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歴史の研究は近年大きく変わったのではないか?以前は古文書に書いてあることをああだこうだと言っていたものを、最近は地形がどうだとかこのときの天候はどうだったとかというサイエンスのデータがどんどん入ってきている。これはサイエンスの中でも同じで、古生物学とか古代人類の研究などは化石ハンターの独壇場だったのが、突然ミトコンドリアDNAの研究者が乱入してきて大騒ぎになった。 日本の南極観測隊がドーム富士基地で南極に降り積もった雪(すでに氷になっている)を深くまで掘って採取した。これによって何年前の地球の気候がどうだったがわかってしまい、これまでの仮説がかなり変更を余儀なくされた。 最近の歴史の研究者は大変だ。古文書を読めるスキルだけでなく、サイエンスのデータも読めて理解できなければならない。どんな商売も楽ではない。
2026.08.06
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高校生の頃は戦車のプラモデルに凝っていた。ほとんどタミヤのキットだから、詳しい解説が書かれている。ここから興味を持って図書館で借りたり本屋で立ち読みしたりして第二次世界大戦の詳細について勉強をするようになった。 第二次世界大戦の兵器をプラモデルで作り解説を読むと、どう考えてもナチスドイツの物が優れている。大戦末期の戦車を考えると、ドイツ軍はタイガーとかパンサーとか実に格好が良いし強そうだ。イギリスやフランスの戦車など玩具のように見える。アメリカの主力戦車シャーマンなど小型だし大砲の口径も小さい。 連合国によるノルマンディー上陸作戦のあと、内陸に向かう連合国軍の戦車部隊とこれを迎え撃つドイツ軍のタイガーとパンサーとがフランス・ベルギーあたりで衝突し、最新鋭の戦車による戦車戦が行われた。タミヤの解説だと戦いの詳細は書かれていないが、結果は連合国軍の勝利に終わった。 高校生の頃にかなりの労力をかけて調べたところ、ドイツ軍のタイガーやパンサーは凝った設計で保守管理が難しいし戦闘などで故障すると修理がなかなかできない。また、大口径の戦車砲の弾丸は大きいので装填に時間がかかる。重くて大きいから燃費も悪い。一方のアメリカ軍のシャーマンは簡素な造りなので修理や整備が簡単で戦車砲の装填も速く、単位時間あたりの射撃回数が多い。イギリス経由で補給も充分だ。結局、アメリカ軍の方がたくさんの戦車を動員できてたくさんの砲弾を撃つことができて勝利につながった。 そういう理解をしていたのだが、最近、ヒストリー・チャンネルでこの問題を扱った番組を見たら知らなかった事実が語られていた。ナチスドイツは資源の面で制限があるため、大量の戦車を作ることより巨大で強い戦車を少量作ることを選ばざるをえなかったというのだ。ナチスドイツが石油不足に困っていたことは知っていたが、戦車の材料にまで困っていたとは知らなかった。 昔の話だが、最近の歴史の発達でこういうことがわかるようになるのは嬉しい。
2026.08.05
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看護学校の試験の採点が終わり、集計して学校に郵送した。今年も良い問題ができた。長年の教員生活で、良い試験問題の基準が明確になっている。勉強してきた学生は合格し、勉強してこなかった学生は不合格になるのが良い問題だ。集計した時に正規分布になる問題は良くない。明確な二山の分布になり、山の間の谷が明確なのが良い試験だ。 今回も合格者の最低点が61点で、不合格者の最高点が50点で大きなギャップがある。合格者の割合は60%くらいで、例年よりは良い。一年生の途中で退学した学生が何人かいたのが作用したのかもしれない。 私の授業は理解できるように最善を尽くしているが、学生には全力で聞くことを強要するようで、試験に備えるのは難しいかもしれない。そこで60題くらいの問題集を自分で作り学生に配布し、そこから試験問題を作っている。 合格する学生は必死で問題集の答を考え、覚えてくる。満点とか98点とかで合格する学生も1割くらいいる。高校で勉強する習慣を失ったままの学生はできる学生の作った答や上の学年から回ってきた答を手に入れるくらいがせいぜいで、理解していないし勉強時間も少ないから記憶もできない。記述式の問題だと白紙が多いから採点は楽だ。 