うたのおけいこ 短歌の領分

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October 22, 2022
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カテゴリ: 百人一首
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藤原俊成(ふじわらのとしなり/しゅんぜい)


世の中よ道こそなけれ
   思ひ る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる



千載 せんざい 和歌集 1148

濁世 じょくせ
どこにも のが れる道はないのだなあ。
深く思い込んで分け入った
この俗世を離れた山の奥にも
やはり物憂く鹿が鳴いているというのだよ。


小倉百人一首の選者・藤原定家の父の、いかにも玄人好みの秀歌。
初句の「よ」の用法が当時としてはきわめて斬新で、一種の「絶唱感」を齎している。

藤原俊成:本名「としなり」。 有職 ゆうそく 読み(貴人や優れた文人などへの尊敬の念をこめた音読み)で「しゅんぜい」と読むことが多い。

世の中:憂き世。愛別離苦などの煩悩の苦しみ多き 現世 げんぜ 空蝉 うつせみ 。ここでは「山の奥」と対照的な俗世の意味で否定的に詠われている。

(世の中)よ:詠嘆・感動を表わす終助詞または間投助詞。「ああ、~だなあ」「~よのう」。現代文でしばしば使われる呼びかけの「よ」とはニュアンスが異なる。

道こそなけれ:逃れる道はないのだ。「こそ・・・けれ」は強調・整調の係り結び。「道」は「山」の縁語。

思ひ る:「深く思いに耽る」と(山の奥に)「分け入る」(隠遁する)意味を掛けている。

鹿ぞ鳴くなる:「ぞ・・・なる」も係り結びで、哀切の情をさらに強調している。「なる」は伝聞・推定の助動詞「なり」の連体形。

鹿の牡は交尾期の秋に「フィー」のように聞こえる鳴き声を発して牝に求愛する。「わびさび」を感じさせる物悲しい響きとして、古来多くの和歌に詠まれている。
この時季に妊娠した牝は、翌年初夏の5~7月頃1頭の仔を産み、仔鹿は生後約2年で成熟するという。




200px-PD-icon_svg.jpg creative commons.jpg   ニホンジカ

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Last updated  October 22, 2022 04:56:02 AM
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くまんパパ @ 体に気を付けて、のんびり行きたいですね やすじ2004さん、いつもありがとうござい…
やすじ2004 @ Re:松任谷由実  ハロー、マイ・フレンド(08/16) お元気ですか 今日も湿度が高い一日でした…
くまんパパ @ 男と女の契り 七詩さん、いつもありがとうございます。 …
くまんパパ @ 新仮名づかいの悲劇ですかね、旧仮名に変更します(^^) 七詩さん、いつもありがとうございます(^^…
くまんパパ @ 短歌では、ありですね(^^) 七詩さん、そうですね、同感です。 私も…
七詩 @ Re:ニヒルなれども面白し(06/08) くまんパパさんへ あの「世の中にたえて…
くまんパパ @ ニヒルなれども面白し 七詩さん、いつもありがとうございます(^^…

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