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なぜアイルランドで、これほどジャガイモがもてはやされたのだろうか。 それには、アイルランドの特殊な地質条件がある。ここは、1.1万年前までの氷河期にスコットランドと同様、厚い1枚の巨大氷床に覆われていた。今の国土は、氷床が退いた痕なのだ。
◎氷河期の遺残で痩せた泥炭湿地の広がる土地
したがって国土は痩せて、表土も薄い。氷河期の遺残で、巨大な漂礫と不毛な泥炭湿原が広がる。泥炭湿原は、同国の面積の2割も占める。
僕は06年に、アイルランドの独立と内戦を背景にしたアイルランド・イギリス合作の映画『麦の穂をゆらす風』を観たが、そこに描かれたアイルランドの荒涼とした風土をよく覚えている( 写真
)。黄色いエニシダの花だけが、潤いを添えていた。

こんな痩せた土地の上に、アイルランドは気候も冷涼ときている。アンデス高原で栽培化されたジャガイモには、うってつけだ。 ジャガイモは、まさにアイルランドのために用意された作物だったのだ。
◎ジャガイモの主食化で人口急増
アイルランドにジャガイモが導入されたのは16世紀末らしく、17世紀には畑作物として受け入れられ、18世紀には主食の地位に就く。
これにより、人口は急増した。1754年には320万人ほどだったアイルランド人口は、「ジャガイモ飢饉」の直前の1845年には820万人にまで増えていた。1世紀足らずのうちに、一挙に2.6倍に増えたのだ。
それは、アイルランドには大きな災厄を準備するものだった。
1845年夏にイギリスのワイト島で発生したジャガイモ疫病は、その年のうちにアイルランドに上陸、翌年からアイルランドのジャガイモの生産は大きく落ち込む。
◎クローンのためにジャガイモは伝染病で全滅
そして1848年には、史上有名な「ジャガイモ飢饉」となる。食べ物がなくなったアイルランド人は、骨と皮だけになって続々と餓死、または栄養失調が原因で病死する( 写真
=首都ダブリンにあるジャガイモ飢饉の記念碑)。

こうなったのは、単一作物に主食を依存したことも原因だが、大きな理由はジャガイモ栽培はクローンによる栄養生殖に基づいたからだ(09年9月11日「なぜ性はあるのか――有性生殖の意義 2:ジャガイモ飢饉、アイルランド、風と共に去りぬ、ケネディ家」を参照)。 クローンだから、見渡す限りの畑のジャガイモは、すべてゲノムが同じ。1つの株に発生した病気は、あっという間にすべてのジャガイモに伝染し、枯死したのである。
◎餓死・移民などでアイルランド社会の崩壊
この未曾有の大飢饉で、アイルランド社会は崩壊した。
人口の少なくとも20%が餓死及び病死し、生き残った10~20%の人たちは新大陸アメリカなど海外に移民した。前記の日記にも触れたが、アイルランド系のケネディ元大統領の曾祖父母は、1848年の大飢饉の年にアメリカに逃れたのである。
もう170年も前のジャガイモ飢饉は、今日でもなおアイルランド社会に爪痕を残している。餓死、病死、難民化しての脱出で、ほぼ半減したアイルランドの人口は、その後もピーク期に遠く及ばず、2013年現在でもアイルランド人口は459万人に留まるのである。
◎そろそろ北海道でもジャガイモの花
『ジャガイモの来た道』からの連想が、膨らんだ。
僕は、肉ジャガなどジャガイモ料理は大好きだ。特に塩ゆでにしたジャガイモにバターを塗ったものなど、絶品である。それだけにアンデスの恵みを、この本で学べたのは、有益だった。
そろそろ日本の冷涼の地の北海道で、広く作付けされたジャガイモ畑に、白い花が毛氈を敷いたように観られる季節だ。北海道は、日本一のジャガイモ栽培地である。
花を観ると( 写真
)、よく分かるだろうが、何かの花に似ていると思うだろう。そう、ナスの花である。いずれもナス科ナス属である。

追記:共和党大統領候補、トランプ氏に
これで、トランプ氏が共和党の大統領候補になることが確定した。昨年6月、ニューヨークで共和党の予備選に出馬表明した時、誰もが予想しなかった、最悪の結果である。
世界の指導者であるアメリカ大統領候補としてトランプ氏の最大、かつ致命的な欠陥は、同氏が明確な理念を持たず、情緒的に発言・行動してきたからだ。
「アメリカ第1」と言うのは、ただのポピュリズムであり、そこから日本への厳しい姿勢がにじむ。半面、理念なき人物らしく、習近平のスターリニスト中国とプーチンの強権ロシアには、関係改善を口にする。
この2つの面が絡み合うと、どういう政策ベクトルとなるか。考えられるのは、日米安保条約を不公平条約と批判することから、在日アメリカ軍と基地の日本からの撤退が視野に入ることになる。そしてスターリニスト中国とは、貿易を交換条件に西太平洋の自由度を委ねる懸念が増す。
すなわち「トランプ大統領」のもとで、極東の安全保障を切り捨て、沖縄の普天間・嘉手納基地からの撤退が強行される懸念が強まる。日本の左翼や「進歩的」新聞は、喜ぶだろう。その後に、スターリニスト中国がやって来ることも知らぬげに。
彼らは、密かに「トランプ大統領」を願っているに違いない。
11月の大統領選挙本選には、「よりマシな」ヒラリー・クリントン氏の当選を願う。
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