看護学校の教師の中には再試験を易しくする人がいる。毎年同じ再試験問題にしたり、本試験から難しい問題を抜いただけの再試験にしたりする。こういうことをすると学生はそれを上の学年からアドヴァイスされ、本試験を捨ててくる。医学部だと本試験の合格者が1割以下になる。再試験の受験者の数が増えて面倒だ。だから、私は再試験は本試験より難しくなることを何度も授業中に宣言する。事実、再試験では問題集の中で最も難しそうに見える問題を出す。また、再試験で不合格にすることをためらわない。医学部や看護学校では勉強しない学生を卒業させたら社会のためにならない。 再試験も毎年きれいに二峰性の分布になる。できる学生に必死で教わりそれなりに時間をかけて勉強して合格する学生が多いが、相変わらず白紙だらけの答案を出して留年・退学への道を歩む学生も毎年何人か出る。こういう学生は私の担当科目だけでなく、他の科目も同じ調子だから、それで良いのだ。
2026.08.02
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テレビで「ポルシェのドアが開かなくなったのを解決する」というような内容の番組をやる、という記事がネットのニュースに出ていた。調べたら「探偵!ナイトスコープ」という番組だ。我が家のテレビはjcom経由で地上波、BS、ケーブルの有料チャンネルが入るから大概の番組は視聴可能なのだが、調べた時間に「探偵!ナイトスコープ」はない。tvkにそれらしい番組が違う時間帯にあるが内容はポルシェではない。番組のHPを見ると「見逃し配信」があるようなので、放送の翌日それで視聴することができた。 数年前に中古で買ったポルシェ(911カブリオレ)のドアが開かなくなって困っているオーナーを助けるためにお笑い芸人(だろう、たぶん)が出かけていき、専門家を呼んでなんとかしようという趣旨だ。このポルシェは私のポルシェ・ボクスター(2007年式:987型)と同じ頃のものだ(鍵のデザインがそっくりだ)。私のボクスターも同じだが1週間ほど乗らないとキーレスエントリーが効かなくなる仕様だ。そのときはドアの鍵穴に鍵を突っ込んで回せばドアが開く。しかし、番組の個体は鍵穴の部分のが物理的に壊れているらしく鍵を回しても手応えが無くドアも開かない。ディーラーを呼んでも、ドアガラスを割って運転席のエンジンスタートキーの鍵穴に鍵を入れて回してドアを開けるしかないと言われたらしい。オーナーはガラスは割りたくないのでこの番組に救援を頼んだわけだ。その後のいきさつは番組を見てほしい。 このポルシェのシステムは馬鹿げていると前々から思っていた。フィットなど10日間乗らなくても当たり前のようにキーレスエントリーで入れる。買ってから11年、一度も物理キーなど使ったことがない。この番組に出てきたポルシェは頻繁にキーレスエントリーが効かなくなり、そのたびに物理キーを使うはめになり、そのせいで鍵穴の機構が壊れたのだろう。スポーツカーは毎日乗ってもらえることは期待できない。週末にしかポルシェに乗れないオーナーは多いだろう。週末に他の用事が入れば簡単に2週間放置される。そういう立場にあるスポーツカーであることがわかっていながら一週間程度でキーレスエントリーが効かなくなるように設計したのが愚かだし、物理キーの鍵穴の耐久性を低く設計したのも愚かだ。 ポルシエの愚かさはこれだけではない。ボクスターはオープンカーでドアガラスにサッシはない。ドアを閉めるときガラスがホロのエッジに当たるのを避けるためにガラスが少し下がり、閉まったあとガラスが上がる。これはときどき正しく作動しない。また、以前乗っていた初代のボクスターではパワーウインドウのモーター(たぶん)が左右別々のタイミングで壊れ、修理するまで乗れなくなった。今持っている二代目のボクスターも整備記録を見ると左右とも交換されている。今後もいつ壊れるかわからない。ドアを開閉するたびにドア窓を動かすのだから、普通の車よりはるかに動作頻度は高い。それを見越した耐久性をモーターに与えずにこんな設計にしたポルシェは愚かだと思う。 私がこれまで乗ってきた外国車(ジャガー、アルファロメオ、フォルクスワーゲン、ロータス、ポルシェ)はすべて、これと同じような愚かさを抱えていた。それぞれに日本車に無い魅力を持っていたから愛して乗っていたが、カミさんは不満だらけだった。 今回フランスとイギリスに旅行したが、たとえばトイレの整備は酷い。数が少なく汚く便座が持ち去られていたりする。彼らはそれで良いと思っているのだ。我々はどこにでも清潔で温水便座が付いたトイレがあることを要求するが、彼らはそんなことどうでも良いと思っているのだ。それがポルシェの設計の愚かさにつながっている。
