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2019年06月08日
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テーマ: 本日の1冊(3697)
カテゴリ: 平和運動


岩波ブックレット
米国の日本文学研究者が北海道宗教者平和協議会の招きで講演した内容を加筆・修正したのが、岩波ブックレットで出ていた。彼女の著書は読んだことはないが、概して米国の研究者は日本のそれよりも的を得た事を指摘することが多い。考えの概要を知ろうと思い紐解いた。
・なぜ〈平和〉を語ることが難しく感じられるのか?戦争にせよ、深刻な病にせよ、命とは奪われそうにない限り、その価値を実感し続けることが不可能に等しいから。これを人類的原理だと彼女は言う。日本人の特性だと私は思っていたので少し安心するとともに、その根の深さにおののく。
・「逆さまの全体主義」とは、名も顔もない企業国家体制下で、選挙、憲法、公民権、報道の自由、司法の独立など、建前としては維持されているようで、実質的には市民は無力に苛まれている状態のことらしい。米国にしてそうならば、日本は更にそうだろう。よって、それは容易に「顔のある全体主義」になり得ると彼女は言う。この時はトランプ大統領が誕生する直前の講演だった。
・福島原発災害に戦後70年の問題が凝縮されている。国、行政、大企業は「無責任」ですまされる。しかし「自主避難」を余儀なくされた人たちは「自己責任」を突きつけられる。この体制は、戦争法であれ、基地問題であれ、原発再稼働であれ、地域で声を上げることを困難にする枠組みを支えている。
・日常の平穏を支える仕組みと価値観は、まさしく平穏が脅かされ、取り戻そうとした時に顕在化するものだ。平穏の条件を観ずに、ひたすら平穏を望むことは「逆さまの全体主義」を支える願望にほかなりません。そして「逆さまの全体主義」がいかにたやすく逆さまではなく「正規」の全体主義になり得るか、(朝日新聞記者が公的支援も得られず学園講師の職場を追われる)この会場の北星学園の例が鮮やかに示しています。
・ファシズムは一時に社会を均等に覆うものではない。言い換えれば、全体主義は「逆さま」な姿とそれを正したものが重なることで、勢力を増していくのではないか。そして、余裕を持つ、油断が許される立場のものは手遅れになるまで油断し続ける。でも、決して忘れてはならないことがある。「逆さま」の全体主義にはまだまだ抵抗の余地がある、非暴力の。
ノーマ・フィールド氏の日米両国を見渡した〈平和〉への思索は、確かに的を射たものだった。





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最終更新日  2019年06月08日 07時40分14秒
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