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えんどう豆の汁もの、アワビ入り。
豆のほんのりとした甘さがいい。アワビはコリコリしているイメージがあるが、ここでは意外にも柔らかだった。和風ポタージュは、西洋のそれのようにぼってりと重くなく、それでいて味わいは深い。この腕前には、「う~ん」と、唸ってしまう。
お造りは、タイ、伊勢海老、ウニ。醤油はもちろん、九州の少しどろっとした甘味のある醤油。やっぱり刺身には、九州の醤油だよなあ…。このコクが生の魚の身と絡み合い、絶妙のハーモニーに。
唯一、ウニだけは、本州・九州・四国のどこで食べても北海道を凌駕できないが。
そして、出ました。「夏のフグ」こと、オコゼの刺身。
オコゼの刺身は初めて食べたが、淡白な味わいの中に、甘さがあり、柔らかさの中に歯ごたえも感じる不思議な食感。
素晴らしいでしょう。
オコゼは、古来「山の神」が好むという逸話がある。ただ、それは味ではなく、外見に理由がある。山の神は女でしかも醜いため、自分より醜いオコゼを見ると喜ぶのだという。
…絶句。
とことん、女性をバカにした作り話だ。
最近はもうこんな話を知っている人も少なくなったが、山の神にオコゼを奉納して、山の幸を手に入れたり、ご利益を得た話が、九州の日向地方や和歌山県南部に伝わっているという。
関東ではあまり馴染みのある魚ではないが、太平洋に面した九州の東部から同じく太平洋に面した紀伊半島にかけて、わりあい身近な魚だということだろう。
こちらが絶品のタイの縁側。骨が綺麗に突き出している見かけは、むしろ「骨付きラムの香草焼き」の思い起こさせた。切り分ける前のブロックが こんな感じ
だ。
食してみれば、またもこれが信じられないほどの逸品。身は、骨に近づくにしたがって違った味わいを呈する。ゼラチン質のようなぷくぷくとした味わいが、しっかりとした肉厚の身の中に隠れていて、脂と肉本体がえもいわれぬ味覚を生み出す。
味付けは、やはり九州らしく甘味に寄った甘辛。最高に好みに合っている。テーブルで小躍りして喜ぶMizumizu。
揚げ物は、アワビ。小鹿田焼(おんたやき)の皿に、貝殻の器がのり、そのうえにアワビと鮮やかなパプリカを配している。色彩感覚も素晴らしい逸品(写真は色が悪い・・・残念)。
味ももちろん秀逸。見た目で一瞬「シイタケの天ぷら?」などと思ってしまった。食べてみたら、アワビだった(笑)。やはり、とても柔らかい。柔らかいのだが、締まっている。
日本人の言う「美味い」は「甘い」とかつてほぼ同義だったという説があるが、なんとなく納得する。豆も、アワビもオコゼも、みなそれぞれに違った甘さがあり、それが「美味い」と思う。
素材のもつ繊細な甘さを舌が見つけ出す。これがまさしく、「美味しい」瞬間。
骨付きの魚は、注意して食べないと危ないのだが、タイの縁側同様、骨に近づくにしたがって、食感が変わり、その変化があまりに素晴らしく、舐めるように食べた(笑)。
考えてみれば、フランスではジビエといって野生の鳥獣の肉を食べる。肉質のよくなる秋がジビエの旬だ。他のヨーロッパ諸国でも同様の食文化がある。日本ではこうして旬の魚を採って食べる。
ヨーロッパでは骨付きの肉を好んでメインディッシュに出す。こんがりと焼いた皮から、骨に近い部位までの食感の変化を楽しませる。臼杵で出された骨付きのタイもオコゼも、発想は同じだと気付く。
メインになるのが肉か魚かという違いはあるが、東も西も、洗練された食文化は同じ着目点をもっている。
骨付きの魚の味わいを堪能できる舌をもって大人になれる日本人は、幸せだと思う。
デザートにはヤッパリ、あの昼食べた和菓子が出た。これはまったく同じ味だった。果物は、ふつう。
最後のあたりで仲居さんから、「どなたのご紹介で?」と聞かれたので、「ネットで。評判がいいので」と答えると、驚いた様子だった。地元の常連の紹介で来るのが普通な店なのだろう。
臼杵は全国から観光客を集めるに足る観光資源をもっている。ここの魚もその一翼を担うにふさわしい。そして喜楽庵は、ヨーロッパのミシュラン星付きレストランにも決して引けを取らない。
「ヨソモノ」が増えても、「地元で揚がった旬の魚」を中心に、その日にメニューを組み立てる姿勢は、かわらずにいてほしいもの。ローカルに徹することで、グローバルな知名度をもつ店に匹敵するクオリティを維持することができるはず。
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