2025.06.23
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今年は巣箱をシジュウカラが使ってくれて、楽しませてくれた。こうなると欲が出て、もう一つ巣箱をかけようという気分になる。今はAIもYouTubeもあるから調べ物に手間はかからない。シジュウカラは縄張りを守るから我が家の50坪程度の庭だと1ペアしか営巣できない。だが、スズメは縄張り意識が希薄らしいし、シジュウカラはスズメに対して縄張りを主張することはないらしい。我が家の庭に2つ巣箱をかけて、片方はシジュウカラ、他方はスズメが営巣することも可能らしい。木更津市で巣箱を使う小鳥はこの二種類に限られる。 去年作った巣箱はシジュウカラもスズメも使える規格で作った。出入り口の直径は30mmで材料は厚さ15mm、幅120mmの杉材だ。巣箱のサイズは杉材の幅120mmに規定される。スズメにはもうちょっと大きくても良いらしいので、今回150mm幅の杉材を買ってきた。穴の直径は同じく30mmにする。 シジュウカラとスズメでは好まれる巣箱の高さが微妙に違うらしい。シジュウカラは低め、スズメは高めを好むらしい。去年作った巣箱は地面から出入り口の穴の下端まで2mにした。教科書によるとこの高さだとシジュウカラもスズメも使うということだった。新しく作る巣箱はこれより50cmほど高くして、スズメに入ってもらうのを狙おうと思う。 他種の小鳥であっても2つの巣箱の距離は遠い方が良さそうだ。既存の巣箱を少し移動して間隔を長くしてみよう。
2026.08.04
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本の1ページをiPad miniでスキャンしようとすると二本の手では足りない。本は閉じたがるから手で押さえておく必要があり、片手で本を押さえ片手でiPad miniを操作しなくてはならない。片手でiPadを支えつつシャッターボタンを押すのは不安定だし、本を押さえるのにも片手では辛いことがある。そのへんにある物で本のページを押さえたりするが、なかなかうまくいかない。 専用の道具を作ってみようと思い立った。木工のために丸のこを2台、電動ドリル2台、トリマーがあるし、正確に加工するための治具もいくつか作った。何か作りたくてうずうずしているのだ。3日ほど構想を練りiPad miniでデザインのスケッチを書いて設計が固まった。 4ミリ厚のアクリル板、25mm☓30mm, 25mm☓25mmの角棒、10mm角の棒、薄板、40mmの木ネジくらいが材料で、すべて工作室に転がっていたものだ。今回はハンドツールを使わないというテーマだ。すべて電動工具で加工する。アクリル板と角棒はすべて丸のこで切断、アクリル板がスライドするための溝は5mmのストレートビットをつけたトリマーで、10mmの角棒を立てる溝も9mmのビッドで掘り、角棒の一辺を9mmに削るのもトリマーだ。木ネジは電動ドリルで下穴を開け、電動ドリルでねじ込んだ。 作り始めれば半日で完成だ。本をセットし、アクリル板をスライドさせてスキャンしたい部分が見えるようにする。これでiPad miniを両手で操作してスキャンできる。
2021.11.10
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ソニー SONY ウェアラブルサーモデバイス REON POCKET PRO ( レオンポケットプロ ) センシングキット RNPK-P1T-H価格:25,250円(税込、送料無料) (2026/7/21時点)楽天で購入猛暑の季節になったが庭仕事を続けている。朝食後すぐの時間に空調服を最強にして作業している。一時間くらいで電気がなくなり弱くなるが、それを合図に作業をやめてシャワーを浴びて部屋で休養を取る。 カミさんが誕生日のプレゼントということで新製品を買ってくれた。ペルチェ素子を利用した製品で、首の後ろの素肌に直接接触させて冷やす。温度センサーが別にあり、これをポケットに入れておくと外気温や湿度を測り適度な冷え具合にしてくれるという触れ込みだ。スマホのアプリで操作できる。ペルチェ素子を冷却に使うと同じだけの熱が出る。