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2014年09月20日
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カテゴリ: 邦画(12~)
今月の県労会議に載せて貰った映画評です。



「そして父になる」
是枝裕和監督の作品はこれまでも「歩いても 歩いても(07)」「空気人形(09)」と度々取り上げてきました。私の好きな日本人監督のひとりです。去年全国公開された邦画に限れば、私はこの作品を1番に推しています(邦画のマイベストワンは「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」なのですが、DVD化されそうにないので、ここでは紹介できません)。

是枝監督はテレビのドキュメンタリー番組出身です。よって俳優の自然な演技を重視します。特に子どもの扱いは秀逸で、「誰も知らない(04)」では柳楽優弥をカンヌ映画祭男優賞に導きました。この作品でも、野々宮慶多役の二宮慶多くん、斎木琉晴役のファン・ショウゲンくんの存在感は主役たちを喰っていました。大人たちも負けていません。日本アカデミー助演賞を受賞した相手の夫婦役のリリー・フランキー、真木よう子はもちろんのこと、主人公野々宮の妻を演じた尾野真千子も、わずかな台詞や所作からどんな人生を送って来たのかが垣間見えるものでした。

よく映画仲間からは「主役の福山雅治は大根だ」といわれますが、この作品の彼はあの不器用さ自体が役にはまっていたと思います。彼は学歴、仕事、家庭といった自分の望むものを自分の手で掴み取ってきたエリート会社員という設定です。自堕落な父親に頼らず全て自分の力で勝ち取ったのだと思っています。そしてそれを子どもにも求めようとしているのです。でも本当に彼はひとりで勝ちとってきたのか。継母や妻の力があったのではないか、彼は父親として本当に子どもと向き合ってきたのか、今回のことをきっかけとして鈍感な彼にも感じる処が増えてゆきます。

さて、本筋は子どもの取り違えという出来事に遭遇した2組の家族を追うドラマでした。子どもが6歳という微妙な設定。子どもが青年だったら、自分で親を選ばすのが筋でしょう。けれども今回は親に選択の決断が迫られます。親子関係に「なる」ために必要なのは、果たして「血」なのだろうか、「時間」なのだろうか。
回答を、作品は描いているわけではありません。ラストも「よくわからん」という人もいました。あれは「血も時間も」選んだのだと私は思ったのですが、皆さんはどう思うか。あとからじわじわくるタイプの作品でした。(2013年日本作品レンタル可能)





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最終更新日  2014年09月20日 18時57分54秒
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