出版するべきだ、と云うのが杉田玄白の考えだった。つまり、2人はたまたま志を同じくして大事業を成したが、性格は正反対だったのである。(この辺りの事をまろさんが 4月18日の日記 で詳しく述べている)

吉村昭はあとがきで、「良沢も玄白も同時代人として生き、同じように長寿を全うしたが、その生き方は対照的であり、死の形も対照的である。そして、その両典型は、時代が移っても、私をふくめた人間たちの中に確実に生きている。」と書く。

前野良沢は学究肌で一生名誉栄達とは関係無く貧しさの中で亡くなった(しかし不幸せだとは私には思えなかった) 。杉田玄白はプロデューサー的資質に富んでいて、人当たりも良く、医者として栄達を極め、金も儲け、人々に囲まれ亡くなった(しかし決して悪辣なことはしていない)。その2人の対比が面白かった。

今回この本を読んだのは、50歳近くになって、オランダ語の学問に目覚め、つきすすんで 行ったという前野良沢になにかしら共感を覚えたからである。この本を読むと、めらめらとハングル学習欲が湧いて来た(^_^;)。

また、人嫌いの前野良沢が何故か急進的な尊皇思想家・高山彦九郎と交流があり、それとは関係無く良沢は択捉(エトロフ)の地理書を翻訳している。完全にノンポリであるにも関わらず、その90年後の激動の思想的準備をしていたことに、何かの「歴史の必然」を、私は思うのである。

その後、つくづく思うに自分は杉田玄白タイプだった。未完成でも、世に注意を喚起することの方を選ぶ。名誉や金銭欲はあまりないが、名を後世に残したい、世の中の為に成りたいという欲はある。

前野良沢は、名誉や金銭欲とは全く無縁なので、ついつい自分と重ねあわせがちではあるが、完璧主義の姿勢はやはり私とは無縁だと思う。





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最終更新日  2012年06月20日 23時56分06秒
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Re:「冬の鷹」あなたはどちらのタイプ?  
まろ さん
ご紹介ありがとうございます。この作品もいかにも吉村さんらしいものかなと思います。杉田玄白「蘭学事始」という線ではなく、前野という選択。そして良沢がくちにする平賀源内への嫌悪感。いろんな事を感じさせられました。玄白は源内の碑銘を書いてますね。 (2012年06月23日 12時45分19秒)

Re[1]:「冬の鷹」あなたはどちらのタイプ?(06/20)  
まろさん

-----
吉村さんの作品はこれで三作品目です。いつもそれとは知らずに読んでしまいます。「長英逃亡」は高野長英のゼミをいいかげんに終わらしたことの罪悪感から、小説をハードカバーで買ったことは数えるぐらいしかないのですが、ついつい買ってしまいました。「海もくれゆく」は尾崎放哉に急に興味を持っていたときだったので、衝動的に。そして、この「冬の鷹」はまろさんの記事に触発されて読んだのでした。満足しました。ありがとうございました。
(2012年06月24日 00時44分20秒)

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