この製品はその排気口が首の後ろから突き出す。長めの排気ダクトも同封されていたのでこちらに交換した。髪が長いと干渉するかもしれない。 早速使ってみたが、局所的に冷たいものを当てているので気持ち良い。だが身体を冷やすほどのパワーはない。汗の量も変わらない。なにしろ最強にしても5時間バッテリーが保つのいうのだから、大した力は無いのは当然だ。作業中に冷たくならないことに気づいた。スマホとの接続(Bluetooth)が切れている。接続し直したらまた冷える。切れたのにすぐ気づいたというのは、冷えて快適に感じていた証拠だろう。せっかくのプレゼントなので毎日使うことにしよう。
2026.07.21
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2年前に出版されてたくさん売れた「ファクトフルネス」という本は「世界はあなたが思っているのとは違い着実に良くなってきている」ということを啓蒙している。コンピューターに関係する作業は何年かに一度という間隔で巡ってくるが、そのたびに世界は良くなっている、と感じる。 悪名高かったマイクロソフトの認証作業、ソフトの再インストール、データの受け継ぎ、プリンターなどの設定等、以前はパソコンを一新すると元通りの日常に戻るまでにかなりの時間苦労した記憶がある。最初に目にしたWindows3.1など、山積みになったフロッピーディスクを次々に読み込ませんる代物だったのだ。 今、こういう作業が楽になったのは、やはり優秀な人材がこの業界に集まっていることが大きいのだと思う。ユーザーにとって大切なことは何か、これまでのやり方のどこが迷惑だったのか、という人間性に対する理解を直感的に持てる人がマイクロソフトやアップルなどに入社しているのだろう。 世界のどの業界も進歩しており、世界は着実に良くなっているのは間違いないが、ある世代で最も優秀な人がどのような領域で仕事をしたいと思うか、が進歩の方向を左右しているように思う。そういう面で日本の大学の将来は暗い。優秀な人材はそんなところで研究する道を目指さないだろう。
2021.02.24
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他人がステージでチェロを弾くのを見ていて心臓に悪いのがエンドピンの滑りだ。子供の頃、エンドピンが滑って肩をスクロールのアゴで強打してひどく痛かったことがあるし、滑ると必ず音楽が止まる。プロがエンドピンを滑らせるのを見たことがないが、アマチュアは例会、おさらい会の本番で滑らせる人を頻繁に見る。滑らせる人は、たぶん日常的に滑らせているはずだが、気にしないのだろうか?危機管理能力が無いのだろうか? エンドピンは床に直接刺すのが一番好きだ。楽器の振動が床を震わせるらしく、鳴りが良くなるような気がする。この状態でエンドピンが滑るのは、エンドピンの先端が丸くなっているのが原因だろう。私は少しでも丸くなったら電動グラインダーで尖らせているが、家にグラインダーが無い人もいるだろう。楽器屋に言えば尖らせてくれると思う。 床に直接刺してはならない場合、何か手立てが必要だ。エンドピンのゴムキャップを被せて弾くのは、私には無理だ。私のフォームはエンドピンにかなりの荷重をかけており、エンドピンがすべらないことが前提になっている。ゴムキャップと床の間の摩擦では必ず滑るから弾けない。 楽器屋などでエンドピンを受ける台を売っているのを見るが、その台と床との摩擦に依存している。これも床の材質次第では滑ることがある。いくつか買って試したことがあるが、何かの拍子に滑る。滑るかもしれないと思ったら満足な演奏はできないから、私は使わない。 状況が許すなら、適当な木の板(私は厚さ1cm、一辺15cmくらいの正方形のラワン材を使っている)を床に布のガムテープで貼り付けて、これに刺す。これはかなり理想に近い。貼りつけた後、演奏位置が変わったりすると困るのと、多人数が順番にステージで弾くという状況ではやりにくい。 この手が使えない時は木片に紐を通したものを持って行き、椅子の足に引っ掛ける。これは一応使える。何かの拍子に椅子の足から抜けると恐ろしいことになるのと、演奏中左右に動くことがあるのが難点だ。また、椅子の形状と高さに応じて紐の長さを調節する必要があるのも面倒だ。しかし、これしか使えないことも多いのでいつも持ち歩いている。
2011.12.03
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9月の演奏会にケーゲルシュタット・トリオで出ませんか?とクラリネット吹きからお誘いを受けた。このクラリネット吹きは高い技術と良いセンスの持ち主で私やカミさんとも気が合うので、これまでブラームスのクラリネット・トリオ、ベートーヴェンの町の歌を一緒に演奏してきた。残念なことに、私が好きな室内楽でこの編成というとこれだけしかない。 ケーゲルシュタット・トリオ変ホ長調 K.498はモーツァルトの後期の傑作で、編成はクラリネット+ヴィオラ+ピアノである。チェロの出番はない。しかし、この曲は見過ごすにはあまりにも良い曲なのだ。モーツァルトがアントン・シュタットラーというクラリネットの名手を知り、クラリネットの魅力を引き出す曲をいくつか書いたが、その最初の曲がこれだ。普通に聴いていると、明るくお気楽に聞こえるかもしれないが、後期(といっても35歳で死んだモーツァルトだから、30歳くらいの作曲)らしい高度な作曲技術を駆使している。聴けば聴くほど魅力的な曲だ。 この曲は学生時代から好きで仕方がなかった。学部の終わりから大学院にかけて、常設のピアノトリオを組んでいた。近くに住む3姉妹の長女がヴァイオリン、次女がピアノ、三女がクラリネットで、上の二人とピアノトリオをやっていたので、下二人に頼み、ヴィオラパートを私がチェロで弾けばできる、と考え、楽譜を手書きで書いた。ヴィオラとチェロはちょうど一オクターブ違いで、ヴィオラという楽器はそれほど高度な技術を要求されないので、チェロで弾いても何とかなる、と思ったのだ。ヴィオラのアルト譜はゆっくりなら読めるが、この曲は無理なので、全曲手書きでテノール譜に書き直したのだ。昔は私も根性があった。 この時は残念ながら全く歯が立たなかった。チェロで弾くと音域が高く、ポジションが非常に難しくなるのだ。結局一度も合奏することなくあきらめた。バッハのシャコンヌ(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番の終楽章)もチェロで弾けるように五度低く手書きで楽譜を作ったことがあるが、これも無駄に終わった。 それから30年以上経ち、母が家の荷物を整理していたら手書きの楽譜が出てきたといって渡してくれた中に、この楽譜があった。それで再び練習をして、クラリネット吹きと2回ほど合奏して遊んだのだ。 しかし、遊びで弾くのと演奏会で弾くのとは全く違う。この曲はヴィオラで弾いてもそれほど易しくないらしいが、それでも、超絶技巧というわけではない。モーツァルトはこの曲を技巧的な曲として作曲していない。それを難しい思いをしてチェロで弾くのは、言ってみれば私の勝手ですることだから、難しそうに弾いてはならないと思う。普通にヴィオラで弾いているような顔をして、そのくらいの正確さで、楽しそうにミス無く弾くのでなければ、申し訳ないと思うのだ。ヨー・ヨー・マがこの曲をチェロで弾いたCDがあるが、もちろん、完璧だ。 この感覚はシューベルトの「アルペジョーネソナタ」と似ている。あれは、今は絶滅したアルペジョーネという楽器のためにシューベルトが作曲し、あまりに美しいのでチェロやヴィオラで演奏されている。これをチェロで弾くとものすごく難しいのだが、シューベルトは技巧的な曲として作曲していない。だから、チェロで弾くのは弾き手の勝手であって、難しそうに弾いてはならないと思う。完璧に、易しそうに弾けないのなら、私は弾かない。 そういうわけで、ケーゲルシュタット・トリオを練習している。幸い、ここのところ、バッハの6番の無伴奏チェロ組曲とコダーイの無伴奏チェロソナタという、チェロで屈指の超絶技巧曲を弾いているから、学生時代よりはるかに技術は上がっているので、ほぼ練習計画ができ、毎日しこしこと練習している。抱えている曲がみな難しいのでチェロの練習時間が増えてきた。
2008.06.12
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自動車は定期点検、車検もあるし不調になることもあるから主治医が必要だ。昔、国産車に乗っていた最初の頃は大した考えもなく買った店の工場を主治医にしていた。 こういうメーカー系列の工場に入れていると嫌なことがいくつかある。まず、実際に面倒を見るメカニックが頻繁に替わることだ。これまでに起きたことを人が替わるともう一度説明しなければならない。金をかけすぎるような気もする。念のためにとか言ってどんどん部品を交換したがるように感じる。日本人の多くは車は絶対に故障してはならないと思っていてそれに対処しているのかもしれないが、消耗品の交換サイクルが早すぎるように感じた。ちょっと同じ車を長く持っていると買い換えを勧めてくるのもかなり不愉快だ。ピアノメーカーから派遣されてくる調律師も同じだが、せっかく乗り続けているのだから余計なことを言わない方がよいのに。 関東にいるとき友人に勧められて、修理工の親父さんが数人のメカニックを使ってやっている町工場に持っていくようになったらここが実に良い感じだった。安心感はちゃんとあるが、これまでよりずいぶん安くなった。ここと付き合っていて嫌な思いをしたことは一度もない。途中で国産車からドイツ車に替わったが何の問題もなかった。 こちらに越してきてアルファロメオを買ったが新車のおまけにオイル交換とか12ヶ月点検とかの無料券が付いてきたので、その期限である最初の車検まではディーラーの工場に入れていた。それ以後は家の近くに見つけた町工場に入れている。ここはほとんど親父が一人でやっているから、ちゃんと前のことを覚えていて彼なりの計画を立てて面倒を見てくれる。 チェロも、実際に作業をしてくれる職人が信頼できるかどうかが問題だが、自動車もそうだと思う。こういう町工場だと種々雑多な車を見ているから車に対して腹が据わっている感じもあって安心だ。点検修理の料金もだいぶ安い。当分この店にもっていこうと思っている。この親父は朝から晩まで一人で車をいじっている。かなりこの仕事が好きな様子は見て取れるが、大変だと思う。私ならいくら好きなことでもそればかりという生活にはとうてい耐えられない。
2010.02.11
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「音と脳」によると、トップアスリートの聴覚は鋭敏だという。雑多な音の中からノイズを除去し、意味のある音だけを選別する脳の性能が高いらしい。私はラグビーの試合を見るのが好きでときどき競技場まで試合を見に行くくらいで、jsportsのリーグワンの放送は全試合見ている。東芝のモウンガとかリコーのベレナラなどを見ていると、後ろに目がついているのではないか?と思うようなプレーをするのだが、これは気配(最終的には聴覚だろう)で後方の状況を把握しているように思われる。この二人は激しいプレーも多いのだが不思議と大怪我をしない。これも競技場のノイズに満ちた環境でも微妙な音を聴いてタックルされる状況を把握して大怪我を避けているのかもしれない。 しかし、ラグビーという競技はどう考えても身体に悪いし、脳への損傷も凄まじいものがあるだろう。先日もフランスの有名だったラグビー選手が現役時代の記憶が全く残っていない、というニュースが出ていた。 自分でやるならラグビーよりチェロの方が良いだろう。
2025.04.11
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カッチーニのアヴェ・マリアという曲がある。実際はカッチーニという人が作曲したわけではないらしいが、どうでも良い。とても美しい曲で、チェロ用の素晴らしい編曲もある。弾くのは難しくない。ゆったりとしたテンポで全音符が多く一番速い音符が八分音符。重音も無いし音域も普通だ。物足りないと思うチェロ弾きは途中で1オクターブ上げたりするが、それでも高すぎるわけではない。これまでに何度か人前で弾いたことがあるが、それなりに好評だった。 YouTubeで勧めてきた動画にこのカッチーニがあり、今日本を代表するチェリストである宮田大氏が演奏している。これがとても素晴らしい演奏なのだ。良い演奏を見聞きすると秘訣を盗もうとするのだが、この演奏の動画を見ていても盗める感じがない。難しい曲なら、指使いや弓順を盗むことが可能なのだが、これだけ易しい曲だと何も秘密はない。ロングトーンの持ち声の美しさと言ってしまえばそれまで。微妙なクレッシェンドとか弓の返し際のわずかなポルタメントはわかるが、楽譜に書き込めるような情報でもない。使用楽器がストラディバリだから美しいわけではないだろう。 何度も動画を見て、チェロを手にして真似してみようと思うのだが、手の打ちようがない。日暮れて道遠し、という言葉が浮かんでくる。
2026.07.13
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